とある転生者の試練   作:雷灯かがり

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当初はfate/編は10話ぐらいで終わるだろうと高をくくっていましたが、倍以上かかりそうです。
……完結は当分先になりそうだな。

※10月19日 誤字修正しました。


第4話 サーヴァント召喚

 

 

ジリリと鳴るアラームで目を覚ました。

昔ながらの丸時計型アラームを止めてから、頑張って起き上がるまで五分を要する。

 

「……ねむ」

 

衛宮家の朝は早い。

時刻は六時。向こう、俺が死んだ世界ではだいたい七時半に起きていたから、こっちの世界に来てから約一時間半ぐらい起床時間が早まったということだ。まだ衛宮家の生活リズムにあっていないのか、まだ体がだるい。そんなだるさは、

 

「今日の朝食はだれがつくるんだろ」

 

毎朝の楽しみで消し飛ばし、食事が現在進行中で作られているであろう居間へ向かう。

そして居間に入った途端、美味しそうな香りが漂ってきた。

 

「この匂いは……士郎がつくっただし巻き玉子と、味噌汁だな。たぶんだけど」

 

まだ朝食には時間があるようだし、土蔵に向かう。あそこには色々なものがあるので、暇潰しには苦労しない。で、そこに行く途中に。

 

「おはようございます、先輩」

 

桜だな。

後ろを振り返らなくても、このあさげの香りと、声だけで分かった。

 

「生嗣先輩、士郎先輩はどこですか?」

 

「たぶん道場にいると思う」

いつも朝に士郎がいる場所は居間か道場のどっちかに決まっていて、居間にはいなかったから道場だと推測出来る。

まあ、稀にそれら以外のときもあるのだが。

 

「そうですか……、すでに朝食は作ってありますか?」

 

「ああ、もう士郎が作っておいてあるよ」

 

すると彼女は、居間にいってきますね、と言って去っていった。

朝食までまだ少し時間があるので、土蔵に行って暇を潰す。ここには様々なガラクタが置いてあって、そのガラクタどもは、十中八九藤ねえこと藤村タイガー先生が置いていったものだ。そんなわけで、チャチャッとこれらのガラクタ……ではなく、自分の体を使って『強化』の魔術をしようと思う。遠坂に間違えを直されてから、俺も士郎も魔術をそれ以前と比べたら格段に出来るようになった。彼女には感謝してもしきれない。直される以前は自分の体を強化するなんて怖くてできなかったけれど、今なら出来る。

てなわけで、今日は耳を強化する。

 

「耳、強化開始」

 

ちなみに俺は強化する部位を始めにいってから、『強化開始』という。自分にとってはこのような詠唱方法がわかりやすいと、思ったからだ。

 

「強化完了」

 

そして無事、強化できたらこの言葉を言う。ではさっそく、強化した耳の具合を試してみよう。

 

『お…………もう………よ…ぜ』

 

……あまりよく聞こえないので、身体中の(魔力)の流れを耳に集中させる。

 

『そうですね、もう食べちゃいましょう』

 

『そうだーそうだー、生嗣が遅いのが悪いんだー』

 

うげ、もうみんな食べ始めているようだ。左手の腕時計を見ると。

 

「もう6時30分だ。やっちまったなー」

 

とにかく急いで居間へ向かおう。家に藤ねえが一人だけのときは、藤ねえが俺の分を残してあるか心配だが、今はストッパーの二人が二人とも揃っているから大丈夫だろう。

……………こことは別の平行世界では全部食べられて、誰かを唖然とさせたのだが、それはまた別の話。

 

 

☆―☆―☆

 

 

授業中、窓の外を横目でチラリと見つつ、与えられた試練の事について考える。

俺が今『大聖杯』について知っていることは何もなく、それを破壊せよ、と言われても、それに関する情報が何もないので何も出来ない。

つまりどうしようもない、ということを今までずっと考えてきた――………っ!?

 

突然左手に痛みが走った。おかしいな、今朝のトレーニングで体が参ったのだろうか。しかし、今まで左手だけの痛みは無かったから、気になって左手の甲を見てみると、そこには見馴れない刺青があった。もちろん俺は昨日までに刺青を入れたことはなく、入れようと思ったことすらない。となると、魔術的なものだろうか。魔術のことだったら、遠坂に聞くのが一番いい気がする。放課後に彼女に聞いてみよう。

 

 

☆―☆―☆

 

放課後。

遠坂はどこかなー、と思いつつ弓道場の前まで来てみると……………。

目標(ターゲット)みっーけ。呼んでみる。

 

「おーい、遠坂ーーー!」

 

……返事がない。どういう事か、そこまで遠くない距離なのにどうやら聞こえてないらしい。

では、声量を上げて。

 

「おーーーい、とーおーさーかーーー!」

 

また返事がない。これ以上声量を上げると、隣近所の人から苦情を言われるぐらいの音量になるが仕方ない。

それを遠坂の五メートル付近で叫ぶ。

 

「おぉーーーい!!!、とぉーー「うっさい!」」

 

途中で怒られたが、俺の存在に気付いてくれて良かった。普通の声量に戻す。

 

「遠坂、ちょっと聞きたいことが……」

 

訊ねている途中で気がついた。彼女の機嫌がとても悪そうなことに。

 

「なに? なんか用?」

 

しかし一回話し掛けたからには途中で止める訳にはいかないので、左手を遠坂の前に差し出し。

 

「これって、何?」

 

と、少し声量を下げて聞いた。

左手にあるそれを見た瞬間、彼女はしかめっ面になった。

 

………その後しばらく一人言をしつつ悩んでいたようだが、言いたいことは決まったようだ。

 

