遊戯王-孤独に巻き込まれた決闘者-R   作:秋風

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それでは、8話です。今回はツァン回…といっても、ツァンはデュエルしませんが…(汗




08「ひとりぼっちの少女」(前編)

Side秋人

 

 女子寮での一件から数日が経った。が、その事件の翌日から変化があった。いつもは十代、翔、隼人、そして三沢の5人で食事をしたりするのだが……

 

「ほら、ボウヤ…授業が終わったわよ? 起きなさい」

 

「う、ん……」

 

 揺すられて目を覚ます俺。目を覚ました俺はその声の方へと視線を向けた。そこには薄い紫色の髪をツインテールに結った紅い瞳のオベリスクブルー生徒が映った。言わずもがな、藤原雪乃である。

 

「藤原……何?」

 

「授業が終わったわよ? お昼を食べに行きましょう。購買に行くんでしょ?」

 

「……ああ」

 

「もう、私が起こしてあげてるんだからもうちょっと反応してくれてもいいのに……」

 

「なんか言ったか?」

 

「いいえ、なにも」

 

 未だに眠い体を起こしながら俺は小さくため息を吐く。ここ数日、藤原はずっとこの調子である。基本的に行動は先にも言った5人でよく行動していたのだが、その輪の中に藤原、そして明日香が入っているのだ。たまに、その取り巻きというか、仲のいい生徒であるジュンコとももえがいたりもする。それだけなら、まだいいんだが…この中でも特に問題があるのが藤原だ。デュエルアカデミアでの授業は1年生全員がクラスはあれど、クラス別に授業をするということはなく、1年生全員が同じ講義を受ける。その中でなぜか藤原が狙ったかのように俺の隣に座ってくるのだ。それだけではなく、その授業中も俺の事をジッと観察するかのように見ている時もある。理由を聞いても答えてくれない…別に鬱陶しいとか、ウザいとかではないのだが、純粋に怖い…いったい、何を企んでいるんだか。

 

「お、秋人ぉ! 飯行こうぜー!」

 

「ああ、今行く」

 

 眠い体を起こしながら十代に呼ばれたのでそれに同行する。藤原も途中で明日香と合流して俺たちの後ろを歩く。まあ、デュエルモンスターズの話や、授業の話、他愛のない世間話をするときに楽しくはあるからいいか。そう思いながら話の流れで買うことになったドローパンをかじる。これ、確かカードが入っていたりすることがあるらしいが、それは損なのか得なのか…というか、どうやって作っているのだろう。そんなことを思いると俺の口の中を強い刺激が襲った。なんだこの凶悪な辛さは…!?

 

「ぐあっ……な、なんだ!? っ! と、トウガラシ!? ゴホッ、ゴホッ!」

 

 その強烈な辛さに思わずむせる。俺がかじった先から見えるのはこれでもかというくらいに敷き詰められた唐辛子…というか、このドローパンの内面の生地が真っ赤であった。なんの嫌がらせだこれは…!

 

「あら、ボウヤ。それ、毎月1度しか作られない激辛唐辛子パンよ」

 

「み、みずっ!」

 

「あらあら。はい、どうぞ」

 

 俺は藤原から渡された水を奪い取るように受け取り、一気に口の中へと流した。なんとかそれで収まったが、まだ舌がヒリヒリと痛む。うへぇ

 

「舌が……」

 

「おかしいわね、そのパン辛いけど美味しいって噂だったんだけど」

 

「明日香、これを見ろ。この悪意しかない中身を」

 

 俺はそう言いながらパンを半分に割ってその中身を見せる。それを見た一同が「うわぁ」という顔で若干引いていた……藤原以外だけど。

 

「私、辛いのは平気だから食べられるわよ? このサンドウィッチと交換しましょうか?」

 

「……ああ、すまん。助かる」

 

 また何を言っているんだこいつは、とも思ったけど午後は確か実技授業だしな。このまま食事をしないというのは困る。売店の列に並ぶのも面倒だし正直ありがたい。俺はそれを受け取り食べ始めるわけだが、なぜかそれを見て明日香が顔を赤くしていた。

 

「……? 明日香、どうした?」

 

「い、いえ……なんでもないわ。(秋人、それ雪乃の食べかけ…というか、さっきの水も)」

 

 そんな感じに騒がしくしている俺たちだが、ふと俺の視界にピンク色の髪の女子生徒が映った。まあ、言わずもがなツァンなわけだけども。ツァンは弁当箱のようなものと、午後で使うのかデュエルディスクを持って歩いて屋上の方へと歩いて行った。

 

「あれツァンじゃないか?」

 

「あの子、まだ一人なのね」

 

「え?」

 

 俺がツァンに気付くと、明日香がなぜか心配そうに呟いていた。どうかしたのだろうか?

