今年受験なので、かなりペースが落ちる恐れがありますが、頑張って更新していこうと思います。
転生前夜
『ある日、核兵器やその製造技術が突如消滅した。突然起こったその事件に、当初こそ人々は歓喜した。これで核戦争による人類の滅亡は無くなったのだ、もう核の脅威に怯えることは無いのだと。
だが、核抑止力が消えたことによる弊害や、フィードバックのようなコトが起こってしまったのも事実だ。
国家対国家、あるいは国家対組織、そして組織対組織による紛争・戦争の急激な増加。人体に有害な粒子の発現と拡散。そして、ソレを動力源とする謎の新兵器、さらに日ごとに記憶を失わせる恐怖の病の噂で巷は持ちきりだ。
しかし、そんな危険度増し増しな世紀末ヒャッハー時空になったのは、何も核抑止力が無くなったからだけではない。
その崩壊は、核が地球上から消えてから数日後。
かつて《世界の警察》と呼ばれた超大国と、《世界の工場》と呼ばれた新興国が共倒れした事。その影響は世界中をあらゆる面で揺るがした。
凡そ全ての国々が恐慌に見舞われ、銀行や企業は九割が崩壊。残る一割も、ほとんどが存続困難に陥りリストラが相次いだ。
国の規模は関係なく、信用をなくした国家はごく一部の例外を除いて
そこに台頭してきたのが、西欧諸国と新たなカタチの《企業》だ。
前者は資源そして人々の生活さえ完全管理する、地球最大勢力の管理社会。
後者はレジスタンスから分岐したモノと、生き残った大企業が移行したモノがある。
近年のレジスタンスは一つの連合であり、西欧諸国のやり方に反発を覚えた者が集まった組織であるが、当然一枚岩ではない。違うアプローチで西欧諸国に対抗しようと考え、独立したのが前者の《企業》である。
《企業》の共通点としては、謎の新兵器を始めとする強力な兵器を多数保持・開発する軍事力の高さが挙げられるだろう。そして、彼らは近々大規模な対国家戦争を起こすとの諜報部門からの報告の通り、既存国家にとって極めて危険な組織だ。
2016年2月現在、収集した情報によると、国家と《企業》の全面戦争は避けられない模様。鍵となるのは、その両方に敵対しているレジスタンスだろう。
また、国家も《企業》もレジスタンス同じく一枚岩ではないため、裏切りが出るか出ないかも勝敗を左右する。国家連合が勝つか、《企業》の集まりが勝つかで今後の世界は全く変わることは確かだ。
そこで、そんな時勢であるため、この国もやむを得ず自衛力を増大しなければならなかった。国内企業に新兵器を融通してもらうなどして、だ。
長い前振りになってしまったが、この国はいま新兵器の扱いに適正のある人材を求めている。つまり、先天的戦闘能力特異体質候補者ことドミナント候補者かつ、優れた新兵器への適正を求めているわけだ。
この求人広告を見ているキミ、是非ともウチに入ってくれないか?』
キーボードを打っていた指を休める。
クッション付きの椅子の背もたれに全身を預けると、軽く肘を延ばすストレッチをする。
たかが千文字程度の文章を打っただけで、こんなにも疲労感がくるとは思わなかった。すっかり冷めた紅茶を飲み、気分転換にスマホで空の境界イベントの続きをする。
「おい、なにを遊んでいる?
下書きは終わったのか? なら早く家に帰って寝ろ。学校とココの両立なんて無茶をしているのだ。徹夜でゲームとか自殺行為だぞ?」
師匠がきた。
剣の師であり、文の師でもある師匠はトコトン近代文明に疎い。パソコンやコピー機の扱いどころか、電話すら掛けられない山育ちである。よって、必然的に通信手段は手紙。そんな師匠にとって、WordもExcelもfgoも対した違いではないらしい。
「遅いので、今日はここに泊まります。すぐ寝るので、安心してください」
事実眠いので、部屋の備え付けベッドに倒れればすぐ眠れそうだ。イベントの続きが睡魔に負けてできないのは残念だが、それはそれ。明日やればいいのだ。
そう考えて、椅子を立つと。
「待て」
そう言って、師匠は手招きした。
しわを寄せ、何かを危惧しているような表情だった。何か心配事でもあるのだろうかと思い、そっちへ向かうとデコピンされそうだったので、
「何かあったんですか、師匠」
すると、ますます眼を細める。
訳が分からないので、そのまま棒立ちする。こんな師匠は初めてだ。いったい何を視てしまったのだろう。
「………明日は十分気を付けるように。自転車は安全運転で頼むぞ」
……?
言われずともそのつもりだが。背後からの車の接近と、狙撃への警戒はこの
「師匠。話を変えてすみませんけど、なぜ自分が広告内容を考えて、それを打ってるんです? 師匠のほうが文章考えるの上手いですし、師匠が考えて自分が打つほうが良いと思いますけど」
そもそも、まだ未成年にも関わらず国の部署に勤めているのがおかしい。条件に合う人材が少ないのは分かるが、未成年に仕事させるほど切迫した状況なのか。
高い給料を払ってまでさせるのだから、そうに違いないが。
「次世代の人材を育てたいらしくてね。経験を積んでおいたら、思いがけないところで役に立つかもしれんし」
ふーん。
「わかった。本題に入るぞ。覚悟は、いいな?」
「いい」
『覚悟』と来たか。
師匠がその言葉を使った回数は二回。
剣の師になってくれと頼んだときと、ここに入ったとき。どちらも入ったあと大変なコトになったから、今回の『覚悟』も相当だろう。
「お前さんの未来の配偶者候補が………死んだ」
「―――――」
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―――――――――…………な、んで。
「死亡者が九割を超えて、なお増え続けているデスゲームだ、頑張ったほうだろうよ。昨夜急激に増加したのさ。デスゲーム初日以上だよ、その数は」
「第九十五層。モニターで見たけど、そこのボス戦が攻略されてから何かがあった。人が次々に死んでいったんだよ。特に第一層でね」
「明らかに異常だった。だってそうだろう? これまで安定して一日に一人ぐらい死んでいくペースだったのが、三十秒に一人死んでいくペースになったのは明らかに異常だ」
「他にもある。数が合わないんだよ。初日あのゲームにろぐいんした人数は一万人だった。だが、モニターに表示されていたものはその倍、二万人だ。謎の一万人、それがこのデスゲームの鍵なんだろうね」
「………っと、聞いてる? 聞いてないね。あまりのショックで脳がしゃっとだうんしたみたいだ。記憶の奥底に封じ込めるつもりかね、彼女さんのコト」
「まぁいいさ、人の生き方に干渉するつもりはない。好きに生き、好きに死ぬがいい」
「もっとも、キミには死相が視えたし明日死ぬ運命だ。聞いてないだろうが、私からキミへのアドバイス。心して聞きたまえ」
強い意志を感じさせる眼だ。
その視線は、倒れた彼に向けられている。眼と同様に頑強な意志を持つコトバを放った。
「己の運命に抗うのだ、少年―――」
ドアが閉まる。
彼が『師匠』と呼び慕う者はどこぞへと去っていく。―――《明日》はどこまでも不明瞭で、どこまでも明瞭だ―――そんな事を去り際に『師匠』は想った。
次話から新章突入しますね。