東方幻想物語 ~ユメモノガタリ∼   作:空亡之尊

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諏訪と大和の境

―――神無優夜、村の八百屋前にて

 

 

叶恵から話を聴いて数日が経った頃、俺はいつものように村の人たちの手伝いをしていた。

近所の子供たちの遊び相手からここら近辺の妖怪退治まで、手広くやっているおかげでこの村の人たちとも気がれなく話せるようになった。

現に今も、よく食料を買いに来る店の若店主の手伝いをしている。

 

 

「おーい、畑で採れた野菜はここに置いておけばいいのか?」

「はい。それはそこに置いておいても大丈夫です」

「っしょと……いやぁ大量大量」

 

 

店の裏にある畑から採れた大根を入れた箱を置いた俺は満足げに頷いた。

三十本程度入っているせいでかなり重たいが、妖怪どもと殺し合いするよりは有益のある仕事だ。

ここの若店主、商いとしては向いているが、昔から体が弱いせいでこういう力仕事は苦手だったらしい。ここ最近は俺も手伝ってやっているお陰か、売り上げもそれなりに上がっているらしい。

 

 

「今日はありがとうございました。優夜さん」

「いいって。どうせ暇人なんだ、このくらいはいつでも手伝うさ」

 

 

申し訳なさそうに笑う若店主に対して、俺は気にするなと肩を叩く。

思えばこの若店主とも付き合いが長い気がする。確かこの村に来て買い物をした時に、重たそうに食材を運ぶ姿を見て放っておけなくて手伝ったのが始まりだったな。

それからは私生活の方でもよく付き合うようになって………初めて所帯持ちだってことに気付いたんだよな。

 

 

「そういえば、奥さんは元気か?」

「え、ええ……」

「どうした? なんか歯切れが悪いが………もしかして喧嘩でもしたか?」

「いえ。妻とは今でも仲が良いですよ。これから先も」

「ははは………惚気話が聴けるうちは心配いらないみたいだな。で、さっきの質問の答えは?」

「それが、その………授かったみたいです。はい」

「…………………マジ?」

「マジ、ですね」

 

 

若店主は照れ臭そうに笑う。

 

 

「おめでとう。良かったな」

「はい。妻も喜んでいます」

「ふふ。それじゃあ、何かお祝いの品でも」

「いえ、お気持ちと日頃の手伝いだけで十分です」

「そうか? いや、何か送らないと俺の気が………」

 

 

そんな時、今までここら辺で感じたことのない気配を感じた。

ふと空を見上げると、一人の男がド○ゴン○ールのようなオーラを纏いながら神社の方へと飛んでいくのが見えた。

 

 

「あれは……」

「あの服装、大和の国の者ですね」

「なに? 本当か?」

「ええ。前に一度、遠出で売りに行ったことがありますから」

「なるほど。でも、なんでまた大和の国の奴が神社に」

 

 

気になって神社の方へと気配を探ると、霊力と妖力が異様に高まっているのを感じた。

この様子、もしかしたら最悪のパターンに入っているのかもしれない。

 

 

「悪い、俺は戻る」

「解っています。気を付けてください」

「ああ。あと、奥さんにもよろしく伝えておいてくれ」

「はい」

 

 

俺はそう言い残すと、神社の方へと走り出した。

その間にも、霊力と妖力が今にもぶつかり合いそうな雰囲気が俺にまで伝わってきた。

 

 

 

               少 年 祈 祷 中

 

 

 

神社に辿り着くと、そこには案の定の光景が広がっていた。

参道を境界線とするように左側には影の刃をゆらゆらと漂わせるルーミア、左側には先ほど俺が見かけた大和の国の使者がお札を構えていた。

一触即発、少しの刺激でも与えればすぐに破裂してしまいそうな風船のように、この場の空気は張り詰めていた。部外者としてはとても居心地の悪いものだ。

 

 

「何やってんだよ、お前ら」

「あら、もう帰ってきたのね」

「むっ、この妖の仲間か。しかし妖力を全く感じない……」

「当たり前だ。これでも人間なんだ。失礼にもほどがあるぞ」

「す、すまない」

 

