城の中の吸血姫   作:ノスタルジー

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二十三話目。
最近更新ペースが遅いです。それくらいしか取り柄がないのに。すみません。

展開の速さはいつものことで。


情報と吸血鬼

 「対価をよこせ。」

 「ははは…さっそくですか…」

 京に着くと同時。詠春を尋ねた。

 「依頼は完遂した。」

 ならば。対価をもらうのは当然のこと。

 「…やったのはアリスだがな」

 うるさいぞ。エヴァンジェリン。

 「…始祖について、ですね」

 「ああ。」

 始祖についての情報はほとんどない。先代の持っていた情報のみだ。魔法世界に行きにくい私たちは情報を集めることが困難。この世界に情報はまずないだろう。

 「実は……お二人に謝らなければいけないことがあります」

 「何だ。」

 神妙な面持ちで話す詠春。何だ。まさかとは思うが。嘘だったとでも言うつもりか。それは。殺すか。いくら温厚な私でも考えないこともない。

 「始祖についての情報を、私は持っていません」

 ふむ。

 「私は、とは。」

 誰かが持っているということか。

 「ええ。アルが」

 死ね。変態。

 

 

 「村人を助けるのは紅き翼や近衛右門らの総意だった、ということか?」

 紅き翼、近衛右門ら。ナギに縁のあった者たち。

 「はい…そして、あなた方に動いていただくための札が―」

「―始祖についての情報か…」

 いいように使いよって。まぁいい。対価さえ払えば許してやろう。

 「その情報はアルが話すということになっています。というより、アル以外は知りません」

 始祖は造られた存在かもしれない。と昔は言っていたことを思い出す。この600年で何か情報を手に入れたということか。あの変態はたしかに有能だ。魔法世界で何かを知ったということもありうる。600年前に情報を意図的に隠していたという可能性もあるが。

 「……つまり、情報を得たければ、奴に会えと?」

 嫌悪感あふれる声でそう言うエヴァンジェリン。

 「そうなります」

 「……さて、神鳴流に稽古でも付けにいくか…」

 おい。

 「待て。」

 「あべ!!」

 顔面から地面へ倒れこむエヴァンジェリン。なるほど。歩き出そうとするときに背後から両足を同時に掴むと、人はそうなるのか。

 「何をするかー!!」

 「妹よ。お使いを頼みたいのだが。」

 「断る!!」

 「駄賃をやろう。」

 「いらん!!」

 わがままな愚妹だ。仕方ない。

 「エヴァンジェリン。」

 「…何だ」

 「共に行かなければ情報は教えん。」

 ならば。道連れだ。

 

 

 

 自室。

 「…本当に行くのか?」

 「私とて行きたくはない。」

 誰が好んであの変態に会いたいと思うのか。それに。

 「麻帆良だぞ?西洋魔法使いのホームだ。わかっているのか?」

 麻帆良。吸血鬼は魔法世界では目の敵にされている。何故かは昔変態が言っていたな。大魔法使いを殺したとかいう信憑性の薄い伝説のせいだったか。もし私たちの正体が発覚すれば、面倒な事態になること間違いない。だが。

 「始祖について知りたくはないのか。」

 「それは…確かに私も興味はある」

 始祖について。これは単純な興味だ。この600年、それを知らなくても全く問題はなかった。だが、知りたい。ただ、知りたい。

 「…奴がこちらに来ればいいじゃないか」

 変態は現在、麻帆良から動けないらしい。

 「仕方ない。創造主とかいうのの封印に忙しいのだろう。」

 創造主。原作のラスボスか。どんな奴だったか。全く覚えてないが。いや、そもそも書いてあったか。いや、待て。そもそも原作のラスボスが何故封印されているのか。ネギと戦うのだろう。なら封印が解かれるのか。大丈夫か、麻帆良。いや、おそらく大丈夫だ。原作開始はおそらくあと数年後。麻帆良が壊滅したりすることはあるまい。原作開始までに麻帆良から撤退し、ブラジルにでも移住しよう。100年ほど。よし。

