東方幻想物語 ~ユメモノガタリ∼   作:空亡之尊

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思わぬ奴との再会

―――神無優夜、小さな村にて

 

 

星羅に連れられて森を抜けると、そこには小さな村があった。

月の民がいた街に比べれば見劣りしてしまうが、小さいながらも活気のある長閑(のどか)な村だ。

彼女に村の中まで案内されると、道行く人たちがにこやかに挨拶してきてくれた。俺はぎこちなく挨拶を返すが、星羅は自然な笑顔で村の人たちに挨拶を返していった。

 

 

「意外だな。人と会うのは苦手だって言ってなかったか?」

「会うのは苦手です。ですが、挨拶を返す程度なら私にだってできますよ」

「それもそうだな」

「意外なのは、さっきまで気さくに話しかけていたのに、人に慣れていないような感じでしたね」

「仕方ないだろ。前に住んでたところじゃ、余所者として嫌われていたからな。こうも最初から受け入れてくれると、なんだか違和感がな………」

 

 

月の民の街での経験の所為か、こういう場所に対して弱腰になってしまっている。

以前の俺ならそこまで気にしなかったというのに、この言いようのない胸の苦しみは何なんだ?

そんなことを気にしながら歩いていると、目の前に無駄に長い石造りの階段が現れた。見上げると階段を登った先に赤い鳥居が見えた。

 

 

「神社か?」

「そうですね。この村の人たちはここに祀られている神様を信仰していますね」

「へぇ~」

「ちなみに、私の住居はここです」

「マジか」

「マジです。不本意にもね」

「ん?」

「気にしないでください。それよりも、行きましょう」

 

 

星羅はそう言って先に階段を登っていく。俺はその後姿を見つめ、後ろをついていった。

無駄に長い階段を登り切ると、そこには確かに神社があった。建てられてまだそこまで経っていないのか、他の神社と違って少し綺麗な感じがした。

 

いや、今の俺にはそんな物よりも目を惹く者がいた。

金色の長い髪を風に靡かせ、まるで俺を待っていたかのようにその場に立つ彼女は俺に言った。

 

 

「久しぶりね。ユウヤ」

 

 

彼女、ルーミアは笑顔で俺にそう挨拶した。

俺は彼女を見つめたまま、ただ唖然としていることしかできなかった。

人間の天敵である彼女がなぜここにいるのか? どうして俺を殺さず、祠の中に封印したのか?

色々と疑問が思い浮かんでくるが、俺が最初に発した言葉は…………。

 

 

「久しぶりだな。ルーミア」

「あら。てっきり罵詈雑言でも吐かれると思ったわ」

「言いたいことが色々あるが、お前を見たらなんだか安心してな」

「そう。それは良かったわね」

 

 

ルーミアはそう言って純粋に嬉しそうに微笑んだ。

初対面では俺を喰らおうとしてたってのに、俺が眠っている間に何があったのやら。

そんな時、星羅が俺の事を見つめていることに気付いた。

 

 

「どうかしたか?」

「いえ、ルーミアさんとお知り合いなんですね」

「知り合いというより、一度殺し合った間柄ね」

「喰われるのは嫌だったからな。それなりに抵抗しただけだ」

「なるほど。それであの祠、ルーミアさんが建てた理由もようやく解りました」

「やっぱりお前の仕業かよ」

「そうよ。寝心地はどうだったかしら?」

「お陰様で、気が付いたら浦島太郎状態だよ、まったく」

「「…………誰?」」

「気にするな」

 

 

二人して首を傾げられたが、とりあえず俺があそこで眠っていた理由は分かった。

 

 

「あとは……なんでお前がこの村にいるんだよ?」

「深い意味はないわ。ただ、この村を護るという条件付きで食糧を貰っているだけよ」

「その様子だと、もう人喰いはやめたのか?」

「ふふ。そういう話はここでするべきではないと思うわよ」

「そうだな」

 

 

一瞬見えたルーミアの本性、どうやら村の人間が知らないところでは今でも人間を喰らっているようだ。それもそうだ、彼女は妖怪。目的がどうであれ、その性分を忘れることなんてできない。

 

 

「しかし、どういう風の吹き回しだ?」

「言ったでしょ。深い意味はないわ」

「そうか」

「ただ、アンタが護ろうとした人間がどういうものなのかを知りたいだけよ」

「で、それはどうだ?」

「……やっぱり、人間は面白い。それだけね」

 

 

ルーミアはそう言って踵を返す。

 

 

「星羅、ごめんけど上がらせてもらうわよ」

「はい。家の物、勝手に食べないでくださいね」

「解ってるわよ。それじゃあ、またあとでね」

 

 

ルーミアはそう言い残してその場を後にした。

境内に残された俺は溜息を吐くと、星羅が俺に話しかけてきた。

 

 

「お二人とも、仲が良いんですね」

「どうだろうな。あっちはただ弄んでいるようにしか感じなかったけど」

「私から見れば、ルーミアさんも貴方も、とても楽しそうでしたよ」

「そーなのかー」

 

 

アイツも、なんだかんだで変わってないんだな。

俺を知っている奴が一人でもいてくれた。それが、俺が嬉しかったんだなと思う。

昔殺し合った妖怪が、今の俺の支えなんて笑える話だな。まったく…………。

 

 

「そうだ。ユウヤさんも上がられますか?」

「いいのか?」

「ルーミアさんと積もる話もあるでしょうし、何よりさっきのお礼もしたいですから」

「……わかった。なら、遠慮なく」

 

 

そう言って星羅の後をついていこうとした時、ふと疑問に思った。

 

 

「そういえば、何でここに神社があるのにわざわざ森の祠なんかにお参りに行ってたんだ?」

「……自分が務めている神社でお参りしたくなかっただけですよ」

 

 

そう語る星羅の目は、なんだか悲しそうにしていた。

 

 

「さて、そんなことより早くいかないと、ユウヤさんの分までなくなってしまいそうです」

「確かに、アイツなら遠慮なく食べそうだ」

「私が言うのもなんですが、貴方の中のルーミアさんってどんな存在ですか」

「煽りに弱くて、力は滅茶苦茶強い、食いしん坊な妖怪?」

「ひどいですね」

「そんなもんだと――いてっ」

 

 

星羅と話していると後ろから頭を叩かれた。

振り向くと、そこにはルーミアが操る影がゆらゆらと揺れていた。

 

 

「地獄耳かよ」

「余計なことを言っている暇はないみたいですね」

「そうだな」

 

 

俺は叩かれた頭をさすりながら、星羅の後をついていった。

 

 

 

 





空亡「二次創作だと諏訪の国ですが、ここは違いますよ?」
優夜「おい、ただでさえ原作キャラが出てないのにいいのかよ」
空亡「ルーミアさんがいるから大丈夫でしょ」
優夜「EXは創作キャラだろ。この章始まって原作キャラナシってどういうことだよ」
空亡「……確認したら、原作キャラの登場は7話分先ですね」
優夜「もうこれ、東方を模した何かだろ」
空亡「もうそれで割り切りましょうか?」
優夜「ダメだろ。どうにかできないのか?」
空亡「無理ですね。大人しく激流に身を同化しておいてください」
優夜「同化するより、どうかしてるだろ……」


次回予告
村を護るルーミア、かつて人喰いと恐れられた彼女に何があったのか?
東方幻想物語・星之煌編、『彼女が護る理由』、どうぞお楽しみに。
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