とある転生者の試練   作:雷灯かがり

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※11月12日、加筆修正しました。




第17話 兄弟対決の行方

俺の敵――――衛宮生嗣は左手の親指で鯉口を切り、鞘から右手で柄を握って、彼の得物である―――政宗を抜いて中段に構えた。

 

投影 開始(トレース・オン)

 

陽剣干将、陰剣莫耶。

その錬鉄の夫婦剣は際立った能力こそないものの、剣としての頑丈さは折紙つきだ。

この剣ならば、あの刀と打ち合っても砕かれることはない。

そしてこの投影は、この体が耐えられる最後の投影。本来ならば、一度も代償なしで宝具の投影が出来なかったのをあの神様と名乗るモノが三回も出来るようにしてくれた。

しかしこれで三回目。

これ以上の投影はこの世界の衛宮士郎の体を蝕み、無理をすれば―――――。

 

 

だが、この戦いには絶対勝たなければいけない。

 

……向こうの世界に置いてきた人がいる。

……俺を信じて待ってくれている人がいる。

 

……こんな俺を好きだと言ってくれた人がいる。

 

その人たちのためにも、ここで負けることは許されない。

 

「行くぞ―――戦う覚悟は出来ているか」

 

「………もちろん」

先ほどまでは苦悶(くもん)していた表情だったが、どうやら今の挑発で吹っ切れているようだ。

その証拠に口元には酷薄な笑みを浮かべ、アイツから感じ取れる雰囲気も前とは別人のようにガラリと変わった。

……顔立ちや、人格の変わり様もそうだがあの眼と笑みには特に見覚えがある。

だが、それはこの戦いで勝利した後に考えることだ。

今は目の前の敵の動作を注視する。目線の動きから、剣の切っ先、さらに足の歩幅まで。

それらから、読み取れるものは全て読み取る。

 

「では―――、始め!」

 

その戦いは、苦々しい顔で、しかし流暢でハッキリとしたセイバーの合図で開始された。

生嗣は動かない。

その姿に隙はなくどっしりと、まるでライダーを相手にしたときのセイバーのような構えだ。

あれを切り崩すのは困難だが、やるしかない!

 

「シッ―――――!」

 

まずは五メートルの距離を一気に踏み込む。

さらに左腕の感覚に意識の全てを注ぎ込んで、陽剣干将で渾身の一撃を打ち下ろす。

 

「フン!」

 

―――弾かれる打ち下ろし。

さらに彼は刀を、弾いた勢いを利用して俺の首に向かって迅速に突きを放つ―――!

それを二刀で防御するが、力を殺しきれなかったため後ろに吹き飛ばされる。

 

そして最初と同じ位置に戻る。

けれども一つ、違うところがあった。

 

生嗣は右手で彼の刀を横に下げ、また左手は俺の心臓の位置に照準をきっちり合わせている。

確かどこかであれと同じ構えを見た気が………?

何故か、赤い少女と彼の左手が重なる。その手の指先に魔方陣が出現し、魔力がソコで凝縮される。

 

Fixierung、Eilesalve(狙え、一斉射撃)――――!」

 

赤黒い玉の弾丸が、さながら機関銃のように打ち出された。

それを認識したのと同時に、自分の体は左に跳んでいた。

 

「くそ、近づけねえ……!」

 

秒間十発を越える呪いの銃弾は広範囲かつ正確にばら撒かれ、少しでも近づこうとするとあの弾丸の餌食となるだろう。

いますべきことは、ただひたすら避けて敵の魔力切れを待つこと。アイツは魔力が切れればかなり弱体化する。

 

Automatische、Verfolgung(必ず当てろ、自動追尾)!」

 

だがその甘い考えが読まれたのか。

今度はホーミング性能をあの機関銃に足してきやがった――――!

こうなったら、時間が経てば経つほど不利になるので無茶と分かっているが、生嗣に正面から攻撃する。

 

「―――I am the bone of my sword(体は剣で出来ている)

 

その無茶を可能とするため、俺が知る最大の守りを投影する――――!

