贅沢は言わない せめて普通の生活を    作:暁魔

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7弾

「有機物には定着するけど無機物には定着しない…と」

徹夜の成果は他にも3mm障害物と認識されず能力が発動できることと有機物は有機物でも生物に自然と流れ込むなどの規則もわかった。

 

「雨か……」

連日朝日が射していた窓は黒い雨雲が空を覆っているせいで薄暗く不吉なムードが漂っているが、そんことも気にしないで夾竹桃は黙々と朝の支度をしている。

 

「近頃ここを離れるわ。ここに薬品を分かりやすくここにまとめておきなさい」

突然目の前に羊皮紙でできた分厚い本が何も書かれていない真っ白なページが開かれた状態で置かれそう告げた。

 

「それと来客をもてなす技術を習得しなさい」

 

「てめぇの血は何色だ!」

無理難題にもほどがある。ただでさえ薬品や武器のことで忙しいのに引っ越しの準備という仕事を増やされたばっかなのに更に他の事を覚えろなんて正しく鬼畜の所業である。

 

「あら…口答えするのね」

この頃夾竹桃の表情から気持ちが少しずつ分かるようになり大きく三つに分けられることに気が付いた。

一つ目が日常時の表情、二つ目が興味を示した時の表情、三つ目『教育』する時の表情。

中でも一番危険なのは『教育』する時の表情でここで選択を間違えるとその日一日がバットエンドルートに突入するのだが、夾竹桃は今三つ目の表情をしている。

 

「コーヒー…勉強します…」

苦し紛れに最初の提案である来客のもてなしの一環に入るであろうコーヒーについて学ぶという選択をとったが

 

「ならいい場所を教えてあげる」

どうやら自分から全力で地雷を踏みに行ったらしい。

 

「今日『ヴィルドシュート』で店長が体調不良で店の倉庫で倒れる予定があるわ」

とても危険な臭いがするのは、きっとこの部屋が薬品の臭いが充満しているからだろう。

 

 

 

現実逃避はやめよう。その店長はきっと俺のせいで不幸になる。

 

「だから働けなくなった店長の身ぐるみを剥いで勉強してきなさい」

今日は俺の忌々しい記念日になりそうだ。

 

■■■

「………うちの鬼のせいで…ほんとごめんなさい…」

文字化した神経毒が身体蝕み痙攣しながら倉庫を這う店長に心からの謝罪をしたあと剥ぎ取っておいたコーヒーの匂いが染みついた制服に着替え店へと向かう。

 

「バイトの研修に来ました川崎(偽名)です。よろしくお願いします」

幸いの事に従業員は今メイドっぽい制服を着たウエイトレスの一人しかいなく顔を覚えられる人数が少ないのは好都合だ。

 

「男の新人さん?珍しいな…あれ、でもそんな話あったっけ?」

「(ほら見ろ最初からこの計画は破た…「まぁいっか」いいのかよ!?)」

噂ではここは男子禁制の女子御用達の店と聞いていたが拍子抜けだ。

これなら案外簡単に終わるかもしれない。

 

「じゃあまず口で説明するからよ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …と言うことよ分かった」

 

「……あ…はい」

弁解しておくがけして寝ていた訳ではないただ少し瞼を

 

「ほんとに大丈夫?」

嘘です本当は半分以上寝てて聞いてません。

ただそんなことが言えるはずもなく。

 

「だ、大丈夫です」

見栄を張ってしまうのは悲しき男の性だろう。

 

「すごいねキミ、私なんて覚えるのに二週間はかかったのに」

なんでここ最近薬品といい仕込み武器といい覚えるもの全てが鬼畜な量なのだろうか。

 

カランカラン

 

「「いらっしゃいませ」」

ドアに付けられた鈴が鳴り来客の合図が店内に響く。。

 

「美味しいコーヒーを作りなさい」

来客は二名で声をかけてきたのは無賃バイトを勧めた本人(夾竹桃)で、もう一人の方はゲームセンターで出会った少女だ。

 

「さっそく指名とは運がないねキミ~でもおしとやかそうなかかわいい子じゃん」

違うんです。あいつはそんなおしとやかなタイプじゃない!

それと地味に肘で脇腹をつつくのやめろ!

 

「大丈夫。新人って言えば多少失敗しても許してくれるって」

許すなんてこと地球が反転してもあり得ないし、第一許すなら命を対価にとか言われそうだ。

 

「なら一度だけ手本……」

 

カランカラン

「「いらっしゃいませ」」

 

「ごめん。接客してくるからあとは頼んだ」

最後の頼みの綱までなくなった。

 

「(どうしろっていうんだ!?)」

目の前に有るのは見たこともない球体が2つ重なった用具(以後Q2)だけしか存在せず、美味いコーヒーどころか作る事にすら手間取りそうだ。

 

「とにかく作るか…」

目の前にあるQ2は無視して瓶に入っていたコーヒー豆適当に砕きをポットの中に水と一緒に入れ加熱し、沸騰してきた辺りで火を止め人肌まで冷ましてコップに注ぐ。

 

「おまたせ。これあの人達のだよね」

 

