言霊の巫女は食の世界へ? 作:セシア
主さんの尻尾で隠れていたのは黒い狼だった。その毛並みは闇を思わせる漆黒・・・赤い目は鋭い視線を送っている。そんな中、白夜が頭をかいた。
「おいおい・・・なんでバトルウルフがここにいるんだよ?それになんで黒色?」
白夜の言うとおりだ。フグ鯨洞窟から帰った後、私は白夜と一緒にバトルウルフについての書物を読んだ。バトルウルフは白い毛並みのはず・・・でもこの子は黒。
《こやつはダークウルフ。人間どもがこやつの体を弄った結果だ。研究所から命からがら逃げてきて今はわしが面倒をみとる》
主さんの言葉に私はふつふつと怒りが湧き上がった。この子はまだ子供だ・・・なのにこんなひどいことができるなんて!
「焔、どうした?」
白夜は主様の声が聞こえないから私は低い声で話した。それを聞いた白夜も苦虫を潰したような顔をする。
「IGOじゃねぇよな?」
もしIGOだとすれば私たちに深い関わりがある・・・彼らがやったことなら今すぐに縁を切ってしまいたい気分だ。
《そんなでかい組織ではない。もっと小さな研究所だ・・・》
でかい組織ではないということはIGOとは関係ないか・・・良かった。
「それで、頼みたいことってこの子のことですか?」
《あぁ、この子が食べることを拒絶しとるんだ・・・なんとかできんか?》
多分薬を盛られたりしていたんだろう・・・それで食べることに恐怖を覚えた。グルメ時代と言われるこの時代で食べることに怯えるなんて可哀想だ。なんとかするしかない
「やってみます・・・白夜、これ預かってて」
「あぁ・・・無理すんなよ」
私は首からかけていた勾玉の念珠を外した。それを白夜に手渡す。普通の“音”ではこの子の心を開くことなんてできないだろう・・・。だから、“音”ではなく“声”で・・・
「・・・おいで」
-ピクッ-
洞窟内に私の声が響く。ダークウルフは耳をピクリと動かして私を見た。警戒しているけど気になるような顔だ。私はその場に膝をついて膝をポンポンと叩いた。
「おいで、大丈夫だよ。お前を傷つける奴はここにはいない」
「グルル・・・」
ダークウルフは警戒しながらも私に近づいてきた。白夜や主様が見守る中、ダークウルフは私の近くまで来ると私を見る。
「毛並み、触ってもいいかな?」
《・・・お前、変な奴》
私の質問に対する答えは予想もしない言葉だった。でも、別に悪い気はしない・・・逆に話してくれたから嬉しいのだ。
「よく言われるよ。後ろに立ってる人にはバカってよく言われてる」
「なんの話だよ」←
白夜のツッコミは無視して私はそっとダークウルフの毛並みを撫でた。
《・・・お前俺たちの声聞こえるのか?》
「聞こえるよ。私ね、ある森の守護をしてたんだ」
そう言って私は昔の話をした。動物たちのことや親が死んだこと、白夜との出会いやその後の話など・・・たくさんのことを話した。
《俺が知らないことばかり・・・》
「私も森の外のこと全然知らなかったけど、外に出て知ることができたよ。いや、これからも知り続けるといったほうがいいかな?世界は広いもの」
トリコが言っていた。この世界にはまだまだ知らないことがたくさんある。そして、食材だってたくさんあるのだと・・・私は森という小さな場所しか知らなかった。風に聞いても全く想像がつかなかったのだ。でも、実際に旅したりすれば知らないことを知れた。
《俺も・・・俺も知りたい!話だけじゃなくて実際に見てみたい!!》
ダークウルフの目がとても輝いて見えた。さっきの警戒ではなく、未だに知らなかったことを知りたがる子供のような目だ。
「一緒に見に行こう!どこまでも遠く!・・・イタッ!?」
私とダークウルフが盛り上がる中、その場にいたもう1人がハリセンで私の頭を叩いた。
「アホ。その前になんか食わせねぇと体もだねぇだろうが」
「白夜!いきなり叩かなくてもいいじゃん!!」
私は叩いた張本人・・・白夜をキッと睨みつけた。白夜はそんな私たちを呆れた顔で見てからカバンからあるものを取り出す。
「ほら、フグ鯨の刺身だ。疲れた体にはもってこいだろ?」
白夜はいつの間にかフグ鯨の刺身をとって戻ってきていたようだ。話に夢中で全然気づかなかった・・・(ーー;)
今回はバトルウルフの変異種(?)ダークウルフを出しました。そして、焔の真の力も出してみましたがどうでしたか?
次回、焔はダークウルフに食べることの楽しさをどうやって教えるのか?そして、ダークウルフに焔が新たな名前を!!?
次回もお楽しみに!