悪魔城ドラキュラ Dimension of 1999   作:41

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今回の話も原作ゲーム「暁月の円舞曲」を元にしていますが、一部設定や時系列が異なる部分があります。ご了承ください。





 

36年前、俺は東欧某国の病院で目を覚ました。

 

何か大きな事故に巻き込まれた俺は記憶を失っていた。

 

年齢も、職業も、自分の名前さえ思い出せない。

 

そんな俺に、医者は一本のペンと紙を渡してきた。

 

「例え脳が記憶を失っても、体が何かを覚えている可能性がある」

 

医者に促されるまま、俺は何も考えずペンを走らせる。

 

無意識に、体の動くままにまかせる。やがて俺の右手はどうにかアルファベット1文字を書き出す事に成功した。

 

 

”J”

 

 

その日から……それが俺の新しい名になった。

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「だああああッ!!」

 

「BWOOOOOO!?」

 

”バシュウウウ……ッ”

 

 行く手を遮る牛頭の獣人を手に持った大剣でたたっ切る!瞬間、切り裂かれた魔物の体から黄金色に輝く魂が飛び出し、俺の体に吸収された。

 

 ナイフ一本で城に突入してから数時間。気づけば頼りない折り畳みナイフは鋭利な両刃の大剣に、ウイングスケルトンだけだった魔物の魂もかなりの数が俺の物となり、来たばかりの頃とは比べ物にならないほど俺は力をつけていた。

 

 手に入れたのは武器や魂だけでは無い。城を彷徨う中で、この悪魔城で武器屋を開くという変わり者の軍人 ”ハマー” や、弥那の知り合いだという教会の女性 ”ヨーコ・ヴェルナンデス” 、ヨーコさんと出会った。

 

 

 ――ハマーはぶっきらぼうでいかつい見た目だが根は気のいいやつで、年はだいぶ離れていたが割とすぐにうちとけた。冗談かと思った武器屋の件も、どうやって品を揃えたのか本当に店を開いていた。

 おかげで城の攻略もかなり楽になったが、よりにもよって弥那がいるすぐ横で店を開いたので弥那が非常に怖がっていた。

 

 ――ヨーコさんは弥那から聞いてすでに俺の事は知っていたらしく、初対面でも気さくに話しかけてくれた。俺が持つ”支配の力”についても、使う人間の心持ち次第と励ましてくれた。

 正直な所こんな力を急に手に入れて不安になっていた俺は、ヨーコさんの言葉にかなり救われた。声もどことなく弥那と似ていて、それも俺の殺気だった心を落ち着かせてくれた。あとめっちゃ美人でスタイルよくていい匂いがした。

 

 

 もっとも良い出会いもあれば悪い出会いもある。俺がこの悪魔城に来て弥那と有角以外に初めて出会った人間……、未知の異世界に突然放りこまれ心細くなっていた俺は、初めて見る人間の姿に、すぐに心を許してしまった。

 だが結果から見ればそれは大きな間違いだった。その宗教家は親し気で優しい言葉を俺にかけてくれたが、その実俺を見下し、あろうことか自身をドラキュラだと言い放った。

 

 だが不思議な事に、宗教家は俺が持つ力が”支配の力”だという事が解った途端、それまでの余裕ぶった態度が一変、酷く動揺したあと敵意を持った眼差しで俺を睨み、城の闇へと消えていった。

 

 

 ――以上、紆余曲折ありながらも、俺は有角の指示した城主の間を目指し、城の探索を続けていた。

 だがもう一人……。俺の人生にとってある意味もっとも大きな関りを持つ男との出会いがすぐそこに迫っている事を、この時の俺はまだ知らなかった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 

 吹き抜けの長い廊下を進んでいた時、俺は思わず足を止めた。大分離れているが、廊下の奥にチラリと人影が見えたのだ。

 

 一瞬城の魔物かと身がまえたが、すぐに違うと解る。その男の着ている衣服は現代人の着る洋服だった。

 もっともさっき会った宗教家の様に、現代人だから安心できるという訳でもない。俺は戦闘態勢をとったまま、男の行動を注意深く観察する。男は何かを探しているのか、辺りをキョロキョロ見回しながらゆっくりこちらへ歩いてくる。

