東方幻想物語 ~ユメモノガタリ∼   作:空亡之尊

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第二章『刹那に願うは星之煌』
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―――神無優夜、劇場『ユメモノガタリ』にて

 

 

拍手の音が劇場へと響き渡り、俺はその音によって目が覚めた。

いつの間にか、あの劇場の観客席に座っていた。目の前には舞台一面に広がるスクリーンが下ろされており、そこには『第一章・完』という文字が中心に映し出されていた。

鳴り止まぬ拍手の音、それは俺の隣の席に座っている彼女、アイナからだった。

 

 

「アンタは……」

「見事でしたよ。アナタのご活躍」

「見ていたのか」

「えぇ。ここは劇場、役者であるアナタの活躍を見れなくてどうするんですか」

「そうかよ。自分の不幸を映画感覚でみられているのは、なんだか良い気分じゃないな」

「その通りですね。だからこそ、役者はこちら側を意識してはならない」

「第四の壁、か」

「よくご存知で」

 

 

彼女は面白そうに微笑むが、なぜだか俺にはその表情が憎たらしく感じた。

そんな時、俺はここに来る前の記憶を思い出した。

 

 

「なぁ、聞きたいことがあるんだが」

「なに?」

「俺は、また死んだのか?」

「いえ、アナタはまだ死んでないわ。ただ眠っているだけよ」

「そうか」

「ここは夢と現の狭間。アナタが生きていることが、ここへ立ち入る条件よ」

「初めて知ったよ」

「初めて言ったもの、当然よ」

 

 

彼女はそう言うと、隣の席から俺のカメラを取り出した。

 

 

「あ、それは」

「忘れてたでしょ?」

「ごめん。あの時は切羽詰まってて」

「いいわ。けど、今度からはちゃんと持っていてね」

「ありがと」

 

 

俺はカメラを受け取ると、それと一緒に封筒を受け取った。

 

 

「これは?」

「アナタが撮った写真を現像した物よ」

「できたのかよ」

「できたのよ。あと、時代的に不便してたから特別性にしておいたわ」

「特別性?」

「ポライドカメラのようにその場で現像できるようにしたわ」

 

 

彼女がそう言って指さした先には、確かにポライドカメラのように写真が出てくる口が備えられている。ここまでくると原型がわからなくなるな。

 

 

「さて、ここで一つアナタの事について話しておこうかしら」

「そうだな。こんなことの為に、俺を呼んだわけじゃないんだろ?」

「そうね。個人的にはこのままアナタと楽しくお喋りでもしたいのだけど」

「悪いな。こっちは最初と違って余裕がないんだ」

 

 

俺は睨みつけながら彼女へとそう言った。

あの時と違い、俺の中にはアイツ……明星美命への怒りと殺意が芽生えている。

俺らしくないのは理解しているが、感情を抑えられないのが俺の悪い癖でもある。

彼女は俺の目を見つめてしばらく黙っていると、深い溜息を吐いた。

 

 

「やっぱり、彼と出会ったのはまずかったみたいね」

「見ていたなら解るだろ。俺の気持ちぐらいはさ」

「嫌というほどね」

「なら教えてくれ、アイツはいったい………」

「その前に、アナタの体のことが先よ」

「俺の体?」

 

 

彼女は俺の胸のあたりを指さした。

 

 

「アナタの命は現在で二つある。アナタ自身と、夢燈月美のものよ」

「それは知っている。今でも胸に手を当てると鼓動がダブって響くからな」

「そうね。でも、その命によって、アナタの命の性質は大きく変わってしまった」

「性質が変わったって、どういう意味だ?」

「通常、人間には穢れがあり、その穢れによって寿命が定められているわ。

 けれど、『月美の命』を受け取ったアナタは彼女の性質、それを受け継いだ」

「具体的には、どう変わったんだ?」

「詳しくは話せませんが、一つだけ言えることは、アナタからは寿命が消えたということ」

「寿命が? それってまさか、不老不死にでもなったっていうのか?」

「少し違います。寿命がないだけで、他人から殺されれば普通に死にます。ただそれだけです」

 

 

つまり、寿命とかの時間に制限がある命というわけじゃない。だが他人からの干渉、先ほど殺されたりすれば俺は普通に死ぬ。不完全な不老不死、そういうことらしい。

 

 

「しかし、アナタの命は今二つあります。一度殺されても心配ないです。いわば残機ですね」

「気に食わない言い方だな。月美の命が残機かよ」

「私はそういう風にしか考えていないわ」

「くだらない。アイツから受け取った命を、そんな風に扱えるかよ」

「なら、今後も殺されるつもりはないということですね」

「当たり前だ。アイツの命、無駄にしてたまるか」

「素晴らしい覚悟ですね」

 

 

彼女は口元をニヤッとさせると、高らかに指を鳴らした。

すると劇場の明かりが徐々に消えていき、同時に開演のブザーが鳴り始める。

 

 

「ならばその覚悟、私に見せてください」

「待った。その前に美命の事を教えてくれ」

「……私からはあまり話せませんが、答えられる範囲でしたら」

「アイツの目的は何なんだ? 物語を壊してどうするつもりなんだ?」

「彼には目的なんてありませんよ。どこぞの少佐と同じ、手段の為に目的を選ばない奴です」

「アイツの答えと同じかよ」

 

 

俺が悪態を吐くと、彼女は俺に言った。

 

 

「私から言えるのは、彼はアナタの事が気に入っているということですね」

「ありがたくもないな。どうせなら、ヤンデレな妹に死ぬほど愛されたほうがマシだ」

「でも、だからこそアナタの幸せを壊そうとする。そのついでに、物語は壊される」

「まるっきり俺の方が厄介者じゃねえか」

「そうみたいですね。ですが、それでも物語は進み続けます」

 

 

開演ブザーの音が鳴り響くと、俺の意識は暗闇の中へと沈んでいく。

 

 

「最後に一つ、アナタが受け取った力について」

「力……?」

「そう。“それは最も優しき力、夜空の月を斬り裂き、悪しき心を討つ真実の刃”」

「長い……」

「……夢刀『月美』、それがその刀の名前ですよ」

「ふっ……皮肉な名前だな」

「気に入りませんか?」

「いや、良い名前だよ。本当に」

 

 

俺はそう彼女に告げると、眠るように意識を失った。

 

 

 




空亡「さぁ、ようやく第二幕の始まりです」
優夜「結局、アイツの事は解らずじまいか」
空亡「仕方ありませんよ。そう容易く情報は渡せませんから」
優夜「お前は知っているのか?」
空亡「教えると思って?」
優夜「いや、そんな奴じゃないって知ってるからな」
空亡「それはどうも。では、次の準備でもしましょうか」
優夜「俺の記憶が確かなら、次はようやく」
空亡「ええ。あの有名な大戦が、この物語の主軸ですよ」
優夜「やれやれ。どうなることやら」


次回予告
かつて人と妖の戦いがあった。その人は眠りに落ち、やがて目覚めるその時まで。
東方幻想物語・星之煌編、『目覚めは突然に』、どうぞお楽しみに。

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