言霊の巫女は食の世界へ? 作:セシア
白夜side
俺はガララワニから漂う血の匂いに眉を寄せた。こいつはかなりの獲物を屠ってやがる・・・小松がさっきから煩いのは放っておくとして、俺は寝ている焔を抱き上げた。この状況でよく寝ていられるな・・・
「トリコ、一人でやれるか?」
「あぁ、下がっててくれ」
トリコの言葉を聞いて俺は小松を連れて巻き込まれない場所まで下がる。それと同時にトリコとガララワニの戦いは始まった。トリコがガララワニを殴り飛ばし、ガララワニはトリコにバロンヒルをつけて血の匂いを追って食らいついてくる。それにしても、あの巨体を殴り飛ばすわ投げるわでどんな体してんだよ・・・。そんなこと考えていると、トリコが止まった。諦めたのかと思えばそうではない。目が諦めていないからすぐに分かった
「…ガララワニよ。その堅い鱗、鋭い爪、強靭な牙、3トンもあろうその顎の力。バロン諸島の王者にふさわしい姿…」
そう呟くトリコの体から、妖気ではない何かが溢れ出てくるのを感じて思わずゾクっとなった。なんだあれは・・・?人間があんなものを持っているはずがない・・・!
「お前に敬意を評し、俺も見せよう・・・人間の武器を!!この世のすべての食材に感謝を込めていただきます!」
そう言うトリコの体から溢れ出た妖気ではないものは、人ではない形に具現化していく。あれはまるで・・・ 鬼みたいだ
「お、鬼・・・」
「スゲェな・・・」
俺はジッとトリコのことを見た。人間があんな力を持つことに興味が湧いてきたのだ。そんなことを考えているとガララワニがトリコに向かって襲いかかった。だが、先ほどのあれを見てどちらが捕食者なのかは一目瞭然だ。
「うおおおおお…フォーク!ナイフ‼︎」
トリコは手の形を変え、片方で刺して片方で切った。おそらくあれはフォークとナイフというもの真似た形なのだろう。俺がいた時代ではなかったものから、あれも現代で使われるもの・・・こちらで学ぶことは多そうだと苦笑いを浮かべた。
「ごちそうさまでした」
トリコがそういったあとこちらを向く。その顔は戦った後だというのに涎が出ていた。これはまさか・・・
「小松!白夜!早く食おうぜ!!」
「やっぱりか・・・(-。-;」
トリコがガララワニの肉を食べたがることはなんとなくわかっていた。あの涎を見れば誰にでもわかることだ。トリコが焚き火に薪を出しているのを見て俺はため息を吐いて抱き上げていた焔を下ろしてすぐそばに座る。
「いいのかなぁ?パーティーの食材をここで食べちゃって…」
小松が結構戸惑っているのは仕方ないことだろう。なんせ捕獲してくるものを食べるのだから・・・
「いいんだよ。こんなデケェの持って帰れねぇだろ。見ろよ、霜降り脂のキラキラ!」
「夜空に輝く星々のようです!」
小松も何気に乗り気になってるし・・・ま、こういうの初めてだから別にいいか。そう思いながら俺はチラリとまだ目覚めない焔に目をやった。さすがにこのままだと風邪をひきそうだと思い、着ていた上着をかけてやる。
「白夜も食えよ!うめぇぞ!」
「あぁ・・・てか、食い過ぎんなよ」
小松が石焼にしたものを貰って食べると、美味いと思えた。俺は奈落という妖怪の分身で、別に食べなくても生きられるから何かを食べる事はしたことがなかったのだ。美味いと言うものがどんなものなのか知らない俺は別に興味もなかった。ただ奈落の命令をこなすだけの日々だったのだから当たり前だ。
(何かを食べなきゃ生きられない人間を不憫に思ってたが・・・こういうのもいいかもしれねぇな)
そんなことを考えていると、遠くから視線を感じた。まるで観察しているような視線だ。
二人は気づいてないようだが・・・当たり前か。いろんなやつを観察してきた俺だからわかる視線だからな・・・。