 

「!」

「!」

 

 不意に男と視線が合った。男は俺に気付くなり、ズンズンとこちらへ近づいてくる。

 

 互いの距離が近付くにつれ、男の容姿もはっきりしてきた。年齢は少なくとも40以上。身長は俺より少し高いくらい。赤い長髪に、口髭と顎髭をたくわえた白人男性だ。

 

 現代人の服と思ったが、よくよく見れば男はかなり時代がかった格好をしていた。くたびれたコートにレザーのブーツ、赤色の上着とズボン。首にはバンダナと、まるで西部劇に出てくるカウボーイの様な服装をしている。もし繁華街で会ったなら浮浪者と見間違っていたかもしれない。

 

 と、そんな事を考えているうちに男は俺の目の前までやってきていた。一瞬焦ったが、幸いにも男からは城の魔物から感じるような邪気は一切感じられない。

 とはいえこれから一体どうしようかと動揺する俺に、男は俺の目を真っすぐ見ながら口を開いた。

 

 

「暗黒の力を感じる……。お前、何者だ?」

 

「……むッ」

 

 悪意は感じられないが、初対面の相手からいきなりぶしつけな質問をされ、正直俺はカチンときた。

 

 

「人に名前を聞くときは自分から名乗るのが礼儀ってもんだろ?」

 

 

 一人残した幼なじみや、ここに来るまでの闘いで積み重なったストレスもあったのだろう。俺は反射的にちょっと喧嘩腰な対応をしてしまう。正直険悪な雰囲気になってしまうかと一瞬焦ったが……

 

「それもそうだな……、俺は ”J” と呼ばれている」

 

 男は、拍子抜けするほどあっさりと自分の否を認め、名を名乗った。

 

「”呼ばれている”って……、あんた本名を隠してるのか?どっかの殺し屋みたいに」

 

「いや、記憶喪失という奴だ。1999年に何か大きな事故にあったらしい。担ぎ込まれた病院で目覚めたときには、素性も名前も失っていた」

 

「へぇ、色々大変だったんだな……。あっ、俺の名前は来須蒼真。高校生だ」

 

 その皺の深い見た目に違わず、目の前の男は相当に波乱万丈な人生を送ってきたようだ。ふとこちらはまだ名乗っていない事を思い出し、慌てて自己紹介する。

 

 

「蒼真……か。お前の暗黒の力……生まれつきのものか?」

 

「俺にも良く分からない。この城に来てから、現れたものではあるけど…」

 

「なるほど、考え過ぎか……」

 

「……?」

 

 その時、かすかだがJが目線をそらした。俺にはJが何か隠している風に見えた。

 

「Jさんは、なんでこの城に?」

 

「Jでかまわん。俺はドラキュラという名に大きな恐怖を感じている。だから予言を信じて来た。そうすることで俺自身が戻ると思ったからだ。実際、ここに来てから何かを思い出しかけている」

 

「1999年っていうと、やっぱりドラキュラと関係が…?」

 

「多分そうだろう。俺に退魔の力があるところから考えてもな」

 

「Jは退魔士なのか?」

 

「まぁ、そうとも言うな。もっとも、自分の為にやっているものだが、――!」

 

 その時、不意に強力な殺気を感じた俺たちは、ほぼ同時にその場から飛び退いた!

 

”ズガァァッ!!”

 

『!?』

 

 さっきまで立っていた地面に、巨大な大鎌が突き刺さる!

 

 

「ク ハ ハ ハ ハ ハ!」

 

『!?』

 

 不意に、不気味なエコーがかった笑い声が廊下に木霊した。と、吹き抜けの天井近く、紫の霧の様な物が集まりだし、次第に人型へ変わっていく!

 

「な、何だこいつ……!?」

 

 霧の中から現れたのは、教会の司祭が着るような紫の法衣をまとった魔物だった。しかしその服からのぞく身体は手も、顔も、全てが朽ちかけた白骨。まるでタロットカードの死神の様だった。

 

「…………ッ」

 

 死神を挟んで反対方向にいるJも、突如現れた不気味な魔物をひどく警戒している様だ。こころなしか顔色も悪く見える。

 

”スゥ……”

 

 その時、地面に突き刺さっていた鎌がふわりと浮き上がり、回転しながらこちらへ襲い掛かってきた!

