悪魔城ドラキュラ Dimension of 1999   作:41

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地下闘技場
決闘者


 

脳みそを掻き回されるようなワープゾーンを抜けた先で、ユリウスとハルカが待っていてくれた。

 

「……ほらよ」

ユリウスがぶっきらぼうにハンカチを差し出す。きっと酷い顔なのだろう。

ふと下を見ればハルカも心配そうな顔で自分を見つめている。

 

「大丈夫、もう本当に心配はいらない、ありがとう」

微笑みながらそう語りかけると、ハルカの顔がほっとした表情に変わる。それを聞いたユリウスの顔も少しだけ安心したように見えた。彼らが仲間で良かった、そうラングは思った。

 

 

 

 

部屋を出ると有角の言った通り見覚えのある通路に出た。

ここからならほんの数分もあればダンスホールまでたどり着けるだろう。

ダンスホールまでの道すがら、気になっていた事をユリウスにぶつけてみる。

 

 

「さっきの金髪の男……本当に有角なのか?」

 

 

ユリウスの表情が少しだけ険しくなる。若干の間の後、「詳しく聞いた訳じゃないが……」と前置きし、ユリウスが語り始めた。

 

「あいつの本当の名はアルカード…………ドラキュラ伯爵、つまりここの城主の息子だ」

 

ユリウスの言葉にラングの目が大きく見開く。確かに人間離れした雰囲気を持つ男だから何かしら秘密があるのではと思っていたが……まさか我々が今から倒そうという親玉の息子だったとは。

だが、やけにこの城の事情に詳しい事など、城主の息子だというなら合点が行く。

しかしドラキュラの息子という事は……奴も吸血鬼なのだろうか?

 

「あいつは半分人間だよ、母親が普通の人間だったそうだ。ダンピール……って奴になるのかな? よく知らないが……」

 

人間と吸血鬼のハーフをダンピールというらしい、最も有角は自身をそう呼ぶ事は無いそうだが。

 

 

「アルカードとドラキュラ、そして母親の間に一体何があったかは解らない……けどあいつは何百年もの間ドラキュラを止めるため、俺たち人間に協力してくれてる……それで十分じゃないか?」

 

 

「信用できるのか?」

奴を疑う訳では無いが、思い切って聞いてみた。

 

 

「そうでなきゃ仲間なんてやってないよ……あいつは無愛想だけど嘘だけはつかないからな……けどどうしても信じられないなら自分自身の目で確かめてみろ」

 

ユリウスの口調が少しだけ強くなる。信頼している仲間を疑われた気がして気分が悪くなったのだろう……軽率な発言だったと反省する。

 

 

 

有角に手渡されたシルバーガンを手に取って見た。これが無かったら自分は本当にただの足手まといだったろう……「仲間に信用して欲しかったら言葉だけではなく行動で示せ」新兵の頃、教官によく言われた言葉を思い出す……。 

有角の言葉と行動…… ――それは決して愛想の良い物では無かったが―― そのどちらも信用に値するものだったとラングは思った。

 

 

 

 

そんな事を考えているうちにダンスホールに着いた。中は賑やか……というよりは何処か騒々しい。

 部屋の中央には自分達がホールを出た時には無かった五角形の祭壇が飾られ、そのさらに中央、一段高い場所に大きな水晶が置かれている。

 

「皆さんご無事でしたか!どうやら鏡もうまく設置できたようですね」

 

 何か作業をしていたタダモリがこちらに気付きやってくる。見ればその顔は大粒の汗にまみれていた。こちらもこちらで大変なようだ。

 

「あのでかい水晶でドラキュラを封印するのか?」ユリウスが質問する。

 

「いえ、少々違います。あれは五箇所の鏡から集めた光をある場所に送るための物です」

「何でもこのダンスホールの真上、悪魔城最上階のさらに上に”慈愛の間”という部屋があるらしく、そこにまず光を送るのです。そしてユリウスさん、ドラキュラ討伐後、あなたの持つその鞭を部屋にある聖母像に捧げる事によって結界が発動。城を日食に封じ込め、封印が完成するのです」

 

 タダモリがつたない英語で一生懸命に説明してくれた。もっとも仮に流暢な英語だったとしても自分には半分も理解できなかっただろうが……。

 

 

 

「うーん……まず鏡を五つ置いて、ドラキュラを倒して、部屋にムチを置く。こういう事でいいのかな?」ハルカが簡潔にまとめる。

 

「そういう事でOKです」

タダモリが簡潔に答える。だったら最初からそう説明して欲しかった。

 

 

「それと有角殿から伝言です。”礼拝堂の次は闘技場へ向かえ。ただし時計塔へは自分が戻るまで絶対に行くな”……と、念を押されていました」

 

有角は古い知り合いに会いに行くと言っていた。きっとデスや核を取り戻す為の秘策があるのだろう……とりあえず今は指示に従った方が良さそうだ。

 

 

 

ここでずっと気になっていた事を聞いてみた。陸軍の部隊がここに来なかったか? と……やにわにそれまで穏やかだったこの日本人の顔が曇りだす。

 

「あ……いや、私ども神官は……まあ特に何も無かったのですが……教会の方達が……」

 

……間違いなく悪い話だろう。見れば教会関係者がなにやら揉めている。騒がしかったのはこのせいか……とりあえず話を聞いてみる。

 

 

 

「何なんですかあの方達は!非常時だとか徴発だとか言ってお金も払わずに薬を持ってっちゃいましたよ!ドラキュラ討伐の為に少ない予算から捻出したのに!!」

 

 ラングの目の前が真っ暗になる。徴発とかいつの時代の軍隊だ……やはりここの事を将軍に教えるべきではなかった……。しかも同じ合衆国の軍人という事で教会の人間はラングに肩代わりしろと迫る。

 いや、海兵隊と陸軍では指揮系統も予算も別だと説明したが興奮している彼らには取り合ってもらえない。

 

一応値段を聞いてみる……”とんでもない額”だ!とても安月給の軍曹に払える金額ではない!

