悪魔城ドラキュラ Dimension of 1999 作:41
今回の話はおまけの後日談的な話になります。
また時系列的に原作ゲームとかみ合わない台詞や、現実のマナーと剥離した描写がありますが、あくまでパロディという事で大目に見てください。
最高の晩餐
すでに陽も暮れ、ポツポツと街灯が灯り始めた街角。二人の男性が建物の壁に寄りかかり何事か話している。
「おっせーな~。有角の奴いつまで待たせるんだ」
白いコートと青いジーンズに身を包んだ白髪の少年が苛立ち交じりに呟く。すると傍らにいたスキンヘッドの男性が答えた。
「ヨーコさん達も拾ってくるって言ってたから遅くなってるんだろ。女性の身支度ってのは時間がかかるもんだ」
時刻は夜の7時。来須蒼真とハマーの二人は、ある人物から指定されたレストランの前でかれこれ30分待ちぼうけを喰らっていた。
「大体これくらいのトラブル、どっしり構えて待つのが男の甲斐性ってもんだぞ少年よ?(ああ……!ヨーコさん一体どんなお召し物を着てくるのかな……❤)」
「ガキ扱いするなって。しっかし無事帰還できたお祝いに皆で食事会ねえ……」
蒼真が内ポケットから一枚のカードを取り出し、しげしげと読み返す。
件の騒動から数か月ほどたったある日のこと、蒼真の家に唐突に招待状が送られてきた。内容はこうだ。
”無事に悪魔城から帰還できた事を祝ってささやかながら宴を催す”
――有角幻也――
早い話が祝勝会だ。あの仏頂面の男がそんな気の利いた事をするなんてにわかには信じられなかったが、高校生にはとても入れないような高級レストランで、しかも費用は全て有角持ちだというので、蒼真は二つ返事で了承したのだった。
「すまん、遅くなった」
『ユリウス!』
その時赤毛の長髪を結った壮年の男性が近づいてきた。気付いた二人も男性に駆け寄る。どうやら三人は顔見知りのようだ。
「大丈夫、有角達ならまだ来てないぜ。それより2か月ぶりかあ、元気だったか?」
「そうか、ならば良かった。俺は相変わらずだ。お前達こそ変わりは無いか?」
「変わり?ああ、あれから特に何ともないぜ、あんな事があったのが嘘みたいにフツーの毎日さ」
少年の返答を聞いてユリウスという名の男性は幾分ほっとした様子だった。その時、三人の前に黒塗りの高級車が止まり、おもむろにドアが開く。
「……三人とももう来ていたか」
「アルカード!誘っといておせーよ!!」
中から降りてきたのは漆黒の長髪を靡かせた美形の青年だった。こちらも顔見知りと見え、少年たちは黒づくめの青年に忌憚ない悪態を浴びせる。
「そう怒るな。服選びに少々手間取っただけだ。……ヨーコ」
青年が車を振り返ると、促されるように中の人影が動いた。
「じゃっじゃ~んッ!!お待たせ~いッ!!」
『おおおッ!!!』
車の中から現れたのは妙齢の白人女性と、可愛らしい日本人の少女だった。突如出現した美女二人に、思わず男どもが感嘆の声を漏らす。
青年にヨーコと呼ばれた女性は背中がざっくりと開いた、真っ赤なイブニングドレスを着ていた。白人女性特有の広めの肩幅が、露出度の高い衣装を一層引き立たせる。だが男共の視線は別の一点に釘付けだった。
「(胸デケェ……)」
「(いい胸だ……)」
「(ヨーコさん……そんな大胆な衣装を着られたら……俺は……俺はもう!!)」
「…………なんか邪まな気配を感じるわね。っていうか蒼真くん!あたしなんか見てないで弥那ちゃんを見てあげなさい!何か言う事あるでしょ!」
「……ど、どう蒼真くん?ヨーコさんと一緒に選んだんだけど……似合うかな……?」
「え!?あ……うん、凄く……似合ってるよ」
幼馴染から突然感想を聞かれ、しどろもどろになりながらも蒼真が答える。弥那の格好はヨーコの様な派手さは無いが、とても清楚で、可愛らしい装いだ。だが同時に普段とはまるで違うシックな……そこはかとない大人っぽさも感じられた。
幼馴染の意外な魅力に、さっきまでのイライラはどこへやら、少年が照れくさそうに笑みをこぼす。
「えへへ……嬉しい」
「!!」
弥那の悶える様な仕草に、特大の恋の矢が蒼真の心臓に”ズキュン”と突き刺さった。
「おう、嬢ちゃん似合ってるぜ」
「うむ、可愛らしいな」
「……よく似合っている」
男性陣から次々と賞賛を浴びせられた少女は、気恥ずかしさに耐え切れなかったのかヨーコの後に隠れてしまう。だがここで黒衣の青年がくるりと男性陣を見回し、言った。