 

「くッ!?」

 

 とっさにジャンプして避ける!鎌の切っ先がコートをかすめたが、紙一重で避けれた。だがそれは敵の狡猾な罠だった。

 

「なッ!?」

 

 草刈りに使うような小ぶりの鎌が数本、飛び上がった俺目掛けて斬りかかってくる!目立つ大鎌は囮だったのだ。身動きのとれない空中ではこの鎌の群れを避ける事はできない!

 

”キキキィィィンッ!!”

 

「――!?」

 

 甲高い金属音が鳴ったと思った瞬間、俺に迫っていた鎌は全て消え去っていた。見れば銀色のナイフを携えたJが眼下にいる。どうやらナイフの投擲で鎌を撃ち落としてくれたらしい。

 

「サンキューJ!今度はこっちの番だ!!」

 

 小鎌はJが、目障りな大鎌はあらぬ方向へ飛び、本体まではがら空きだ。窮地を脱した俺は剣をかまえると、宙に浮かぶ死神目掛け突撃する!しかし――

 

「蒼真待て!そいつは――」

 

 Jが何か言いかけた時、俺はすでに死神へ刃を振り下ろしていた――

 

 

 

 

”スカッ”

 

「えっ!!?」

 

 目の前には確かに骸骨の魔物がいる。だが全力で振り下ろしたはずの剣先が、むなしく空を切った!

 

”ザシュウッ!!”

 

「ぐああああッ!!」

 

 敵を斬るどころか、逆に背後から斬りつけられた!氷柱を突き刺された様な冷たい痛みが背を走る。空振りするタイミングを見計ったかのように大鎌が舞い戻り、俺の背中を斬り裂いたのだ。

 

「くッ!まさか鎌が本体なのか!?」

 

 地に落とされた俺を、死神の幻影がカタカタと歯を鳴らして笑っている。背に受けた傷は思ったよりも深手で、俺は身動き一つとれなかった。そんな動けない俺目掛けて、大鎌はさらに勢いを増し、襲いかかって来る!

 

 

「でええやあああッ!!」

 

「――!?」

 

 その時、横からかっとんできたJが、飛び蹴り一閃、大鎌を弾き飛ばした!

 

 

「大丈夫か!?動けないならそのまま伏せていろ!」

 

 間に割って入ったJが背中越しに叫ぶ。確かにJの言う通り傷はかなりの深手だ。だがやられっぱなしで黙っていられるほど俺のプライドは安くない。

 

”ゴクッ!!”

 

 このまま負けっぱなしでいられるかと奮起した俺は、ハマーから買っておいた回復薬を取り出し一気飲みする。何百種ものハーブや薬草が混ぜられているであろう液体は独特の苦みと、凄まじい清涼感をともなって俺の喉を過ぎ去った。

 

「ぐううううッ」

 

 傷が急速に治癒する際に起こる激痛!だが今の俺にはそれが逆にいい気付けになる。

 

「危ない!蒼真!」

 

「!」

 

 傷が回復したのも束の間、Jに蹴り飛ばされた大鎌が空中で軌道を変え、そのまま俺目掛けて突っ込んできた!

 

「そう何度もやられるか!エンチャントソウル……”ミノタウロス”!!

 

 眼前に高速回転する死神の鎌が迫る中、俺はさっき倒した牛頭の獣人の名を叫んだ。その瞬間、体中にあり得ない程の力が漲ってくる。

 

 

”ガシィィッッ!!”

