言霊の巫女は食の世界へ? 作:セシア
これからまた少しずつですが更新していこうと思います。
亀更新になると思いますが、読んでいただけると幸いです
「伝説の狼、バトルウルフ・・・なんて存在感だ!」
席を立ち、声をあげながらもバトルウルフから目を離さないトリコ。そんなトリコに小松は「伝説の狼?」と首を傾げた。
「あぁ、鳥肌が収まらねぇ・・・」
そう言いながらバトルウルフを見ていたトリコをよそに、私の隣で腕を組んでいた白夜が口を開いた。
「その伝説と言われているバトルウルフが、なんでこんな所にいるんだ?」
白夜の棘が混じった言葉に私は苦笑いを浮かべた。眉間に皺を寄せている白夜の顔は、見ればわかるほどに不機嫌そうだ・・・。そんな白夜の様子を気にも留めず、マンサム所長は言葉を告げる。
「デスゴールが全滅した場所から僅かだがバトルウルフの細胞が見つかった。奴はその細胞で復元したクローンだ。体長18m、体重11t。生態はまだまだ謎だが、おそらくバトルウルフ最大級だろう」
バトルウルフのクローン・・・詳しい事はよく分からないけれど、あのバトルウルフはもしかしたらシリーと同じなのかもしれない。そう思った私は無意識にポーチから顔を出していたシリーに目を向けた。
《あのバトルウルフも俺みたいなことをさせられてるのかな・・・?》
悲しそうな顔をしながらポーチの中からバトルウルフを見つめるシリー。私はそれを見てこの先の事を考えた。
(あのバトルウルフもこれから生まれてくる子供も、ずっと研究所の中で生きていくことになる。それが本当に、あの子達の幸せに繋がるのかな・・・?)
自分がやろうとしていることは、ただの一方的な思いの押し付けになるのではないか・・・?そんな事を考える私をよそに、トリコはコロシアムを見ながらこう言った。
「ま、なんにしても伝説の狼の血を引いているのは確かだ。見ろ、他の奴等を」
トリコに言われてコロシアムの方を見てみると、バトルウルフの迫力に押されている猛獣達の姿が・・・
「みんな怯えているな・・・」
白夜が苦笑いを浮かべながら他の猛獣たちに同情の目を向けている中、マンサム所長がとんでもない爆弾を落とした。
「一番人気はバトルウルフ。2番人気は伝説の魔獣、デーモンデビル大蛇だ」
所長の一言に、小松の顔色が見るからに青くなる・・・。デーモンデビル大蛇は洞窟の砂浜で小松を襲った奴(アレとは別だと思うけど)だ。
「そ、それって・・・!」
「小松を襲った奴と同じ種族・・・?」
あの時はお爺さんが助けてくれたから運よく生き延びることが出来たけれど・・・もしもあのお爺さんがあそこを通らなかったかと思うと考えるだけでゾッとする。
「あわわわ・・・・・!」
その時の事を思い出したのであろう小松はかなり慌てていた。コロシアムの中にいるんだし、こっちに襲ってくることはないと思うけどね・・・;
‐ピーコピーコ‐
小松を見ながら苦笑いを浮かべていると、突然所長の席にあるモニターが赤く点滅し始めた。
「!おぉ、鈴か?ちょうどよかった。デーモンデビル大蛇はどうした?」
それに気づいた所長がボタンを押して鈴(?)という人に声をかける。
【それどころじゃねぇし!ハゲ!】
「何?ハンサム?」
マンサム所長の返答に私と白夜は思いっきりずっこけた。“ハゲ”と“ハンサム”を聞き間違えるかな普通・・・?
【ハンサム言ってねぇし!つうかバトフレマシーン壊れちゃったし!このままじゃ猛獣ちょーテンションマックスで暴れまくっちゃうし!!】
気になってチラッとモニターを覗くと、私より年上の女性が何かの機械と格闘していた。というより、今凄く怖いこと言ってたんだけど・・・?
「何っ!?お前猛獣使いだろ!なんとかしろ!」
【今やってるけど止まんないし!つうか人使い荒いぞ!ハゲ!】
鈴さんの言葉に私はこの後所長が言う言葉に察しがついた。白夜も同じなのだろう・・・少し呆れた目を所長に向けている。
「なに?ハンサム?」
【言ってないし】
もう突っ込む元気もないのか、呆れた顔で片手を振る鈴さん。所長、一回病院に行った方が良いんじゃないかな・・・?治るか分からないけど←
「トリコ、なんかマズイことになってるようだぜ?」
「聞こえたよ」
白夜の言葉に呆れた顔で答えるトリコ・・・もしかして、このやりとりは日常茶飯事なのかな?それを察したのか少し可笑しそうに笑う白夜の顔を、私は見逃さなかった。
【ト、トリコ!?そこにいんの?!・・・てか、その女“達”誰だし!!】
鈴さんの言葉に、私は目を丸くしながら周りを見た。えーと、女は私と・・・あれ?
