アイツとメガネ、異世界を行く   作:ふくふくろう

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ミートソース

 

 

 

 調べる物がなくなると、自然と視線はウイに集まる。

 手を止めて俺を見たウイが、少しだけ笑った。

 

「ひゃわっ!?」

(レベルアップか。ウイ、ありがとな)

(ごめんなさい。声だしちゃった)

(大丈夫よ、ニーニャちゃん。赤マーカーになってないもの。それに、【鍵開け】がない人は、誰もが1度は通る道なの)

(お兄ちゃんとミツカお姉ちゃんも?)

(ええ。面白いくらいびっくりしてたわよ)

(ニーニャも見たかったなあ)

(で、何があった?)

 

 ウイがロッカーを覗き込む。

 華奢で小柄なウイだから、まるでロッカーに入ってしまったように見える。

 

(『警備用ライアットガン』5丁、『9ミリ自動拳銃』5丁。それと、弾薬ですね)

(微妙だな。ミツカ、ショットガン1丁と散弾をアイテムボックスに入れときな)

(アサルトライフルがあるのにか?)

(ああ。出合い頭はショットガンがいいぞ。それに、武器は多いほうがいい。ウイ、自動拳銃ってニーニャが使えそうか?)

(手首を傷めますよ。反動のない片手用レーザーガンを見つけるまでまでガマンです)

(なら自警団用か。オークはまだ残り80はいる。行こう)

(お、おい。自警団にはいらないからな)

(はいはい。行きますよ、ミツカ)

 

 警備室を出て進むと、頑丈そうな鉄のドアがあった。周りには、椅子や机が散乱している。

 音を出さないようにして開いているドアの向こうを見ると、数えるのもバカらしいくらいのオークの群れがいた。

 隣に仲間がいようが、あいつらには関係ないらしい。酷い臭いと嫌な音が、ここまで届いている。

 顔を引っ込めて、来た道を少し戻った。

 

(どうでした?)

(大ホール。群れの大部分がいるようだ。デカイのは見えなかった)

(約80か。どうする?)

(ミサイルランチャーってのは、スプリットブレットとワンマガジンタイムストップは使えねえかな)

(装填機構はありませんし、4発を上下左右に並べてある形なので、どちらも無理でしょう)

(なら、警備室まで地雷を敷き詰めてから、爆薬投げて起爆するか)

(ミサイルランチャーじゃダメなのか?)

(どんだけミサイルランチャー撃ちてえんだよ、ミツカ)

 

 呆れてミツカを見ると、舌を出しておどけた表情を作っていた。

 

(爆薬を使うなら、ネジとかクズ鉄あるよ。アイテムボックスに入れても銃弾と同じく重量なし扱いだから、たっくさーんあるの!)

(ニーニャちゃん、そんなのと爆薬に、何の関係があるんだ?)

(相手はクリーチャーだ。やるか。ミツカ、クズ鉄たくさん入れた布で爆薬を包んで、大ホールの真ん中で爆破したらどうなる?)

(そりゃ爆発するだろ。……うわあ。クズ鉄がオークに降り注ぐのか。エグいな)

(警備室まで戻って、ウイとニーニャで作ってくれるか?)

(うんっ。ホールはどのくらいの広さ?)

 

 奥行きは30メートル程だった。横もそうだとは思うが、念のために地図を網膜ディスプレイに映す。

 やはり、大ホールの入口付近だけマッピングされていた。角まではマッピングされていない。

 

(奥行き30メートルは確認した。地図にはどちらの角も書いてねえ。30の30だと仮定するか)

(なら爆薬は3個にしましょうか。地雷はヒヤマのアイテムボックスに、入るだけ入れますね)

(頼む。ミツカ、地雷を設置するぞ)

(わかった)

 

 大ホール1つ手前の曲がり角から、等間隔に地雷を設置する。

 

(お兄ちゃん、ちょっといい?)

(おう。どした?)

(【武器修理】スキルの1個上が、【3級武器製作】と【武器小部品製作】なの。【3級武器製作】取っちゃダメかなあ?)

