城の中の吸血姫   作:ノスタルジー

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十四話目。

これから更新は少し遅くなる程度です。
一日に二話とかは不可能です。
一話なら日によっては。

原作が始まらない。


人形と吸血鬼

 変態と会ってから二週間ほど経った。その間、変態は時々、私のところにやってきた。だが、私に会いに来たわけではなかった。よかった。

 そして、ある日。

 「アイリスさん!!いや、もうアイリス!!」

 高めの大きな声。私を呼ぶ。振り返るとそこには金髪の可愛らしい少女、もとい幼女がいた。エヴァンジェリン。やっとか。しかし、待て。どういうことだ。

 「ほう。彼女が」

 隣にいた変態が感嘆の声。うざい。死ね。

 まぁいい。

 「妹だ。」

 「そうだ!妹だ!って、いつから私があなたの妹になった!?」

 「これはこれは……話に聞く通り、非常に愛らしい妹さんですね」

 乗ってきた変態。

 「そうだろう。自慢の妹だ。」

 「だから妹になった覚えはない!!」

 はしゃぐ妹。

 「こら、妹よ。客人の前だ。そんな大声を出して、はしたない。あまり姉に恥をかかせるな。」

 「だから!!……はぁ。もうやだ、この人」

 おい。そして何を疲れ切っているのか。

 「妹よ。」

 「…何?」

 まぁいい。私は寛大なのだ。

 「材料は集まったか。」

 「え?」

 きょとん。なるほど。この顔をそう表現するのか。勉強になった。

 「だから材料だ。まさか忘れたわけではあるまい。この旅の目的だ。」

 「……あ」

 あ。あ、とは。集まった。なのか。

 「あなたを探していたんでしょうが!!この数か月間ずっと!けど近づいたと思ったら遠ざかるし、目立ってはいけないから派手な移動はできないし!!材料を見つける暇なんてなかったのに!!」

 騒いだ後、俯く妹。ふむ。こういう時、妹には何と声を掛けてやるべきなのか。しかし、近づいたら遠ざかるとは。詩人だな。詩なぞ忘れたが。

 「妹よ。」

 「……何?」

 荒んでいるな。

 「さっさと集めてこい。私は集めた。」

 「死ね」

 吸血鬼ジョークか。妹よ。

 

 「そろそろいいですか?」

 いたな。変態。

 「わかっている。」

 言って、エヴァンジェリンの方に向き直る。

 「……そういえば、この人は誰?客人とかさっき言っていたけど」

 「妹よ。」

 「……何?姉様」

 諦めたか。

 「これを着ろ。」

 「死ね」

 氷が飛んできた。危ない。

 

 「私はアルビレオ・イマと申します。始祖の眷属です。アイリスとは二週間ほど前に会いまして、今では二人で色々と話をし合う友人、といったところでしょうか」

「エヴァンジェリン・A・K・マクダヴェル。真祖」

 態度が悪い。どこで教育を間違えたか。と振り返る。昔はもっと純粋で物腰の柔らかい幼女だったはずだが。

 「へ、ではなくアルビレオは吸血鬼について詳しい。お前が知りたがっていた真祖化についての情報も持っているようだ。」

 「真祖化…」

 嘘だが。というか、まだ未練があるのか。もう100年以上前の話だ。

 「まだ人間に戻りたいのか。」

 私がそう言うと、困ったような表情でこちらを見るエヴァンジェリン。

 「今はほとんど思っていないかな。けど真祖化の魔法は自分の人生を変えたもの。純粋に興味があるし、知っておきたい」

 なるほど。まぁこちらとしてもお前に人間に戻られたら困るが。

 「アルビレオ。」

 「はい」

 相変わらずの薄笑いで、こちらの呼びかけに答える変態。

 「対価は約束通り。エヴァンジェリンが払う。もう一度、お前の知る真祖化の魔法について話してくれるか。」

 「いいでしょう。ではこれを着てください」

 そう言って先ほど私が出したものとは違うものを出す。どこから出した。今。

 「え?」

 「真祖化の情報について、私が知る限りの情報を教える。その対価はあなたがこれを着ることです、エヴァンジェリン」

 「え?」

 「真祖化について知りたいのだろう。その対価は着替えるだけ。安い買い物だ。」

 よかったな。と言って、辺りを闇で覆い、エヴァンジェリンに服を投げつける。

 「え?」

 

 結果から言えば。変態が真祖化について話した後。戦闘になった。エヴァンジェリンVS私。変態は逃げた。後で殺す。と心に誓う。

 エヴァンジェリンは少し強くなっていたが、私には及ばない。当然。始祖より優れた真祖など存在しない。同じく、姉より優れた妹も存在しない。

 そして、エヴァンジェリンを怒らせたお詫びとして、材料探しに付き合うこととなった。まぁいい。それくらい。付き合ってやろうではないか。

 二人で、歩き出す。

 

