東方幻想物語 ~ユメモノガタリ∼   作:空亡之尊

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戦闘

―――神無優夜、月明かりの森にて

 

 

月明かりがわずかしか届かない森の中で、俺とルーミアは対峙していた。

さて、大見得切ってみたものの、刀一本でまともに戦えるほど俺の技量は高が知れている。

その上、彼女はさっきの俺の行動で頭に血が上っている。下手すれば一瞬で決着がつきそうだ。

さぁ、どうするかな?

 

 

「とりあえず、喰いやすいように斬り分けようかしら」

 

 

ルーミアがそう呟くと、その周りで漂っていた影が近くの木々の影へと溶けていった。

また別の影から一斉に攻撃するつもりか? そんな風に周囲を警戒しながら考えていると、彼女の方から視界を覆うような弾幕の壁が展開された。

 

その弾幕は俺が知る物によく似ていた。そう、彼女のスペカである夜符『ナイトバード』。

2Dなら避けるのに何ら苦労のない初級の弾幕だが、現実では避ける隙間さえないという始末。

俺は咄嗟に弾幕の範囲外まで走るが、彼女が腕を大きく振り払うと再び弾幕の壁が放たれる。

足を止める事さえ許されない中、何度目かの弾幕を避けようとしたその時、木の陰からあの刃が俺に向かって飛んできた。

 

 

「くそっ」

 

 

俺はその刃を切り払うが、刃は一つとは限らず、四方八方から無数の刃が放たれる。

それらすべてを紙一重で受け流していくが、それに気を取られたせいで弾幕から注意が逸らされた。

気が付けば、弾幕は俺の目と鼻の先まで迫っていた。弾幕の向こうには、勝ち誇ったような表情を浮かべるルーミアがいた。

 

 

「これでどうかしら?」

「いや、むしろ好都合だ」

 

 

俺は口元をニヤッとさせると、その隙間を掻い潜って走り出した。

ルーミアが見えるということは隙間がある。隙間があるということは弾幕はなく、避けられる。

弾幕シューティングではわずかな隙間を見極めるのが基本だからな、やっておいてよかったぜ。

 

俺は弾幕の中を突っ切ると、彼女の目の前へと飛び出した。

最初は驚いていたが、次第にその表情は嬉しさで口元が歪んでいった。

俺は刀で彼女の身体を袈裟に斬るが、その斬撃は彼女の影によって寸前で止められた。

 

 

「くっ……」

「中々やるわね。まさかこれを突き抜けてくるなんて」

「男は度胸っていうだろ?」

「知らないわよ」

 

 

影の刃と鍔迫り合いをしていると、俺のルーミアの間の影から別の刃が突き上げてきた。

俺は咄嗟に彼女から距離をとってその攻撃を避けると、避けた先へと複数の刃が追撃してきた。

それらすべてを捌いていくうちに、彼女の両手に闇色の光が集まっていくのが見えた。

嫌な予感をした俺は刃を力任せに弾き飛ばすが、すでに遅かった。

 

ルーミアは腕を左右に広げると、そこから闇色のレーザーが放たれた。

それだけで終わればよかったのだが、俺が知っている“それ”はここからが怖い。

左右に開かれたレーザーは彼女が腕を動かすと、それと連動するように左右から俺を挟み込むように迫ってきた。

 

俺はレーザを飛び越えるように避けるが、俺の後を追うようにルーミアは再び腕を振るってレーザを薙ぎ払う。走りながらレーザーを避けるが、その後ろでは次々と木々が切り倒されていく。

それに加えて影の刃も絶え間なく俺に攻撃を仕掛けてくる。これが邪魔でしょうがない。

 

 

「こうなったら………!!」

 

 

俺はその場で直角に曲がると、ルーミアへと向かって走り出した。

しかし、彼女は腕をの前で交差させてレーザーを左右に放ち、腕を開くと同時に日本のレーザーが左右から中心に居る俺に向かって迫ってくる。それに加え、今度は全方向から影の刃も放たれる。

 

 

「さぁ、どうやって避ける?」

「だったら………!!」

 

 

