悪魔城ドラキュラ Dimension of 1999   作:41

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今回の話は原作ゲーム「暁月の円舞曲」の冒頭を独自のアレンジを加え小説化した物です。
そのため一部原作準拠のセリフ、ネタバレを含みます。(禁止事項「原作の大幅なコピー」防止の為、文章の細部は変えてあります)

以上の事柄をご理解の上お読みください。



来須蒼真

 

「1999年以来、実に36年ぶりの大規模な怪奇日食が、なんとここ、日本で観測されます!」

 

 携帯ツールに流れるニュース動画、女性キャスターが甲高い声で実況する。

2035年日本。この日、21世紀最大の天体イベント「皆既日食」で人々は色めき立っていた。

 

 

俺の名前は ”来須蒼真(くるすそうま)”。

18歳、高校生だ。

 

俺の住む町には白馬神社と呼ばれる古い神社がある。なんでも日本神話と関係の深い神社らしい。

この神社の一人娘、白馬弥那(はくばみな)……。幼なじみでもあり、同級生でもある。

俺は彼女と天体イベントを楽しむため、神社に向かっていた。

 

ただ一つ心配な事があるとすれば、今日家に行くことを弥那に伝えていない事くらいか。

 

「……やっぱりアポ無しで行くのはまずいかな……」

 

一抹の不安が頭をよぎる。俺は先日の学校でのやりとりを思い返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――現地時間12時30分 白馬高校1F カフェテリア――

 

 食堂は昼食を食べる学生たちでごった返していた。持ってきたお弁当をあける者、購買で買ったパンを食べる者、トレーにのせられたランチを運ぶ者などがひしめきあい、ワイワイガヤガヤ、青春の盛りと賑わっている。

 そんないくつものテーブルが置かれた室内の一角に、数人の少女が集まり話をしていた。

 

 

「え?今度の日食、弥那の神社(いえ)で見れないの?」

 

 黒髪の少女が、飲んでいたパックジュースのストローから口を離し、茶髪の少女に何事か聞き返した。

 

「うん、日曜は大切な儀式があるから神社に人を入れちゃいけないっておじいちゃんが。私も手伝わないといけないからみんなと一緒には見れないの。ごめんね」

 

 茶髪の少女が箸を止め、事情を説明する。どうやら件の皆既日食を見るため友達同士で予定を立てている様だが、茶髪の少女だけ都合が悪い様だ。

 

「弥那。うしろ、うしろ」

 

「え?後ろ?」

 

 その時、何かに気付いた黒髪の少女が、茶髪の少女に目配せした。いつからいたのだろう、少女の後ろには白髪の少年が立っていた。

 

 

「弥那……」

 

「あ、蒼真くん、気が付かなくてごめん。どうしたの?」

 

「え?いや、その……何でもないんだ。じゃ、」

 

「あ……」

 

 少女グループ特有の()()に気おくれしたか、少年は用件を言う事無く、そそくさとその場から離れていった。

 

 

「どうしたんだろ、蒼真君……」

 

 何も言わずに立ち去った幼なじみを、少女は訝しむ。ふと、短髪の少女がおもむろに話しかけた。

 

 

「……弥那って凄いよね」

 

「凄い?何が?」

 

「だって()()蒼真君と普通に話してるもん。蒼真君って何て言うか……独特じゃん?」

 

「独…特……??」

 

「だって目付きもちょっと悪いし、白髪だし、威圧感(オーラ)もヤバめっていうか……、ぶっちゃけ怖くないの?」

 

「怖くないよ。あー、確かに見た目はちょっと怖いかもしれないけど……蒼真君中身は普通だよ?」

 

 少女があっけらかんと答える。見た目こそ高校生離れしているが、容姿を除けばさっきの少年「来須蒼真」はお人好しな、ともすれば人に騙されやすい、カレーが好きなごくごく普通の男子高校生なのだ。

 

 だがそれは子供の頃からよく知っている少女だからこそ言える事でもあった。高校に入学してから二年以上たつのに、蒼真は周囲の生徒達と完全に打ち解けているとは言い難かった。

 

 

「……みんな何でそんなに蒼真君の事怖がるのかなあ?もう3年生なのにこのままだとすぐに卒業しちゃうよ」

 

 お弁当に入っているミニトマトをつつきながら少女が呟く。

 

「あ、そういえば神社の事、蒼真君にまだ言ってない」

 

 日曜日に神社が立ち入り禁止になる事を言い忘れていたのを思い出す。慌てて食堂の出入り口を見たが、既に少年の姿は無かった。

 

「でね?高橋くんが……って、弥那、聞いてる?」

 

「……え?あ、ごめん。ちゃんと聞いてるよ」

 

 不意に友人に話しかけられ我に返る。

 

……まあ日食当日に神社に来るとはかぎらないし、もし来るとしても電話くらいくれるだろう。無理に伝えなくてもいいかな……

 

少女はそう思い返し、友人達とのとりとめもない話に再び加わっていった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 燦燦と輝く太陽が高く昇り、大分日差しが強くなった頃、俺は白馬神社のある小高い丘のふもとまで来ていた。

 参拝者用の駐車場の先、本社へと続く長い石段がある。俺は逸る気持ちを押さえながら石段を登り始める。

 

「それにしても……」

 

 白馬神社へ続く石段が、今日はことさら長く感じる。確かに神社は丘の頂上に建っているので石段もそれなりに長いわけだが、それにしても嫌に時間がかかる。弥那に黙って来たから知らず知らずの内に気おくれしているのだろうか?