 

「あの子、結構苦労している面があってね。ほら、結構言動がきつかったりするでしょ? そのせいか知らないけど他の子と対立することも多いし、いつも1人なのよ。この前も食事に誘ったら断られちゃって……こんな島だと本島との繋がりも薄いし」

 

 簡単に言えばボッチ、ということか。確かにボッチなのにこの島で暮らすというのは相当つらいな。高校に友達がいなくても地元には友達がいるならまだアレだけど…この島、完全に隔離空間だし。

 

「まあそうだな……うん?」

 

 そんな会話をしていると1人の挙動不審なオベリスクブルーの姿があった。屋上へ向かっていくツァンを凝視し、それの後を追うかのように歩いていく。確かあの生徒って藤原の事を押し倒していた生徒じゃないだろうか? 何故だろう、あの光景を思い出したからか嫌な予感がする。みんな会話に夢中でそれに気が付いたのは俺1人だ。仕方がない。

 

「すまん、ちょっと席を外す」

 

 そう言って俺はその場を駆け出した。

 

 

Sideツァン・ディレ

 

「はぁ……」

 

 お昼休み、という時間はいつも退屈な時間だ、とボクは弁当を突きながらため息を吐く。小さいころから素直に人と話せない故に他人から誤解されてしまい、学校での孤立状態が続いているボク。世間的に言えば所謂“ボッチ”というやつだ……なんか、自分で言っていて虚しくなってきたわ。そんなことを思いながらチラリと脇に置いてあるデッキケースを見た。パパから送られてきた新作のサンプル……信用のおける友人とデュエルをしてデータを取ってほしいという話だったんだけど……当然ながら学校に友達がいない、とは言えなかった。まあ、このデッキを使ってデュエルできない理由はもう1つあるんだけど

 

「パパ、怒っているだろうなぁ……」

 

 本当なら数日中にデータと一緒に送って欲しいといわれていたのにもう1週間が過ぎてしまいそうだ。これはさすがにパパの仕事にも支障が出てしまう…うぅん、なんとかボクが信頼できそうな人がいればいいんだけど

 

(六武衆……? 珍しいカードだな)

 

「……」

 

 一瞬、最近知り合った1人の男子生徒を思い出した。まあ、信頼はできるけどどうも信用できそうにないのよね、アイツ。この前だってエクシーズ召喚、という知らない召喚方法、それに知らないモンスターを使っていた。あんなのボクも聞いたことが無い。信頼できる理由は、ボクがエクシーズ召喚について他言しない代わりにアイツも六武衆については他言しないという約束を交わしたからだ。べ、別に他に話をした奴がアイツしかいないとか、そういうわけじゃないけど……

 

「仕方がない、放課後にでもアイツに「やあ、ツァン君」……ちっ」

 

 弁当を食べ終えて一息付こうとしたところで、嫌なものが視界に入ってきた。屋上にいるのは1人のオベリスクブルーの生徒。その生徒は成績優秀で顔も悪くなく、さらにはどこかの会社の御曹司だとか……一部の女子生徒たちが騒いでいたのを覚えている。だが一方で、ボクは悪い噂も聞いている。こいつの女癖の悪さだ。聞いた話ではかなりの数の女子生徒に声を掛けているらしい。中には無理やりキスを迫られた子もいたらしい。最近はボクの前に現れてはやたらと話しかけてきたり距離を近づけたりして来る。こいつの家の会社はパパの勤める会社のライバル会社……それでボクに近づいてきている。ボクが六武衆を使うことのできない別の理由がこいつだ。発売前のカードをこいつに晒す、なんてしたらどうなることか……ボクはそれを無視して出ていこうとするけど、その生徒に手を掴まれた。

 

「無視は酷くないかい? せっかく声を掛けたんだ。返事くらいして欲しいな」

 

「放して。ボクは忙しいの。アンタなんかに構っている暇はないわ」

 

「そうかな? 僕には食事を終えて一息ついているように見えたんだけど?」

 

 こいつ……いけしゃあしゃあと。さっきから誰もいないはずなのに視線を感じると思ったけど此奴だったのね。

 

「少し僕と話でも、どうかな?」

 

「聞いてた? ボク忙しいの。その手を放して。あと二度とボクの前に現れないで」

 

 そう言って振りほどこうとするけどそうとう力を入れられているのか振りほどくことが出来ない。それどころかその腕を引っ張られて距離を縮められた。

 

「いいじゃないか、少しくらい。そうだ、この間いいレアカードを手に入れたんだ」

 

