城の中の吸血姫   作:ノスタルジー

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十六話目。

最近ギャグ風味。
何故だ。シリアス路線だったのに。

あと活動報告、全然書いていない。
もういいか。

この土、日は更新不可です。多分。
月はわかりません。



城と吸血鬼

 「貴様ら!吸血鬼か!!」

 三分の二は。三分の一はホムンクルスだ。教えてはやらんが。

 「まぁ、ばれてしまってはしょうがない。確かに。私たちは吸血鬼だ。よくわかったな。」

 「うん。よくわかった」

 「……それはボケているのか?」

 アリス。お前は反省しろ。

 「くっ……吸血鬼」

 「こんな悪の代名詞に捕まるとは……」

 お前らもうるさい。私は静寂が好きなのだ。しかも、悪の代名詞とは。初対面の人間、ではなく吸血鬼に向かって。失礼な奴らだ。

 「悪の代名詞とは何だ?吸血鬼のことをそう言っているのだろう?」

 横にいたエヴァンジェリンが尋ねる。

 「ふん。そんなことも知らんとは、さすが人の皮を被った化け物どもだ!」

 「吸血鬼の伝説は、魔法世界に多々あるが、それらは全て吸血鬼の悪事についてのものばかり!!」

 「我ら正義を掲げる魔法使いにとっては吸血鬼は排除すべき悪!!」

 セリフ合わせでもしていたのか。いいテンポで話す、魔法使いども。そして、また吸血鬼の伝説か。あの変態、情報を隠したか。意図的か偶然か。どちらにせよ。死ね。まぁいい。変態のことは後。保留。吸血鬼の伝説。先代か先々代か、それとも他の吸血鬼か。

 「伝説では吸血鬼はどんな容姿だ。」

 「な」

 何故、絶句。早く答えろ。

 「伝説では吸血鬼はどんな容姿だ。と聞いている。」

 「…多くは美女。ローブを着た男や子どもという説もあるが」

 戸惑いながらも答える。しかし。情報が多い。変態が話したのは、少女だったか。少女に美女に男に子ども。いや、待て。ローブを着た男は変態のことか。もしかして。あいつがそんなへまをやらかすとは思えんが。しかも、伝説。伝説。あり得ん。死ね。

 「どんな悪事を働いたんだ?」

 エヴァンジェリンもこの話題に興味があるらしい。

 「偉大な魔法使いたちを殺し、村や町を滅ぼし、森を焼野原にし、悪行の限りを尽くした!」

 と。言われているだけだろう。所詮伝説。事実か不明。

 「で、悪か」

 エヴァンジェリンも鼻で笑う。馬鹿にしているな。しかも、馬鹿だと思っているな。まぁ確かに、おめでたい。

 「そうだ!!」

 ふむ。そろそろこいつらの相手も面倒になってきた。というより。うざい。もういいか。

 「アリス。」

 寝るな。小首を傾げ、こちらに半開きの目を向ける。

 「ここで見張りをしていろ。応援とやらが来たら、こいつらを人質にとって時間稼ぎをしておけ。向こうが攻撃してきたら、戦闘。」

 わかったか。

 「…うん」

 少し間があったが。大丈夫か。本当に。いや、大丈夫じゃないだろう。だが、仕方ない。こいつを連れて行っても使えない。まだ見張りの方がまし。と自分を無理に説得。援軍の到着が遅れるのを願う。心から。よし。

 「エヴァンジェリン。」

 「ん?どうした?」

 「荷物をまとめろ。城を出る。」

 「は?……いや、ちょっと待て!!城を出るだと!?出てどうするんだ!?」

 ふむ。どうするか。

 「旅でもするか。」

 「おいー!今思いついただろう!!適当すぎるわーーー!!」

 

  本や物置にあった荷物を別荘に詰め込む。書庫の検索魔法は便利だったので魔法球ごと入れたかったが。魔法球は書庫から出せなかった。諦めた。時間もない。仕方ない。まだ増援は来てはいないが、来てからでは遅い。アリスはあまり期待できない。私は戦いたくない。面倒が起る前に逃げるに限る。

 「はぁ」

 さっきからため息ばかりの次女。何だ。

 「どうした。妹よ。」

 「何でもないわ!いいからさっさと手を動かせ!!さっきから私しか動いてないではないか!!」

 うるさい愚妹だ。仕方ない。そこまで言うなら働いてやろう。と口にするとまた怒り出す、エヴァンジェリン。

 

 目ぼしいものを魔法球に入れた後。先代の結界をエヴァンジェリンと二人で強化。結界の外で待つアリスを迎えに行く。城と森の間、少し開けた場所。捕縛魔法で捕まった惨めな魔法使いどもと一人立っている眠そうな、少女。

 「アリス。何かあったか。」

 小さな頭を横に振る。

 「そうか。では行くぞ。」

 「?うん」

 どこに行くのか、という顔をしている。無表情に変化はないため、おそらくだが。

 「待て!貴様ら!!どこに行く!!」

 「魔法世界に逃げる。ではな。」

 「ではな」

 「おい!待て!!」

 うるさい。誰が待つのか。三人で歩き始める。声が後ろから聞こえる。吸血鬼の聴覚が煩わしいと思ったのは、初めてだ。

 

 「で?」

 で。城の後方に回った時。そんな言葉が聞こえた。

 「これから本当に魔法世界に行くのか?」

 まさか。

 「旧世界を回る。」

 「そんなことだろうとは思っていたが……呼吸するように嘘を吐くな」

 これが私だ。そんなことより、旧世界といってもどこに行くか。そう考えていると。

 「…特に行くところがないなら京都に行きたいのだが」

 エヴァンジェリンがリクエスト。趣味全開。京都か。京都。もうほとんど忘れた原作。そこに京都が出てくることは覚えているが。今行っても大丈夫か。何かなかったか。ふむ。全くわからん。エヴァンジェリンに原作について話してはいないし、どこかにメモでもしておけばよかったか。と後悔。まぁいい。私は今と未来に生きる。戦力的に危険はそうそうないだろう。アリスが不安要素だが。単純戦闘担当しかない。後はエヴァンジェリンがなんとかするだろう。よし。結論。

 「いいだろう。京都に行くか。」

 「本当か!?」

 嬉しそうな、幼女。そう言われると。

 「いや。嘘だ。」

 「貴様はいい加減にしろーー!!」

 貴様、だと。もうダメだ。この、愚妹。

 

 金髪の少女だか幼女だかが三人で歩いていれば、それは目立つこと間違いない。ましてやここは日本。今は戦国か江戸くらい。そんな時代にはあり得ない光景。しかし。魔法を使えばそれも当たり前になる。認識を狂わせる。不自然を自然に。

 始祖と真祖と人形。向かうは、京都。

 


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