悪魔城ドラキュラ Dimension of 1999   作:41

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「消し飛べッ!!“universitas”(ウニウェルシタース)(宇宙)ッ!!」

 

 ハルカの奥の手、光と闇の合成印術が暗黒神官シャフトに襲い掛かる!!ハルカを中心とした空間がまるで宇宙のごとき異次元へと変わり、隕石と次元のうねりが周囲の空間を削り取っていく!

 

 

「万物の根幹である光と闇を合わせる事で空間ごと作り変えるだと……!?」

 

 待ち構えていたシャフトもさすがにこの技には驚嘆した。

人間の身でかような術を作り出すとは……かつて自ら捨てた”人間”の力を、今シャフトはまざまざと見せつけられていた。

 

 

「――だがッ!」

 

 しかしシャフトも生半可な理由で”人間”を捨てたわけでは無い。今更遠い過去に捨てた力に負けるわけにはいかないのだ。

 

 印術の威力を目の当たりにしたシャフトは咄嗟に一計を案じた。迎撃するために呼び戻した水晶の群れを前面に集中。カウンターではなくひたすら耐え忍ぶための壁とし、さらにダンスホールでユリウスの攻撃をうけた左腕を前に出した。例え左半身を失っても必ず勝つ。シャフトの執念が導き出した作戦だった。

 

 

”ドガガガガガガガガガガガッ!!”

 

「ぬうううううッ!!?」

 

 印術の隕石はシャフトの作り出した部屋を空間ごと突き破り、崩壊させていった。だが全魔力を防御に割り振ったシャフトの水晶壁は想像以上に固く、合成印術の力でも崩しきるのは並大抵の事ではない。そうしている間にハルカの体もじわじわと崩壊、悲鳴を上げ続ける。

 

 

ハルカの体が崩壊するのが先か――

シャフトの防御が崩れるのが先か――

 

 

その結末は―――

 

 

 

                 ◆

 

 

                 ◆

 

 

                 ◆

 

 

 

「愚かな……意地を張らず、術をとめておればよかったものを……」

 

 哀れみのこもった眼差しで、シャフトが地に伏すハルカを見下ろす。決死の奥の手を放ったハルカだったが、暗黒神官の魔力が一歩その上をいったのだ。

 

()の身でありながら見事な技だったぞ娘子よ……だが勝ったのは()()を捨てた私だったな」

 

「もし貴様がいま少し印術とやらに習熟していたら、もしお前が姉の魂を宿さず万全だったなら、勝っていたのは………………いや、もはやそれも詮無き事、か。…………ぐ…ッ」

 

 もう返答もしない少女を見下ろしながら、シャフトが自らの勝因を伝える。だがそれも本当に紙一重だったと見え、シャフトは半壊した体を大きくよろめかせ膝をついた。かろうじて意識だけは繋ぎとめたが……正直な所いまだこうして存在している事が不思議なくらいだった。

 

 

「さすがに……この体ではもうまともに戦えぬ……か」

 

 シャフトは自身の状態を冷静に鑑み、傍らで見下ろしているデスに話しかけた。

 

 

「私はいったん本城へ下がるが……デスよ、貴様一人でこの場を収められるか?」

 

 聞きようによっては見下しているともとれるシャフトの物言いに、一瞬デスの表情が気色ばむ。

 

 

「愚問だな……それより足手まといはさっさとご退場願おうか」

 

「…………」

 

 売り言葉に買い言葉とでもいうのか、デスは戦果をあげたシャフトに吐き捨てるような言葉を投げかけた。だがシャフトは特に感情を動かす事も無く、視線の先で倒れているハルカを一瞥すると、ポツリと呟いた。

 

 

「努々、油断せぬようにな……」

 

 そう言うと、シャフトの姿は深殿から霞のように消えてしまった。

 

 

 

 

「フン……!司祭風情が偉そうに。まあ神の駒を一つ落としたのは奴にしては上出来だがな」

 

 デスが鼻息荒くひとりごちる。アルカードは胸を貫かれ死んだも同然、ヴェルナンデスは暗黒神官が仕留めた。そして最大の標的であるベルモンドは配下となったラングが押さえ身動きは取れない。ここから神の下僕に何ができるというのか?もはや負ける要素が見当たらなかった。

 

 

 

 

 

「く……ッ、何で……!手ごたえはあったのに……」

 

 ユリウスは再びラングの手中に捉えられ、その剛腕に握りつぶされようとしていた。だがどうしても合点がいかない。確かにグランドクロスはラングに効いていた。一瞬ではあるが人間の姿に戻ったのも確認した。だが何故か……人間に戻った筈のラングが再び化け物へと変貌を遂げたのだ。

 

 

「理由が知りたいか?ベルモンド……」

 

「……ッ!」

 

 訝しむユリウスの心の内を見透かしたのか、死神が愉悦に満ちた声色で語りかけてきた。

 

 

「私は言ったはずだ。五百年前の呪いとは ”わけ” が違うと……」

 

 