 

「!」

 

「ちょこまかしやがって……捕まえたぞ!!」

 

 丸太の様に太くなった俺の両腕が死神の鎌をがっしりと握りこむ。ミノタウロスの魂を憑依させた事で、俺は巨大な槍斧を操る獣人と同じ筋力を手に入れていた。この力を持ってすれば鎌一つ捕らえる事など何てことはない。

 

「ぐぎぎぎぎぎ……ッ!」

 

 俺は捕まえた大鎌の両端を握りこむと、そのまま力まかせに押し曲げた。筋肉の塊となった俺の両腕によって、死神の鎌はミシミシと音をたてながら徐々に折り曲げられ、描かれたアーチはどんどん深くなる。

 

「蒼真後ろだ!!」

 

「!」

 

 唐突にJが叫んだ。振り返れば俺の背後にさっきと同じ無数の小鎌が出現していた。宙に浮かぶ死神の幻影がそれを見てニタニタ笑っている。しかし――

 

「……来やがったな?」

 

「!?」

 

 ドヤ顔で俺を見下す死神に、それ以上のドヤ顔で返す。

 

ガーディアンソウル……”ビッグゴーストッ”!!

 

 俺が”大幽霊”の言霊を叫ぶやいなや、巨大なしゃれこうべの魔物が俺の体に重なった!瞬間、しゃれこうべは身を守る青白いバリアーとなって俺の体を包む!

 

 

”ブシュゥ!”

”ブシュゥ!”

”ブシュゥ!”

 

「………………ッッ」

 

 俺の半径1メートルに展開されたバリアーによって、群がる小鎌は近づく端から消えて無くなっていく!その隙に、俺は大鎌を握った両腕に限界まで力を加えた。

 

 

「だああああああッッッ!!」

 

”ベキベキベキイィィィィッッ!!!”

 

「!!!!」

 

 俺は死神の鎌の柄を、力まかせにへし折った!真っ二つにされ力を失ったためか、鎌は炎に包まれながら刀身ごと燃え尽きる。

 ふと気づくと、死神の猛攻を凌いだ俺をJが驚きの表情で見つめていた。

 

「へへ……どんなもんだよ」

 

 少しだけ自慢げにJに語り掛ける。だが俺を見るJの顔は明らかに驚きよりも不安が勝っている。

 

「蒼真……、お前のその力は…………」

 

「?」

 

 俺に対し何か言いかけるJ。だが会話はそこで中断させられた。

 

 

「グ ゥ ァ ハ ハ ハ ハ!」

 

『!?』

 

 本体の鎌をへしおった事で消滅したと思っていた死神が、逆に朧気だった体を実体化させ俺たちの前に躍り出た。

 死神は両の手を前にかざし、何事か呪詛を唱え始める。すると瞬く間に何かの骨を繋ぎ合わせたような、双頭の大鎌が召喚される。

 

「油断するな!次は本気で来るぞ!!」

 

「くッ!!」

 

 Jの忠告通り、死神は不気味な笑い声を上げながら、俺に向かって大鎌をおもいきり投げ飛ばした!双頭の鎌は城の床を削りながら猛スピードで迫って来る。

 

「同じ事だ!また捕まえてやる!!」

 

 さっきよりは速い回転スピードだが、目で追えない程じゃ無い。俺はミノタウロスの魂を憑依させた腕で、再び死神の鎌に触れる――が!

 

”スパァッッ!!”

 

「ぐああああッ!?」

 

 今度の鎌は柄の部分すら鋭利に研ぎ澄まされており、触れただけで俺の掌が切り裂かれた!指を切断される事はなんとか防いだが、肉が裂け、赤い血の中に真っ白い骨が見える。

 

「蒼真!?くッ、こっちだ死神め!」

 

 ダメージを受けた俺への追撃を避けるため、Jがわざと目立つ動きで死神の前へ躍り出た。死神は俺を切り裂いた鎌を手元に引き寄せると、そのままJに向かって突進する!

 

「SHYAAAA!!」

「でええやああッ!!」

 

”バキィィィッ!!”

 

「GUHEAA!?!」

 

「素手で!?」

 

 俺よりもはるかに高齢であるにも拘らず、Jの動きは俺以上に俊敏だった。死神の斬撃を紙一重でかわし、あろうことか素手の拳で死神を殴りつけた!

