東方幻想物語 ~ユメモノガタリ∼   作:空亡之尊

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姫様の悩み事

―――神無優夜、永琳の部屋にて

 

 

前回のあらすじ、路地裏で助けた少女は蓬莱山輝夜だった。

しかも屋敷を抜け出したのは月美に会う為だとか。それを聴いた俺は能力を使い、輝夜を連れてここまで人目を避けてやってきた。

しかし、ここまで来て他にも使える能力があったことに気付いた時には、何とも言えない気持ちになった。

そんなことを考えながら、俺は輝夜を部屋にあるソファに座らせるとお茶を淹れて彼女に出した。

 

 

「粗茶だが、どうぞ」

「ありがとう。気が利いてるのね」

「このくらい普通だ」

 

 

俺はそう言って輝夜と対面するように座ると自分用に淹れたお茶を一気飲みした。

 

 

「っあ~美味い」

「おっさんみたいね」

「全国のおっさんに謝れ。あと、これでも能力使うのに体力使ってんだよ」

「あの程度なのに?」

「あの程度でも、だ」

 

 

俺はコップをテーブルに置くと、適当に一枚カードを引いて輝夜に見せる。

 

 

「俺は元々、何の取り柄もない人間だ。

永琳の様に天才でもなければ、依姫の様に戦闘が得意というわけじゃない。

 そんな俺は無理矢理能力を使っている。その分、身体に掛かる負担も大きいんだよ」

「そういうものなの?」

「そういうもんだ。現に依姫と三枚使っただけで一日身体が動かなかったからな」

「無茶するわね。そんなんじゃ、いつか死んでもおかしくないわよ」

「そうだな。俺はアンタたちと違って、寿命があるみたいだからな」

 

 

俺はカードを手元でくるりと回すと、それを一輪の月見草の花へと変えた。

それを見て、輝夜は目を輝かせながら俺に詰め寄った。

 

 

「今のは!?」

「ただの手品だ。暇潰しに練習したのがこんな所で日の目を見るとはな」

「どうやったのか教えて」

「ダ~メ。手品を教えたら驚かす楽しみがなくなるだろ?」

「ケチね」

「その代わり、これは出会いの記念ということで輝夜にやるよ」

 

 

そう言って俺は輝夜に手品で出した月見草を手渡した。

 

 

「不思議ね。何の能力もない人間でも、こんなことができるなんて」

「何もないからこそ、こういった娯楽を求めるんだよ」

「羨ましいわね。穢れを持たぬ人間より、穢れを持った人間の方がよっぽど人間らしいわ」

「そう言うなよ。俺から見れば、輝夜も永琳もツクヨミも同じもんだ」

「私や永琳はともかく、ツクヨミ様まで同じなの?」

「俺は神様を崇拝していないだけだ。奇跡も救いもない神を信じても良い事はないからな」

 

 

俺はそう語るとお茶を淹れに戻った。すると、俺は輝夜に尋ねた。

 

 

「そういえば、月美とはどうやって知り合ったんだ?」

「そうね、永琳の所に外から来た女の子が居候してるって噂を聞いて、それを見に屋敷を抜け出したのが始まりね。あの時はすんなりとここに辿り着けたのに、今回は残念だったわ」

「前にも同じ事やってるのかよ」

「仕方ないでしょ。永琳は立場上、会わせるわけにもいかないから」

「それもそうだな」

 

 

お茶を淹れ終えた俺はソファへと座る。

 

 

「で、会ってみてどうだったんだ?」

「……あの頃の月美は、見るからに絶望してる様子だったわね」

「絶望、ね」

「身寄りもない、自分が誰なのかも解らない、なのに周りから嫌われている。

 これで絶望なんてしない人間がいるのなら、その人は狂ってるとしか言いようがないわ」

「悪かったな。単純思考のポジティブ野郎で」

「あら、ごめんなさい。優夜もそうだったのを忘れていたわ」

 

 

輝夜は笑って誤魔化すと、俺は溜息を吐いた。

 

 