 

 まるで見えない何かに阻まれている様な感覚に囚われつつも、俺は石段を登り続け、何とか境内入り口の鳥居までたどりついた。いつもならなんてことはない石段昇りだが、何故か今日はヘトヘトだ。ふと視線を上げると、境内の奥に弥那の姿が見えた。

 

 おーい、弥那ー!

 

 俺は思わず手を振り、幼なじみの名を呼ぼうとしたが……

 

「え、蒼真君?なんでここに!?」

 

 声を出そうとしたがどういう訳か全く声が出ない。一方俺に気付いた弥那は酷く驚いているようだ。やっぱり何も言わずに来たのはまずかったか?俺は弥那に事情を説明しようと鳥居をくぐったが……その瞬間意識が遠のき、俺の視界は深い闇に堕ちていった…………

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

 

 

「……くん、……蒼真君!」

 

「う、ううん……」

 

「良かった、気がついたみたい」

 

「弥……那?ここ…は、俺は…一体?」

 

 自分を呼ぶ弥那の声で俺は目を覚ました。開いた瞼の先、目の前に可愛らしい幼なじみの顔がある。半ば微睡んでいた俺はまだよく状況が掴めていなかったが……

 

 

「やっとお目覚めか……?いい気なものだ」

 

「!?」

 

 氷水の様に冷たい言葉を浴びせかけられ、一気に目が覚める。咄嗟に起き上がった先、全身黒づくめの若い男が立っていた。

 

「な、何ぃ?偉そうに、お前誰だよ!」

 

「待って蒼真君、この人は有角(ありかど)さんっていう人で……」

 

 気色ばむ俺を押し留める様に、弥那が説明し始める。だがそれを遮って、有角とかいう男は俺に直接話しかけてきた。

 

「……そんな事はどうでもいい。それより来須蒼真。お前に聞きたい事がある」

 

「な、なんだよ……」

 

「何故、ここにきた?」

 

「何故って、俺は弥那と……。って、ここはどこなんだ?」

 

 その時俺は初めて周囲の異変に気付いた。さっきまで確かに神社の境内に居た筈なのに、今いる場所は石のレンガが敷き詰められた、西洋の古城としか思えない場所だった。

 

「ここはドラキュラ城だ」

 

「は!?」

 

 有角の口から出てきた突拍子もない単語に、俺は思わず聞き返す。

 

「何だよドラキュラ城って?ここはヨーロッパだとでも言いたいのか?」

 

「いや、日食の中だ」

 

 有角の返答は、俺をますます混乱させるものだった。

 

「日食の中!?遊園地のアトラクションならともかく日食って何だよ!馬鹿にするのもいい加減にしろ!」

 

「蒼真君!聞いて、本当のことなの……!」

 

 激昂する俺の袖を掴みながら、弥那がすがるように訴えかけた。幼なじみの切羽詰まった瞳を見て、俺は冷静さを少しだけ取り戻す。

 

「わけわかんねえ……。一体どういうことなんだ、説明してくれ!」

 

「それはだな……」

 

 有角が事情を説明しようとしたその時、不意に周囲の気配がただならぬものへと変わる!

 

「!?敵か!」

 

 周囲の空間が蜃気楼のように歪んだと思った次の瞬間、俺達三人を取り囲むように不気味な骸骨の群れが現れた!

 

「な、何だこいつら……!?」

 

 俺は咄嗟に弥那をかばうように化け物の前に出た。化け物共は剣と鎧を纏ったガイコツと、羽の生えた空飛ぶガイコツの二種類だ。その時、空飛ぶガイコツが槍を構え俺たち目掛けて急降下してきた!

 

 

「ソウル・スティール!!」

 

 

 有角が何か叫ぶと、たちまち周囲の化け物の体が崩れ、跡形も無く消し飛んだ。しかし――

 

「きゃあ!」

「弥那!!」

 

 不意に現れた新手の骸骨が、卑怯にも背後から弥那に襲い掛かった!

 

「しまった!彼女を頼む!」

 

「ええぃ!どうにでもなれッ!!」

 

 俺は咄嗟に弥那を抱き寄せると、コートの内ポケットから折り畳み式のナイフを取り出し、向かって来る骸骨目掛け振り払った!