「…………それに比べて……」
「……お前たちの格好は何だ!」
蒼真 「え?」←普段着
ハマー 「何か」←迷彩服
ユリウス「問題が?」←使いふるしたコート+首にまいたバンダナ+泥だらけのブーツ
女性陣とはあまりに対照的な男共の格好に、有角が思わず声を荒げる。
「貴様ら……事前に伝えておいたはずだぞ!この店はオーナーの意向でそこまで堅苦しくは無いがれっきとした高級店。それなりにフォーマルな装いで来いと!」
「フォーマルって……俺高校生だぞ?うちの学校私服だし、スーツなんて城で手に入れたドラキュラの服ぐらいしかねーよ」
「悪いな有角、先日除隊したばっかりでよ、礼服は官給品だから返しちまって、新しくスーツ仕立てる暇が無かったんだ」
「……これが俺の正装だ」
「……………」
男達の返答にアルカードが頭を抱える。だがやがて何か決意したような面持ちで顔をあげると、「来い!」と、無理矢理三人を何処かに引っ張っていってしまった。
「有角さん……蒼真君たちをどうする気なんでしょうか……?」
「さあ?まあどうにかなるわよ」
◆
◆
◆
数分後……女性陣の前に現われたのは、
「おおー、何よ、どうして、中々似合うじゃない!さすが有角、ちゃんと用意してたのね」
「……まさか三着全て必要になるとは思わなかったがな」
有角がげんなりとした面持ちで答えた。3人は普段着慣れていない服に身を包んだせいか、どことなくぎこちない仕草で自分自身を品定めしている。
「フフ、意外とさまになってるわよユリウス?
「こういう堅苦しい衣装はどうも苦手だ……ってヨーコ、お前それ褒めているのか?」
「蒼真君もかっこいいわよ?白い髪にブラックスーツが映えるわね」
「そ、そうかな?ちょっとネクタイが苦しいけど……」
「着慣れないうちはそんなもんよ、でも今の内に慣れといた方がいいわよ?そのうち嫌でも着る事になるんだから。ほら弥那ちゃんよく見ときなさい、未来の旦那様の姿よ」
「!」「!」
な、何言ってるんですか!と弥那が顔を赤くしてヨーコをポカポカ叩く。蒼真も同じ様に顔を赤くしていたが、その顔は弥那との新婚生活でも想像しているのか、まんざらでもないように見えた。
「ヨ、ヨーコさん!俺はどうですか?似合ってますか!?」
矢も立てもたまらず……といった感じで、頃合を見計らっていた元軍人が意を決し尋ねる。だがその反応は……
「ん?あらハマーさん凄い!物凄いしっくり来てるわ。まるで高級カジノに居る
「…………」
「……雑談はそれぐらいにして行くぞ、もう予約の時間をとうに過ぎている……」
有角に促がされ、一堂は思い思いのペースで店の入り口へと歩を進めた。だが……突然背後から忍び寄ったヨーコが、蒼真と弥那を無理矢理くっつける。
「な!?い、いきなり何するんだよヨーコさん!」
「「何するんだよ!」じゃないわよこのニブチンが!君、可愛いガールフレンドを放って行く気?ちゃんと腕を組んでエスコートしてあげなさい!!ほら!もっとくっつく!!」
ヨーコが力ずくで二人の腕を取り、組ませた。二人は少しだけ顔を赤らめながらも、やがてたどたどしい足どりで、ドアマンに案内され店の中へと入っていった。
「うんうん、初々しくていいわあ♪私もして欲しいくらいよ」
「じゃ、じゃあヨーコさん!よかったら俺がエスコ……」
「じゃあエスコート頼むわよユリウス?しっかりリードしてね?」
「俺がか!?……まあ構わんが……おい、あまりくっつくな」
「いいじゃない今日くらい、今夜はよろしくね、ユリウスお・じ・さ・ま♪」
ヨーコは傍らのユリウスにもたれかかると、そのまま連れ込むようにして店の中に入っていった。
「ハマー……入らないのか?」
「…………うるせいやい」
◆
『乾杯!!』
蒼真と弥那はジュース。ヨーコは日本酒。ハマーはビール。ユリウスはウイスキー。有角はワインと、それぞれおもいおもいの飲み物を選び、グラスをかたむける。
有角が気を利かしたのか、レストランはコース料理ではなく、目の前で好きな品を焼いてくれる鉄板焼きタイプの物だった。目の前の棚には高そうな肉だけでなく、野菜や魚介類も並んでいる。
「すっげえ……マジで何でも頼んでいいのか有角?」
「ああ、好きな物を頼むといい……、ただしカレー以外でな」
「うっ!い……いくら俺でもこんな高級店でカレーは頼まねえよ!」
しどろもどろな蒼真の返答に、皆の中から”どっ”と笑い声があがった。
◆
