城の中の吸血姫   作:ノスタルジー

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六話目。fateが出るかは次に持越し。
どんどん引き延ばします。

そういえばいつの間にかお気に入りが100件を超えていました。恐縮です。

今回、次回は今度こそ「彼」のお話です。
前はどっかで嘘つきました。
すいません。


そうだな。お前は吸血鬼だ。
彼と吸血鬼


 手紙。誰から、誰への。神から、私へのか。机に向かう。その足取りは廊下を歩く時より、重い。

 

 『君へ。』

 そう書かれただけの白い手紙。そっと本を、手に取る。深い緑色のカバーに幾何学模様と読めない文字。タイトルがない。何の本かはわからない。開けてみるか。開けた瞬間光って本の中に、とか。ないか。手紙と本のワンセット。どちらを先に調べるべきか。「君へ」、とあるのだ。私か、「君」は。不明。よし。手紙だ。自身の勘を信じ、本を置き、手紙を手に。「君へ」の文字は、黒いインクで書かれていた。

 

 『この手紙を読んでいる君はおそらく吸血鬼だ。突然にすまないね。しかし事実だと思うよ。君は、始祖の吸血鬼という何と言うべきか、格好よく言って始まりの吸血鬼といったところかな。そんな存在なんだ。けど何故そんなことがわかるのかと君は疑問を抱いているかもしれない。簡単に説明すれば、この城には私特製の結界を、手紙には封印をかけてあるんだ。ともに始祖以外をブロックするようなものさ。世界樹の魔力を使った結界は私自身が考えうる最も強固な、とっておきの結界だ。この手紙の封印も。そうやすやすと解かれたりしないという自負がある。吸血鬼としてのプライドもね。ならば、この手紙を読んでる君は始祖の吸血鬼というわけだ。そして気付いたと思うけど、私も吸血鬼なんだ。それも君と同じ始祖。かれこれ1000年は生きているよ。信じられないかい。まぁ今信じられなくても10年もすれば君も年を取らないことに気付くだろうけど。

 

 さて、まず君はこの城の玉座で目が覚めた。正解だろう。そしてその体に「成っていた」。これも正解。前世の記憶がある。正解。力が強いことや不思議な力を使えることには気付いているかな。これはさすがに私にもわからないね。試してみてくれ。一度この手紙を置いて、片手を上に掲げて、こう言うんだ。プラクテ・ビギ・ナル“火よ灯れ”。焦っているかな。ごめんよ。けど、大事なことなんだよ。君のためにも。それは魔法。おそらく前世では見たことがなかったんじゃないかな。マンガやアニメ以外ではね。また君は疑問を持ったかな。

 

 いや、少し遠回しだね。ごめんよ。やっぱりはっきり言うことにする。ずばり今まで私が書いたことは、全て私も経験したことなんだ。こんな手紙を読むこともね。私は私の先代が書いた手紙をここで読んだ。君は目覚めた後どうしたのかな。私はパニックになって、城を走りまわったんだけど。今思うと恥ずかしいな。ともあれ、そうしているときにこの部屋とこの手紙を見つけたんだ。本はなかったよ。それは私のオリジナルさ。ちゃんと後でその本についても話すから、少し待ってほしい。

 

 端的に言って、私と君は同じ意味の分からない、不思議な経験をしているんだ。そして私は始祖だった。なら君もそうだろうということさ。結界や封印とあわせて、完璧な理論だろう。理解してくれたかい。納得もできているかな。君は始祖の吸血鬼として生まれ変わったんだ。何故自分がと思うだろうね。実際、私もそう思った。これも同じだね。先輩として、後輩である君に答えを教えてあげたいところなんだけど、すまない。こればかりは私にもわからないんだ。

 

 お詫びと言っては何だが、私の知る限りの始祖の情報等について、この手紙とともにあった本に書き記してある。後で確認して欲しい。そしてこの城についてだが、ここは私の先代が建てたものでね。彼女は君にとっては先々代にあたる始祖だ。始祖は代替わりの際に所有物を引き継ぐんだよ。だからこの城はもう君のものだ。よかったね。けれど、先々代がこの城をくれたのなら、お前は何をくれるんだと君は思っているのかな。落ち着きたまえ。吸血鬼というは優雅であらねば、格好悪いよ。

 

 もちろん私からのプレゼントもある。その本だけじゃない。私から君には、図書館をあげよう。この城の玉座の間の下にある。元々はなかったんだが、改造して私が作ったんだ。あそこには私の書いた子どもたちがたくさんいる。大切にしてやってほしい。頼むよ後輩。

 

 私がこの手紙を書いたのは先代の真似事さ。伝統というやつかな。私はまだ二代目だけどね。私は初代のくれた手紙に救われた。あのままでは発狂して死んでしまいそうだったんだんだ。いや、そう簡単には死なないんだけどね。私たち始祖は。死ぬとしたら自殺ぐらいさ。初代は自殺した。退屈だから死ぬんだと。変わり者だったんだろうね、彼女。君も気をつけるんだよ。

 

 で、一応ここからが本題なんだ。何だろうかと戦々恐々なのかい。ダメダメ。もっと優雅に。大丈夫さ。そんなたいそうなものじゃないよ。安心するといい。まぁ自伝のようなものかな。君は気になっていないかい。

 

 私が何故死んだのか。』

 

 一枚目。黒いインクで書かれた文。

 二枚目。黒いインクで書かれた文。

 比べる。どちらの黒が濃いのだろうか。




「彼」は主人公じゃないですよ。
主人公は彼女です。

また短めです。

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