遊戯王-孤独に巻き込まれた決闘者-R   作:秋風

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 今回から感想、評価を頂いた方はあとがきに掲載します
 
さて、これでアメリカ編はおしまいです。次から31話では本編に戻ります
では、どうぞ



30「夏休み」⑩

 バンデット・キースとのデュエルから数日が経ち、俺は海馬社長からの報告書を受け取った。まず、バンデット・キースが率いる「ネオ・グールズ」については一掃され、全員が検挙された。カードの密輸、密造、偽造のカード制作などについてそれが闇社会の資金源になるということもあり、KC社と警察が連動して全員が逮捕されるという形になったという。そしてその首領であるバンデット・キース……彼はもう、この世にはいない。いや、一応生きてはいるものの、オシリスの天空竜という神のカードの怒りに触れ、そしてサンダーフォースの直撃によって廃人となってしまっていた。刑務所病院で一生を過ごすことには違いないという。そしてそのデュエルにおいても使われていたのはすべてが偽造カード、さらにディスクそのものも改造が施され、服の中に隠された大量のカードでメタをはったりするなどのイカサマをしていたことも報告書には記されていた。もっとも、俺が使っていたカードについての効果を把握しきれないが故に、単純にモンスターの効果を無効、さらにパワーの底上げをするカードのみ手札から服の中にあったカードと入れ替えられていたらしい。で、現在俺はというと……

 

「ほら秋人! 早く!」

 

「そうよ秋人! みんなでビーチバレーやりましょうよ!」

 

「……あっついのに、よくやるなぁアイツら」

 

 明後日には日本を飛び立つ俺たちのために、アメリカ校の生徒たちがサプライズとして海辺でのバーベキューパーティを行ってくれていた。まだお昼の時間にも早いため、現在はアメリカ校の生徒たちやレジー、ツァン達が海ではしゃいでいる。で、俺はと言えば熱いのでパラソルの下で冷やしたタオルを頭から被り、その暑さに耐えている真っ最中だ。今日、この日の気温は36度超え……暑いところが苦手な俺にとってはかなり苦しい。そんなところへ、雪乃がやってきた。

 

「ほら、秋人。貴方も早く……それとも、私にオイル、塗ってくれるかしら?」

 

「勘弁してくれ……俺は暑いのは苦手なんだ……それに……」

 

「それに?」

 

 俺の手を引っ張る雪乃が首を傾げる。いや、察しろよ……そのビキニとかのせいで俺はお前らを直視できないんだって……どこぞのトラブルな男じゃあるまいに、この状態でオイルを塗るなんてしてマジでトラブルになっても俺が困る。現在の雪乃の格好はといえば、薄紫色のビキニと、腰にパレオを巻いた状態だ。ツァンやレジーもビキニと、男子生徒たちの視線を集めているのは言うまでもない。俺もその姿には驚いたし、見惚れてもしまったのは否定しない。

 

「あら? いいじゃない? 私はそれでも……い・い・け・ど?」

 

「そういって俺に乗っかってくるな…………頼むから」

 

「うふふ、可愛い」

 

 そう言って笑う雪乃は後ろから俺に抱き着くのをやめない……これで機能しないわけがない。何が、とはいわないが。それに、色々な意味で理性がぶっ飛びそうで不味い。このやりとり実はもうすでに何回もやられているやりとりだ。雪乃が寄ってきて、さらにこれを見てツァンとレジーがすっとんできては同じように俺へ抱き着いてくる。そのたびに3人に圧迫をされる……これ繰り返されることで男子生徒たちからは睨まれ、血の涙を流され、決闘を挑まれる……以下無限ループが発生する。男としては嬉しくもあるが、同時にその決闘などでの疲労感は半端ではない。すでにもう部屋のベッドに入って寝てしまいたいくらいだ……

 

「ねえ秋人?」

 

「ん? なんだ?」

 

 いつの間にか俺から離れ、隣に座る雪乃が俺に声を掛けてきた。その表情はどこか満足そうで、そして嬉しそうだった。

 

「楽しかったわね、アメリカ留学」

 

「……ああ、そうだな」

 

 大変なことはたくさんあったし、謎も解決するどころか、増えてしまっている。それがあったとしても、確かにこのアメリカ留学は間違いなく意味のあるものだったと俺は思う。レジーや紅葉さん、そしてマリクやイシズ、リシドに出会ったこと、デュエルの事……そして、二人の事。まだまだ解決すべきことはたくさん残っているかもしれないが、確かに楽しいと実感することが出来たのは間違いない。

 

「ふふっ、そしてこれからも……楽しくなりそうね」

 

「楽しく、ねぇ……」

 

 いつの間にか雪乃と反対側に座り、俺の事をジッと睨み付けてくるツァンを横目に俺はそう呟く。こいつ、つい数十秒前までビーチバレーを向こうでしていたよな……いつの間にこっちに来た。心なしか、構えってもらえぬ犬のようにも見えてしまう。ツァンがイヌ耳を付けているのはきっと幻覚だろう……数秒後にはそんなの見えなくなったし

 

「雪乃、抜け駆けずるい」

 

「うふふ、早い者勝ちという言葉が世間にはあるのよ? ツァン」

 

「むむむぅ……」

 

 睨みあっている二人を見ながら小さくため息を吐く。こんなにも俺を想っていてくれる二人に、俺はどうやって別れのことを告げればいいのだろうか……どう頑張っても、そんなことを伝えることが出来そうにない。前の世界に帰る方法よりも、この二人になんといえばいいのか……これが俺にとって一番の問題だと思う。

 

