アイツとメガネ、異世界を行く   作:ふくふくろう

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シティーへ

 

 

 

 朝からソファーでダラダラしていると、玄関のドアを叩く音が聞こえた。

 頷き合い、銃を装備して玄関に向かう。

 ドアの向こうに、黄マーカー2つ。微動だにしない。

 廊下の左右にへばりつくようにして、ウイに頷いてみせる。ショットガンの銃口をドアに向けてだ。

 

「はーい。どちら様ですか?」

「ミツカと父の町長です。突然押しかけて申し訳ない。お話よろしいでしょうか?」

 

 ショットガンとサブマシンガンを、アイテムボックスに収納する。

 

「団長さんのスキルは?」

「看破系です。職業は保安官」

「わかった。入れてやれ」

 

 極端な小声のやりとりだが、念のために冒険者口調で言った。

 

「今、開けますね」

 

 左脇に装備し直した自動拳銃のマガジンと、セレクターを確認する。

 職業が保安官なら、拳銃やライフルのスキルもあるだろう。【ワンマガジンタイムストップ】その切り札を、初めて使う事になるかもしれない。

 

「こんにちは。とりあえずお上がりください。冷たい飲み物でもお出しします」

「どうも。町長さん、団長さん」

「ヒヤマ殿、ウイ殿。突然すいません」

「お休みのところ、お邪魔してすみませんな」

「暇してましたので、お気になさらず。さあ、どうぞ」

 

 2人から視線を外さず、ウイが施錠する。

 靴を洗った2人を伴って、リビングに向かった。

 笑顔でソファーを勧めたウイはそのまま、飲み物を取りに行く。

 

「住み心地はいかがですかな」

「いいですね。町長さんと団長さんには感謝してますよ」

「少しホッとしました。お2人なら、どんな贅沢も思いのままでしょうし」

「贅沢には、縁がありませんね」

 

 氷の入ったグラスと何種類かのペットボトルを盆に載せて、ウイがテーブルにそれを並べていく。

 

「お2人は酒は飲まねえんですか?」

「私は弱いのでやりませんな。娘は、なかなかの酒豪ですよ」

「あら、なら冷たいビールを持ってきますね。お待ちください」

「いえいえいえいえ。滅相もない。それに飲みながら相談事を聞いてもらうわけには」

「ならソフトドリンクでお話を聞きましょう。どれがよろしいですか?」

「こ、こんな高価な飲み物はいただけませんよ」

「うちにはこんなもんしかねえんです。すんませんが、これで我慢して下さい」

「水道水で結構なんですが……」

「無理。ウイ、開けて注いじまえ。残す方がもったいねえだろ」

「了解。コーラから開けますか」

 

 硬貨300枚、とか言ってるが、元はタダだ。

 ウイも席に座り、全員が喉を潤した。

 2人は、初コーラにえらく感動している。さて、どんな面倒事かな。

 

「では、聞きましょう」

「では、町長として私からお話しいたします。娘は、職業持ちでしてな」

「それで?」

「職業は、僻地の保安官。【嘘看破】や【犯罪者察知】のスキルがあります。拳銃の戦闘スキルも。シティーのような魔境に赴かれるなら、お役には立てるかと」

「同行を望むと。仕入れですか?」

「ここからは、私がお話しします」

「はいよ。で?」

「すべてを正直にお話しするので、これは嫌だというのがあれば教えてください。お2人に従います」

 

 そう前置きして、団長さんは話し出した。

 

 役場への道をずっと行けば豊富な牧畜地や農地があり、ブロックタウンには空き家が400人分もある事。

 それを活かしてブロックタウンを大きくするチャンスを、ずっと待っていた事。

 

 シティーは繁華街とスラムに分かれ、スラムには移住を望む犯罪歴のない人もたくさんいる事。

 移住の護衛をする有名な冒険者集団がシティーにいる事。

 

 長年の夢のために何代も前の町長から貯めた私財を投げ打つ覚悟がある事。

 移民を募るのと行商人を呼び込むためには、俺達の存在をチラつかせなければならない事。

 そのためなら、我が身を差し出すので許して欲しい事。

 

「まあ、団長さんもらっても困るからそりゃなしで。疑問は、シティーの出方だな。人口流出はシティーの痛手になるだろ。戦争でもやらかすつもりか?」

「シティーの歓楽街は、裁判官という職業の、ジャスティスマンと名乗る謎の人物が仕切っています。スラムはギャングが群雄割拠。いちいち移民の行方を追ったりする暇はないでしょう」

「それでもスラムから人を引っこ抜いたら、殺すくれえするだろ。護衛もしろってか?」

「自分の身は、自分で守ります」

「なら道中の面倒、野営だの何だのを含むな。それはどうする。それとシティー長期滞在を望むなら、俺達に何日も付き合えってか?」

「道中、夜は遠くで1人で休みます。決して邪魔はしません。滞在は1日でもいいのです。移住の護衛をする冒険者は連絡役をシティーに常駐させているので、その方に依頼して行商人への噂を流すのまでやってもらいます。連れて行ってもらえれば、それだけでいいのです。どうか、どうかお願いします」

 

 そう言って団長さんは、テーブルに額をこすりつけるように頭を下げる。

 どうすればいいんだろう。正直、連れて行くなら仲間として扱ってしまうはずだ。出来るだけ助けるだろうし、最後まで付き合うと思う。

 

 まあ、レズなら男友達感覚で付き合えるのかな。ウイに手を出したら許さないけど。

 