「……そこから、どうやって友達になったのかを俺は聴きたいんだけどな」

「初めは怯えられたわね。当然よね、自分を蔑んできた奴らと同じ人間だもの。

 でも、私は何故かあの子のことが放っておけなくなったのよね。

 それから日を改めて、今度はあの子と遊ぶために花札を持ってきたりもしたわ。

 怯えていたあの子も、私が遊び方を教えたら楽しそうに相手をしてくれた。

私はそれがとても嬉しかった。あの子の笑顔を見れただけで、私は幸せだった」

 

 

懐かしむように語る輝夜の姿を見ていると、月美のことをどれだけ思っているのかが良く解った。

 

 

「あれから偶に屋敷を抜け出してはここに来て、月美と一緒に遊んでいるわね」

「もはや家出の常習犯かよ。いっそここに住めばいいのに」

「永琳が許してくれないのよ。私をこんな所に住ませたくないって言って」

「確かに、あんな散らかった部屋にお姫様を住まわせられないな」

「それでも、あの子と遊んでいるときだけは自分の身分なんて忘れられるのよね」

「なるほど。心から許せる友達ってことか」

「まぁでも、友達だと思っているのは私の一方的な考えだけかもしれないわね」

「そんなこともないんじゃないのか」

「どうしてそう言い切れるのよ?」

「いや~だって………………アンタの後ろにいる奴がそれ聴いて嬉しそうに泣いてるからな」

「……え?」

 

 

輝夜が急いで振り返ると、そこには買い物から帰ってきたばかりの月美が立っていた。

実は「そういえば、月美とはどうやって知り合ったんだ?」の時点から既に部屋にいたのだが、俺が黙っているようにと月美に頼んでいた。

案の定、輝夜の話を聴いた月美は途中から号泣。とりあえずルナの「周りの音を消す程度の能力」で消音していた。そしてそれを今俺が解除した。

 

 

「つ、月美!? いつからそこに」

「ヒック……ずっといました」

「そ、そう……」

「輝夜ちゃん」

「なに?」

「私は輝夜ちゃんの事、友達だと思っていますよ」

「月美……」

「こんな私に面と向かって構ってくれたのは、天野さんや永琳先生、それと輝夜ちゃんだけです」

「お~い。俺は?」

「ユウヤさんは別です。あと、少しだけ黙っていてください」

「はいはい」

 

 

俺はそう言ってソファに寝転がると、薄眼で輝夜たちを見る。

 

 

「とにかく、こんなどこの誰だかわからない私に遊びを教えてくれた輝夜ちゃんには感謝しているんです。この頃会える機会もないし、伝えられることもできませんでしたけど」

「そう……良かった。こんな私でも、貴女の友達になれたのね」

「こちらこそ。不束者ですが、これからも友達でいてください」

「……使い方間違ってないか?」

「あゝもう!! ユウヤさん、いい加減その口を縫いますよ」

「あはは。それだと月美のことを好きだと言えなくなるな」

「はぁ……相変わらずですね」

「ふふ。なんだか二人尾も、私とお話しするよりも楽しそうね」

「「確かに/違います!!」」

 

 

声をあげて否定する月美を見て、俺と輝夜は楽しげに笑う。

その後、輝夜の迎えが来るまで三人で変わり替わりで花札で遊んだ。

その様子をカメラに収めたが、結局この写真を目にする日は果たしてくるのだろうか?

 

 

 

 





空亡「友達作りって、大変ですよね」
優夜「お~い。一人で勝手に黄昏てるんじゃねえ」
空亡「くっ、こうして文字にするだけなら口先八丁だけでいくらでも語れるのに」
優夜「現実のお前はニジオタコミュ障だからな」
空亡「俺はどこぞのシンタローさんじゃありませんから。……くそ、イケメンめ」
優夜「嫉妬心というかこれを書いてる間に心が痛めつけられてるな」
空亡「僕ってこんなにもマゾでしたっけ? 自分的にはSだと思うのですが」
優夜「知らねえよ。それより、今回も本編について語ってねえぞ」
空亡「………どう語れと?」
優夜「おい、あとがきの存在理由がなくなるぞ」
空亡「いつもの事でしょ。何を今更」
優夜「それでいいのかよ、お前」


次回予告
門に立つ二人の男、彼らは曇天の空を見上げながら語り合う。
東方幻想物語・月之刃編、『綺麗事な言葉』、どうぞお楽しみに。
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