アイツとメガネ、異世界を行く   作:ふくふくろう

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買い物と売り物

 

 

 

 クーラーの利いたリビングで清潔なソファーに腰掛け、キンキンに冷えたコーラを飲む。

 隣にはメガネ美人の彼女。白いサマードレスが眩しい。

 まさに至福のひと時。

 ちなみに僕は、101という数字が胸にプリントされた、Tシャツにジーンズだ。

 

「そういえばさあ、昨日ブロックタウンに着いた時に団長さんとひそひそ話してたよね。あれってなんの話だったのさ?」

「むう。乙女の会話を詮索すんな、なのです」

「まあ、無理に聞き出そうとは思わないよ。それで、午後からは買い物だっけ?」

「楽しい冒険者モードなのです」

「疲れるんだよね、あれ」

「たまにはあんなマスターも良いのです」

「はいはい。もう出る?」

「早く行くです。ジャケットを羽織って、銃は目立たないようにするのです」

「わかったよ。麻の黒いジャケットか、チンピラっぽいね」

 

 ティーシャツの上に2丁の拳銃と腰にサブマシンガンを装備して、ジャケットを着る。完全には隠れてないけど、目立たなくはなった。

 ウイはサマードレスの裾を捲って、太腿に32口径を装備している。エロっ!

 

「じゃあ行こうか、相棒」

「ええ。危険は少ないと思いますが、気を抜かずに行きましょう」

 

 施錠するウイを待ちながら、マーカーに赤がないか確認する。

 治安はいいと言っていたが、油断してウイになにかあれば僕は一生後悔するだろう。何をするにも念入りにだ。

 

「お待たせしました」

「ああ。どこから回る?」

「武器類からですね。そうでした、お小遣いをあげないと。はい。無駄遣いしないように」

 

 網膜ディスプレイが勝手に開かれ、硬貨500と表示されている。

 

「多くねえか?」

「武器類も買うならそんなものでしょう。まあ、在庫がどのようなものかは、行ってみなければわかりません。品揃えがダメなら、シティーで使ってください」

「わかった。地図と弾薬は絶対だが、銃は吟味する」

「それがいいでしょう」

 

 コンテナの間を抜け、広場まで歩く。

 見知らぬ僕達にも挨拶してくれる住人もいた。

 それでも、擦れ違う人の数は少ない。錆びた街、全体的にそんな印象だ。

 

「こんにちは。ちょっと見せてもらいます」

「邪魔をする」

 

 僕達がまず入ったのは、3つのコンテナをくっつけて間の壁を抜いた大きな店だ。窓がなく明かりが少ないので薄暗い。

 入ってすぐのレジに、30代くらいの女性がいた。

 団長さんに負けないお胸だ。巨乳率高いな、ブロックタウン。

 

「いらっしゃい。あら、アンタ達が噂の冒険者さんかい?」

「多分そうだと思いますよ」

「ダンが街中の店に、2人連れの冒険者からぼったくったら営業停止だって連絡してたわよ」

「へぇ。大した待遇だな」

「そりゃそうさ、色男。1流の冒険者がいる街には、行商人が寄って行く。街からすれば、喉から手が出るほど欲しい人材だよ」

「なるほどね。それより、コイツの弾が欲しい。9ミリだ。あるかい?」

 

 トリガーに指を置かずに自動拳銃を抜いて見せたが、心の中ではモテ期到来かとドキドキしている。

 

「懐かしいね。それを使ってたベンジャミンは、ここの自警団にいたんだ。多めにあるはずだよ」

 

 ブロックタウンの出身だったのか。

 団長さんは、何も言ってなかったな。

 

「36発あったよ。錆のない1級品さ」

「1発いくらだ?」

「弾なら硬貨3枚、アッチの話ならタダだね」

 

 モテ期確定キタコレ。

 でも僕にはウイがいるから、意味ないけど。

 

