悪魔城ドラキュラ Dimension of 1999 作:41
「ある意味では奴こそが真の黒幕である」
師はことあるごとにこう言っていた。この世の全ての混沌に従う者、それがデスだと。
ドラキュラという存在でさえ、ある意味このデスによって作られたとも言えると……
「随 分 と 久 し い な ベ ル モ ン ド の 末 裔 よ ・ ・ ・ 」
デスの方から突然ユリウスに語りかけてきた。別に恫喝や、声を荒げているわけでもないのに、デスの放つ桁違いのプレッシャーとオーラに思わず足がすくみそうになる。まるで冷たい氷の手で体中を撫で回されている気分だ。
あの巨大なベヒモスにも一切の動揺を見せなかったユリウスが、この魔物に対しては足がガタガタと震え、背中に冷たい汗が一筋、”つぅ……”と流れるのを感じた。魔物に対して生まれて初めて感じる恐怖だった。
「お前なんかと会った事は無い!」
精一杯の気勢をあげて叫ぶ。するとデスの変わるはずの無い顔がニタニタと笑っているように見えた。よくよく考えればこの千年の時を生きる(死神をこう表現するのも妙だが)魔物は自分の先祖と何度も戦っているはずで、その事を言っているのだと気づく。……我ながら余裕が無くなっているなと思った。
そうだラングは大丈夫か?気になって顔を覗くと、案の定顔面は蒼白、目は見開き、体は小刻みに震えている。が、どうも様子がおかしい。彼の目線の先を見ると、デスではなくその左手に浮かぶ緑色の物体を追っている。
そういえばデスは探し物がどうとか言っていた。ラングが探している物とはあれの事なのか?デスはお手玉でもするかのように”それ”を弄ぶ。よくよく見ればラングが言っていた小さいドラム缶に見えないことも無い。
「おい!ありゃ一体なんだ?」
ラングに尋ねる。
「…………SADMだ……」
震える声でラングが答えた。だが軍人ではないユリウスにはそれが何なのかさっぱり解らない。若干イラつきながら再び問いただす。
「S…A……何!?俺にも解るように話せ!」
ラングは一旦目を瞑ると覚悟したように話し始める。
「”S・A・D・M”……Special Atomic Demolition Munition…… 特殊核爆破資材……
……我が海兵隊が開発した超小型の核爆弾だ!!」
ラングが吐き捨てるように言い放つ!!そしてラングは尚も続けた。
「上からの命令だった……もしこちらに利が無い場合!また施設の制圧が困難と思われた場合!この時限式の核装置を使い、施設自体を爆破、破壊せよと!!」
「テロリスト相手に何故いまさらこんな冷戦の遺物を……と、そのときは思っていた……だがこの城やバケモノ共を見て解った!上の連中は最初からコイツで片をつけるつもりだったんだ!」
”何て事を考えやがる!!”ユリウスは憤慨した。
一度入ったらドラキュラを倒すまで二度と脱出できないこの城で、もしそんな物を起動すれば使った方もただではすまない!
第一いかに核兵器とはいえ、地上の物理法則が一切通用しないこの悪魔城に、それが一体どれほど有効だというのだろう!?――下手をすれば被害だけが大きくなり……文字通り無駄死にだ!!
……兵士達を捨て駒にするつもりだったのかと、ユリウスは軍という組織に対して何ともいえない憤りを感じた。
「・・・・・フ フ フ フ ハ ハ ハ ハ フハハハハハハハハハハハハハ!」
今度は完全にそれと解る声を上げてデスが笑う。
「前に現世に出た時から50年経つが……人間とは変わらぬ物だな……いや、むしろ50年前よりも退化しているかな?」
「この悪魔城がこんな品位のカケラも無い武器でどうにかできると思っているのだからな…………フ ハ ハ ハ !! 人間とは面白い」
嘲笑しながらデスが饒舌に語り続ける。だが不意に笑いを中断すると、あるはずのない目を揺らめかせながらユリウスとラングを一瞥し、動くはずのない口元をニタリと歪ませた。
「……だが……わざわざここまで運んできてくれたのだ……その労をねぎらい……」
「 イ マ コ コ デ タ メ シ テ ヤ ロ ウ ! ! 」
デスが突然左手を高く掲げ、おぞましくも冒涜的な呪文を唱え始めた!
―――ユリウスとラングに緊張が走る!!こんな近くで核の直撃を浴びたら……考えただけでも恐ろしい。しかもいくら小型とはいえ、今からでは爆発の射程外に逃げるのも間に合わない!
程なくデスの手のひらが青く発光し始めた、核物質が臨界する時に発せられるという
”チェレンコフの光”という奴だ!これを目視したということは、すなわちもうその人間は助からない……!
「もう……ダメだ……!」
諦めの感情が広がるのと同時に、デスの放つ光も次第に広がって行き……
やがて……ホール全体がまばゆい光につつまれた………