(スキルは好きに取っていいが、ロボット関係じゃなくていいのか?)

(うん。ロボットは【ロボット技師の夢】まであるからもう大丈夫。次は武器か車両のスキルを伸ばしたいんだ。じゃあ、スキルポイント使っちゃうね)

(あいよー)

 

 警備室のだいぶ手前で設置をやめ、【パーティー無線】で楽しそうに話しながら作業するウイとニーニャを見に行く。

 

(設置完了。楽しそうだな)

(お疲れさま。こっちも終わります。凄いんですよ、ニーニャちゃんのスキル)

(えへへ。【3級武器製作】のおかげだよう)

(何してんのかさっぱりわからん)

(あたしもだ)

(網膜ディスプレイに干渉して、2人で【3級武器制作】の爆薬製作画面を見てるんです。要求筋力76で、最大威力の爆薬になりますよ。さあ、ニーニャちゃん)

(うんっ。【3級武器製作】、発動!)

 

 床に座るニーニャの前に光が集まったかと思うと、弾けるように四方八方に飛んで消えた。眩しくて、目がチカチカする。

 気がつけばニーニャの前には、大人の男がやっと抱えられるくらいの包みがあった。

 

(うー。眩しい。……わーい、出来た。んっとね、『ニーニャの対クリーチャー爆薬』だって。かわいくない名前ー。ぶー)

(これから壊すんだから、かわいくなくていいだろ。名前は俺も読めるな。要求値を満たしてっからか。そういや、ニーニャは鑑定スキルあるんだったな)

(うん。なかったらカチューシャ家の職業持ちじゃないもん。はい、これが起爆装置だよ)

(ありがとな。じゃあ、行ってくるから、戦闘準備しててくれ。爆破したら合流する)

(私も行きますよ)

(狭い通路に地雷があるんだ。危険だから、俺だけでいい。豚共は違う事に夢中だしな)

(気をつけてくださいね)

(無理はするなよ。ミサイルランチャーだってあるんだ)

(お兄ちゃん、がんばってー!)

(了解。投擲前に【パーティー無線】で伝える。爆破は地雷設置場所に入ってからだ)

 

 爆薬を持つと、どうにか15メートルは投げられそうな重さだった。さすがは、俺の対物ライフルよりも要求筋力が高い武器なだけはある。普通の男なら、持ち上げるのも一苦労だろう。

 地雷の間を歩き、鉄のドアの前に立つ。

 ゆっくりと静かにドアを開け、赤マーカーがないか大ホール内を見回した。

 

(大ホール前到着。隠密状態継続。これより爆薬を投擲する)

 

 大ホールに踏み込み、全力で中央に爆薬を投げた。

 今のところ赤マーカーは、1つ。

 ドアを抜け、急いで閉める。爆薬が床に落ちた音か、ドアを閉める音に反応したのか、視界でいくつもの赤マーカーが踊った。

 

 走る。

 地雷原。

 ポケットの起爆装置を出して、スイッチを押した。

 くぐもった爆発音。

 

 パッパラー!

 パッパラー!

 パッパラー!

 パッパラー!

 パッパラー!

 パッパラー!

 

 うるせえよ、レベルアップ。

 大きな鉄製のドアが、いい仕事をしたらしい。

 衝撃も爆風もなかった。

 そのまま警備室に駆け込んで、ドアを閉める。

 

「かなり殺ったな」

「怪我はなさそうですね」

「おいおい。何レベル来たんだ、今」

「パッパラーパッパラーうっさいの!」

「ははっ。生き残りが来るぞ」

 

 言ったそばから爆発音。地雷だ。

 1つ。2つ。3つで止まった。それでも、壁の向こうでは赤マーカーがいくつか動いている。

 コルトを抜いて、ドアを開けた。

 顔を出して覗く。

 予想外の近さに、オークの顔。ろくに狙いもつけずに、コルトを撃った。

 オークが吹っ飛ぶ。

 爆発。

 爆風で壁に叩きつけられた。

 腕が千切れてはいないか。……大丈夫。動く。

 壁に寄りかかるようにして、コルトのトリガーを引いた。ガチガチと嫌な音がするだけで、銃弾は発射されない。

 

「ジャムった!」

 

 左手のコルトを捨てる。

 

「ヒヤマ!」

 

 ウイが投げたコルト。

 空中で掴んで、そのまま通路に銃口を向けた。

 死ね、豚!