「白夜さん?」
「ん?あぁ、ちょっと気になることがあるから見てくる」
俺はすっと立ち上がって焔を見た。寝息を立てていることから別に問題なさそうと判断する。
「トリコ、食うのはいいけどこいつの分残してやってくれよ。起きた後腹減ってると思うし」
「分かってるって!」
一応トリコに釘を刺して俺は森の中にかけて行った。見に行くついでにあの場所に何か落ちてないか見に行くか・・・
焔side
私は居心地の良い微睡みの中にいた。見ているのは私の両親と一緒に森の動物たちと歌う夢・・・でも、それはすぐに消え去ってしまう。両親は言った、森の外に出てはいけないと・・・守護者は森と共に在れと・・・ずっとその言いつけを守ってきた私は、風が運んでくる噂だけで我慢した。両親が死んで悲しくても、この言いつけだけは守ってきたのだ。そんな時だ、森の住民である妖怪が奈落の分身に追われているという声を聞いたのは
その妖怪が時空を少し歪めることができると聞きつけた奈落が分身をよこしたのだ。私はなんとかその妖怪を助けようと抱えて逃げた。でも、追い込まれて・・・そこまで考えたところで意識が覚醒した。ゆっくり目を開けると、目の前には焚き火が燃えている。私はゆっくりと起き上がり、周りを見渡した。そこは私の知る森ではなく薄暗い森で、目の前には青い髪をした大男が・・・
「!!!???」
私はハッとなってそこから離れようとしたが尻餅をついてしまった。ここはどこだ?私は森の中にいたはずなのに・・・
「おい、大丈夫か?」
「え、あ・・・」
ひょっこり顔をのぞかせる男に私はビクリと肩を震わせた。森ではほとんど動物達と暮らしてきたから外の人とどう話したら良いのかわからない・・・
「トリコさん!驚いてるじゃないですか」
青髪の男とは別の小柄の少年?が私に近寄った。この大男はトリコ言うのだろうか・・・?
「んなこと言われてもな・・・」
ぼりぼりと頭をかくトリコに小柄な少年?は呆れながら私に手を差し伸べた。
「えっと、焔さん・・・で良いんですよね?」
この人、どうして私の名前を知っているんだろう?とりあえず頷いて少年の手を取って立ち上がる。
「僕、小松と言います。こちらがトリコさんです。あ、焔さんと一緒にここに来た人は今いませんけど・・・」
私と一緒にここに来た人?私は首をかしげながら下を見て目を見張った。そこには1つの着物の上着が・・・これは、あの奈落の分身が着ていたものだ。小松が言う一緒に来た人とはあの分身のことを意味する・・・
「それより、腹減ってねぇか?」
トリコの言葉に私は不覚にもお腹を鳴らしてしまった。恥ずかしくなって下に俯く顔は真っ赤になっている。
「あ、ちょっと待っててください!」
小松が私から離れて一切れの肉を石焼にした。それを見ながら私は着せられていた上着を見る。何故あの分身は私にこれをかけて行ったのだろう?何かを企んでるのか、それとも別の理由があるのか・・・そんなことを考えていると小松が戻ってきた。手には美味しそうに焼いたお肉がある。
「どうぞ、食べてください」
私は戸惑いながらそれを受け取って一口食べてみた。
「!・・・美味しい」
カリッとしてて中から脂が出てくるのに、しつこくない。こんなの食べたことなかった。
「だろ?じゃんじゃん食えよ!まだまだあるからな!」
トリコがニカっと笑うのを見てこの人達は悪い人ではないと判断した。と言うよりも、周りにある大きな肉塊は全部このお肉なのか?という疑問を持ったのは言うまでもない。私はそのお肉を一口ずつ丁寧に食べながらそんなことを考えていた。
ガララワニの捕獲と主人公が目覚めたのを書きましたがどうでした?次回は主人公の力を出してみようと思いますのでお楽しみに!