 

「WOO……GHYAEAA!!」

 

 Jの打撃に死神の巨体が大きく仰け反る。しかし一瞬怯んだかに見えたのも束の間、逆上でもしたのか、死神はとても形容できない様な叫び声をあげ再びJに襲い掛かった。

 

「デス……言葉すら忘れたか!!」

 

 戦いながらJが敵に何事か語り掛けている。先の予測と言い、Jは以前にも奴と戦った事があるのだろうか?

 

 

「く……、エンチャントソウル ”ジャイアントワーム”!!

 

 ハマーの薬を使い切ってしまった俺は、ミノタウロスの魂を一旦解除すると、巨大蟲(ジャイアントワーム)の魂を憑依した。この蟲の魂は驚異的な再生力があり、外傷ならば時間さえあれば完治できる。しかし……

 

「GUHAHAHAHA!!!」

 

「くッ!!」

 

 Jは見事に死神の攻撃をさばき、反撃を加えていた。だがふわふわと宙に浮かぶ死神相手では、いくら素手で殴りつけても暖簾の様にいなされてしまい決め手に欠ける。

 

”ザシュゥッ!!”

 

「Jッ!!」

 

 死神の鎌がJの体を掠めた!このまま手の傷が治るのを待っていたらJの命が危ない!

 

「――!」

 

 その時俺の脳裏に一つのアイディアが閃いた。俺はジャイアントワームの魂を解除し傷の治癒を中断すると、再びミノタウロスの魂を憑依させ、おもむろに叫ぶ。

 

「こっちだガイコツ野郎!!」

 

 俺の挑発が効いたのかどうか、それまでJを突け狙っていた死神は瞬く間に踵を返し、俺に向かい猛進してきた!

 

「やめろ蒼真!無理をするな!」

 

 俺の無謀ともいえる行動に、Jの忠告が飛ぶ。だが俺はそれを意に介さず、再び魔物の魂を召喚した。

 

ガーディアンソウル! ”がしゃどくろ”!

 

 目には目を、歯には歯を、骨には骨を、……という訳では無いが、俺の背後に、巨大な骨を持った大骸骨が現れた。大骸骨の魂は死神を迎え撃つように、骨で出来た棍棒を大きく振りかぶる!

 

「駄目だ!その程度の魔物ではデスには対抗できん!!守護霊(ガーディアン)ごと斬られるぞ!!」

 

 Jの悲痛な叫びが木霊する!!しかしすでに死神は俺の目の前に迫っている!!

 

 

”ズガァッ!!”

 

 

「――!?」

 

 死神の鎌は俺を切り裂くことなく、床に深々と突き刺さってしまった。不意に獲物を見失った事で、死神は辺りを必死に見回している。

 

 

 

 

 

「……残念だったな?」

 

「!!」

 

 狼狽える死神の遥か頭上から、俺は言葉を浴びせかける。

 

「がしゃどくろを召喚したのはお前の鎌を防ぐためじゃあ無い。俺自身を上空に飛ばして攻撃を避けるためだ!」

 

 がしゃどくろの骨こん棒によって天井高く飛ばされた俺はそのまま体をひっくり返し、足場となった天井を思い切り踏み込む。

 

「合わせろJ!!」

 

「!」

 

 俺は死神目掛け思い切り急降下する!俺の意図を察知したJも同じ様に死神目掛け飛んだ!

 手は使えなくても腕は動かせる!俺の丸太の様な腕が金床!Jの拳がハンマー!死神の頭部がランデブー地点だ!!

 

 

『クロス・ボンバァ――ッ!』

 

 

”ゴシャァッッ!!”

 

 

「GOHAッッ……!!」

 

 俺の右腕とJの右拳が交差した瞬間、挟まれた死神の頭部は粉々にひしゃげ、砕け散る!