「そうかい。硬貨108枚、取り出し。ほら、数えてくれ」

「信用するさ。アイテムボックスは、心の声より肉声を優先するんだろ」

「よく知ってんな。36、確かに」

「12から、アイテムボックス持ちの情婦になって旅をしてね。この店は、ソイツが残してくれたもんさ」

「なるほど。狙撃銃とショットガンの弾は?」

「待っとくれ。その型だと狙撃銃が3発、ショットガンが5発だね。狙撃銃が硬貨5枚、ショットガンは2枚でいいよ」

 

 少なっ。

 ワンマガジンもないのか。

 

「全部もらおう。硬貨25枚取り出し。これな」

「あいよ。お嬢ちゃんは入用の弾はないのかい?」

「ええ。まだ大丈夫です。それより、防弾チョッキはありませんか?」

「すまないが、たまに仕入れても自警団に納めてるんだ。売り物はないよ」

「地図はないか?」

「ここからシティーまでのならあるよ。コピーだから、アンタ達にならタダでいい。ほら」

「悪いな」

「じゃああとは、適当に商品を見せてもらいますね」

「あいよ。値札はあるが、アンタ達なら値引きするから声をかけとくれ」

 

 適当に返事をして、店内をウイと見て回る。

 

「雑貨もあんだな」

「ええ。タバコもありますね。1箱、硬貨10枚」

「銃弾より高えのかよ」

「チェスとオセロは30枚。完品だからでしょうね」

「玩具屋の倉庫でも見つけたら、一財産だな」

「その時は値崩れして買い叩かれないように、小出しにするしかないですね」

 

 鍋、フライパン、フォークにスプーン。

 どうやらこの店は、武器屋じゃなくて何でも屋らしい。

 

「防具は手製の革製品。過去の軍用品は1つもありませんね」

「シティーに期待だな」

「ええ。武器も同じような物ですね。銃は、22口径が3丁と32口径が1丁」

「猟銃、売るか?」

「いいえ。あれは自警団との交渉に使いたいと思います」

「何が欲しいんだ?」

「特にはありません。ただ、団長さんもダンさんも32口径のみで見張りについていました。射程の長い猟銃は、それこそ喉から手が出るほど欲しいでしょう」

「そうかい。なんか売りはするんだろ?」

「ええ。レジに戻りましょう」

 

 レジに戻ると、女性はタバコを吸って雑誌を読んでいた。

 

「俺も吸っていいかい、姐さん?」

「ああ。やっとくれ。灰皿はこれさ。やっぱり、こんな店じゃ欲しいのはなかったかねえ」

「いい品揃えですよ。ただ私達は遺跡帰りなので。なにか買い取ってもらえますか?」

「う、うちに遺跡品を売るってのかいっ!?」

「ええ。長い付き合いになりそうですし、うちの男を誘惑しない限りは売りますよ」

「当たり前だよ、あたしゃジジイじゃねえと濡れねえのさ!」

 

 モテ期終了のお知らせ。

 たはぁ……

 

「ここに出しますね。どんな系統のをお望みですか?」

「ブロックタウンには冒険者は寄り付かないからね。生活用品や娯楽関係だね」

 

 ポンポンと、ウイが食器や雑貨類を出してゆく。

 最後に出したのは、『エロ本』と『変態夫婦のエロ写真』だった。まだちゃんと見てないのに、そう思ったら睨まれた。

 危ない危ない。黙ってタバコを吸って待ってよう。

 

「素晴らしい状態だ。ただ、これをすべて買ったら釣り銭もなくなるね。バラ売りもしてくれるかい?」

「鍋の蓋だけいらないとかでなければ」

「当たり前だよ。エロ関係を全部と、鍋と食器を1つずつ。それで硬貨300でどうだい?」

「大きな街の適正価格ですね。値切らないのですか?」

「長い付き合いになりそうなんだろ。そんな真似はしないさ」

「ではそれで。それとこれはおまけです」

「湯沸かしポットじゃないか。可動品かい!?」

「ええ。これからもよろしくお願いしますね」

「任せときな。アンタの男に色目を使う女は、あたしがシメてやるよ」

 