 

「グゲェアァッ!!?」

 

「……!!」

 

 一体どういう訳か、俺の身体は自分でも驚くほど冷静に動いていた。最低限の動作で化け物の攻撃をかいくぐると、その剥き出しの頸椎目掛けナイフを捩じりこみ、ガイコツの首を吹き飛ばしていた。

 

「ハァ……、ハァ……、や、やったか? 

 ――ッ!?」

 

 息を切らしながらも、どうにか窮地を乗り切りほっとする。しかし倒したはずの骸骨の体から不意に赤い光の玉が飛び出し、俺目掛けて突っ込んできた!

 

「う、うわあああッ!!」

 

 いたちの最後っ屁という奴か、化け物の最後の悪足掻きを胸に喰らい、俺はたまらずその場に蹲ってしまう。

 

「が……っ、ぐ………、ぅ…………………………………あれ?」

 

 だが……、不思議な事にどれだけたっても全く痛みを感じない。よくよく落ち着いて見れば貫かれたはずの胸は血も一切出ていなければ、衣服も破れていなかった。

 

 

「な、何だったんだ、今のは……」

 

「やはり、目覚めたか……」

 

 動転する俺に、有角は全てを理解している様な、しごく落ち着き払った口調で呟いた。

 

「め、目覚める?一体どういうことだ?」

 

「お前の身体に入った物は、今倒した モンスターの ”” だ。

お前には、モンスターの魂を自分の能力にする ”” がある」

 

「な、何で……俺にそんな力が…!?」

 

 思いもよらぬ事態に、俺の体はわなわなと震えていた。だが確かに、今まで感じた事の無い ”力” が、体の内から溢れてくるのを感じた。

 

「力を得た今、お前はこの城の ”城主の間”へ行かなければならない」

 

 そう言うと有角は背後にそびえる城を指さした。有角の指の先、満月をバックに本城から突き出る様に浮かぶ小さな塔が見える。

 

「城主の…間?何でそんな所に?そこに何かあるのか!?」

 

 いきなり見た事も聞いた事も無い場所へ行く事を命令された俺は、すぐにその理由を問いただす。しかし有角は俺の質問をはぐらかす様に、また別の問いかけをしてきた。

 

「彼女と、元の世界に戻りたくはないのか?」

 

「そりゃ、戻りたいさ」

 

「ならば何をしてでも城主の間に行くことだ。そうすれば全てが分かる。

 

「全て分かるだって?仮にそれが本当だとして、弥那を置きざりにできるかよ!」

 

 咄嗟にかばったおかげか、幸い弥那にケガは無いようだった。だがショックで完全に気を失っている。そんな彼女を一人にできるはずが無い。

 

「彼女の事なら心配要らない。ここに結界を張っておく、魔物に襲われることは無い。だが生身の人間がこの城に長くとどまることは ”死” を意味する……」

 

「そ、それじゃ……」

 

「そうだ、彼女を助けることが出来るのは()()だけだ」

 

 有角の説明をうけ、思わず腕の中の弥那の顔を見る。今のところ普段と変わり無いが、有角の話が本当なら……

 

「あんたはどうするんだ?」

 

「俺にはこの城でやらねばならない事がある。残された時間は少ない。さあ行け!」

 

「…………!」

 

 俺は抱きかかえていた弥那をそっと地面に降ろすと、着ていた上着を一枚脱ぎ、枕代わりに弥那の首元に敷いた。

 

 目の前には朽ちかけた荒城が不気味にそびえたっている。迷い込んだ洋城、骸骨の化け物、謎の男、突然に湧いた力……

 はっきりいって解らないことだらけだ。だがただひとつ言える事は、弥那を救えるのは今ここにいる俺一人だけという事だ。

 

 

「行くぞ!!」

 

 

気付けば俺はナイフを握りしめ、荒城へと続く石段を登り始めていた。

 

 

漆黒の太陽は、混沌の闇をつなぎとめ、眠れる魂を呼び求める………

 

まるで、無くした半身を求めるがごとく…………

 

 

 

 

 

 

 

 





 冒頭で大規模な日食は36年ぶりと書いていますが、現実では1999年から2035年までの間に皆既日食は何度も発生しています。

 また2035年の日食は現実世界の予定では9月2日の日曜日で、夏休み明けのバリバリ真夏です。
 蒼真君はファーつきのロングコートをバッチリ着こなしていますが、極度の冷え性なのか、それともたまたま2035年がとんでもない冷夏だったのか……。
 ゲームの日食が現実と同日に発生するとは限らないのですが、本作では季節をちょっとずらして年度が変わった4月半ばぐらいに設定しています。

以上、色々と異なる点が多々ございますが、個人の二次創作という事で何卒ご了承ください。

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