 

熾天覆う七つの円環(ローアイアス)――――!」

 

だが四度目の投影(・・・)自体が無茶なものであり、その反動(フィールドバック)として左半身の感覚が麻痺した。

 

次から次へと呪いの弾丸は飛来してくるが、それらは四枚の花弁で弾いた。だが、それは正面からのものだけで後ろから来るものは防げない。

 

よって、魔弾が自分の体に当たる前に勝負を決しようと、もう一度夫婦剣を投影し(衛宮生嗣)に向かって渾身の力を込めて十字のように打ち下ろす。

 

固有時制御(time alter)二倍速(double accel)――――!」

だが敵は刀を両手で持ち直し、音速でそれを防いだ。

互いの力は一瞬拮抗するが、後ろから飛んできた赤黒い弾丸によってそれは崩れる。

 

「これで終わりだ」

 

衛宮生嗣が倒れている衛宮士郎の首に向かって刀を振り下ろす。

 

「―――ふざけろ、俺は桜のために死ぬわけにはいかないんだ………!」

 

カラダもココロも満身創痍。

左半身の感覚はなく、さらに背中の皮膚は溶解し彼の神経をゴリゴリと蝕んでいる。その上ガンドの呪いによって重い熱病の症状が出ているため熱による吐き気、頭痛、だるさ、筋肉痛、等々によって彼の意識は本来なくてもおかしくない。

おまけにそれを引き起こしたガンドは普通のそれではない。一つ一つが機関銃から打ち出される銃弾より少し弱いくらいの威力であり、しかもそれが十も二十も背中に撃たれたのだ。

つまり、今の衛宮士郎は反撃するどころか動くことさえ出来ないと、そう衛宮生嗣は考えていた。

だが、現実はどうだ。

「うおぉおおおお!!!!」

 

倒れて一ミリたりとも動くことが出来ないはずの衛宮士郎は、こうして地面に刺さった陰剣莫耶で心臓を刺そうとしている。

そして半ば無意識で迫り来る剣を防ごうとするが、たちまち(ふところ)に潜りこまれて胴体の胸部を斬られた。

けれども、それで終わり。

衛宮士郎は平行世界の仇敵を斬った姿勢のまま、力なく倒れた。

 

「終わった、か…………」

 

勝者は様々な意味で疲れたのか、大の字になってよく手入れされた広場の上で寝た。

勝者と敗者にセイバーや遠坂凛が怪我などを治療するため、彼らに駆け寄った。

「生嗣の方はこれぐらいの怪我だったら今ある石で何とかできそうね。士郎は…………、遠坂邸(うち)に持って帰れば治せるかも。でも、それまで持つかどうか……。そこら辺は彼の驚異的な治癒力次第ね」

 

「リン、なにか手伝えることはありますか?」

 

「そうね、セイバーには………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――これで生嗣の怪我の処置と士郎の応急手当は出来たわ。生嗣は安静にしていればいいけど、士郎はうちに帰って治す。それでいい、セイバー?」

 

「感謝します、リン。

しかしいいのですか、同盟を組んだとはいえそれはバーサーカーを倒すまでのことです。現在は協力関係ではないはずですが」

 

「別に気にしないで、バーサーカーを倒したのはセイバーと士郎みたいなものだし。

その借りをきっちり返さないと貴女たちと戦う気にはなれないわ」

 

「ですが………」

 

「リンが気にしないって言っているんだから気にしなくていいんじゃないの?

まあそんなことはどうでもいいわ。

ね、イキツグ。セイバーのせいでわたしの城が破壊されちゃったから貴方の家に住んでもいい?」

 

イリヤスフィールは、寝ていた衛宮生嗣の頬を叩いて彼を起こす。

 

「ん………、姉さんか。

要件は聞くから、頬を叩くのを止めてくれ」

 

「じゃ、特別にもう一度言うね。

ね、イキツグ。セイバーのせいでわたしの城が破壊されちゃったから貴方の家に住んでもいい?」

 

「ああ、悪さしないならいいぞ」

 

「やったー! さすがわたしの弟ね、じゃあ早く(衛宮邸)に帰ろ!」

 