(この場にいる女って私だけじゃ・・・・あ)
一瞬不思議に思った私はそのまま白夜の方を見た。そこには、先ほどの楽し気な顔と一変して不機嫌な顔をした白夜の姿が・・・。そういえば、髪を降ろした白夜はよく女の人と間違われてたねww
「焔、なに笑ってんだ」
思っていることが顔に出ていたのか、白夜が不機嫌な顔で私の頬を引っ張った。
「びゃふや、いひゃいよ(白夜、痛いよ)」
私と白夜がそんなやりとりをしている間にも、鈴さんは一人ではしゃぎだした。それと同時にコロシアム内にピンクの煙みたいなのもが出始める・・・
「おぉ!?バトルフレグランスが大量に!」
「バトルフレグランス?」
「あの煙みたいなもの・・・?」
聞き慣れない言葉に私と小松は首を傾げた。白夜はというと、自分の髪をいつもの様に結い上げている
「戦いがやまない島、バトルアイランドに咲くというバトルフラワーのエキス。その匂いは動物の中枢神経に作用して興奮状態にする効果がある」
戦いがやまない島・・・この世界にはそんな場所が存在しているんだ。いや、別に不思議ではないか・・・私がいた世界だっていろんなところで戦が起こっている。森から出たことがない私が知らなかっただけなのだ。そんな事を考えていると、不意に私の頭に何かが乗った。上を見ると、白夜が困った顔で私の頭を撫でている・・・。優しい手つきで撫でられた私は目を細めながら落ち着きを取り戻した。
「猛獣使いの鈴が管理の元使用する。まぁ、コロシアムでは欠かせないものなんだが・・・」
「量が多すぎるということだろ?」
確かに・・・この場所において、興奮させることは必要不可欠だ。しかし、それが多ければ多いほど手がつけられなくなる。
「あぁ、そうとう神経高ぶらせてやがる!!」
トリコの言葉の通り猛獣たちは全員バトルウルフに襲い掛かった。だが、バトルウルフは戦うこともせずに前に進もうとしている・・・
(バトルウルフの中にはまだ子供がいるのに・・・!)
衝動的に私は背中にある弓に触れた。しかし、手に取る前に白夜が私の手を掴んで止める。
「堪えろ。今ここでソレを鳴らせば金持ち連中の見世物になる」
「でも・・・!」
白夜の言う通り、今ここで弓を鳴らして猛獣たちを落ち着かせれば観客たちの見世物になって
しまう。でも、このまま黙って見ていることしかできないなんて・・・
「トリコ。アイツ、なんか様子がおかしくないか?」
私の声を聞いた白夜は近くにいたトリコに声をかける。トリコも何となくおかしいと思っていたのか、少し考えてハッとなって顔をあげた
「!所長、アイツもしかしてメスか!?」
「あ、あぁメスだがそれが?」
何故そんなことを聞いたのか分からないという表情で答えるマンサム所長・・・
「トリコ、止められるか?」
「あぁ・・・行ってくる」
トリコが立ち上がってその場を去るのを見た白夜は小さく笑った。私はもう大丈夫だと判断して弓から手を放す
「白夜・・・」
「お前が動かなくても、アイツがなんとかするだろ。お前は予知の事だけを気にしとけ」
そう言いながら私の頭を撫でる白夜・・・本当に、白夜は狡賢い。トリコがすぐに気づく様に誘導して動かすなんて・・・
「その狡賢いところ、奈落と似てる・・・」ボソッ
奈落は他人を利用して自分の手を汚さない奴だと風の噂で聞いたことがある。自分の分身や周りの存在を駒の様に扱うのだ。
「そりゃあ、俺はアイツの分身だからな・・・」
苦笑いを浮かべながらそう言う白夜は、きっと奈落のやり方を一番近くで見てきたのだろう・・・そう思うと少し胸が痛んだ。
今回は猛獣使いの鈴さんを出しました。ついでに、白夜が女と間違えられる場面も入れてみましたがどうでしたか?
私が初めてアニメで白夜を見た時の印象が「この人、男性なのに口紅付けてるなぁ〜」というものだったので、なんとなくそうしてみました。
次回は白夜がついに動き出します。