 何を任せてんのさ。

 がっちり握手までしてるし。

 

「さあ、次は食料品店です」

「ああ。邪魔したな、姐さん」

「また来ますね」

「いつでも歓迎だよ。まいどありっ」

 

 夏の日差しの下に舞い戻り、次の店に向かう。

 

「こんにちは」

「邪魔するぜ」

「いらっしゃい。あんたたちが冒険者様かい?」

 

 興味ありげに聞いてきたのは、小太りの人の良さそうなおじさんだ。

 

「ええ。オーガ2匹と、ゴブリンが30匹ほどあります。適正価格でならお譲りしようかと、寄ってみました」

「オーガだと大きな街じゃ硬貨300。今の有り金全部だ。ゴブリンなら50。オーガ1匹にするか、ゴブリン6匹にするか。いや、冷凍庫の調子が良くない。ゴブリン3匹くらいにするか……」

 

 ブツブツ言いながらおじさんが悩みだしたので、店内を見て回る。

 意外な事に、冷凍庫には牛肉500グラム30枚、なんて張り紙があった。豚や羊もある。だが、クリーチャーはなかった。牧畜でもしているんだろう。

 

 野菜や果物も、皿に盛られて売っている。

 大きなスイカが1玉30枚。食べてみたい気もするけど、この荒野で美味しい果物が育つとは思えない。なら、缶詰のフルーツで充分だ。

 そういえば、缶詰ないのだろうか。

 コーラはある。500の瓶が、硬貨300枚!?

 誰が飲むのさ、こんな高いの。

 

「ヒヤマ、用事は済みました。帰りましょう」

「おう。売ったのか?」

「ええ。ゴブリン3匹を、硬貨130に値引きしました」

「じゃ、帰るか」

 

 またお願いしますと嬉しそうに言うおじさんの声を聞きながら、広場に出て家路を辿る。

 

「食堂や飲み屋には売らねえのか?」

「ええ。食堂と飲み屋さんは、危険地帯と判断します。エロ猿の飼い主としてはね」

「あのひそひそ話はそれかよ?」

「ええ。それと団長さんが男に興味がない事。武器屋の未亡人は遺跡品でも売れば、味方になってくれる事ですね」

「俺を何だと思ってんだか」

「ちなみに団長さんはレズでドMです。私がストライクらしいので、私の足でも舐めさせてればヒヤマの好きにできますよ?」

 

 ウイの足を舐める団長さんを後ろから……

 

「んー。ダメだな。足舐めるだけでも許せねえ」

「そうですか。まあ、気が変わったらいつでも言ってください。あれでも、職業持ちの優秀な人材です」

「なんか浮気を奨めてる感じだな?」

「神様に頼まれてますからね。産めよ増えよ地に満ちよは、神様の願いです。特に職業持ちは。ですので私が許せる職業持ちの女性には、ヒヤマが種付けをする予定です。言ってませんでしたがヒヤマには、隠しスキルで職業持ち女性の好感度大幅アップ、精力大幅アップ、性技大幅アップが付いてますよ」

 

 確かに毎晩エロマンガみたいになるまで頑張れるから、おかしいなあとは思ってた。ウイも初めてだったのに、びっくりするくらい乱れるし。

 

「なんでまたそんなもんを。ウイだけでいいんだがなあ」

「私もそう思ってましたが毎日たっぷりかわいがってもらい、愛情を疑わなくなってきましたからね。この世界にも幸せのおすそ分けをしてもいいかなと。ただ、僕って言うのはウイの前だけにしてください。それは、誰にも渡しません」

「了解だけど、疑ってたのかよ!」

「恋愛なんて諦めてましたからね。最初で最後の恋愛ですから、臆病にもなります……」

 

 

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