「さーてとりあえず何頼もうかな……、有角、おすすめって何かあるか?こんな所来た事無いからよくわかんねえや。」
「どれも美味いが……まあ最初はフィレあたりがいいだろう。」
「えっと……私は……そんなに高くないので……」
「遠慮なんてしなくていいのよ弥那ちゃん?どうせ全部有角持ちなんだから。じゃあお姉さんが選んであげる!私と弥那ちゃんはシャトーブリアン!それと私には適当に野菜も」
「よ、ヨーコさん通ですね!じゃあ俺も同じ物を……」
「そこの一番でかい肉を頼む」
◆
「この肉うまいなあ!これ持ってかえってビーフカレー作ったら最高だろうなあ……なあ有角、ここって持ち帰りできるのか?さすがにタッパーはまずいかなあ……?」
「(どうしよう……緊張して味が全然解らない…………)」
「あら弥那ちゃんひょっとしてお肉苦手?じゃあ私のオニオン食べる?おいしいわよ」
「ヨーコさん玉ねぎが好きなんですか!?よ、よかったら俺のもどうぞ……」
「肉が足りんな……切り分けなくていいからそれを丸ごとくれ。ナイフ?自前のがある」
「………………」
◆
「肉もいいけどなんかカレー食いたくなってきたなあ……なあ弥那、帰りにコ○イチ寄ってこうぜ……って弥那?お、オイ!お前それ!」
「キャ――ッ!弥那ちゃんそれ水じゃない!それ私の!私のお酒!!」
「ブボォッ!!」
「うおお――ッ!!目に!目にSAKEがあッ!!」
「肉追加、ブロックで頼む」
「…………………………」
「………もう……」
「………もう……お前たちには二度と奢らん………」
◆
◆
◆
「げふぅ……あー、食った食った」
一通り肉を食べ終えて満足したユリウスは、一人レストランの中庭に出て食休みをしていた。肉と酒で火照った体に夜風が気持ちいい。
「一人で席を外すからどうしたのかと思えば……こんな所にいたか」
後をつけてきたのだろう、木々の暗闇の中からアルカードが姿を現した。アルカードは音も無くユリウスの側まで歩むと、尋ねた。
「このレストラン……気に入らなかったか?」
自然あふれるテキサス育ちのユリウスには堅苦しい高級店は気に召さなかったのかと、アルカードは気にしているようだ。だがユリウスはそんなアルカードの気兼ねを振り払うように大げさに首を振り、答えた。
「ハハハ、そんなんじゃねえよ。肉も、酒も、人も、全て一流……まあ肉はちっと俺には脂っこかったが、充分堪能させてもらった。満足さ」
そう言うとユリウスは噴水の淵に腰かけた。
「ただ……皆の顔を見ていると、どうしても二人の面影がちらついてな……」
「……」
「瞼に映る二人は若いままだってのに、俺だけこんなに老けちまって……」
ユリウスが噴水に映った自分の顔を覗き込みながら呟く。
「お前も若いままだしな、あの時の4人で俺だけおっさんになっちまった。全く……年はとりたくないもんだな」
酒がはいっているせいか、ユリウスにしては珍しい愚痴がこぼれ始めた。
師、母、友人……本当は皆と一緒に年をとりたかった。だが、もはやそれは永遠に叶わぬ夢だ。水面に一人映る皺の深い壮年の顔が、否応なくそれを実感させる。
「俺は……年を取る事の出来るお前たちがうらやましいがな……」
「!」
有角の憂いを含んだその言葉に、酔いが一気に醒める。
「せっかくの夜につまらん事を言ってしまったな。……忘れてくれ」
「……いや、だが急にどうした。お前らしくも無い」
「何……、ただのきまぐれさ、俺にだって愚痴を言いたくなる時くらいある」
年を取る……人間ならば避ける事の出来ない当たり前の現象。しかし目の前の友人にとってはそれは絶対に叶う事の無い”夢”なのだ。
若い頃の思い出から少しずつ遠ざかっていく自分と、自身から過ぎ去っていく他者を見送り続けるアルカード。人の一生として、果たしてどちらがつらい事なのだろうか……?柄にもなく感傷的な想いが胸を過ぎった。
”……#▽&%$!!”
その時不意にレストランの方がまた騒がしくなった。ヨーコか、ハマーか、はたまたそれ以外か、今度はどんなトラブルを起こしているのか。
「やれやれ……どれ、若い奴らのお守りに戻るとするか。アルカード、酒ならまだ入るだろ?つきあえ」
「……ああ」
言葉少なにそう交わすと、壮年の男二人は仲間たちの待つ建物へと帰っていった。
実際はレストランに入店する際は女性を先に行かせ、男性は少し後をついていくのが正しいマナーのようです。何故そうしなかったかって?蒼真と弥那ちゃんをイチャイチャさせたかったからだよ!