ヴォルスンガ
ーーー夢を見た。
いつも楽しかった、楽しくて二人、笑い合っていたのに...
何故か突然、その人は自分のことを忘れしまい。二人の恋物語はそこで幕を閉じた。
望まぬ結婚をさせられ、やっとその生活に慣れてきた時、自分と彼は騙されていたことを知った。
"私かあなたかシグルドが死ななければならない"
そんなことをあの男に言うと、やはりシグルドが殺された。
泣いた。なんて理不尽な。
憎んだ。なんて下劣な。
感情が高まるに連れ、行動力が上がりまずは憎きあの女を一族郎等根絶やしにした。
でも、そこで得たのは快感や幸福でなくただの虚無で...私は自分の胸に槍を突き刺し、できることなら、とこう願った。
"あなたという英雄に...もう一度寄り添いたい"
ーーー夢は、これでお終りだ。
シグルドが目を覚まし、まず最初に見えたのは"夢の自分"と同じ顔をした戦乙女だった。
「変わらないな」
ブリュンヒルデが首を傾げる。
ーーー本当に変わらない。
「何故、そんなに哀しい顔をしているんだ...?」
その戦乙女は、夢の中と同じ顔を今もしている。
シグルドに忘れられた時と同じく。
シグルドが死んでしまった時と同じく。
復讐を終えた時と、全く同じく。
その戦乙女、ブリュンヒルデは今も過去も儚げな表情を浮かべながらそこにいた。
「何か、違ったか...?私は、二度目の生を受けても尚そなたをーーー」
ーーー傷付けてしまったのか?
「ーーー違うのです...」
何時もの冷静さを失いかけ、焦っているようにも見えるシグルドの言葉をブリュンヒルデはどこか自虐を帯びながら震えた声で切った。
「私は今幸せなのです...あなたに触れることができて、あなたに抱かれて、あなたとこうして同じ世界で生きていられる...まるで昔の様に幸せです。こんなこともあるんだ...と」
儚き戦乙女の目下に水滴がたまる。
「...だからこそ私は怖い。幸せを感じる度に昔を思い出す。...シグルドが私を忘れてしまった時のことも」
「ブリュンヒルデ...」
冷静さの次に失ったのは言葉、ブリュンヒルデの言葉を聞けば聞くほど、背負っていた罪がどれだけ重いものだったかという実感が大きくなっていった。
今のシグルドにはブリュンヒルデにかけてやれる言葉が思いつかなかった。
「そんな悲しい顔をしないで...悲しい顔をするのは私だけで充分なんですから...」
ブリュンヒルデはシグルドの頬に手を当て微笑んだ。
「...そんなこと、あるわけがないだろう」
あまりにも悲しすぎる戦乙女を見て、ついに英雄は怒りを覚えた。
それは勿論、自分自身に。
シグルドはブリュンヒルデを陣地に待機させたまま、霧の立ちこめる夜の市街地へと消えていった。
お久しぶりです...私事でかなり間が空いてしまいました。
そしてかなり短めです...。次はできる限り早く投稿します。
それでは次回お会いしましょう。