 

そう言って男は申し訳なさそうに頭を下げた。

黒い髪、ブラウン色の瞳、神社の神主が着るような狩衣を纏っている。なんというか、ニコ動でたまに見かける婚活サイトのキャラに似ているような気がする。

見るからに悪そうなやつじゃないことは分かるが、見るからに正義感が強そうだ。だからか、妖怪であるルーミアを目の前にしても臆せずにいられるのだろう。

 

 

「とりあえず、お互いに武器を仕舞え」

「言っておくけど、今回は悪くないわよ?」

「解ってる。どうせそこの野郎が勝手に早とちりしてるだけだろ」

「勝手なことを言うな。俺はただ、この村に潜んでいた妖怪を退治しようと」

「それ自体が誤解だって言ってるだろ。少しは話を聞け」

 

 

俺は男に歩み寄ると頭を叩いた。

 

 

「痛い! な、なにをする!?」

「話を聞け。こいつはこの村を護っている妖怪だ。別に悪さはしてねえよ。今は」

「最後が余計よ」

「妖怪が人を? 冗談は」

「冗談かどうか、この村に奴らにでも聞いてみるか?」

 

 

俺が男に向かって威圧しながら言うと、男は黙って目を逸らした。

 

 

「人間にも色々な奴がいるんだ。人を護る妖怪がいてもいいだろ」

「……俺にはよく解らん。だが、お前の言葉は信じていい気がする」

 

 

男はそう言ってお札を懐に納めると、ルーミアへと向き直った。

 

 

「すまなかったな。そこの妖怪」

「ルーミアよ。アンタは?」

「……武蔵(むさし)だ。大和の国で神主をしている」

「そう。私は別に気にしてないわ。それより、私と面と向かって戦おうなんて、度胸があるわね」

「当たり前だ。いかなる妖怪だろうと、臆していては何もならんからな」

「人間にしてはいい心がけね。気に入ったわ」

「妖怪に気に入られるとは………奇妙だな」

 

 

武蔵はそう言うと、小さく笑った。

とにかく、何とか戦闘にならなくて済んだ。それについては素直に喜んでおこう。

それよりも、だ。俺にはどうしても気になっていることがある。

 

 

「なぁ、武蔵とか言ったか」

「なんだ? と、お前は」

「神無 優夜だ。それより、聴きたいことがある」

「どうしてこの村に来たか、であろう」

「話が早くて助かる」

 

 

武蔵は悩むように考え込むと、意を決したように懐から一通の文書を取り出した。

 

 

「この村に寄ったのは本来の目的じゃない。悪いが、そこのルーミアが気になっただけだ」

「まぁ、その事については私から何か言うつもりはないわ」

「ありがとう。俺の役目はこの文書をある場所へと届けることだ」

「大和からの文書、聴かなくても予想はできるな」

「恐らく、その予想は合っているだろうな」

 

 

武蔵は大きく深呼吸すると、こう言い放った。

 

 

「天津神、八坂の軍神から諏訪への無条件降伏を伝えるための物だ」

 

 

この時、また歴史が動き出そうとしていた。

 

 

 

 





空亡「ようやく、これで東方らしさが」
優夜「おい、ここまでオリキャラしか出てきてねえぞ」
空亡「自分でもビックリですよ。もうこれオリジナルとして出した方が早そうですね」
優夜「やめておけ。どうせまた挫折するだけだろ」
空亡「でしょうね。……仕方ありません、原作キャラの入る余地も何とか作らないと」
優夜「原作が迷子だな」
空亡「今更でしょ。まあ、斬新な物語として考えましょう」
優夜「言い訳だよな」
空亡「もうここから路線変更はできませんよ。ここから先は一方通行って奴です」
優夜「とりあえず、頑張れよ三下作者」


次回予告
忌まわしき過去を持つ星羅、彼女はその因縁から逃げ続けるか、それとも?
東方幻想物語・星之煌編、『立ち向かう覚悟』、どうぞお楽しみに。
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