「そうです。おねがいします」

忙しくそうに動くメイドは2つ分のコーヒーをお盆に載せ夾竹桃が座っている席へ向かった。

 

『お待たせいたしました』

夾竹桃は早速運ばれたコーヒーに口にしたが一瞬顔が歪んだがすぐにいつもの澄まし顔に戻る。

 

「…………」

 

「顔青いけど大丈夫?」

コーヒーを届け終えカウンターに変えてきたメイドが問いかけてきたが

 

「……大丈夫(だといいな…)」

そうとしか言いようが無かった。

 

■■■

研修は思ったよりも時が早く流れ気がつけば雨は止み帰路につくころには雲は綺麗さっぱりなくなり星空が広がっていた。

「コーヒーって奥が深いんだな」

今回学べたことは多くQ2改めサイフォンの使い方はもちろん他にも様々な入れ方について教わり、店長を監禁した倉庫からもう使わなそうな備品を一部とコーヒ豆を拝借してきた。

 

「ただいま」

 

「あら、どの面下げて帰ってきたのかしら」

淡々と吐く毒はいつもより強くとても機嫌が悪いらしい。

 

「つ、次は大丈夫だから機嫌直せよ。ほら道具も貰ってきたし」

 

「どうだか…それよりも次あんなもの出したら…

 

 

 

 …あなたを武偵に密告するわ」

冗談じゃないことを夾竹桃の目が物語っている。

 

「なら、今から…「すぐ終わるからあとにして頂戴」

そう言ってテーブルの縁においてある漫画家が使っているようなペンを持ち何かを書き始め、何時でもコーヒーを入れれるようにバイト先から持ってきた備品を綺麗に洗うことから始めることにした。

 

「…あの子達のおかげで夏までには仕上がりそうね」

 

「(純粋な笑顔初めて見た…)」

いつもなら妖艶な雰囲気を含んでいるため年上だと認識できるが、無垢な表情をすると容姿のせいもあり年下に思えてしまう。

 

「一段落したしシャワー浴びてくるわ」

そう言ってシャワールームに消えていた夾竹桃を見送り『ペーパードリップ』に使うサーバー、ドリッパーなどの用具とカップを準備し細口ドリップポットに水をいれ火コンロに火をともす。

 

ジリーッ ジリリッー

 

 

「あれ、理子ならいつも問答無用で入ってくるけどな…」

普段鳴ることのない来客を告げるベルは不気味で仕方がない。

 

「今開ける。そこで待ってろ」

覗き穴から外の様子を覗くが顔の部分が霞みよくわからないが服装から武偵だとわかる。

一瞬追手かと考えたが理子の件もあり武偵校の内通者だと確信する。

 

「いらっしゃい…って久しぶり」

 

「あれ!?部屋間違えたのかな?でも…」

扉の向こう側にいたのはゲームセンターの少女だった。

 

「ここで立ち話もなんだ中に入れよ」

 

「お、お邪魔します」

 

「コーヒ淹れるけどミルクと砂糖は多めでよかった?」

見た目で判断するのは失礼なのはわかるがどうみてもコーヒーをブラックで飲むタイプでは無さそうで砂糖と牛乳を普通よりも多めに混ぜ混む。

 

「い、いや。今喉渇いてないからいいよ」

 

「なら、練習に付き合うと思ってさ」

 

「じゃあ、少しだけ…」

 

 

「美味しい…」

 

「よかった」

ほぼコーヒーというよりもコーヒー牛乳になっているのは目の前のコーヒー牛乳を幸せそうに飲む少女には黙っておく。

 

「改めて、望月 雄斗だ」

 

「間宮 あかりです」

今更ではあるがお互いの名前を知ることができた。

 

「自己紹介は済んだ?」

声をした方向に顔を向けるとシャワールームから出てきた夾竹桃がいた。

 

 

 

生まれたままの姿で。

 

「……今日もやるのか」

 

「当たり前よ。早くしなさい」

ことの発端は『イ・ウー』に加入した夜1人で活動する事が多かったせいかシャワールームから裸で夾竹桃が出てきたことだ。

慌てて湿った肌をタオルで覆い、その上から能力で水分を文字に変えタオルに移し急いで服を着せたところ、自分で着替えるより他人に任せた方が楽だということに味を占めたらしくそれ以降はずっとこの状態である。

 

「な、な、なにやってるの!?」

 

「着替えよ」

あかりが顔を真っ赤にして叫ぶのに対し夾竹桃は相変わらずの澄まし顔で冷静に対応する。

 

「そうじゃなくて!恥ずかしくないの!」

同じ様な質問はしたことはあるが

 

「あなたは犬や猫に裸を見られても恥ずかしいの?」

導き出される答えは扱いが犬猫レベルだということぐらいだ。

 

「(なんだこれ?)」

制服姿に着せ替えが終わりタオルを片付けようとすると中から指令が書かれた紙と鍵が出てきた。

 

「邪魔よ犬。部屋から出て行きなさい」

どうやら引っ越しの時が来たらしい。コーヒーセットは名残惜しいが諦め、この部屋の薬品の1/4にも満たない量しか記していない羊皮紙の本を手提げ鞄に押し込み従業員ようの裏口へと急いだ。

 

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