完全勝利したマリーダ・クルスUC   作:1100/870

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 結局、マリーダとアンジェロはロンド・ベルに捕縛された。

 正面のモビルスーツの他、増援の二機、さらに完全武装の歩兵二十数名を乗せたランチが降下してきては多勢に無勢だった。 

 ふたりは、ロンド・ベルの宇宙巡洋艦ラー・ザイムに連行された。

 

 

 

「それで、アンジェロ君の方は大体事情が分かった。

 じゃあ、君の番だ。整理しよう。名前はマリーダ・クルス、サイド3出身。ハマーン戦争で親を無くし、戦災孤児に。スウィート・ウォーターには一年前に移住……、で合ってたかな?」

「そうだ」

「でも、君のIDは調べてみたら、偽造だった。このコロニーに来る前は真っ白なんだけどな」

「……」

「組織のことを話してくれないか? あのミサイルはどこで、誰から手に入れた?」

「黙秘する。口を割らせたければ、拷問でもしてみることだ」

 

 十五の少女の言い様に、尋問していたアムロ・レイ大尉と部下のカニンガム・ショーは顔を見合わせた。

 

「じゃあ、試してみようか。縛って逆さ吊りにしたり、バーナーで肌を焼くとかさ。女性が苦しみもだえる姿が好きな人もいる」

 

 アムロは少女を脅かすつもりで言ったが、むしろマリーダは冷たい笑みを浮かべた。

 

 ――そんなことは経験済みだ。

 

 と言わんばかりだった。

 

「大尉はそういうのが好みですか?」

 

 挑むようなマリーダの問いにアムロは笑った。

 

「嫌われたか。じゃあ、食事にしよう」

 

 唐突に話が飛び、アンジェロとカニンガムは「意味不明」の表情を浮かべた。

 

「君たちと食事がしたい。食堂に行こう」

「新手の拷問ですか? 彼女なんてダイエットやってそうだから、パフェを死ぬほど食べさせるとか?」

「クックク、……あっ!」

 

 カニンガムのセリフにマリーダは笑う。その拍子によだれが垂れた。慌ててぬぐったが、手錠がガチャリと音を立てたため、皆にばっちりと見られた。

 

「あの、……とりあえずこれ外してもらえませんか? 逃げませんから」

 

 口元を隠したマリーダが耳まで真っ赤になって言う。

 

 

 

「じゃあ、シャアの艦隊は実在するんだね」

ふぇえ(ええ)ひまはふぉの(いまはこの)、スウィート・ウォーターにはいないけど」

 

 マリーダはアイスを飲み下しつつ言う。

 目の前にある、巨大で、トッピングだらけで、正体不明となったパフェは恐るべき速さで征服されようとしていた。

 

「にわかには、信じがたい話だわ」

 

 カニンガムが疑う。

 

「スウィート・ウォーターを建造するときに使われた島一号コロニー、あれを使えばコロニーを作るのも、軍艦を作るのも同じだ」

「マリーダ、それは君の考えかい? それとも……」

「ゼダ・マンディラが言っていた」

 

 アムロはうなって腕組みをした。それは彼がここ数年シャアを捜索する内に危惧し、予測していた事態だった。

 

「その島一号は今どこに?」

「そこまでは分からない」

 

 マリーダは不思議に思う。

 

 ――なんでロンド・ベルに協力しているんだ、私は。

 

 ラー・ザイムのパフェはおいしいが、食べ物に釣られた訳ではないと思いたい。

 先ほどの戦闘、「ガンダムは敵」という呪詛もモビル・スーツから降りてきたアムロを前にして雲散霧消した。

 

 ――アムロ・レイ!? 一年戦争のガンダム・パイロット! カラバのニュータイプで抹殺対象。

 

 刷り込みは、しかし、アムロが発するオーラに中和された。

 

 ――ポカポカする、いい匂い。地球で日向ぼっこというのをしたら、こんな気持ちになるのだろうか。

 

 マリーダはぼんやりとアムロの横顔を見つめている。その横ではアンジェロがコーヒーを不味そうにすすっていた。ズズッ、と音を立てているがマリーダには効果がない。

 カニンガムと話し込んでいたアムロが不意に顔を戻す。ドキッ、としてマリーダはうつむく。

 

 ――あのクルクルした頭を抱いて、髪をクシャクシャってしたい・・・・・・。って、それはバナージにしてやったことだろう!? ああ、私は一体どうしてしまったんだ。

 

 頬を赤くしたり、青くしたりする少女を前にアムロは怪訝そうな表情となり、横のアンジェロは泣くのをこらえている様だった。

 

「ちょっと席を外してくれないかな?」

「お邪魔虫はデッキに上がってますよ。アムロは好かれているみたい」

「すまない、カニンガム。アンジェロ君と、それに君も」

 

 アムロは離れたところに立つ小銃を持った女性兵士(ウェーブ)にも呼びかけた。

 

「貴様、姉さんによもや良くないことをしようと、……」

 

 アムロは苦笑するだけで何も言わず、天井を指差した。監視カメラがあった。しぶしぶアンジェロは出て行った。

 空のパフェのグラスを前に、アムロは改まった。

 

「君の本当の名前を教えてくれないか?」

 

 さっきのときめきとは別の意味で、鼓動が速くなる。

 

「なにを言っているのか分からない」

「僕はエルピー・プルに会ったことがある」

 

 心臓が跳ね上がった。ポーカーフェイスで通そうとしたが、驚きに目は大きく見開かれ、アムロの視線から逃げた。

 

「とても強い子だった。ジュドーをかばって、―君が肋骨を折ったパイロットだが、―モビル・スーツで盾になって死んでしまった」

 

 マリーダにも……、いや、プルトゥエルブにも記憶があった。研究所の話では、彼女のオリジナル体エルピー・プルはネオ・ジオンを、グレミー・トトを裏切りエゥーゴに(はし)った、と。そして、エルピーを殺害したのは、

 

「あの時、サイコ・ガンダムに乗っていたプルツーじゃないのか、君は?」

「違う。私は……」

 

 ふたりを分かつように、アラートが鳴り響いた。

 

「話は後だ! ふたりを自習室へ連れてってくれ」

 

 廊下で待機していた女性兵士が駆け込むと、アムロは入れ違いで飛び出していった。

 

 




「短編」から「連載」に切り替えました。初めは第一話で終わりにしようと思ったんだけど、ズルズル。
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