「待ちなさい、イリヤスフィール! マスターが認めても、私はそれを認めません!」

 

「令呪、使うよ?」

 

「なっ、正気ですかマスター。

このようなことのために令呪を使うなど………!」

 

「もちろん。使いたくないけど、セイバーがそれを認めないなら仕方ないよね」

 

「わ、わかりました。

コホン。イリヤスフィール、貴女を衛宮邸に泊めることを認めます」

 

「最初からそう言えばよかったのに。

サーヴァントの癖にマスターに意見しようなんて百年早いわ」

 

「今のは聞き捨てなりませんね、イリヤスフィール。

私には貴方に従う義務もなければ意思もありません……! それと、マスターは安静にしなくてはいけない容態です。一刻も早くその首から離れてください!」

 

生嗣は表情では困っている顔をしながら、内心ではこの穏やかな雰囲気に安堵していた。

だがふと城があった方向に眼を向けると、金髪でライダーシャツを着ている男がこちらに向けて無数の剣を射出する姿が見えた。

 

「セイバー、後ろ!」

 

その剣群をセイバーは瞬時に武装して蹴散らした。

彼女の隣にはアーチャーがいて、遠坂を守るように男と向き合っている。

 

「さて、(オレ)は聖杯を手に入れるために来たわけだが。

……ほう、お前が五人目か。なるほど、前回とは同じ轍を踏まぬよう少しは工夫したということか」

 

男はイリヤスフィールを舐めるように見つめた。

それは自らの所有物を愛玩するだけの冷たい目線。そして、その言葉にどのような効果があったのか。

彼女は大きく震えたあと、がくりと頭を垂れて意識を失った。

 

「だが聖杯を呼ぶためには、あと三人サーヴァントに死んで貰わなければならん。

セイバーとはここで決着を着ける気はないのでな、まずはそこのアーチャーとアサシンに死んで貰うとしよう」

 

男の背後から次々と剣が現れていく。

それらの剣の向きはアーチャーと、気配遮断で隠れているはずのアサシンにまで向けられた。

「私がアレの相手をしよう。

なぜなら、私があの男を倒すのに一番適しているからな」

 

「な………、アーチャー!

今はセイバーやアサシンもいるから、三人でアイツを倒せばいいじゃない。

一人でアイツと戦うよりも、その方がいいわ」

 

「アーチャー、あれを倒せるんだな?」

 

生嗣は彼の後ろ姿を見ながら問いかけた。

 

「ああ、必ず倒して君たちと決着をつけるとも」

アーチャーは斜め後ろにいる、彼の目を見ながらそう言った。

 

「わかった。じゃあアーチャーが遠坂のもとに戻ってくるまで、遠坂の身の安全は保証する。

その後、決着をつけよう」

 

「ふ、では早くここから離れろ。

戦いの巻き添えを食うかもしれんからな」

 

「了解、セイバーは士郎を持ってくれ。俺はイリヤを持つ。

ほら行くぞ、遠坂」

 

衛宮生嗣は遠坂凛を手で催促しながらそのように言うが、彼女は納得がいかない顔で言う。

 

「なにアンタたちで勝手に決めてるのよ!

アーチャーに関してはマスターである私が決めることでしょ!」

 

「凛、私は必ずヤツを倒す。

言ったはずだぞ、『私は君が呼び出したサーヴァントだ。それが最強でないはずがない』と。

忘れたわけではないのだろう?」

 

そのアーチャーの言葉にどのような効果があったのか。

彼のマスターは、一週間ほど共に戦った相棒の頼もしい赤い背中を見ながら強い意志がこもった眼で彼を激励した。

 

「ええ、ちゃんと覚えているわよ。

もうこうなったら、あの金ぴかをギッタンギッタンにしてやりなさい!」

遠坂凛はアーチャーに令呪を彼の勝利のために一画使い、彼に背を向けて言った。

 

「じゃ、一足先に行くわよ。

出来るだけ早く追い付いて来なさいよね」

そうして彼らは帰路に着くのだった。

 

 




英雄王と戦闘シーンの描写難しい……。
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