東方幻想物語 ~ユメモノガタリ∼   作:空亡之尊

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綺麗事な言葉

―――神無優夜、街の入り口にて

 

 

すべての事象には名がある。と言うより、名前がないものは存在を認識できない。

我々は先ず対象に名前を付ける。そのためには対象の概念を明確にし、またそれ以外の事象との区別を持たなければならない。この過程で名前を付けた対象が明確になる。(wiki参照)

つまり、名前というものはその存在を証明するために必ず必要となる物。名前がなければ憶えられないし、それに似たものと区別あるいは混同する場合にも大切となる。

まぁ、俺が何を言いたいのかというと…………………………。

 

 

「俺の能力にも名前が必要だと思うんだよな」

「知るか」

 

 

街の入り口、門の右端に寄りかかる天野は興味なさげにそう言った。

ちなみに俺はその反対側、門の左端に座っている。

 

なんで俺がこんなところにいるのかというと、ここ最近天野と話す機会がないと思ったからだ。

こいつ、滅多なこと以外で街に入ることがないらしく。俺が最後に見たのはツクヨミに瞬間移動させられた時以来だ。

永琳曰く、この門番の任務に就いてから仕事一筋に生きてきているらしい。

こんなところに一人でいてよく退屈しないものだと感心するが、なんだか悲しくなる。

 

ということで、今日は俺自ら天野の方に出向いたというわけだ。

しかし、思った以上にやることもない。当人は起きてるのか寝ているのかよく解らないし、何より会話がない所為でその場の空気が重く感じられる。

こっちが話しかけても一言で会話が終了する。意図的にやっているあたり、コミュ障よりも質が悪い。

 

そこで、俺は暇潰しに色々と考えていた。

思い返せば、俺の能力について深く考えてこなかった気がする。

東方キャラの能力と身体に負担がかかること以外、何か大事なこと忘れている気がしていた。

そう、さっきも言った通り、俺の能力……能力と言っていいのか、これ?

 

 

「俺のって他人の力を借りてるだけだしな……それを自分の能力だと誇るのも」

「それを今更言うのか?」

「まぁ、永琳や輝夜には逆に面白がれてるし、ここは本題でもある名前を決めよう」

「それだったら一人で他の所でやってくれ」

「嫌だよ。永琳や綿月姉妹はお偉いさんに呼ばれてるし、月美と輝夜は女の子同士でお話し中だ」

「つまり、一人ぼっちか」

「ボッチ言うな。偶々都合が合わなかっただけだ。……ボッチなんかじゃ」

 

 

否定していると、なんだか悲しくなってきた。

おかしいな。こんなことで一々落ち込むような性格じゃなかった気がするのに。

 

 

「……ところで、アンタはこの仕事長いのか?」

「そうだな。この街ができた時からだな、多分」

「そーなのかー。すると、見た目より古参というわけか」

「新参者のお前には言われたくないな」

「悪かったな。しかし、よくこんな仕事を続けられるな」

「人を護る仕事だ。それなりには誇りを感じているさ」

「立派だな」

「それが普通だ」

 

 

天野はそう言うと、空を見上げた。

今日は生憎の曇り空、いつもの様に昼寝をしようかと思っていたがこの天気じゃ呑気に寝てられないからな。

そんなことを思っていると、ぽつりと俺の頬に雨粒が落ちてきた。

 

 

「そういえば、アイツを見つけたのもこんな天気だったな」

「アイツって?」

「夢燈だ」

 

 

その言葉と共に、本格的に雨が降ってきた。

 

 

「月美?」

「アイツのことになると人が変わったように大人しくなるな」

「他の男からアイツの名前が出てくると少しどす黒い感情になるだけだ」

「相当だな。……心配するな、別に何もない」

「それで心配するほど俺も子供じゃねえよ。……で、どうやって出会ったんだ?」

「高原だ。あそこは妖怪がよく出没すると噂されていたからな」

「門番の仕事放っておいて何やってんだよ」

「そんなことはどうでもいいだろ」

「そうだな、重要な事じゃない」

 

 

雨音が鳴るその場で、俺は天野の言葉を待っていた。

 

