東方幻想物語 ~ユメモノガタリ∼   作:空亡之尊

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決死

―――神無優夜、深夜の森にて

 

 

太陽が沈み、茜色だった空はすでに夜の暗闇へと変わっていた。

昇り始めた満月は、その淡い光で暗い暗い森を照らす。

 

そこでは、二つの影が木々の間を駆けていた。

一つは女性、金色の髪をはためかせながら、目の前を走る“獲物”を追いかけている。

もう一つは少年、紅い瞳を揺らしながら、追いかけてくる“狩人”から逃げている。

 

俺は追いかけてくる彼女について、知っていた。

ルーミア、『東方Project』の東方紅魔郷の1ボス。闇を操る程度の能力を持った、人食い妖怪。というのが公式だが、今現在俺が遭遇したのはEXルーミア。要するに二次創作のオリキャラだ。

公式のよりもめちゃくちゃ強かったり、元のより大人びているということで有名だ。

 

二次創作系の転生ものだと、もっと人間に友好的な人がいるだろ。なんでよりにもよって俺が初めて出会った人物がこの人なんだよ………人間友好度が“最悪”を通り過ぎて“危険”だよ!!

最初からクライマックスという台詞は好きだが、この場合は本当に最期(クライマックス)だな。

 

と、そんなことを考えていても、後ろの彼女は追いかけるのを諦めない。

さっきから威嚇と足止めだろうか、黒い光弾を俺の足元や近くの木々へと撃ち出している。

直接傷付ける気はないように見えるが、出会い頭に首を刈られそうになったし安心できない。

 

 

「待~ち~な~さ~い!!」

「あはは♪ 捕まえてみな!!」

「遊んでやるとか言っておきながら、さっきまでの威勢はどうしたのよ!!」

「遊んでやるとは言ったな、そう………鬼ごっこという遊びをな!!」

 

 

俺は走りながら後ろにいるルーミアに向かって叫ぶ。

さっき(前回の最後)、大口叩いて彼女を煽ったりしていたが、俺には戦う力なんて微塵もない。

もしあったとしても、今の俺にはその存在なんて知らねえし、使い方もわからない。

ならば、今は逃げることだけを考える。逃走は弱者にでも出来る事だからな。

ただ、それが気に入らないのか、ルーミアは今の現状にご立腹のようだった。

 

 

「ふざけるんじゃないわよ!! 普通あの場面なら血肉躍るような戦闘でしょう!!」

「知るか!! 人間には出来る事と出来ない事がるんだよ!! ただの人間に高望みするな!!」

「だったら大人しく私に喰われなさい!!」

「だから、嫌だって言ってるだろ!! たった一つの命なんだ、こんな所で易々と死んでたまるか!!」

 

 

俺は心の底から叫ぶと、更に走る速度を上げた。

 

 

「ちっ……人間のくせに逃げ足が速いわね」

「このままいけば………!!」

 

 

俺の逃げ足に距離を詰められずにいるルーミアを見て、僅かな光明が見えた。

しかし彼女は妖怪、人間が死ぬ気で走ったとしても、彼女はその差を詰める方法を持っている。

 

 

「――夜の怖さを教えてあげる」

 

 

闇に溶けそうなその小さな囁きに、ここら一帯の空気がガラリと変わった。

嫌な予感が脳裏を過ると、俺は反射的に走りながら姿勢を低くした。

その瞬間、再び俺の頭上を黒い刃物が過り、周囲の木々を次々と斬り裂いた。

 

俺は恐る恐る後ろを見ると、彼女の足元から黒い影がその周りでゆらゆらと揺れていた。

その影の形は刃そのもので、実態など無いはずなのに刃に月明かりが反射して輝いていた。

 

 

「なんだよ、それ」

「言うなれば、私の武器かしら」

「闇を操る能力ってのも、使い方によっては恐ろしいな」

「これって使い勝手がいいのよね。特に『刃』は綺麗に斬り裂くことができるから」

「想像するとゾッとしねえな」

「それに、こういう使い方もあるのよ」

 

 

ルーミアがニヤッと笑うと、『影の刃』は足元へと溶けるように消えていった。

それは決して俺を諦めたわけではない。むしろ俺を捕まえるために影を潜ませた。

影の使い方、それを考えていると突如俺の真横の木の影から『影の刃』が突き出してきた。

急な不意打ちで体勢を崩したが、それが功を奏して刃を避け、無理矢理持ち直して再び走り出す。

 

 

「くっ……そういうことかよ」

「影と影を繋げば、いくら距離が離れても私の射程内よ」

「無茶苦茶だろ」

「あら、だったらもっと無茶苦茶にしてあげるわ」

 

 

背後からクスクスと笑い声が聞こえると、俺は周囲を警戒した。

すると、周囲の暗闇から無数の『影の刃』が俺に向かって放たれた。

 

 

「これは逃げられないわよ」

「嘗めるなよ……」

 

 

俺は放たれた無数の刃を見極めると、その隙間を掻い潜りながら避けた。

一見すれば避けようがない攻撃だが、目を凝らせば安置というものは案外ある物だ。

グレイズしながらも俺は走ることを諦めず、彼女との距離を一定に保っている。

 

 

「………やるわね」

「これでも動体視力と反射神経には自信があるんだ。嘗めるなよ」

「このままだと逃げられそうね」

「だったら、ここで諦めるというのは?」

「それはないわ。それに、どうやら時の運は私にあるみたいだから」

「なに?」

 

 

その時、ルーミアの視線が俺から逸れていることに気付いた。

そういえば、さっきから影の刃の攻撃がすっかり止んでいる。

諦めたというわけじゃない。彼女は俺が足を止めることを確信しているんだ。

なら、その信用はどこから来るのか? 答えは考える暇もなく、俺の目の前に現れた。

 

突然だが、曲がり角で女子高生とぶつかるというシチュエーションがある。

実際にはそういうことは絶対ないだろうと、俺は鼻で笑った反面、憧れていた。

さて、どうして俺がこんな話を持ち出したのか、その答えは俺の目の前にあった。

 

森の中を走っていたその時、いきなり目の前に少女が飛び出してきたのだ。

当然のことだが、飛び出してきた少女も突然現れた俺を見て目を見開いていた。

少女は動揺して足元が狂ったのかその場で倒れ、俺はそれに躓いて前のめりに倒れた。

 

 

「ほ~ら。言った通り」

 

 

立ち上がり後ろを振り返ると、まるで悪戯に成功した子供の様に笑う彼女の姿があった。

 

 

「これは………絶体絶命だな」

 

 

俺は苦笑いをしながらルーミアを見つめた。

 

 

 

 

 





優夜「初戦の相手がどう考えてもボスクラスなんですけど?」
空亡「初戦はそんなものですよ。二次創作の展開なんて」
優夜「本家より強過ぎるだろ。どう考えても攻撃方法がハガレンのプライドだ」
空亡「そこはほら、影で攻撃とか中二病的な心が躍るといいますか」
優夜「それで死にそうになってる俺は何なんだよ」
空亡「転生して一日もせずに主人公死亡、それもアリでしょう」
優夜「ナシだよ。この時点で俺はただの人間だからな?」
空亡「ふふ、化物を倒すのはいつだって人間ですよ」
優夜「その台詞をここで言われてもな」
空亡「まぁ、次の話を期待してください。何とかなると思いますから」
優夜「最後の場面で不安しか感じない……」


次回予告
ルーミアに追い込まれた優夜と少女、絶体絶命の状況で彼が出した答えとは?
東方幻想物語・序章、『覚悟』、どうぞお楽しみに。
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