言霊の巫女は食の世界へ? 作:セシア
列車に揺られて向かう場所
焔side
白夜が虹の実、私が命のユリを捕獲した日から数週間が経った。
あれから色々調べたけど、元の世界に帰る方法は未だに見つからない・・・
白夜は「焦っても仕方ねえよ」と言っているけど、もしこのまま帰れなかったらと考えると背筋が凍る。あちらの世界には私の帰りを待っている動物たちもいるのだ。そんな感じで思い詰めていたを見て何を思ったのか、白夜が私を外に連れ出した。そして今・・・
(ブー!!!)
大きな音を立てて汽車はガタンゴトンと揺れながら進む。私と白夜は汽車に乗ってある場所に向かっている。乗ったことのない乗り物に私はビクビクしているけど白夜は落ち着いていた。なんでそんなに落ち着いていられるの!?それに・・・
「いや〜、まさか焔さんと白夜さんもこの汽車に乗っていたなんて」
「本当、偶然だな!」
なんの偶然か、私たちが乗った汽車にトリコと小松が乗っていたのだ。
「まぁな。面白そうな情報を得たから乗ってみたんだが、まさかお前らに会うとは」
「白夜・・・面白そうな情報って・・・?」
私はこの3人の話についていけず、あたふたとしている。私は白夜に「ずっと家にいても気が滅入るし出かけるぞ」と言われて準備したのだ。手当用のものはもちろん、前に手に入れた命のユリの蜜もリュックに入れてある。そして今回は何故か水着というものを下に着せられたのだ。(まぁ、下着の代わりにこれを着ろって言われたんだけど)当然武器である弓矢、最近白夜に鍛えてもらったナイフなども持ってきている。私は針の方がいいんだけど・・・内容はまったく聞いていなかった。
「え?焔さん知らないんですか?」
「あぁ、最近医療知識の本と睨めっこしてたもんだから気晴らしに連れてきたんだ」
白夜の言い草に私はムッとなった。私には戦う力もないからせめて傷の手当をできるようになるためにやってたのに・・・
「・・・白夜のバカ」
プイッとそっぽを向いてやると、白夜が苦笑いを浮かべて私の頭を撫でた。
「悪かったって、怒んなよ。俺たちの今回の目的はフグ鯨だ」
「・・・フグ鯨?」
フグと鯨が合わさったもの?そういえば、白夜が拾ってきた情報の中にそんな話があった気がする・・・。そんなことを考えているとトリコが説明してくれた。
「幻の魚、フグ鯨。淡雪のような繊細なフグの身と脂がのったマグロの大トロ、そして鯨の肉を併せ持つ味がするという」
「深海にいるフグ鯨が浅瀬に顔を出すのは10年に1度のこの時期だけ。またとないチャンスだろ?」
白夜が面白そうに笑った。確かに10年に1度のチャンスだけど、白夜がこんな顔するのはまだ何かありそうだ。
「小松・・・他に何かある?」
出会って結構経った小松とトリコには少し慣れてきた。少し間が空いてしまうけど、前よりマシだ。
「え?あぁ、フグ鯨の体内には猛毒の毒袋があります。その毒袋を取り除くのは難しく、特殊調理食材に指定されているんです」
「・・・白夜」
ジロッと白夜を睨みつける。白夜が興味を持ったのはおそらくそちらの方だ。ただ10年に1度にしか現れない魚に白夜があんな顔するはずがない。白夜は苦笑いを浮かべた。短い付き合いだが、この顔は「バレたか」という顔だ。
「ボソッ(試したいことがあるんだよ。気晴らしのついででいいから。な?」
「ボソッ(今回だけだからね」ムスッ
そんな話をしているとも知らないトリコは酒を飲み、小松は期待に胸を膨らませていた。
はい、フグ鯨編の1話終了です!ここから先また長い物語になりそうですが、頑張っていきたいと思います!