 

「アイツは、森の中で妖怪と人間に囲まれていたな」

「妖怪と、人間?」

「正確には、それらの死体が横たわる場で、アイツだけが立っていた」

「どういう状況だよ」

「俺から見れば、返り血に染まった女が刀片手に死体の山を築き上げたようにしか見えなかった」

 

 

昔を思い出しながら語る天野の瞳は、僅かに恐怖で揺れていた。

 

 

「今でも思い出す。俺を見つめたあの虚ろな目、そして全身から感じた穢れ。

 俺は一瞬疑ったよ、目の前にいるこいつが本当に人間なのかってな」

「女性に対してそんな言い方はひどいな」

「まぁ、アイツはその場で意識を失って、それを街へと運んだ。所詮その程度だ」

「それ聴いてると、俺が知る月美が本当に解らなくなる」

 

 

俺は最初に月美と出会った時のことを思い出した。

ルーミアに追われ、死ぬ事と裏切られることに怯えていた。そんな彼女に、殺しをさせるような出来事とは何だったのか?

 

 

「結局、俺は月美のことを何も知らないんだよな」

「それでもなお、お前はアイツのことを愛していられるか?」

「決まってるだろ。どんな事情があろうと、俺は彼女の子が好きなのは変わらねえよ」

「そんな言葉、所詮は綺麗事だ」

「そうだな。でも、だから現実にしたいんだよ。綺麗事が一番いいからな」

 

 

俺はそう言って笑うと立ち上がった。

まさか、こんな所で五代雄介の名言を言うとは思わなかった。

けど、綺麗事だと言われたのなら、それを現実にして見せる。それが俺に出来る事だ。

見上げると、曇り空はいつの間にか晴れ渡り、青空が顔を覗かせていた。

 

 

「俺は月美の笑顔を見ているだけで満足してんだ。それ以上は望まねえよ」

「変わった奴だ。まるで一方的な愛だな」

「それでもいいさ。嫌われいるよりは何京倍もマシだ」

「ふん。精々、構ってばかりで鬱陶しがられないようにな」

「余計なお世話だ」

 

 

俺はそう言うと、街へと戻ろうとその場を去ろうとする。

 

 

「……『幻想を形にする程度の能力』」

「え?」

「お前の能力だ。そいつらの能力は、お前にとって幻想だったんだろ。

 それなら、それを自分の形にして戦うのなら、こういう名前の方が良いんじゃないのか」

「意外だな。考えてくれたなんて」

「今度来た時もこんな話題を出されても困るからな」

「ははっ。それじゃあ、ありがたく貰っておくぜ、その名前」

 

 

俺はそう伝えると、街へと戻っていった。

一瞬、天野の表情が緩んでいるように見えたが、本人には言わないでおくか。

だが、その表情はしっかりとカメラで撮らせてもらった。

 

 

「幻想を形にする程度の能力、か」

 

 

俺は嬉しくて頬が緩んだまま家へと帰って行った。

その後、月美に気味が悪いと言われ、玉砕するまで時間は掛からなかった。

 

 

 

 





空亡「思えば、男のオリキャラって少ないんですよね、この作品」
優夜「それはまあ、お前が女のキャラが好きだからだろ」
空亡「そうですが、女性の方がイメージしやすいんですよね。主に髪型とか」
優夜「あゝ、確かに男の髪型ってどういう風に表現すればいいかわからねえからな」
空亡「こうなったら、女装するオリキャラを」
優夜「やめろ。最悪俺が狙われるような未来しか思い浮かばない」
空亡「腐った女性の方々にはご褒美ですね」
優夜「なんだか無性に寒気が………」
空亡「冗談ですよ。それより、少しだけ月美さんについてわかってきましたね」
優夜「逆だ。余計にアイツのことが解らなくなってきやがった」
空亡「それならば、近いうちにでも彼女の心の内でも覗いてみると致しましょうか」


次回予告
神を信仰しない優夜は、月の神と戯れながら楽しげに語り合う。
東方幻想物語・月之刃編、『月の神は何想う』、どうぞお楽しみに。
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