悪魔城ドラキュラ Dimension of 1999   作:41

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エピローグ
36年後……


 

 ―――薄暗い、陰気な石造りの通路を一人の男が歩いている。

 

 年の頃は軽く50過ぎ、身に纏う物は相当使い込んだと思われるくたびれたコートと泥だらけのブーツ。オシャレのつもりなのか首に巻いたバンダナはかえって古臭く、逆に時代に取り残された者の哀れさを醸し出している様だ。

 

 若い頃はさぞ端正だったと思わせるその顔立ちは、無造作に束ねた赤茶色の長髪と生え散らかした髭が全てを台無しにし、その苦難の人生を物語る様に刻まれた深い皺は、荒々しさを通り越していっそみすぼらしく見えた。

 

 ただ……、その落ち窪んだ眼窩に光る蒼い眼の輝きだけは、彼があらゆる修羅場を潜り抜けてきた猛者である事を雄弁に語っていた。

 

 

「ここにも見覚えがある……ッ!」

 

 

壁にかけられた燭台を見ながら男が呟く。

 

 

「この絵も……ッ!この鎧も……ッ!」

 

 

辺りを見回しながら誰に語るでもなく声が出る。

 

 進めば進むほど…歩めば歩むほど…まるでモノクロの写真に少しずつ色が重ねられるかの如く、次々と曖昧だった記憶が確かな物になっていく……。

 

だが何故か、もっとも肝心な……自分にとって一番大切な部分が思い出せない……!

 

 焦燥感に駆られながら尚も男は歩を進める。気づけば歩みはいつの間にか早歩きに、やがて疾走へと変わっていた。

 

……この廊下を右へ曲がり…その先の階段を昇って…三つある扉の真ん中……初見の人間であればまず間違いなく迷うであろう複雑に入り組んだ迷宮を、男は寸分の狂いも無く走り続けた……

 

 

…………そして男はとうとう一つの部屋へとたどり着く。

 

 

 

 

 

 部屋の中は瘴気に満ちた城の中とは思えないほど澄んだ空気に満ちていた。周囲各4間程の壁に囲まれた部屋は、四方の隅に青く輝く篝火が灯され、その奥には慈愛に溢れた美しい女性の像が、まるで赤子でも抱くかのように手を突き出した姿勢で鎮座している。

 

 

 男は導かれる様にその像の前に進み出た。像の手には銀色に輝く鞭がうやうやしく置かれている。

 

 

 落ち着かせたはずの息がまた荒くなる……胸の高鳴りが止まらない………

 懐かしいような………つらいような…………得体の知れない感情がこみ上げてくる………

 

 

震える手で……ゆっくりと鞭に触れる……

 

 

「!!!!」

 

 

 ――瞬間、電流が走ったかの様な衝撃が男の体を貫いた!!続いて激流の如く流れ込んでくる過去の記憶……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「母…さん………先…生………ハルカ………ラング………みんな……!」

 

 

 暖かな母のぬくもり、厳しくも優しい師の声、少女の真っすぐな眼差し、朴訥とした男の朗らかな笑顔…………懐かしく、暖かく、嬉しく、そして………とても悲しい―――

 

 男は……ユリウスは、失っていた記憶を……36年前の戦いの全てを思い出した。

 

 

 

「なんで……何で俺はこんな大切な事を………今まで………!!」

 

 

 

気付けばユリウスは鞭を抱きかかえたままその場に崩れ落ちていた。

 

何年も……何十年も忘れていた感覚が蘇った……。乾いた頬に、滝の様な涙が流れ続けた……

 

 

歴戦の兵の闘志を宿した男の瞳は……いつの間にかあどけない面影を残す少年の頃に戻っていた…………

 

 

 

 

 

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