「…………もしその男が何の罪も無い市井の人間だったなら、ベルモンドの光で混沌は打ち払われ元の人間に戻っていただろう。――だが!その男は軍人だ。手にかけた命の数は両手の指では足りぬ!」

 

「……!!」

 

「この私が無関係の混沌だけをその男に与えたとでも思ったか?軍人として活動していた間、殺した者の魂は片端から城へ送り続けたが……その中からその男が直接殺めた者を一人残らず呪いとして送ったのだ!」

 

「つまり今この男を取り巻いている呪いはそ奴個人に向けられた物!いかにベルモンドが持つ浄化の光だろうと、簡単には打ち払えぬぞ?何しろこの呪いは己の命を絶たれた事に対する”正当な復讐”なのだからな!」

 

 

「……どうする?世界の為に友を許せと悟すか?それとも泣いて許しを請うか?まさか心優しきベルモンドが罪なき者どもの魂を焼き尽くすとは言うまいな?クハハハハ!!!」

 

 

「…………ッッ!!」

 

 

 デスの言葉に対し、ユリウスは答えが見つからなかった。ラングをこのまま化け物にさせておくわけにはいかない。だがもしデスの言っている事が本当ならば、自身がデスを恨むように、ラングに憑りついている者達にもラングを恨む権利はある。

 ラングに体を絞められ呼吸が出来ない事も相まって、もはや今のユリウスはまともに思考する事すら出来なくなっていた。

 

 

 

「軍曹!とどめは私がさす!そのままベルモンドを押さえていろ!」

 

 デスは人間だった頃の調子でラングに指示をだすと、大鎌をクルリとひるがえしユリウスの下へと飛び立つ。

 

「ぐ……ッ、く……そォォ……」

 

 ユリウスは自身を掴んでいるラングの手から必死に逃れようとしたが、グランドクロスを放った反動か、まるで自分の身体では無いように力が入らない。……そうこうしている間に、死神はユリウスとラングの目の前に音も無く降り立った。

 

 

「この時を10年待った。ようやくあの時の恥辱を晴らせる……ッ」

 

 デスの脳裏に12年前の惨憺たる結末がよぎった。積年の願いがようやく果たせると感慨にふけるデス。その顔は白い髑髏でありながら赤く紅潮している様にも見えた。

 

「!」

 

 ……と、その時ラングが命令されていないにもかかわらず、まるで処刑場の執行人の様にユリウスの頭を死神の前に差し出した。その予想外の行動に思わずデスの口角が緩む。

 

「クハハハハハハ!!良い、いいぞ軍曹!気が利くではないか!どうだベルモンド!気を許した仲間に裏切られ、首を差し出される気分は!!」

 

 いよいよ死神の感情が高ぶる。このまま放っておいたら骨だけの身体でも絶頂しそうな勢いだ。

 

 

「く……目ェ覚ませラング!こんな奴らにいいようにされていいのか!!海兵隊魂はどうしたッ!!嫁さんはどうするんだ!!」

 

 やぶれかぶれの最後のあがきか、ユリウスがラングに訴えかける。だがラングはユリウスの叫びに答えるどころか、反応する素振りさえ見せない。

 

「クハハハハ!無様だなベルモンド!だが貴様の耳障りな声もいい加減聞き飽きたわ。この大鎌に刈られ永久に悪魔城を漂うがいい!!」

 

「――!!」

 

 ユリウスの醜態を見て満足したか、死神は手に持った大鎌を頭上高く構えた。処刑台に繋がれた罪人の気分とはこういう物なのだろうか……と、ユリウスは思った。……もしこれが常人ならば目を固く閉じ、顔を背け、死の恐怖から必死に逃れようとしただろう。

 

 だが……ユリウスは罪人ではない。それどころか自身の行いに引け目など一切ない。ユリウスは例えこのまま殺されるとしても自分の意地までは刈り取らせまいと、死を目前にした状況下でも尚、死神をその蒼い瞳で睨みつけた。

 

「……貴様ッッ」

 

 最後まで屈服しないベルモンドの末裔に、愉悦の感情に満ち満ちていた死神の顔がたちまち憤怒の色を帯びる。死神は湧き上がる感情に身をまかせ、ユリウスの首目掛け鎌を振り下ろした!!

 

「死ねィ!ベルモンドッ!!」

「――――ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――いいようになんかさせないさ、ユリウス……――

 

「――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

――囁くような声が聞こえたその直後、ユリウスは強い力で投げ飛ばされ……そして――

 

 

 

”ヒュゥンッ!!”

 

「――!!!」

 

 死神の大鎌が空しく宙を裂いた!

 

 

”ガシィッ!!”

 

「ぬあッ!?」

 

 次の瞬間、デスの体は圧倒的な力で羽交い絞めにされる!!

 

 

 

 

 

 

 

「捕まえたぞ……ティード将軍ッ!!」

 

 異形の怪物から漏れ出たその声は紛う事ないラングの物だった。

今、城の混沌から帰還したラングの腕が、邪悪な死神をとらえていた―――

 

 

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