「ウイ、どう思うんだ?」

「この場で答えを出せとも言わないでしょう。町長さんはお忙しいでしょうし、返事は明日まで待ってもらって今日は解散しますか」

「そうですな。ゆっくりお考えください。この荒野を他人を連れて歩くなど、荷物以外の何物でもないでしょうから。では、私どもはこれで」

「ああ、良かったら団長さんは残ってビールでもどうですか?」

「え、いやそんな……」

「ここでヒヤマと飲んで仲良くなれば、引き受ける確率は跳ね上がりますよ?」

「父上、先に帰ってください。私は、泊まりになるかもしれません」

「そうか…… ヒヤマ様、娘をどうかよろしくお願いいたします」

「なんもしませんて。ビールとツマミは俺が出す。ウイは町長さんの見送りを頼む」

「わかりました」

「ごちそうになりました」

「コーラの残りは、奥さんにでも持ってってください」

「母上がひっくり返りますよ。こんなお土産」

「町長さんが抱きとめるさ。では、また出発前に」

 

 キッチンの冷蔵庫からビール、シンクの棚から缶詰や袋菓子を取ってリビングへ。

 ウイはもう戻って、団長さんと談笑していた。

 

「さあ、飲もうか団長さん。ウイはジュースな」

「ウイ殿は飲めないのですか?」

「弱えんだよ。人前じゃ飲ませらんねえ」

「酔ったウイ殿もさぞ美しいのでしょうね……」

 

 そううっとりと言う団長さんも、ポニーテールの赤毛に小顔、切れ長の目で綺麗なんだけどなあ。お胸もお尻もでっかくてエロいし。なんでレズなんかやってんのさ。

 

「はいはい、飲んだ飲んだ」

「また高価な物を。ええい、いただきます。乾杯」

「ジュースですが付き合います」

「くーっ、冷えててうめえなあ。風呂もあるし、いい家だよ。ホント」

「美味しいですね。気に入ってもらえたなら何よりです。それより、こうやって酌み交わすならミツカと呼んではくれませんか?」

「そっちが敬語をやめたらな」

「む。言っとくけど、あたしはかなり口が悪いぞ?」

「お互い様だな」

「そうね。とりあえずたくさん飲んで食べなさい、ミツカ」

「ああっ、ありがとうウイ!」

 

 ミツカは酔うと徐々にウイとの距離を詰めていき、最終的には隣りに座ってウイスキーのロックを飲みはじめた。

 こら、ふとももに手を置くんじゃない。それは僕のだ。

 

「エロツカ、そろそろ帰った方がいいんじゃねえか」

「なんでだヒヤマ。あたしは泊まってくぞ?」

「酔っ払ったレズを泊める気はねえな」

「え、あたしってレズなのか?」

「初めて会った時、男に興味なくて君みたいな綺麗な女の子にいじわるされたいって言ってたのに違うの?」

「いじわるかあ、されたいなあ。ウイに罵られたい。えへへ」

「レズでドMの変態じゃねえか」

「そんな事はないだろう。あたしは、ヒヤマになら処女をくれてやってもいいぞ」

「ウイと一緒にだろ?」

「当然じゃないか」

「やっぱレズじゃねえか。って待て、ウイに酒を飲ませんじゃねえ。ああっ。遅かったか。ウイ、そんな強いの飲んで大丈夫か!?」

 

 ウイの顔が真っ赤だ。

 それもそのはず、この間はビール一口で酔って、1本を飲み干さずいい感じにエロエロになってたんだから。ミツカの前で大丈夫かこれ。

 

「桜色になったウイもかわいいなあ。うへへ」

「うっせえミツカ。靴下の匂いでも嗅いで、指を咥えて見てろなのです」

 

 口調が戻ってる。これはヤバイ。

 え。脱いだ靴下を投げつけられて、それの匂いをホントに嗅いでるよミツカ。人んちで何してんのさっ!?

 

「さあ、見せつけてやるですマスター」

「そんな。マスターって呼ばせるなんて、やっぱりヒヤマはウイのご主人様なのだな!」

 

 靴下を嗅ぎながら感動されても……

 

「ウイが満足するまで、ミツカに指の1本も触れてはダメなのですよ?」

「ああっ。ウイ、その下着の匂いもっ!」

「ふん。ウイが満足した後、マスターの後始末を丹念にするならくれてやるのです」

「約束するっ。頑張るから!」

「では、ほれっ」

「ああっ、ああっ!」

 

 どうしよう、酔っぱらい2人を止められない。変態2人の間違いかな。

 とりあえず、ウイスキーをラッパ飲みしてから考えよう。うん。

 

「いい飲みっぷりです。さすがマスター」

 

 その日から3日後、僕達は町長とダンさんに見送られてブロックタウンを出た。

 目指すは北へ3日の距離にあるシティー。

 すっかり冒険者口調にも、レズっ気のあるMにも慣れた。

 

「装備は大丈夫か?」

「ええ。問題ないですよ」

「借りた猟銃の試射もした。あとは実戦で試すだけだね」

 

 ウイはいつものミニスカ軍服。

 ミツカはジャングル迷彩の戦闘服だ。ウイとお揃いの色のミニスカを母親に頼んだが、今回は間に合わなかったらしい。

 

「ミツカはまだレベル5なんだから、無理はすんなよ」

「了解した。2人の邪魔はしない」

「パーティー結成したので、経験値は3人に均等に入ります。すぐに追いつくでしょう」

「地図にある遺跡は避けて行くぞ」

「そうですね。冒険者と鉢合わせるのも面倒です」

「あたしは漲ってきたぞ!」

 

 変なもんが漲ってなけりゃいいがな。

 あれ、思考まで冒険者口調だ。これが、大人になるって事か。

 

 

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