 吹っ飛んだオークが壁にぶち当たり、HPバーを散らした。

 

「接近する赤マーカーなし。ミツカ、ヒヤマに『ドクターX』を!」

「おうっ!」

 

 いって! 力いっぱい刺しやがっ。ふああ。気持ち良いから許す!

 

「サンキュ、ミツカ」

「死にきれていないオークがいるようですね」

「その前にスキル取らしてくれ。もう決めてあんだ」

「何を取るんだ?」

「【散桜の如く】パッシブ。敏捷力20アップの回避スキル。それと【鷹の目】の上、【隼の目】動体視力アップ」

「【散桜の如く】の説明文の下の方に、1撃死の確率アップとか書いてませんか?」

「マジか! え、ねえよ?」

「ならいいでしょう。さあ、取ったら行きますよ。まだオークは残っています。おそらくはいるであろう、支配者クラスもです」

「あいよ。取得。取得っと」

 

 残った地雷をアイテムボックスに回収しながら死に切れずにいるオークに止めを刺し、大ホールに足を踏み入れた。

 呻くようなオークの声が満ちている。

 1匹ずつ、頭部にコルトを撃ち込んで回った。

 

「オークの収納完了。あれだけの爆発音なのに、残りが来ませんね。まだ11はいるはずなのですが」

「地味に探索しながら、殺して歩く他はねえな」

「てっつくずっ、てっつくずぅー!」

「回収か、手伝うぞ。ニーニャちゃん」

「俺も集めるか」

「私はすでに集めてますよ」

「なにい、ズルいぞウイ!」

 

 心の中で鉄クズ収納と言いながら歩く。

 ウイとミツカは、声に出しているようだ。

 

「わあ、もう終わった。ありがとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん!」

「こっから居住区だ。気を引き締めてな」

「ああ。あたし達の探索はこれからだ!」

「ミツカ先生の次回作にご期待下さい、ってな」

「なんだ、それ?」

「日本のお約束だ。縁起が悪いからな、もう言うんじゃねえぞ」

「わからないけどわかった」

 

 右が居住区。左が生産区。正面には機関区とある。

 

「どっから行くかだな」

「居住区!」

「生産区っ!」

「機関区ですね」

 

 ミツカ、ニーニャ、ウイの順だ。

 

「・・・迷路は左手の法則ってな。生産区からだ」

「やったあ!」

「早く行くぞ、ロリヤマ」

「先頭は任せましたよ、ロリヤマ」

「それ好きだなあ、お前ら」

 

 生産区入り口と書かれたドアを開ける。この方向の黄マーカーは3つ。

 通路を進むと、だだっ広い工場のような場所に出た。

 

「ベルトコンベアーに工業機械。ニーニャ、気になるのはあるか?」

「ないよー。食料生産プラントみたい。機械修理の最上スキル取っても、すべて直すとなると10年はかかかっちゃうと思う」

「なら、シカトだな。奥と左右にドア。黄マーカー3つは奥か」

 

 ウイがしゃがんでドアに手を掛ける。

 

「ミツカ、攻撃準備。ニーニャはウイの後ろにいろ。3、2、1、ゴー!」

「ロックンロールッ!」

 

 バシュッ!

 そんな音の後に、爆風と爆発音が俺を襲った。

 

「フハハ! 汚えミートソースだ!」

 

 火傷こそしていないが、熱風をモロに浴びたので鼻の粘膜と瞼が痛い。

 どうしよう。どうしてくれよう。この怒りをどうしよう。今夜ミツカをどうしてくれよう。

 

 

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