贅沢は言わない せめて普通の生活を    作:暁魔

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5弾

「寝れるかよ………」

自分の身体から無くなるのは体温で、対策として辛いものや熱いものを摂取すればいいことがわかり試食大会は終了したのだが。刺激物で覚醒した意識のなか寝れるはずもなくソファーにもたれ掛かったまま項垂れていた。

 

「睡眠薬でも使うか…」

とは言ったものの体内には睡眠薬のストックはなく、数多の薬品が点在している部屋の中から探し出さなければならないのだが、生憎そんなロシアンルーレット紛いなことをする勇気はなく。唯一この部屋にある薬品を熟知しているであろう夾竹桃が眠るベッドに向かい言葉を失う。

 

 

 

女性が寝ていたから?

 

 

 

 

違う。

 

夾竹桃はどちらかと言うと年下の従姉妹にしか思えないから女性という扱いではない。

 

 

 

服がはだけていたから?

 

 

 

違う。

 

しかし相変わらず制服姿で寝ているのにはだけるどころかシワ一つ作ることなく寝れるのは無駄に洗練された無駄の無い無駄な睡眠法と呼べるだろう。

 

 

なら何故言葉を失ったって?

 

 

 

 

それはな

 

 

 

 

夾竹桃は布団を被らず目を限界まで開けたまま寝息一つもたてず寝ておりその姿がホラーそのもので悲鳴を出すことすら忘れてしまったからだ。

例を挙げるなら中学生ぐらいの背丈の日本人形がベッドに横たわっていると考えれば想像がつくだろうか?

そんな光景を見てしまえば一生もののトラウマになるに違いない。

 

 

「俺に何の恨みがあるんだよ…睡眠薬貰う以前に話かけれねぇよ」

眠るどころか余計に目が覚め、事態は悪化するばかりで一向に好転する兆しは見えない。

時間が過ぎるに連れ次第に深夜独特の吹き飛んだ発想が頭を過るようになり、アナログ時計の短針が2を通りすぎた頃にはすでに出来上がっておりある結論にたどり着く。

 

 

 

「寝るのを諦めよう」

もはや最初の目的とは正反対になっているが気にしてはいけない。

新たにデスソースを開封し某栄養ドリンク剤のCMに出演のオファーが来そうな勢いで飲み干し、能力で体内に留めて置いた興奮剤の抑制を解き全身を禍々しい文字で染め上げ、僅かに眠気を完全に取り去る。

 

「これで今日は眠らなくて済むな。さて予習でもしとくか…」

起きていても特にこれと言った暇潰しが出来る訳でもなく、明日体内にいれるかもしれない毒について少しでも多く知るために近くにある資料を手当たり次第に集めテーブルの上に広げた。

 

 

この時は知るよしもなかった

 

夾竹桃は寝ておらず目を見開いた状態のアイマスクの隙間から自身に仕えさせる人物に値するか品定めさせていることに

 

 

 

◼◼◼

 

ピタゴラスイッチをご存知であろうか?

この番組の目玉と言えば最初は人力で小さなものを少しだけ動かすが次第に動くものが大きくなっていき最後にとても派手な演出をする仕掛けだろう。

早朝から夾竹桃の指令を受けてその装置を作り、起動も無事成功したのだが成功とは裏腹に気分は最悪である。

 

「聞いていた話と違う!」

 

「えぇ、もしも本当のことを話したら貴方は作らなかったでしょ」

 

先程も告げたとおりこの装置は終わるときに派手な演出をするのだが、今回はその演出として工事現場の足場一部崩し目的の人物を閉じ込める檻を作ると聞いていたが、実際は死人が出てもおかしくないレベルの鉄板の雨がドラム缶から抜け出せない勝ち気な少女とそれを助けようとする小柄な少女な降り注いでいた。

 

「この世界に来たからには殺しを覚えることを覚悟しなさい」

 

「……………」

夾竹桃の言う通りこの世界に来たからには殺しを覚えないといけないというのは心の隅にはあったが自分の命が惜しさに

裏社会の住人になったことに今さら後悔を覚える。

 

「よく見てなさい」

一度は顔を背けようとするも有無を言わせない眼をした夾竹桃に煙管で再び顔を元の位置に戻される。

少女達に降り注ぐ鉄板から金属が衝突するような音が次々に鳴り響き鉄板はすれすれのところに落下しなんとか直撃は避けているが最後の一枚のところで金属音がしなくなる。

 

「……すまん」

援護という最後の希望までなくなり諦めかけていたその時鉄板の隙間から稲光のようなものが漏れだしそのあとに続くように二人組の少女達が現れ、間一髪で鉄板を避ける。

 

「こうなることを知ってたのか?」

 

「当然でしょ」

 

「なら「『最初から言ってくれよ?』そう言いたいのでしょ?そうしたら貴方は死を意識しなかった。違うかしら?」

裏側に来たときの迷いを完全に見透かされていた。

 

「今回でわかったでしょ。死人がでるはこの業界では日常よ」

 

「あぁ…」

いつか自分の手で人を殺めると思うと手が震えだしたが夾竹桃はそれを両手で包み込む。

 

 