 エヴァンジェリンの「人形」の材料の捜索。意外と手早く終わった。いや。終わりそうだった。問題は。あるパーツだけが手に入らなかったということ。「人形」の心臓、核と呼ばれるパーツ。魔力を貯蔵できるという特性を持つ宝石。希少価値が高く、市場にほとんど出回らない。これには1ヶ月ほど時間を費やしたが、結局。見つからず。核がなければ、エヴァンジェリンの作ろうとしているキリングドールは作れない。ちなみに私のは関係ない。

 そこで、私たちはいったん城に戻ることにした。私の「人形」をまず作り、そいつに捜索を任せようという魂胆。楽だ。

 魔法陣を描き、あらかじめ城に描いておいたものと繋げる。

 転移。今度は失敗しなかった。

 

 「よかった」

 開口一番。エヴァンジェリンが言う。失礼。

 「改良していたからな。」

 一度失敗したことを繰り返すほど愚かではない。私は。

 「その魔法の才能だけは認める」

 だけ、とは何だ。拾ってやった恩を忘れたか。愚妹。

 「はぁ。それで?何を作る?」

 「ホムンクルス。」

 

 ホムンクルス。人造生命の代名詞のような存在。人間に近くしようとすればするほど、難易度が上がる。私が作ろうとしているのは、最上級。つまり、ほぼ人間。ホムンクルスを生み出す技術自体は禁術一歩手前。人工生命はお嫌いらしい。魔法世界。

 ホムンクルスはベースとなる存在が必要で、そこに機能を付けたり、いらない部分を取り除いたりできるらしい。プラモデルか。と思った私は悪くない。

 まず、ベースとなる存在の細胞が大量に必要。体半分くらい。ふざけるな。だが、私は始祖。腕を10本ほどくれてやった。最強種がベースだ。感謝しろ。二度としない。

 魔女が使うような魔法の鍋に入れ、材料を投入。ここで入れるものによってスペックが大きく変化するらしい。一番影響があるのはベースだが。基本の材料以外に、私は魔法世界で狩った生物の死骸をいくつか入れた。どいつも強力なやつばかりだった。感謝しろ。二度としない。

 魔力を注ぎながら、火にかけ、混ぜる。一月と少しの間。最後にホムンクルス製造の魔法を唱え、完成。私にすれば非常に簡単だった。

 出来上がったものが私の欲するものとはかけ離れた存在でなければ。よかったのだが。

 

 「私がお前の親だ。アイリス。ほら、言ってみろ。」

 無言。無音。

 「お前の名は、考えてなかった。許せ。」

 無言。無音。

 「お前に指令を言い渡す。心して聞け。」

 無言。無音。

 「魔力を貯蔵する特性を持つ宝石。魔法世界に行って、手に入れてこい。出来る限り早くだ。」

 ふむ。助けてくれ。妹様。

 

 「はぁ」

 ため息が多いな。幸せが逃げる。気をつけろ。と私が説教をすると、こちらを変な目で見て、何事もなかったかのようにホムンクルスに目を向ける。妹。

 「喋れないのか?」

 無言。無音。

 「失敗したんじゃないか?」

 そんな馬鹿な。この私が失敗とは。面白いことを言う。しかし、妹の予想。仕方がない。念のため、確認してやろう。と考え。観察。目が合う。見つめ合う。するとこちらに覚束ない足取りで近づいてくる。ホムンクルス。

 そして

 「あいりす……」

 見たか。愚妹。と言葉にはせず、見る。

 何だ。その眼は。

 

 アリス。そう名付けた。エヴァンジェリンにはまた変な目で見られた。何故だ。アリスの容姿はエヴァンジェリンと同じくらいの身長に、金髪。眠そうというか覇気がない整った顔。少し暗めの青い目。それはいい。

 問題はほとんど話さない、動かないということだ。話さない分に関してはまだいい。しかし、動かないのは、困る。非常に困る。自分の興味があるらしいものを見つけると、観察。近づき、また観察。繰り返す。何がいけなかったのか。いや。そもそもホムンクルスというのがこういうものという考え方もあるか。本には書いていなかったが。教育すればもっとまともになる可能性もあるか。よし。

 「妹よ。」

 「姉よ。魔法世界に行って、宝石を探してこい」

 断る。

 

 結局。エヴァンジェリンは魔法世界に行った。一人で。アリスの教育を自分がしようと思っていたようだったが。宝石の捜索と同時には出来ないと判断し、そちらを優先したようだ。今。城には、二人。ふむ。

 「アリス。」

 こちらを見る。自分の名前は認識しているのか。

 「魔法を教えてやろう。来い。」

 お前には働いてもらわねば。雑務が出来ないのなら。戦え。私の代わりに。

 ゆっくりと後をついてくる。アリス。




誰だ。アリスって。

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