城の中の吸血姫   作:ノスタルジー

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十八話目。更新が予定より遅くなったのには理由が。

PCからハーメルンに繋げない。
タブレット(wifi)からも。
IPアドレスがブロックされてるのか。
携帯で書くのが面倒でした。



京の吸血鬼

 百年も経てば。変わる。街並みも、人も。私たちも。弐百年を超えれば言わずもがな。

「アイリス殿はどう思われますか?」

 一人の爺が尋ねる。その声と共に周りの人間がこちらに、注目。

「ふむ。現状。むこうの方は強大なバックがいる。こちらにはいない。ならあまり刺激すべきではないと思うが。」

「アイリス殿は譲歩されると」

「私は日和見だ。お前たちも知っているだろう。」

「お戯れを」

 少しの笑いが部屋に飛ぶ。

「顧問もこう言ってはる。やはりそっちを選ぶべきちゃうか?」

「アイリス殿には申し訳ないですが、私は反対です。一度譲歩してはそこから付け込まれる可能性もある」

「確かにそうだな。しかし完全に突っぱねることも難しい」

「麻帆良に学園、というより支部が建つのはもう決定事項やろ?向こうが仲ようしてんかって言ってんねんからそれでええんちゃうんか?」

「そんな甘い話ではありまへん。うちらとむこうさんは完全に考え方の違う組織。なら安易に歩み寄るのは危険です。それに顧問も言ってはった通り、力関係で負けてるというのも問題でしょう」

「譲歩しても突っぱねても力で押されておしまいというのもあり得る」

 沈黙。

「はぁ…面倒なことになったな」

「ほんまや!黙って向こうに引っこんどきゃええのに!」

「……今日はひとまずこれまでにしよう。明日また同じ時間に集合。各々考えをまとめてくるように」

 会議の終わりを告げる長の声。それを耳に入れた後。すぐに立ち上がり、襖に向かう。自動ドアのように勝手に開く。部屋を出る。

和風な部屋に似合わない、美しい金髪を結い上げた少女が去った部屋。さらに数人が続いて出る。そして、そこには数人の男女が残っていた。

「顧問は何を考えてるか分かりまへんなぁ。相変わらず」

少し笑いを堪えた風に一人の女が言う。

「あの方は昔から変わらんだろう」

それに釣られたかのように笑いを含んだ低い声。

「儂らが子どもの時からあの調子だ。いつも淡々とした口調と無表情だな」

彼らのなかで一番老いた様子の男が話す。

「…それうちの爺さんも同じこと言っとたで?」

一番若いであろう男が呟く。

「まぁ何にせよ。あの方たちが私たちに協力してくださるのは心強いことこの上ない」

「確かに。今の陰陽術やら神鳴流やらは顧問たちが改良したものやからな。あん人らがおらんかったら俺らは今の数段は下やで」

「魔法の知識もある。仮想敵の情報が事前に危険なく手に入ったというのは大きい」

「問題のある人らであるのは間違いないけどなぁ」

「それで苦労しているのは主にエヴァンジェリン殿だろう。あの方は残り二人に比べて随分まともだ」

「末妹も無口、無表情やからなぁ。三人ともかわええけど」

「…そういや俺子どもん時、アリス様に焼かれかけたわ」

「あぁ。儂はエヴァンジェリン殿に凍らされかけたことがあったな」

「…結局あん人もまともちゃうやん」

自室に戻る。昔と比べて豪華になった部屋。入ると、金色二つ。妹二人。

「戻ったか。どうだった?」

「とりあえずは、保留だ。」

「何だ。お前の後回し根性が根付いているな」

口の端を上げて、話すエヴァンジェリン。

「お前はどう思う。」

「私か?」

アリスに聞くはずがない。当たり前。

「まぁそうだな…東が融和を望んでいるのは確かだろう。西は東に比べて小規模であることに間違いはないが、むこうとしては戦いたくはないだろうな。西は実戦派が多いし、今は学園を建てようという大事な時期だ。かといって突っぱねて全く関係を持たんというのは無理だろう。例え今は出来てもこれからはな。ここは多少の譲歩は必要とはいえ、融和を受け入れるべきじゃないか?」

それに融和を受け入れたからといって大きく何かが変わるというわけでもないだろう。と付け加え、エヴァンジェリンは口を閉じた。

麻帆良に魔法世界の魔法使いが拠点を置きたがっている。これは前々からわかっていた。現状。その計画が実際に動き、麻帆良一帯の土地を奴らが買収。学園都市を作る準備が整い始めている。その準備の一環として、呪術協会に向こうから使者が来た。そして、言った。「日本にはお前らが昔からいると聞いたから挨拶しに来た。これからよろしく。仲良くしてね」。要約。仲良くするか。しないか。その判断で呪術協会は揺れている。

協会が恐れるのは向こうの力。麻帆良のバックは魔法世界の二大国の一つ。組織VS国。この構図。かといって懐柔されるのもお断り。ならば少しくらいは仲良くするが、距離は置いておこう。というのが主流。私たち顧問も主流派。事なかれ主義。

顧問というのは私たちが百年ほど前から言われ始めた役職名。魔法の研究だけではなく、陰陽術の改良にまで手を出していたらこう呼ばれ始めた。エヴァンジェリンが神鳴流に稽古をつけているというのもあるだろう。上層部の連中を子どもの頃から面倒見ていたのも。顧問。今ではなかなかの発言権を持つ。

京都に足を踏み入れ、結局。京都にずっといた。時には旧世界を旅行。しかし、あくまで拠点は京都。人に必要とされている。住めば都。その中で街や人の移り変わりを見た。自身が不老不死であることを強く、認識。周りとの差異がそれを強制。城にいた頃はそこまで実感がなかった。他の二人も不老不死だから。三人しかいない城だったから。