「ねぇあんた、これについて本当に何も知らないの?」

 

「本当に何も知らないよ」

 

顔を覗きこまれる。

その行為はウソをついてないか確かめるためのものだろう。

 

「……本当に何も知らないようね。ちょっと遠坂邸(うち)に来なさい。それについて教えてあげるから」

 

「わかった、ありがとう」

 

予想通り魔術によるものだったらしい。本当に遠坂にはよく世話になるな、と思う。

……お返しとか要求されないといいのだが。

 

 

☆―☆―☆

 

 

遠坂の家には、体感的に言えば数分程で着いた。

 

「……おじゃましまーす」

 

見た目も洋館だったが中身も立派な洋館だ。

何回か来たことはあるが、これから何処の部屋に行くか知らないため、頼もしい遠坂の背中に付いていく。

 

 

――ここは地下室だろうか。なんか魔術と関係無さそうなものが意外に置いてある。ダンベルとかサンドバッグとか、バランスボールとか。これらってオレが知らないだけで、実は魔術に関係あるのだろうか。

 

「ないわよ」

 

「むむっ」

 

心を読むとは読心術の使い手なのか!?

どんな魔術を使ったのだろう?

 

「魔術は使っていないわよ。貴方の顔の表情を見たら一瞬で分かったわ」

 

へぇー、そうだったのか。また自分の新たな一面を見つけた気がする。

そこで本題の左手を差し出し、

 

「これはどんな魔術なんだ?」

 

ズバッとスパッと単純明快に聞いてみる。

遠坂は思案をするように首を傾げながら、一つの質問を俺に投げ掛けた。

 

「聖杯戦争って知ってる?」

 

「それについては(アハト翁から)聞いたことがある。

でも、この刺青みたいなものは(アハト翁から聞いたことがないから)知らない」

 

「その刺青は、聖杯戦争のマスターである資格で、令呪っていうの。この令呪でサーヴァントを従えるのよ。

あ、サーヴァントっていうのは英霊のことだと思ってくれればいいわ。まあ聖杯戦争のことについては、この本を読めばわかるわ」

 

流石、安心と信頼に定評がバツグンにある遠坂。自分にとって恐らく一番いい答えを示してくれた。

 

「何から何までありがとうな」

 

「……別に礼なんて言わなくてもいいわよ。こっちだけ情報を知っててあなたが知らないってのはフェアじゃないからね」

 

その言葉は遠坂なりの優しさだろう。俺が気を遣わないようにと。

「この本借りていっていいか?」

 

「なんでよ?」

 

「サーヴァントを召還したいからな。この呪文を全部覚えるのはキツイ」

 

「するのなら、今、この場でしなさい」

 

「それだと遠坂が危ないんじゃないか? 俺がサーヴァントを召還した後に、お前に襲わせるかもだぞ」

 

「じゃあいつでもあなたの頭にガント撃ち込めるようにしとくわ」

 

「……絶対に撃つなよ」

 

フリじゃないからな。

 

「撃つか撃たないかは生嗣しだいよ。」

 

よし、じゃあ召還するか。

えっと……、

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。

 

降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する。

 

―――――Anfang(セット)。

 

 

――――――告げる。

 

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

誓いを此処に。

我は常世総ての善となる者、我は常世総ての悪を敷く者。

 

されど汝はその身を暗闇の中に曇らせ侍るべし。

汝、隠密の刺客者なり。我はその手綱を握る者―――。

 

汝三大の言霊を纏いし七天、抑止の輪より来たれ、天秤の護り手よーーー!」

 

おおう、これがサーヴァント召還か。

閃光の様に眩しくて、思わず目を閉じたぜ。

 

「サーヴァント・アサシン、影より貴殿の呼び声を聞き届けた」

 

出てきたのはドクロのお面をした黒い男。この外見なら闇に紛れることなど容易に過ぎる。この面男は暗殺者(アサシン)らしい暗殺者で良かった。

「うむ、俺がアサシンのマスターだ。これからよろしく」

 

「こちらこそ、よろしくお願い申し上げる」

 

「じゃあ遠坂、上まで頼む」

 

「……ええ、わかったわ。」

 

「ところで魔術師殿、そちらのお方は……?」

 

「いろいろ事情があってな、また後で話す。今は霊体化していてくれ」

 

「はっ」

 

「じゃあ、またな遠坂。」

 

「いい、私がサーヴァントを召喚したら敵同士だからね。そのこと、肝に命じておくのよ」

 

「ああ、わかってる」

 

そして、遠坂邸を後にした。

 

 

 

☆―☆―☆

自分の部屋に着くと、安心感からかベッドの上で寝転がってしまうのは致し方なし。

それはそれとして、アサシンに今後の方針について話さないと。

「アサシン、実体化してくれ。」

 

「はい、なんでしょうか、魔術師殿?」

 

「これからの方針についてだが、絶対気付かれないように他の勢力を調べてくれ」

 

「はっ、了解しました。魔術師殿」

 

「明日の朝からだ。とりあえずそれまでは家にいてくれ。もう一度言うが、誰にも気付かれないようにな。よろしく頼むぞ」

 

「承知しましたぞ、魔術師殿。」

 

 

☆―☆―☆

 

 

その後2日過ぎ、アサシンからキャスターがバーサーカーに敗北し、消滅したとの情報を得た。

 

 




キャスターさんには残念ながら退場していただきました。生嗣がアサシンを召喚したため、nouminが来なかったせいですね。あと、途中の「されど汝は~を握るもの」は、この小説独特のアサシン召喚方法です。
「手綱を握る」ってなんかライダーっぽいですが、気にしないでください。
次回おそらく赤い人が召喚されます。
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