「ほらそこ! イチャついてないでこっち来なさい! お肉焼くわよー!」

 

 そう遠くから料理の準備を始めるレジーが俺達を呼ぶ。いつの間にか、もうお昼の時間になっていたらしい。俺は空港でもらった帽子を被りそのみんながいる場所へと歩いていくことにした。隣にいてくれる二人の事は、もう少し後に考えることにしよう……

 

 

 

 

2日後 国際空港

 

「色々ありがとうございました。Mr.マッケンジー、紅葉さん、それにレジー」

 

 帰国の日。俺たちは国際空港の入り口で見送りに来てくれたMr.マッケンジー、紅葉さん、レジーに言う。

 

「こちらも楽しかったよ。また是非、アメリカ校へ遊びに来てくれ」

 

「次はプロの世界でも待ってるぞ」

 

「秋人、やっぱり帰っちゃうのね……」

 

 3人の中で1人、俺が……というか、俺達3人が帰ることに不満を示していたレジーがそう元気がないように言う。なんだかんだ、俺だけではなく雪乃やツァンとも仲が良くなったレジー……まあ、2人もまんざらでもないみたいだし。

 

「そんな今生の別れみたいな声だすなよ……今度はレジーも日本に来ればいい」

 

「それもいいわね。私たちも歓迎するわよ」

 

「そうね、うちの学校なら楽しめると思うわ」

 

 そうレジーを励ます俺達だが、一向にレジーの表情は晴れない。俺はその様子にポケットからまとめておいたカードを渡すことにした。渡すのは天使族のデッキで有効になるカードたち。多少彼女のテーマからもずれてしまうかもしれないが、もしよかったら、と付け加えて渡すことにした。

 

「はい、レジー」

 

「秋人……?」

 

「お世話になったお礼だ。また、デュエルしよう」

 

 これで笑顔になってくれれば、そう思った俺だが、そのレジーの表情はクシャリと歪み、大粒の涙が見えていた。そして勢いよく俺に抱き着いてくるレジー。その勢いで倒れそうになる体を何とか支え、俺はその場に踏み留まった。

 

「う、ん……大切に、する……!」

 

「ほら泣くな、俺より2つも年上なのに……」

 

「だって、だってぇ!」

 

 ここ数日でわかったが、実はレジーは結構泣き虫だったりする。もう原作の面影が皆無……という話は、もうこの世界の彼女だからこそ、こんな性格なのだと思っているので気にしていないが。ようやく泣き止んだレジーは「なら約束して」と俺に告げる。

 

「また、会えるのよね? 必ず」

 

「…………ああ、もちろんだ」

 

 俺は数秒の沈黙の後、彼女にそう嘘をついた。そんな保障などどこにもない、また逢えるときにはもう俺ではなくなっているかもしれないのに。我ながらなんと酷い嘘か、と言いたくなった。だが、これで彼女に笑顔が戻るのなら、これで解決するのなら、俺はそう言い聞かせてレジーに頷いた。それを見たレジーは俺にようやく笑顔を見せてくれた。

 

「わかった、信じる……秋人、またね。さよならは絶対に言わないわ」

 

「ああ、またなレジー」

 

 そう別れを告げ、俺達は飛行機へと乗り込むことにする。行く途中、当然ながら腕を二人から思いっきり抓られたのは言うまでもないだろう。そしてその空港で待つ待ち時間。二人が女子トイレから帰ってくるのを待っていると、いつのか俺の隣には1人の老婆の姿があった。

 

「おや、また会ったねェ……」

 

「っ……!? アンタは」

 

「落ち着きなさいな、今のアタシャ、アンタにしか見えないよ」

 

 俺はその言葉に思わず立ち上がりそうになったのを押さえてその老婆を見る。

 

「何の用だ?」

 

「ヒッヒ、別に特に用はないさね……たまたま、ここにいただけさ。ここは入口だからね」

 

「入口?」

 

 俺が老婆の言葉に首を傾げると、老婆はそうさ、とニヤリと笑っていた。

 

「精霊界の入り口があるのさ……誰にも知られぬ場所にね。お前さんもいつか来るといい。歓迎するよ……異世界の魂を宿し、決闘者。お前さんの行く末、楽しみにしているよ。ヒッヒッヒ……」

 

 怪しげな言葉と共に老婆の姿は消えてしまった。くそ、まだ聞きたいことがあったってのに。

 

「秋人、待たせたわね」

 

「お待たせ、さ……気が進まないけど、飛行機に乗りましょ。どうしたの?」

 

「……いや、なんでもない。そうだな、帰ろう。日本へ」

 

 こうして、俺達はアメリカの地を離れて日本を目指す……だがその間も、老婆の言葉が耳に残っていたのは言うまでもないだろう。

 

 

 

――アメリカ編、完結

 




水着回
見渡す限り、おそらくメロンとスイカがたくさんですね

レジーの恋
まだ終わりませんよ! レジーは近いうちに出しますからね

老婆の正体
精霊です。が、何のカードとは定めていません。老婆のカードとかあったかな……

Next 31「模倣者」

ヴァイロン様 NOGAMI壱様 武御雷参型様 カロン様 幻想の投影物様 傷心ズバット様 火星の紳士様 Ranperu様 竜殺し佐々木 小次郎様 うさぎたるもの様 カロン様 さぬら様
感想、ご指摘、意見ありがとうございました

引き続き、小説の評価もお待ちしております

次回、ノース校編は……

  • 十代と万丈目のデュエルが見たい
  • デュエルよりも修羅場が見たい
  • レジーを付け狙う生徒と秋人がデュエル!
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