自身は不老不死。周りの人間は死ぬ。それに対して、何も感じなかった。と思う。死んでいった奴らに、特別の愛着や執着がなかった。と思う。だが、もしそんな存在がいたら。そんな存在が生まれたら。未来のことはわからない。その時。私はどうなるのか。どうするのか。

いつも私の隣には。金色二つ。

神鳴流道場。そこには数十人の剣士が腰を下ろし、道場の中心を皆が注視していた。金髪の少女と黒髪の青年。耳に響く金属音を鳴らしながら、体を動かす二人。青年は必死の形相で端正な顔を歪め、少女は涼しい顔。

「―――岩斬剣!!」

青年が放つ、鋭い煌めき。一閃。

「ふっ」

小さく笑って持っていた小太刀でその剣を受け止める少女。

「瞬動の入りが遅い。技の出もだ」

そう言って素早く剣士の懐に入り込み、鳩尾に小さな拳を、刺す。その鈍痛に顔をゆがめ、体勢を前方に傾けた剣士。その体の移動を利用して、少女は剣士を地面に密着させた。

「それまで!!」

床に転がった剣士のうめき声をかき消すように、女の高く大きい声が道場に響く。

「要修行だ」

少女は下に向けて、厳しい声を発する。そして、今日は終わりだと言い残し、道場を出る。その小さな背中には大音量の感謝の言葉が覆いかぶさった。しかし。少女は何事もなかったかのように、歩を進めた。

「報告!敵対組織の残党が協会の支部に攻撃を開始!!」

はっきりとした大きな声。目上の人間が集まる部屋に入り、状況報告をする青年。その姿と声を部屋にいた全員が確認。

「来たか。こちらと相手の戦力は?」

その中の一人が青年に尋ねる。

「はっ!攻撃を受けた第十五支部には陰陽師五名、神鳴流二名、非戦闘員六名!適性戦力は現在確認中ですが、少なくとも支部の戦力では耐えきれない数です!!」

「第十五支部は小さいとこやな。わざわざそこを狙ってきたということはそんな大層な戦力ではないとは思うけど」

「生け捕りにして人質にでもするつもりか?」

「可能性は高いなぁ」

「十年前の奴らやろ?確かそん時、俺は前線出とったけど、大したことなかったわ。人質作戦はあり得るやろなぁ」

非常事態にも関わらず、安穏とした態度。それを見た連絡係の青年は驚き、堪らず声を上げる。

「あなた方は何故そうも落ち着いていられるのですか!?まさか彼らを見捨てる御つもりですか!?」

上の人間に対して声を張り上げた青年。しかし、彼らは動じず。諭すように一人が言葉を発す。

「落ち着けや。お前が入ってきて連絡遣したときに顧問んとこが動いてはる」

それに続けて、声。

「そういうこと。もううちらが出る幕はあらへん」

「今頃戦闘始まってんちゃうか?」

そして青年は意外なその答えに、言葉を止める。あなた方と呼ばれた者たちも満足した様子で、口を閉じた。その時。

「やり過ぎだけは止めて欲しいなぁ…アリスはん」

座っていた女の小さな声が部屋に響いた。

部屋には金色の少女も、黙って座っていた。

京都上空。第十五支部と呼ばれる小さな建物の上。小さな影が飛んでいた。

「ケケケ。ヒサシブリノセントウダナ」

「うん」

美しい白い羽を背中に生やし、腕の中に人形を抱く少女。火と煙が少女のその赤い目の中に映っている。

「ヨシ。オロセ。アト、ヤケ」

「うん」

腕の中の人形が言葉を発していることに眉を少しも動かさず、少女は胸の前で組んでいた腕を広げ、人形を地面に落下させる。そして、その口を開く。

「紅き焔―重複―八―」

少女の目の前に巨大な火球。それが八の数に分かれ、少女の眼下を焼く。炎が建物の周りを燃やす。そして、その炎に黒い影が数人飲み込まれる。

「ケケケ」

その光景を楽しそうに眺め、地面に降りた人形は炎から逃れた影に襲い掛かる。鋭いナイフで自身の倍以上の大きさの影を斬る。その上からは次々と赤が降り注ぐ。その光景に人形は。

「ヤベェ。ヤリスギダ。アノバカ」

笑いを止め、独り言つ。

 

「またやらかしおって!!この馬鹿がー!!」

容姿の可愛らしさに似合わぬ怒鳴り声。声の主、エヴァンジェリンの前には正座をするアリス。無表情に反省の色など見えない。

「チャチャゼロ!この馬鹿がやりすぎないように目を光らせておけと言っただろうが!!」

エヴァンジェリンの怒号。対し珍しく謝罪の言葉を口にするキリングドール、チャチャゼロ。正座のまま船を漕ぎ始めるアリス。アリスに成長は全く見られない。いや。戦闘面では成長していると言えるが。それ以外は、無能。色々詰め込みすぎたのが原因。決してベースは悪くない。と確信している私に、物言いたげなエヴァンジェリン。何だ。愚妹。

敵対組織の残党狩りを命じられたアリス。エヴァンジェリンはその為のサポートに回り、戦闘による被害の拡大を防ぐ。はずだったが。アリスが火の魔法を馬鹿の一つ覚えのように撃ちまくり、支部の周りは全焼。ご丁寧に支部は残したが。エヴァンジェリンの手が回らず、被害重度。説教。ちなみにアリスにサポート役は出来ない。やはり。

「寝るなー!!」

もう諦めろ。エヴァンジェリン。

京での日常。

 




PCで繋がるようになってくれ。
やりにくい。

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