東方幻想物語 ~ユメモノガタリ∼   作:空亡之尊

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目覚めは突然に

―――神無優夜、どこかにて

 

 

目が覚めると、俺の視界は真っ暗なままだった。

手探りで周囲を調べてみるが、どうやら木の箱の中に閉じ込められているようだ。

今の体勢を考えると、俺はこの中で座った状態のまま寝ていたということになるな。

当然ながら、寝る前にこんなところに来たという記憶もない。だとすると、思い当たるのは、最後に会っていた人物となるな。

 

 

「てっきり喰われてると思ったけど、杞憂だったみたいだな」

 

 

俺は安堵の溜息を吐くと、つま先に違和感を覚えた。

よく見ると、縦にわずかな光が漏れている。手探りでそこを調べると、そこが両開きの扉であることが解かった。しかし、こちらから開けようとして、扉は頑なに閉じられている。

俺は足に力を溜めると、勢いよくその扉を蹴り破った。瞬間、光が俺の視界を覆った。

 

 

「目がぁぁ……目がぁぁぁ!!!」

 

 

咄嗟に目を覆い隠すが、眩い光がもろに俺の目を射てしまっていた。

今ならバ○スを食らった○スカの気持ちがよく解る気がする。確かに目が潰れそうなくらい痛い。

どれだけ寝ていたのかわからないが、とりあえず今は光に慣れないとな。

 

少しずつ目を開けていくと、視界に緑生い茂る森のようなものが見えてきた。

周囲からは鳥の鳴き声やらも聞こえてくる。間違いなく、俺がいるのは森のようだ。

徐々に光に目が慣れていくと、俺の耳に叫ぶような声が聞こえてきた。

 

 

「危ない!!!」

 

 

声が聞こえた方へと目を向けると、そこには人間よりも一際大きな蛇の妖怪が俺に向かって襲い掛かろうと、こちらに向かって這い寄ってきていた。

俺は横っ飛びでそれを回避すると、そいつは俺の事を鬼の形相で睨んできた。

 

 

「おいおい、いきなりなんだよ」

「貴様だな、これを投げてきやがったのは!!!」

 

 

そういって大蛇が俺の足元へと投げつけたのは、さっき俺が蹴り飛ばした扉だった。

どうやら、俺が蹴った拍子にこの妖怪に激突してしまっていたようだ。よく見ると、妖怪の鼻先が赤く腫れている。というより、俺としては普通に蛇が話しているのが怖いんだけど。

まぁ、こちらが完全に悪いからな、ここは素直に謝っておこう。

 

 

「そういうことなら、すまなかった」

「ふん…いつもなら一飲みしてやるところだが、今回は見逃してやる」

「意外と話が分かる妖怪だな」

「当然だ。貴様よりも、さっきまで追いかけていた獲物の方が美味そうだからな」

「獲物……?」

 

 

その時、草むらをかき分けて一人の少女が飛び出てきた。

長い金髪にツーサイドアップ、裾や袖に星の模様が描かれた白い着物、首には星の首飾りを付けている。小柄なようだが、年齢的には二十歳ぐらいだなと俺は思った。

少女は息を切らせながら俺の方を見るが、大蛇は舌を鳴らしながら少女の方へと向いた。

 

 

「ほぅ、今ので逃げられたかと思ったが、のこのこと戻ってきたのか」

「おい、まさかこの子を」

「そのつもりだ。ここ最近は人間を食えなかったからな、今のうちに食べておかないと」

「そうかよ……」

 

 

大蛇はじりじりと少女に這い寄っていく。それを見ても少女は逃げようとせず、むしろ俺に向かって『逃げろ』と目配せしている。肝が据わっているというか、怖いもの知らずというか。

 

 

「では、景気よく一飲みにn――!?」

 

 

大蛇が少女に襲い掛かろうとした時、俺は足元にあった扉をそいつに向かって蹴り飛ばした。

扉が大蛇に直撃すると、そいつはそのまま近くの木に叩き付けられるように吹き飛ばされた。それを見て、少女は目を丸くした。

 

 

「あ、貴方は……」

「貴様~!! 何をする!!!」

「俺の目の前でか弱き少女を食おうとするなよ。気分が悪くなるだろ」

「図に乗るなよ人間。貴様ごときが俺に勝てると思っているのか?」

「逆に聞いてやるよ、お前ごときが俺に勝てると思ってるのか?」

 

 

俺は月美のリボンを解くと、それを『月美』へと変え、その刃先を大蛇に向ける。

 

 

「来いよ。その皮剥いで財布に入れておいてやるからよ」

「ふざけるなぁ!!!」

 

 

怒りが有頂天になった大蛇は俺に向かって、先ほどと同じように牙を向けながら襲い掛かってきた。しかし、今度は先ほどよりも殺気があって動きが速い。

だが、それでも俺には避けるのは容易かった。俺は蛇の頭を踏み台にしてそれを避けるが、一瞬、そいつが嫌な笑みを浮かべていることに気付いた。

 

 

「――甘い」

 

 

地面に着地する寸前、蛇の尾が俺の身体を思いきり叩き落とした。

勢いよく地面に叩き付けられ、そこから俺の姿が見えないくらい砂埃が舞い上がった。

その様子を見ていた少女は目を見開き、大蛇は舌を鳴らして笑った。

 