レーザーとレーザの間に向かって刀を放り投げると、俺はレーザーの死角である地面すれすれの所をスライディングする。俺がいた場所には影の刃が何本も突き刺さった。

避けた後に刀を空中で拾い上げると、一気に距離を詰めたルーミアに対して再び斬りかかる。だがその攻撃はまたもや彼女の影によって受け止められる。

 

 

「何度やっても同じ事よ」

「なら、違うことをするまでだ」

 

 

俺は空いていた右手で腰の鞘を握ると、それを逆手で持ってルーミアへと向かって振り上げた。

しかし、それは彼女の別の影によって止められ、彼女はニヤッと笑う。

 

 

「これで終わり?」

「あぁ……これでな!!」

 

 

目の前でニヤッと笑うルーミアに対し、俺は頭を後ろに振りかぶり、思いきり彼女の額へと向かって渾身の頭突きを放った。

 

 

「――!?!?!?!?!?」

 

 

頭突きがルーミアへと直撃すると周りの影が猫の毛のように逆立ち、彼女は予想外の攻撃と衝撃に後退りした。俺自身も思った以上に反動が大きかったが、これで一泡吹かせられたはずだ。

彼女は痛そうに頭を押さえると、涙目で俺のことを睨んだ。

 

 

「ア、アンタね……!!」

「ふふ。俺の奥の手は痛かろう?」

「ふざけるんじゃ、ないわよ!!!」

 

 

怒りに狂ったルーミアから深く黒い闇が噴き出した。

その闇に俺は底知らぬ恐怖を感じ、何かとんでもないことが起きそうな嫌な予感がした。

彼女の影はドロドロとした黒い手のようになり、まるで鉤爪の様に鋭く凶悪なモノへと変わっていった。

 

その様を一言が表すのなら―――――『化物』。

 

 

「これが俗にいう、眠れる獅子を起こすっていうやつか」

「――殺ス」

 

 

狂気に歪んだ瞳で見つめるルーミアは、俺との距離を一瞬で詰めた。

俺は咄嗟に刀を盾にするが、黒い手の一薙ぎによって身体ごと吹き飛ばされた。

刀を地面に突き刺して踏み留まるが、その隙さえ逃さぬように彼女は俺の背後へと回り、黒い手で俺を捕まえると自分の下まで引き寄せ、腹部に思いきり膝蹴りされた。

 

 

「――っ!?」

 

 

メキメキと嫌な音が腹で鳴ると、そのまま地面を転げ回りながら突き飛ばされた。

なるべく攻撃を受けないようにしていたが、たった一発でもう限界ギリギリだ。

痛みを我慢して立ち上がるが、もう立っているだけで限界だ。脆すぎるだろ俺の身体よ。

まぁ、そんなことさえお構いなく、ルーミアはゆらゆらとした不気味な足取りで俺に歩み寄ってくる。もう逃げられない、それを知っているからこそ取れる余裕な行動だ。

 

 

「絶体絶命、か」

「――終ワリヨ」

 

 

ルーミアは感情も籠っていない声でそう言った。

そして、彼女の鉤爪のような黒い手が俺に向かって振り下ろされた。

 

 

 

 





空亡「普通の人間ってなんでしたっけ?」
優夜「いや、ほら、そこは火事場の馬鹿力というか、限界を超えた先というか」
空亡「限界を超えたら弾幕を避けきれるんですか。今どきの若者はすごいですね」
優夜「アンタも十分若い癖に何言ってんだよ」
空亡「イケメンで強いのね……嫌いだ」
優夜「直球だな」
空亡「まぁ、それはいいとして、煽り過ぎでしょ?」
優夜「怒らせた方が動きが単調になるかと思ったんだけど、まさかこうなるとは」
空亡「散々あおっておいて、最後には無様にやられる悪役みたいですね」
優夜「これでも一応主人公だよな?」
空亡「次回やられたら主人公じゃなくなりますけどねw」
優夜「おい」
空亡「さて、それでは次の展開を考えないと」


次回予告
狂暴化したルーミアに圧倒される優夜、だがその時不思議なことが起こった!!
東方幻想物語・序章、『決着』、どうぞお楽しみに。
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