「どうでもいい、はやく放せって……言ってんでしょうがっ!!」

 

 ボクはそういって空いている右腕でその生徒の頬を思いっきりぶっ叩いた。この勢いで腕が外れると思っていたけど、その腕は相変わらず外れない。それどころか、そのボクを握っている腕の力が一層強まったのを感じ取る。そして、さっきまで笑みを浮かべていた生徒の顔は仮面が剥がれたかのように一変して怒りを表した表情へと変わっていた。

 

「この、女ぁ!」

 

「あぐっ……!」

 

 その言葉と共に同じように頬を殴り返され、地面へと叩きつけられる。腕が離れたので逃げようとしたけど、衝撃によって落ちてしまったのか、デッキケースが目に入る。今の今まで、六武衆のカードを人目に触れさせたくなかったのはこいつが付きまとってきていたせいなのに! まずい。そう思って手を伸ばそうとしたのが運のつき。ボクはその生徒に再び腕を掴まれ押し倒された。挙句、そのまま馬乗りになって押さえ付けられた。

 

「優しくしてやればいい気になりやがって! よくも僕の顔を殴ってくれたな!」

 

「はっ……それがアンタの本性ってわけ。やっぱりアンタ最低ね」

 

「黙れ! ボッチの分際ででかい口叩いてんじゃねぇぞ! ああ!?」

 

 その言葉と共にボクの制服に手をかけてくる。最悪な未来が頭に瞬時に浮かんできた。ボクは必死にそれを防ぐために抵抗する。

 

「いやっ! 放しなさいよぉ! この変態!」

 

「ちっ、おとなしくしろ! この……!」

 

「いやぁー!」

 

 思わず口から悲鳴が出てしまう。すると瞬時に口を塞がれてしまった。がむしゃらに動くけど、その捕縛はまったく外れない。

 

「僕に逆らったことを後悔させてやる……!」

 

「むーっ! むぅー!」

 

 上着を外されそうになり、目から涙が零れ落ちる。やだ、やだよ! 誰か助けてよ!

 

「暴れても無駄だ。この屋上は普段から人があまり来ない。それにお前の事なんか誰も「おい」……え?」

 

 その言葉と共にボクの上に覆いかぶさっていた生徒が吹き飛ばされた。そしてその声がした方を見る。そこには先日知り合ったオシリスレッドの生徒の姿があった。

 

「秋人……?」

 

 思わず、ボクはそいつの名前を呟いた。

 

Side武藤秋人

 

「……まったく、時と場所を考えろっての。もっとも、『前』とは状況が随分違うらしいが」

 

 ツァンが涙目で暴れていたし、男子生徒の方も動きが藤原の時と違って無理やり押さえているという感じがあったのでどう見ても事案だろ、ということで思わず加減なしに蹴り飛ばしちまったけど…これで正解だよな?

 

「秋人……」

 

「よう、ツァン。一応聞くが、お楽しみだった…ってことは「あるわけないでしょ!?」だよな……すまん、冗談だ」

 

 俺は言いながら破けた制服を見て上着を脱いでツァンに被せてやる。頬も殴られたのか少し腫れているのが判る。これはすぐに保健室と、職員室だな。

 

「立てるか? すぐに保健室に連れて行く。後はみんなに連絡して職員室にも連絡を「おまえぇぇ!!」うん?」

 

 声の方を見れば、怒りに満ちた形相で俺の事を睨み付けるオベリスクブルー生徒の姿があった。まあ、蹴り飛ばしちまったから当然と言えば当然だけど

 

「またお前か! 落ちこぼれのレッドぉ!」

 

「そりゃこっちのセリフだ。しかも今回は藤原の時と違って強姦未遂じゃねーか……盛りのついた猫か、お前は」

 

「きさまぁ……とっととツァンをこっちに渡してここから失せろ!」

 

 何を言ってるんだこいつは……どうやら俺の乱入に相当ご立腹らしいな。まあ、藤原から前に聞いた話だと、本当に手当たり次第に女子生徒に手を出しているって噂だったし。邪魔されて怒っているのは当然か。どうしたもんか、と考える。あの男の後ろにはおそらくツァンの物であろうデッキケース……近くに弁当箱があるから間違いない。このまま逃げるのは簡単だがツァンもあのデッキを自分の手元には置きたいだろう。俺に口止めしたくらいだしな。かといって、俺が目を逸らしてPDAで十代たちに連絡を取って……その隙に何かやられても困るし。そう思っていると、生徒はその腕にしているデュエルディスクを構えていた。

 

「こうなったらデュエルしろ! 俺が勝てばツァンはこっちに渡して貰う!」

 

