悪魔城ドラキュラ Dimension of 1999   作:41

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ハマー

 

 ――その古びたメモ帳を見つけたのは全くの偶然だった。急な任務変更で日本行きが決まり、振って湧いたような短い休暇で久し振りに実家に帰った時だ。

 

 何の気なしに親父の………といっても俺がお袋の腹の中にいる時に死んじまったらしいから写真でしか見た事は無かったが――― とにかく死んだ親父の残した本やスクラップをパラパラとめくっていた時、古い手帳が足元に落っこちた。表紙を見るとどうも親父が死んだ頃、二十代の時に書いた物のようだ。興味が湧いた俺は迷わずページをめくっていた。

 

 

 ……内容は馬鹿馬鹿しいにも程があった。骸骨やゾンビへの対処法だの、よくわからねえ地図やトラップの説明だの、……俺は正直呆れかえった。親父は夢想家か何かか?それとも小説家でも目指してたのか?軍の作戦で死んだというのは嘘で、本当は叶いもしない夢を追っかけて俺たちを捨てたんじゃないか?その時はそう思っていた。

 

 

 だが……結論から言えば親父は嘘つきなどでは無かった。日本のとある神社の視察と聞かされていた俺たちの部隊は、気付いたときには見も知らぬ古城に迷い込んでいた。そしてその城の中を彷徨い続けるうち、俺は理解した。あのメモに書かれた事は紛れもない事実なのだと……

 

 

 

 

 

 

「どんな人生を選んでも良い、ただし軍人にだけはなってはいけない」

 

 それがお袋の口癖だった。だが結局俺は死んだ親父と同じ道を進むことになった。

 

 別に見知らぬ親父に憧れて……とか、母子家庭で大学に行く金が無くて……とかいった訳じゃない。お袋は教師だったし、遺族年金の他に出所不明の金が毎月振り込まれていたおかげで、親子二人が暮らしていくには十分すぎるほど裕福だった。……単に俺の頭の出来があまりよろしくなかっただけだ。

 

 

 ハイスクールを卒業した後、親のすねをかじる訳にもいかないんで、何気なく受けた軍の採用試験に幸か不幸か合格。晴れて一兵士としての人生が始まった。

 

 もっとも、軍人になる事が決まった時は割とマジで修羅場だった。普段どちらかといえば温厚で物静かなお袋が泣くわ、喚くわ、暴れるわ、家のリビングはメチャクチャ、プレゼントした日本製の家電もぶっ壊れた。なだめるのに三日、まともに口を聞いてもらえるまで一週間かかった。親孝行のつもりだったが全くの逆効果だった。

 

 

 その時になってお袋は初めて親父の事を真剣に話してくれた。今まで聞いても碌に話してくれなかったんでどんなロクデナシかと思っていたが実際は真逆。真面目で誠実、温厚と、俺とは正反対のできた人間だったようだ。

 

 お袋が言うにはとある任務で夫と兄貴、つまり俺からすれば親父と叔父さんの両方を同時に失くしてしまったらしい。おまけに機密だとかで二人の遺体はおろか一欠けらの遺品も、どうやって死んだかの説明も軍からは一切無く、そのせいでお袋はすっかり軍隊不信になってしまったという。

 

 きっと仲の良い夫婦だったんだろう。だからこそ事実を受け入れる事ができず、俺に親父の事を話したがらなかったのかもしれない……

 

 今まで押さえていた感情を爆発させて多少踏ん切りがついたのか、お袋はしぶしぶながらも俺の軍隊入りを認めてくれた。

 

 

 

 

 

 

 仲間が次から次へと倒れていく中、俺だけはどうにかうまくやり過ごしていた。地図こそ大分変わっていたが、バケモノ共の対処の仕方や、トラップの見分け方など、親父の残したメモが俺を救ってくれた。

 直接会った事も無く、今までさして気にも留めた事は無かったが、今この時だけは死んだ親父に感謝した。だが少しの疑問が頭をよぎる。お袋は軍からは1つの遺品ももらえなかったと言っていた。ならこのメモは一体誰が届けたのだろうか?しかし思考がまとまる前に新手のモンスターの襲撃を受け、結局うやむやのまま俺は再び戦いに巻き込まれていった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……度重なる罠と戦闘の果て、気付けば生き残ったのは俺1人。俺は命からがら、安全と思われる地下の小部屋まで逃げる事に成功していた。

 

「………………」

 

 どうにか落ち着いて物事を考えられる状況になった事で、今まで忘れていた怒りが沸々とこみ上げてきた。長い軍隊生活で薄々感じていたが、作戦の秘匿にまるで使い捨てのモルモットのような扱い……それが軍と言ってしまえばそれまでだが、今回の事はさすがに腹に据えかねる。

 きっと親父も今の俺と同じように碌に内容も知らされずここに放り込まれたのだろう………

そして…………死んだ。

 

 

 

 

 

 

「軍人なんぞヤメだッ!!」

 

 

 人っ子一人いない部屋の中で一人叫ぶ。いい加減上の連中が信用できなくなった。愛国心?忠誠心?何もかもが白々しく、バカらしくなっちまった。親父の二の舞になんぞなってたまるか!大体なりたくてなった職でもねえ。どうせ出世も見込めねえし、丁度飽きてきたところだ。いい機会だ辞めてやる!

 そう決意した途端こんな陰気臭い城の中だというのに、まるで青々とした爽やかな高原にでもいるかのように心が晴ればれとしてきた。大声で好きな歌でも歌いたい気分だ。

 

 

「…………」

 

「!」

 

 その時だった。ふと背後に気配を感じふりむくと、子供が一人、俺を呆然と見上げながらつっ立ってやがる。ひょろっちい成りだが妙に雰囲気のある小僧だ。

 

 

「何だ子供か……お前こんな所で何やってんだ?」

 

「子供?失礼だぜオッサン、アンタこそ此処で何してるんだ」

 

 

 生意気な小僧だ。だが不思議と嫌な感じはしない。

 

 

「おっと、そりゃ悪かったな。俺はハマー……ハマー・ダナスティだ。軍の命令でここに来た」

 

 

「俺は……来須蒼真(くるすそうま)だ」

 

 

 この後長い腐れ縁で結ばれる不思議な友人との、それが始めての出会いだった……

 

 

 

 





実際はハマーはグラントの子孫だとは公式に明言はされていません。
年齢も暁月のメヌエット(2035年)の時点で34歳らしく、妊娠期間を考えてもラングの子供である可能性は低いです。

しかし悪魔城伝説をモチーフにした蒼月の十字架の「ユリウスモード」においてグラントのポジションが空いており、かつ味方側のキャラでハマーだけ余っている事から、ファンの間で囁かれている「ハマーはグラントの子孫」説を採用させて頂きました。

この二次小説のハマーは公式の年齢よりも少しだけ年を取っているという事でどうかお願いします。

 
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