そして見える風景が渦を巻き鈍い衝撃が背中から胸へと突き抜け投げ技を決められたことに気が付き起き上がろうとするがそれよりも早く首筋に無針注射が当てられる。

 

 

「この世界に来たらと言っても殺しは絶対ではないわ。だから殺しが嫌なら手加減が出来るぐらい強くなりなさい」

あくまでも育ちは一般家庭でお世辞にも強いと言えるような立場ではなく手加減して勝てるどころか全力で挑んでも勝ち目ことを自覚させるためにわざわざここに連れてきたということになる。

 

 

「捕まりたくないなら急いで証拠を片付けなさい。それと午後からは忙しいから覚悟しなさい」

相変わらず表情澄まし顔なのは変わらないがそれでも少しだけ頬が緩んだように見えた。

 

◼◼◼

ピタゴラ装置を回収した日の午後は海沿いの倉庫街の一角で武偵殺しとの実技演習が行われ。

ルールは《攻撃を日が落ちるまでに一回でも当てれたら勝ち》で楽勝ムードで挑んだが

 

「鬼さんこちら~手の鳴る方へ~」

そのハンデをもろともしない武偵殺しに完全に遊ばれてるのが現状だ。

 

「なんで当たらないんだよ!」

ゴスロリ風に改造した武偵校の制服と金のゆるい天然パーマのツーサイドアップを軽快なステップで揺らしたり身体のある部位を強調するように捻りながらペイント弾の弾幕をことごとくすり抜け、目標を見失った弾は壁や床、木箱などの倉庫のありとあらゆる場所を塗料が染め上げる。

 

「くふふふ。それはねユー君の攻撃が単調だからだよ」

 

「狙って撃つだけで精一杯だ!」

サイトを覗きながら標準を定めようとするも武偵殺しは目の前におらず慌ててサイトから目線を外すが突如手首を捕まれ能力を発動させるより早く景色が反転し投げられたことに気がついた頃には埃っぽいコンクリート製の床に叩きつけられ目の裏に火花が弾けた。

床に打ち付けられぐらぐらと揺れる視界のなか無理に体を起こし目の前にいるキメ顔の武偵殺しにベレッタを向け引き金を引くも撃鉄が空の薬室を叩く音が虚しく倉庫に響く。

 

「まだまだ修行が足りんのぉ~」

左手に投げられるときに掠め取られたマガジンを見せつけられながら、右手に弾を撃ってないため熱を帯びてないデリンジャーの銃口で額を小突かれ敗北が決まる。

 

「弱い!よくそんな強さで明日無き学科に入れたね」

 

「強襲科じゃなくて装備科だ!」

いったいどのように伝えられ、どういった風に伝わっているのか検討がつかない。

 

「でも夾ちゃん推薦なんでしょ?」

 

「武偵歴1週間に期待しすぎだ」

 

「なんだパンチュー出身か…期待した分余計にがっかりだな~」

 

「口数が多いのはいいが足元は大丈夫か?」

慌てたように視線を落した隙に腹部に飛びかかろうとするが直前で気づかれたため狙いを腹部から引きそびれた右腕に変えたおかげでペイント弾を腹部に一発貰いながらも腕を後ろに引っ込めるギリギリの所で手首を掴む。

 

「捕まえた…」

 

「ユー君顔がマジ過ぎ~そんなんじゃ女の子に逃げられたゃうぞ」

 

「知るか!!それよりも攻撃を当てたから勝ちなんだろ?」

掴んだところから生き物のように這いずり侵食していく文字に目配せしながら勝ちを確信し頬が自然と緩む。

ただこの姿を他人に見られれば十中八九紺色の帽子を被った公務員へ通報されることは間違えない。

 

「そうだよ。でもそう言うのは当ててからだぞ」

 

「なにいってるんd…ん!?」

握っていたのは武偵殺しが着ていた改造制服のみで本人は目の前でハニーゴールドの下着姿で身長とは不相応に発達した体を惜しみ無く披露し、目線は反らそうとしても自然と特定の場所へと吸い寄せられる。

 

「一瞬だけど捕まえれたご褒美ユー君には理子の服とサービスショットを進呈しよう!」

 

「少しは自重しろよ!!」

 

「だが断る!それよりもユー君は自分の心配をしなくていいのかな?」

 

「随分と楽しそうなことしてるわね」

いつもより一段と感情の起伏を感じない夾竹桃の言葉が背中に刺さる。

 

「楽しくなんk…「聞いてよユー君が理子の身体を血に飢えた狼みたいな目でみてくるの~」お前が見せてきたんだろ!」

武偵殺しは俺を突き飛ばしその奥にいる夾竹桃に抱きつき、抱きつかれた本人は子供をあやすように撫で背景にユリの花が咲きだすのが見えた。

しばらく抱き合ったあと武偵殺しが耳打ちをすると夾竹桃はだらりと腕を垂らし俺との距離をゆっくりを縮めだした。

 

「見境のない駄犬には教育が必要……待ちなさい…「誰が待つか!」

この状況で真っ先に逃げる選択をしたのは間違いじゃないはずだ。

ただ準備もなしに逃げ切れるはずもなく数分後にはワイヤーでぐるぐる巻きにされ身動きがとれない状態で床に転がされていたのは記憶に新しい。

 

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