東方幻想物語 ~ユメモノガタリ∼   作:空亡之尊

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第一章『美しく穢れた月之刃』
一夜の夢の痕


―――神無優夜、朝日射す森にて

 

 

木漏れ日から射した太陽の光が、俺を眠りから醒ました。

半ば寝ぼけた調子で起き上がると欠伸を掻き、周囲を見渡した。

 

 

「……あゝ、そういえば俺」

 

 

ある程度まで目が冴えてくると、昨晩のことを思い出した。

異世界に飛ばされ、ルーミアと出遭い、追いかけっこした挙句に女の子を巻き込んで、その後は女の子は何とか逃がし、なんだか変な刀が現れて、それでルーミアと戦って……………そして現在に至る。

 

改めて思い返してみると、非常に濃い一日だった。

そういえば、昨晩の娘(こ)は無事に逃げられたかだろうか? これであの後ルーミアに食べられていたと借りしたら後味悪くて三日は寝込みそうだ。

 

 

「さて、どうするかな」

 

 

俺は立ち上がると服に付いた砂埃を払った。とりえず、目指すとすれば街だよな。

ルーミアから逃げる時にがむしゃらに走ったから方向も何もないが、ここは俺の直感を頼りに進むしかない。まぁ、俺の勘なんてあまり信用できるものでもないんだけどな。

 

 

「それじゃあ、改めて出発だな」

 

 

俺は大きく背伸びをすると、直感を頼りに北へと向かった。

こっちの方に行けば、またあの娘と会えるような気がした。そんな理由だった。

 

 

 

               少 年 祈 祷 中

 

 

 

結論から言えば、“街”に着いた? しかも歩いて一時間もしないうちに森を抜けられた。

あの曖昧な理由だけで森を抜けられる俺の直感が恐ろしくなったが、今は結果さえ良ければそれでいい。

だが、目の前の“これ”を“街”と言ってもいいのだろうか? 俺はそのことについて迷っていた。

 

俺の目の前には如○千○……間違えた、壁があった。

その○月ゆ○り……だから違う、壁は何かを囲むようにそびえ立ち、某進撃のに出てくる物とよく似ていた。というか、壁が高い。見上げる限りじゃ軽く50mはありそうだ。

これが“街”だと思ったのは、俺が落ちる時にこの壁の向こうに街が見えたからだ。しかし、こうもでかい物だとはまさかの俺も思っていなかった。

 

 

「とりあえず、入り口を探すか」

 

 

俺は外壁をなぞるようにゆっくりと歩き出した。

壁に触れると何か変な感覚を憶えた。ルーミアと戦った時とは違う、むしろ俺を護った『博麗』のカードから感じた力とよく似ていた。これが俗にいう神力というものなのだろうか?

 

しばらくしていると“街”の入り口と思われる場所へと辿り着いた。

しかし、そこには当然というべきだろうか、門番らしき男が立っていた。

寝癖が付いた茶髪、どっかで見たことのあるような黒い軍服と帽子を被っている。左目には眼帯をつけている。いや、そんなことより目を引くのは彼の傍らに寄りかかる大太刀だった。

見る限りキャラの濃ゆそうな人だが、幸いにもその彼は壁に寄りかかって寝ている。

 

 

「起こすのも悪いし、ここは静かに」

 

 

俺は足音を立てずに彼の横を通り過ぎようとした。

しかし、俺は街の入り口に一歩踏み入れた瞬間、俺の行く手を遮るように大太刀が躍り出てきた。

視線を移すと、彼のブラウン色の瞳が俺のことを睨みつけていた。

 

 

「悪いが、ここは不法侵入は認めていない」

「それは悪かったな」

 

 

俺はそう言って一歩下がると、彼は大太刀を下ろして問いかけてきた。

 

 

「お前、何者だ? 見たところ人間だが」

「見るも何も、俺はこれでも普通の人間なんだけど」

「嘘を言うな。普通の人間が何の用もなしに街の外にいるはずないだろ」

「いや、これにはマリアナ海溝(水面下10,911m)よりも深い理由があるんだよ」

「知るか。それよりもマリアナ海溝ってなんだ」

「………すまん。時代背景を完全に忘れていた」

 