 

「ふん。所詮はこの程度だ。さて、では次は」

「次にお前は、『小娘、お前を丸飲みにしてやろう』と言う」

「小娘、お前を丸飲みにしてやろう……ハッ!」

 

 

大蛇は俺の声がした方へと振り返り、目を見開いた。

当然だろう。そこには地面に叩き付けたはずの俺が、無傷でそこに立っているのだから。

 

 

「なぜだ!? 俺は確かに貴様を……!!」

 

 

大蛇は自分が叩き付けた地面を見ると、そこには二度も自分に叩き付けられた扉の、その破片が広がっていた。

目を白黒させる大蛇に見せつけるように、俺は一枚のカードを見せつける。

木の葉が舞う中、岩に座ってキセルを吹かせながら悪戯な笑みを浮かべる化け狸。

 

 

「――変化『戯れ好きな年季の化け狸』。簡単に言うと、変わり身って奴だ」

「味な真似を……!!」

 

 

大蛇は怒りを表すように尾を地面に叩き付けると、俺に向かって這い寄ってきた。

俺はそれを迎え撃つために『月美』を鞘に納め、居合の構えをとって静かに目を閉じた。

 

 

「「これで――!!」」

 

 

大蛇の牙が俺に届く一瞬、俺は地面を蹴って加速すると、目にも止まらぬ速さで斬り抜けた。

静寂な間がしばらく流れ、俺が『月美』を再び鞘に納めると、大蛇の身体中に剣閃が走り、その場に倒れた。

 

 

「これで、少しは大人しくなるだろ」

「……あの」

「ん?」

 

 

『月美』をリボンに戻して腕に巻くと、さっきの少女が俺に歩み寄ってきた。

 

 

「大丈夫ですか?」

「ああ、これでもそれなりに強いから」

「そう、ですか」

「うっ……うぅ………」

「っ!? ま、まだ生きてる……!!」

 

 

少女は俺の後ろに隠れると、大蛇の方を見つめてた。

大蛇は血塗れになりながらも、俺の方へと向き直った。

 

 

「おお、さすが妖怪なだけあって頑丈だな」

「ぬかせ……それが解っていて手を抜いただろ」

「え?」

「やっぱり解ってたか。顔に似合わず意外と冴えてるな」

「ふん。これでも無駄に長生きはしてねえよ」

「そうかよ」

 

 

俺は小さく笑った。しかし、大蛇は納得いかない様子だ。

 

 

「……どうして俺を殺さない?」

「殺す理由がないからな」

「いや、お前やそこの小娘を食おうとしただろ?」

「生きていくうえで仕方ないことだろ?」

「じゃあ、何で邪魔した?」

「言っただろ。俺の目の前で食おうとするなって」

「意味が解らん奴だ」

 

 

大蛇は溜息を吐くと、その場に顔を伏せた。

 

 

「それじゃあ、俺たちはもう行くぜ」

「ああ、好きにしろ。敗者はこの場で朽ちるのみだ」

「朽ちさせるかよ。その方が後味悪いだろ」

 

 

俺は『八雲紫のカード』を使い、スキマの中から瓶に入った薬を取り出す。

これは永琳のところにいた時に教えてもらった回復薬、通称『ポーションっぽいもの』だ。他にも『最高にハイなポーション』、『エリクサーのようなもの』、『ラストエリクサー』もある。

副作用の致死率は二割だが、それなりに傷の治りが速くなるから結構いいものだったりする。

 

 

「というわけで、飲め」

「い、いや、なんだその不自然なほど鮮やかな色をした液体は!?」

「心配するな。俺が飲んでも生死の先を彷徨った程度だけだったんだ」

「それのどこを信用しろと―――!?!?!?!?!?」

「うるさいな、いいから飲め。良薬は口に苦し、だ」

 

 

無理やり大蛇の口に『ポーション(仮)』を突っ込むと、大蛇は目を白黒させながら地面に倒れた。

ピクピクと痙攣して白目を剥いているが、これで大丈夫だろう。きっと、おそらく、メイビー。

あ、折角だからこの姿を写真に収めておこう。………おぉ、本当にその場で現像できたぜ。

 

 

「さてと、それじゃあ行きますか」

「え、えぇ……」

 

 

若干引き気味な少女をつれ、俺はこの森を抜け出すために歩き出した。

俺の物語というのは、いつも森で始まるのが定番なのかと、疑問に思ってきた。

 

 

 

 





空亡「さて、ここから頑張っていきますか」
優夜「なあ、物語の始まりがいつも物騒すぎないか?」
空亡「良い目覚ましになったでしょ?」
優夜「下手すればもう一度永眠しそうだったけどな」
空亡「御冗談を。そんなに弱いなら、もうとっくに永眠してますよ」
優夜「返す言葉もないが、お前に言われると腹が立つぜ」
空亡「それに、可愛い子とも出会えてよかったじゃないですか」
優夜「そう……だな。でも、う~ん」
空亡「まあ、失恋したてでこういうことを言うのは酷というものですね」
優夜「うるさい。もう終わるぞ」
空亡「はいはい。では、次回予告とまいりましょうか」


次回予告
数億年という時が経ち、彼の目に映るものは姿を変えていた。
東方幻想物語・星之煌編、『変わっていた風景』、どうぞお楽しみに。
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