 

「昔見たプロレスアニメが役に立ったぜ!ダメージの逃げ場が無けりゃいくら空が飛べても意味無えだろ!」

 

「GHAAAAAAA……… ……  … 

 

 死神は悶えるような断末摩を上げながら、宙に現れた渦に吸い込まれる様にして消えていった。同時に巨大な鎌も炎を上げながら燃え尽きた。今度こそ俺たちの勝利だ。

 

 

”バシュウウウウウッ”

 

「おッ!これは死神の魂か?」

 

 死神が完全に消え去る直前、その体から青い魂が飛び出し、俺の体に飛び込んできた。さすがにあれほど苦戦した相手だけに、今までの魔物とは比べ物にならないパワーが感じられる。

 俺はひとまず憑依させた魂を解除すると、再びジャイアントワームの魂を呼び寄せ手の治療を再開した。

 

 

 

 

「………うぅ………」

 

「J!?」

 

 死神の襲撃をどうにか退けた俺たちだったが、突然Jがその場に蹲ってしまった。知らぬうちにケガを負ったのかと思い近寄るが、外傷は見受けられない。だがその顔からは完全に血の気が引いていた。

 

「J、どうしたんだ?顔色が悪いぞ」

 

「し、心配ない…。い、今……何もかも思い出した」

 

「!」

 

 Jはふらつきながらも立ち上がると、自身の素性を少しづつ語り始めた。

 

 

「お前の暗黒の戦いが、記憶を呼び覚ます引き金になったらしい。やはり……俺はドラキュラと深い因縁があった」

 

「俺の本当の名前は、 Julius・Belmont (ユリウス・ベルモンド)。 はるか昔から、ドラキュラを封じてきた一族の末裔だ」

 

「ユリウス……ベルモンド?もしかして1999年にドラキュラを倒したのも……」

 

「ああ、俺だ。まぁ、俺一人の力だけでは無いが……」

 

 ユリウスは「ドラキュラを倒した」という衝撃的な事実をこともなげに言ってのけた。ここまで生き延びた今だからこそ解るが、ここの魔物達は例え雑魚でも現実世界の猛獣よりもはるかに強い。ましてその親玉ともなれば、それこそ比べ物にならない人知を超えた強さを持っているのだろう。

 だが当のユリウスはその功績を誇ろうともしない。いや、むしろ逆に卑下している様に俺には感じられた。

 

 

「じゃあ、もし予言どおりにドラキュラが復活したら?」

 

「俺がやらねばならん。それが宿命だ」

 

 ユリウスの眉間に皺がより、蒼い瞳が鋭く光る。もしその話が本当で、宿命が抗えないものならば、ユリウスは ”あの男” と戦わなくてはならない。

 

 

”グラハム” という男に会ったことは?」

 

「グラハム?あぁ、あの宗教家か。ここに来る前に会った。だが、俺の顔を見るなり逃げていった」

 

 ユリウスの話では、グラハムはユリウスに会うなり、「何で貴様が!?」とか喚きながら、一目散に走り去っていったらしい。ドラキュラの生まれ変わりというだけあって、宿敵の情報は調べていた様だ。

 

 

「奴は自分で自分のことを、ドラキュラだって言ってた」

 

「確かに奴からドラキュラの力は感じたが……、奴がドラキュラとは信じ難いな。それよりむしろ……。いや、止めておこう。ただの推測に過ぎん……」

 

「?」

 

「仮に、奴がドラキュラだとして、今の俺に奴を倒すことはできん」

 

「え!?」

 

 ドラキュラに勝った男とは思えない弱気な発言に、俺は思わず理由を聞き返す。

 

「何でだ?36年前は倒せたんだろう?年をとったせいで力が弱ったとかか?」

 

「違う。今の俺には ”武器” が無い」

 

「武器?」

 

「そうだ、我が一族に伝わる ”ヴァンパイアキラー” と呼ばれる鞭だ。1999年にドラキュラの魂と魔力を引き剥がすために、城と共に封じられた」

 

「じゃあ、この城のどこかに?」

 

「ああ、多少城の形が変わっていても、おおまかな場所は見当がついている。俺は今からそれを取りに行く」

 

 そう言うとユリウスは遥か遠く、悪魔城本城へと目をやった。俺が次に向かう場所とは逆方向、ユリウスとはここで一旦お別れの様だ。

 

「分かった。気をつけて」

 

「うむ。俺の推測が外れる事を祈ってくれ……、じゃあな」

 

 どこか寂し気な……、そして何かを請願するような眼差しを残し、ユリウスは城の奥へと消えていった…………

 

 

 

 

 

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