 

とまぁ、なんとなくボケては見たが、どうやら話せば解ってくれそうな奴だということが解った。

その時、俺は冒頭でも気になっていたことを彼に聴いてみることにした。

 

 

「そうだ。一つ聴きたいことがあるんだけど、いいか?」

「なんだ?」

「昨晩ここに女の子が一人来なかったか?」

「女……アイツか」

「来たのか?」

「ああ」

「怪我とかしてなかったか?」

「転んだ時に負った傷しか見えなかったが、ひどく狼狽えていたな」

「そうか………」

 

 

俺はやっと安堵の息を吐いた。

無事にここに戻ってきていたようだ。それに、ルーミアもちゃんと約束を守ってくれた。

 

 

「これで一安心できたぜ」

「アイツと何かあったのか?」

「特に、妖怪に襲われそうになっていたあの娘を助けただけだ」

「お前、アイツとはどんな関係だ?」

「一目惚れしただけの、一方的な思いを抱いてるにすぎねえよ」

「訳の分からないやつだ」

「俺もだよ」

 

 

俺が小さく笑うと、彼は呆れるように溜息を吐いた。

 

 

「やめておこう」

「いいのか?」

「お前と話していると、どうにも妖怪とは思えなくなってきただけだ」

「ふふ。俺の術中にまんまと嵌まったな、馬鹿な人間め」

「はいはい。とりあえず、お前は連行することにする」

「どういうことだ?」

「妖怪ではないとしても“外”から来たんだ。アイツと同じようにな」

「ん?」

「いや、今のは気にするな」

 

 

一瞬、彼に影が見えたような気がした。

なんだか今は触れてはいけない事なのだと、俺はそれ以上追求しなかった。

 

 

「………とにかく、お前のことは上に任せるしかないだろう」

「つまり、厄介事は上の人間に任せるってわけか。大変だな」

「そう思うのならくれぐれも変な真似はしないことだな」

「はいはい」

「『はい』は一回だ」

「重要な事だから二回言ったんだよ」

「やれやれ。面倒な奴が来たものだ」

 

 

そう言って彼は溜息を吐くと、思い出したかのように俺に向き直った。

 

 

「そういえば、名前を聴いていなかったな」

「言われてみれば、このまま眼帯をつけた茶髪の男っていうのも何かと呼びにくいからな」

「お前にとって俺の印象はそんなものなのか」

「他に何かある?」

「………いや、無いな」

 

 

彼は俺から目を逸らすと、一つ咳をついて改めて向き直る。

 

 

「俺は『天野 力(あめの ちから)』、この街の門番だ」

「神無 優夜、ただの人間だ。よろしく」

「ただの人間、か」

 

 

天野は小さく笑うと、街の入り口を開けて中へと入っていった。

俺はそびえ立つ壁をもう一度見上げると、彼の後を追って歩き出した。

 

 

 

 





空亡「さて、ここから頑張りましょうか」
優夜「俺はいつの間に某巨人がいる世界へと迷い込んだんだ?」
空亡「あくまでイメージですよ。そこまで切り込むような勇気、僕はないですから」
優夜「それと、オリキャラが俺よりも個性的なんだけど?」
空亡「イメージとしては『か○くり卍ばー○と』のレンくんを茶髪にした感じですね」
優夜「おい、もう少し自重しろよ」
空亡「この物語に自重なんて言葉は似合いませんよ?」
優夜「お前に言われると腹が立つな」
空亡「まぁ、こんな調子で頑張るしかないですね」
優夜「不安しか感じないのは俺だけか?」
空亡「何を今更」


次回予告
優夜が辿り着いた場所、それは後に月の民と呼ばれる者たちが暮らす街だった。
東方幻想物語・月之刃編、『月至る前の街』、どうぞお楽しみに。

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