……というかこんな高い薬をユリウスはホイホイ飲ませてくれたのか、恐る恐るユリウスを見る。

 

「ん?あー別に気にしなくていい。俺の師匠の家が大地主でさ、教会の仕事手伝って報酬貰ったりもしてたし、それなりに蓄えはあるから」

 

有角の正体を知った時と同じくらいの衝撃だ……。服装からは全く想像できなかった、

……人は見かけによらない物だ。

 

 

ユリウスとハルカの取り成しでなんとか自分が払う事だけは回避できた。その代わりという事なのか、二人は色々な品物を物色している。青色だけでなく赤色の液体が入った小瓶や、例の聖書、自分にはどういった物なのか皆目見当もつかないが、女性物の靴まである。

 

「お前も持っとけ」とユリウスがポーションを幾つか投げてよこした。落として割ったらたまらないと慌ててキャッチする。それを見た二人が笑う。自分も頭をかきながら笑った。

 

 

 

 

 

礼拝堂での戦闘で失った物資の補充も完了し、我々は一路、闘技場を目指し歩みだした。

さすがに今度はハルカも我が侭は言わず、真ん中に収まってくれた。まあ随分ブーたれてはいたが……

 

ユリウスを戦闘に一行は快調に進む。自分はといえば、レライエから手に入れた銃の習熟のため、ハルカのレクチャーを受けながら敵と戦っていた。この銃は弾丸はいらないが使用者の魔力?とかいう物を消費して撃つらしく、威力はあるのだが数発も撃つと軽い眩暈がする。銃に慣れれば撃てる回数も増えるとハルカは言うが、これなら有角に貰った銃の方が無制限に撃てる分、扱いやすいなと思った。

 

そうして何とか銃の扱いにも慣れた頃、我々は驚くほどあっさりと闘技場と思われる建物の前に着いてしまった。

 

あまりにもあっさりしすぎてユリウスは罠ではないかと疑った。……そして実際罠だった。

 

イタリアのコロッセオのような闘技場に足を踏み入れた瞬間、突然視界が真っ暗になり、気がついた時には天から吊るされた鳥かごのような檻の中だった。

 

 

 

 

 

 

『ウオオオオオオオオ――――ッ!!!』

 

 

突如闘技場が揺れるほどの大歓声が巻き起こる!檻の隙間から見下ろせば、観客席は隙間が無いほどの人で埋め尽くされている。が、どうも様子がおかしい。眼を凝らして見て理解した。

骨だ!客は全て肉つきの無いスケルトン!それらが数え切れないほどの数、客席にひしめき合っている!!

 

やがて赤色のタキシードを着た一匹のスケルトンが、アリーナの中央へと歩み出で、感情の全く無い声でスピーチを始めた。

 

「ようこそおいでくださいました……ここ悪魔城「煉獄闘技場」へ……。皆様方にはこちらが用意した三体の魔物と順番に……一対一の” 決闘(デュエル)”をしていただきます……」

 

「ウオオオオッ!!!」とスケルトン達が再び大歓声をあげる。

 

 

「賭けて頂くのはあなた方一人一人の命……もちろん勝った場合に備え賞品もご用意しております……」

 

スケルトンが”パチイィン!”と指を鳴らすと、向かい側の上空に自分達が入っている檻と同じ物が現われた。

 

「!? ティード将軍!?」

 

ラングが思わず叫ぶ!吊るされた檻の中にいたのは将軍を含む三名の海兵隊員だった。

 

「あなた方が一勝するごとにお一人お返しします……しかしもしあなた方の誰かが負けた場合、負けた当事者とあの中の一名……計二名をこの悪魔城の糧とさせていただきます……」

 

”ウオオオオオオ―――!!!”と、地鳴りのような歓声がさらに大きくなった。

 

 

 

「勝手な理屈押し付けやがって!!」ユリウスは腰のヴァンパイアキラーを手に取り、檻に向かって勢いよく振るう!だが静電気のような衝撃がムチに走り、攻撃がはじき返された!ただの檻ではない、結界が張られているようだ。

 

「……まず最初の決闘…… 修練”心”の決闘者(デュエリスト)は……」

 

スケルトンが再び指を鳴らした。次の瞬間さっきまで檻の中にいた筈のラングが、闘技場のアリーナに一人で立っていた。いきなり起きた不可思議な現象に思わず辺りを見回す。見上げればユリウス達は相変わらず上空の檻の中だ。何か叫んでいるが歓声にかき消されて全く聞こえない。

 

 

「……修練の”心”は文字通りあなたの精神が試されます……心を強く持ち立ち向かってください……」

 

そう言うとスケルトンは三たび指を鳴らし、その音に反応するようにラングの正面にある鉄格子がゆっくりと開いた。

 

開いた格子の先……暗闇の奥から何かがのっそりと歩いてくる……

 

 

――その姿を見た瞬間―― ラングの背筋が凍りつく……!!

 

忘れようと思っても忘れられない……拭い去ろうとしても拭いきれない……”奴”の顔……!!

 

 

闘技場の光の下……魔獣ベヒモスが再びその姿を現した!!

 

 

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