「……どうやらとことん腐っているらしいな、お前は」

 

 そう言いながら俺はツァンのであろうデュエルディスクを拾い上げる。ツァンが賭けの対象とされているこういう状況というのはあまり気が進まないが、仕方がない。

 

「ツァン、デュエルディスクを借りるぞ?」

 

「あ……うん」

 

 不安そうに俺を見てくるツァン。まあ、当然と言えば当然か。俺はオシリスレッド、相手はオベリスクブルー……万丈目と藤原に勝っているとはいえそれを単に運が良かっただけと捉えている連中もいる。実際、万丈目戦ではそれを見ていた生徒たちが、藤原戦ではジュンコとももえがそんな風に言ってきていたしな。俺はデッキをセットし、オベリスクブルーの生徒を見据える。

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

 

武藤秋人VSオベリスクブルー生徒

武藤秋人 LP4000

オベリスクブルー生徒 LP4000

 

「先攻は僕だ! カードをドロー! 僕は手札から『魔導戦士ブレイカー』を召喚!」

 

魔導戦士ブレイカー ATK1600/DEF1000

 

「このカードの召喚に成功したとき、このカードには魔導カウンターが乗る! このカードの攻撃力はカウンター1つにつき攻撃力を300ポイントアップさせる!」

 

魔導戦士ブレイカー ATK1600/DEF1000→ATK1900/DEF1000

 

 魔導戦士ブレイカー……魔法使い族デッキを使うのか? それにしても、確かブレイカーは遊戯のデッキに入っているという話が故か、値段がかなり高かった記憶がある。まあ、高いから強いかと言われると何とも言えないけど。

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー……俺は手札の魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動。手札にあるモンスター1枚をコストに、レベル1のモンスターを特殊召喚できる。『レベル・スティーラー』を墓地に送り、デッキから『チューニング・サポーター』を特殊召喚」

 

チューニング・サポーター ATK100/DEF300

 

 現れたのはフライパンを被った小さな戦士。元いた世界ではデュエリストパック遊星編に登場したカードだな。このカードが欲しかったのにパックを買いまくってアームズ・エイドが山のようにダブったのは懐かしい思い出だ。3枚揃えるのに相当苦労したな。

 

「はっ……何かと思えば攻撃力100だと!? そんなカードで何ができる!」

 

「悪いが、まだメインフェイズは終わっていない。俺はさらにチューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』を召喚」

 

ジャンク・シンクロン ATK1300/DEF500

 

「チュー…ナー…!? お前、まさか入学試験の時の!」

 

「どの時かは知らんが、多分そうだな。効果発動。このカードの召喚に成功したとき、墓地のレベル2以下のモンスターの効果を無効にして特殊召喚する。墓地のレベル・スティーラーを特殊召喚。さらに、墓地からモンスターが特殊召喚されたので手札の『ドッペル・ウォリアー』の効果が発動。このカードを特殊召喚する」

 

レベル・スティーラー AT600/DEF0

 

ドッペル・ウォリアー ATK800/DEF800

 

 フィールドに並び立つ4体のモンスター。さて、役者は揃ったな。行くぞ

 

「チューニング・サポーターのレベルは1だが、このカードはシンクロ召喚を行う場合は2としても扱える。レベル2のチューニング・サポーター、レベル1のレベル・スティーラー、レベル2のドッペル・ウォリアーにレベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!」

 

☆2+☆1+☆2+☆3=☆8

 

「集いし願いが、新たに輝く星となる! 光指す道となれ! シンクロ召喚! 飛翔せよ、『スターダスト・ドラゴン』!!」

 

スターダスト・ドラゴン ATK2500/DEF2000

 

 星屑の名を冠する龍がその姿を現すのだった。

 




リメイク前との変更点

ツァン、ボッチ説
 マリア・アンに進められて六武衆を組んだ経緯がありましたが、今回はそういうわけでもないのでマリアとはまだ友達ではない…あの学園でボッチは相当つらいと思う

ゲスのオベリスクブルー生徒
 前作ではツァンにしか手を出してませんでしたが色々と変更。最近浮気とか不倫とかのニュースが飛び交う中で書いたから時期ネタと疑われそう

シンクロデッキの内容変更
リメイク前ではジャック・アトラスのデッキを模していましたが、今回は遊星デッキ。ジャンドも考えましたが今回は最近発売されたストラクのオマージュって感じです

NEXT 09「ひとりぼっちの少女」(後編)

次回、ノース校編は……

  • 十代と万丈目のデュエルが見たい
  • デュエルよりも修羅場が見たい
  • レジーを付け狙う生徒と秋人がデュエル!
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