 そう英断を下した私の耳にエヴァンジェリンのつぶやきが入ってきた。

 「ふん……手間をかけさせよって…」

 確かに手間だ。

 「まんまと嵌められたな。」

 詠春に。どうせ変態の悪知恵だろうが。

 「…少し楽しそうだな」

 「誰がだ。」

 「お前がだ」

 「なに。」

 楽しそうだと。私が、か。

 「何だ?自分ではわかってなかったのか?」

 「ふむ。そうだな。何かに期待しているのかもしれんな。」

 「期待、ね…」

 「まぁ何でもいい。詠春に近衛右門に話をつけるように言っておけ。」

 トップが隠蔽に加担してくれれば、非常に動きやすくなる。

 「はぁ?何で私が……」

 ぶつぶつ言いながら部屋を去っていくエヴァンジェリン。

 そういえばアリスは、どこへ行ったのか。ガキ共の面倒でも見ているのか。まぁいい。

 一人、残った部屋。

 「ふむ。麻帆良、始祖、創造主か。」

 ああ。確かに。楽しみにはしているようだ。

 

 

 「結界だな。」

 目の前には巨大な結界。起点は世界樹のようだ。

 「話に聞いていた通りだな」

 近衛右門の報告通り。手をかざして、結界を解析する。

 「侵入者感知のものはフリーズしてある。」

 手筈通り。

 「魔の者の減衰もだ。」

 これも手筈通り。

 「くくく…トップ自らが吸血鬼を招き入れるとは」

 愉快そうに笑うエヴァンジェリン。

 「では行くぞ。」

 麻帆良に足を踏み入れた。

 

 

 「ようこそ麻帆良へ。アイリス殿、エヴァンジェリン殿、アリス殿。お久しぶりですな」

 麻帆良学園の学園長室。認識疎外の魔法をかけ、堂々と侵入した私たちを迎えたのは爺。

「ああ。久しいな、近衛右門。お前を見ると時間の恐ろしさを実感する。」

 昔は端正な顔立ちをしていたんだが。ただの爺だな。そして、変な頭だな。

 「ふぉふぉふぉ。老いはともかく、この頭はあなたの実験のせいですぞ?」

 そう言って斜め後ろに長く伸びた頭を摩る近衛右門。

 「そうだったか。覚えていない。」

 「ふぉふぉふぉ。相変わらずのご様子で、安心しましたな」

 「吸血鬼だからな。」

 「…世間話はいいが、本題を忘れるなよ」

 「ふむ。アルビレオはどうした。」

 姿が見えんが。

 「彼は図書館島の地下にいます。普段はそこから出で来れないのでのぉ」

 「封印か。」

 「ええ…」

 「図書館島とやらに行くか。」

 聞けば超巨大図書館らしい。知的好奇心がくすぐられる。

「ではこれを」

 近衛右門が差し出したのは三枚のカード。

 「何だ。」

 「図書館島の地下へ行くための通行証です」

 「ふむ。」

 通行証か。少し物々しいな。

 「ふぉふぉふぉ。地下には魔法図書があるのですよ。ですので一般人が入れないようにということで…あと、図書館島の本は自由に読んでいただいても構いません」

 「ほう。」

 魔法図書が読み放題か。

 「では行くか。」

 近衛右門に用はない。とっとと変態に会わねば。

 「お待ちくだされ」

 踵を返し、部屋を出ようとする私たちに後ろから声がかかった。

 「何だ。」

 「ネギ君らを救ってくださったこと、感謝します」

 「組織のトップが軽々しく頭を下げるものではない。」

 「ふぉふぉふぉ。これは個人的なものですので」

 「ふむ。そうか。」

 

 ドアを開け、部屋から出る。

 「どうも面倒な弟子が多くなったな。」

 「誰のせいだ…」

 「さぁな。」

 知らん。

 




ぬらりひょんの敬語ってどんなのだろうか。

原作にありましたかね。

わかりません。


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