言霊の巫女は食の世界へ? 作:セシア
焔side
しばらくすると、感じたことのある気配が近づいてくる。それは、あの分身の気配だ。そちらを見ていると、予想通りあの分身が森の中から出てきた。
「お、目が覚めてたのか」
「白夜さん!それなんですか?」
分身・白夜は手に何かを持っていた。いや、何かじゃない・・・。手に持っていたのは・・・私の弓矢。
「これか?俺たちがいたところに落ちてたんだ。・・・ほら」
白夜が私に近づいて弓矢を手渡した。私は少し警戒しながらそれを受け取る。弓に刻まれた星の紋・・・やっぱり私のだ。
「焔さん弓矢を使うんですか?」
驚いた様子の小松に頷くと、矢を使わずに弦を引いて離した。
-ピィーン-
私を中心に澄んだ音が響く・・・。それはどこまでも遠くにまで広がった。
「綺麗な音だな・・・」
トリコに言われて私は少し照れる。それと同時に近くの茂みがガサッと動いた。
「「!?」」
「おいおい・・・」
二人は驚き、白夜は苦笑いを浮かべる。茂みから出てきたのは見たことのない大きな虎。こんな虎もいるんだ・・・
「バロンタイガー!?」
トリコが臨戦態勢になるのを私は手で制した。そして、もう一度音を鳴らす。バロンタイガーと呼ばれた虎はゆっくり私に近づいてその場に座った。
「・・・触ってもいい?」
「え、焔さん!?」
《好きにしな》
小松が驚き慌てる中、バロンタイガーの声が頭に響いた。私は「ありがとう」と言ってバロンタイガーの背を撫でてやる。ふわふわしてて心地いい毛並みだな・・・
「こいつは驚いた・・・バロンタイガーが人に気を許すなんて」
トリコはそんなことを言うけど、それは違う。あの弦の音は動物の心に安らぎを与えるもので、それを聞いたから落ち着いたのだ。バロンタイガーは尻尾をユラユラと動かしててリラックスしている。
「さっきの音だろ?」
白夜は気づいていたらしく、コクリと頷いた。この子、さっきまですごく怯えてたけど今はゆったりとしている。多分、この子にとっての恐怖の対象がいなくなったからなんだろう。私はバロンタイガーを撫でながらも白夜に対して警戒心を抱いていた。
焔が起きる少し前・・・白夜side
俺は気配を消しながら森の中を駆けていた。視線はこっちからしてからそろそろ見えてくるはずだ・・・。そう思った矢先、俺は視線を感じて立ち止まった。木の陰に隠れて視線の先を見るとなんか目玉が飛んでいるのが見えて苦笑いを浮かべる。あれは人のものではないのがすぐにわかるが、自分と同じものでもないことからこの世界だからあるものなんだろう・・・。
(なんか真似された気分だな・・・)
そいつがどこかに飛び去っていくのを見て俺は追うことを諦め、次の目的地に向かった。俺たちがこの世界に落とされた場所だ。何もないだろうと思いながらそこに向かっていると何かにつまづいた。つまづいた何かを見ると、そこには弓矢が置かれている。
「アイツのか?何でこんなとこに・・・まぁいいか」
俺はその弓矢を拾って他に何かないか探す。特に何もないことを確認してから俺はトリコたちのところに戻って行った。
ありがとうございました。次回でいよいよガララワニ編終わりです。
虹の実編では原作とは別のオリジナルストーリーを予定していますのでお楽しみに!