今、私は驚愕と感謝の気持ちでいっぱいです!
これからも『とある転生者の試練』をよろしくお願いします!
あと、書き忘れていましたが、感想受付中です。どんどん送ってください。
※10月02日 僅かに内容を修正しました。
※12月21日 行間や一部表現を変更しました。
※4月30日 サブタイトル変更しました。
平和→平穏
「魔術師殿、魔術師殿! 朝ですぞ、魔術師殿!」
「だれだよ、うるさいな、れーじゅをもってめーず」
「それを使ってはいけませんぞ、魔術師殿!このアサシンは寝坊した魔術師殿を起こすために声を張り上げたのですぞ。目を覚ましてください!魔術師殿!」
「寝坊?今何時だよ」
「現在の時刻は8時半を少し過ぎたあたりですな」
ん? おかしいな、今、8時半って聞こえたような気がするぞ。
「もう一回言ってもらっていい?」
「ですから、現在の時刻は8時半を過ぎたあたりですぞ。しっかりしてくだされ、魔術師殿」
部屋にある時計を見る。短針が8を、長針が7にちょうど差し掛かろうとしている。なるほど、確かにさっきの時刻は8時半ぐらいだったらしい。そして今は8時35分になっている。これの意味する所は、
「今から行っても学校に遅れるじゃん。せっかくだし、学校に今日は行かないで、家で鍛練しよ」
ということだ。
学校を無断欠席なんて藤ねえからしたら言語道断。関節技は免れないと見た。ファイトだ未来の自分、謝ればよしんば許してくれるって。
「そういえば、アサシン。昨日なんかあった?」
「魔術師殿の言うとおり、遠坂邸でサーヴァントが召喚されました」
「ん? 外から見てもわかったのか?」
「はい、サーヴァントはその………、空から落ちてきたので」
「……………なんというか、そのサーヴァントに同情するよ」
「私も魔術師殿に同じですぞ」
「アサシン、俺が呼び戻すまで街の見回りしてくれないか?」
「了解しましたぞ、魔術師殿」
さてと、とりあえず居間で(残っていれば)朝食を食べるかな。
居間に来て確認したが、どうやら無事に残っているようだ。今日の朝食は、
「秋刀魚の塩焼きに玉ねぎとじゃがいもの味噌汁と、定番のだし巻き玉子、それにこんにゃくの煮物か」
だし巻き玉子があるから、おそらく士郎がつくったのだろう。
「いただきます」
「ごちそうさま」
食べ終わったことだし、早速今日どのような鍛練をするか考えるか。
……まず、午前中は起源のほうの魔術をやって、午後は場所を選んで強化の魔術の訓練をして、ついでに家に隠してある我が愛刀『正宗』の切れ味をみるか。
――――よし、とりあえず強化した『正宗』で土蔵にあるタイヤやら、たこ焼き機やらお好み焼きプレートやらなんやら合わせて八つのがらくたをこの前のチラシみたく真っ二つに斬ったぞ。これからこれらをこの前のチ(以下略
「
「
ふー、結果8つ中6つ成功か。まだ強化の魔術みたいに、百パーセントできるわけじゃない。まだ自分の体で試すわけにはいかなそうだ。ん? なにをどうやって試すかって? それはもちろん、自分の体の中の切れてる毛細血管を見て、それをつなぐことをするんだよ。まさか腕を切るわけないじゃないか、そんなのは自殺行為だよ。
え、どうやって切れてる毛細血管を見るかって? それはあれだ。視力を目で強化して、(まだ身に付けてないけど)透視をすればいけるとおもうよ。そしてその技術は自分が怪我したときにつかう。誰かに使って、その人がバラバラになったらダメだからな。
……ってなにを自問自答してるんだ俺は。ひとりぼっちで寂しいときはたまにやるけど今考えるべきは昼食のことだろう。自分で料理を作れればいいけど、あいにく毒しかつくれない。そして毒を食べるなんて気はさらさらなく、そうすると、現実的な選択肢は二つになる。
一、商店街でなんか食べる。
二、夕食まで何も食べずに家で待つ。
二つ目の選択肢はお金がかからない点でいいのだが、午後の鍛練に支障をきたしてしまう。
一つ目の選択肢はお金はかかるが、夕食まで体力と気力を持たせることができる。
ここは迷うべきところだ。どちらかを選ぶことによって、今後の運命が決定的に違う気がする。具体的には、生存ルートとdeadendみたいな違いが。さて、どちらを選ぼうか。
☆―☆―☆
二、夕食まで何も食べずに家で待つ。
これにしよう。たぶん家にずっと引きこもっていても
敵襲は受けないと思うし。たぶん死ぬことはないだろう。そうと決まったら、早速昼寝しよう。寝れば空腹を忘れられる。
そう言えば、寝るときは、羊の数を数えると眠りやすいと聞いたことがある。
じゃあ数えよう。
羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹…………………、……
…………………………………………………………………
…………………………………………………………………
………………、羊が五十六匹、五十七匹。
…………………羊を数えても全然寝れないんだが。
ちなみに、現在時刻は12時半。昼寝をしても充分許される時間帯だ。
こういうときの寝る方法は?
一、ただひたすら無心になる。
二、寝る方法を考える。
三、お風呂に入る。
四、寝ることを諦める。
五、ランサーが死んだ!
☆―☆―☆
五、ランサーが死んだ!
こォの人でなし!
………ってあれ? どうしてこんなセリフが浮かんだのだろうか? もう一度選択肢を考え直そう。
一、ただひたすら無心になる。
二、寝る方法を考える。
三、お風呂に入る。
四、寝ることを諦める。
☆―☆―☆
二、寝る方法を考える。
寝る方法をひたすら頭の中で羅列させる。
たぶん、さっきの選択肢よりは実用的だ。おそらく、寝ることばっか考えてる内に寝てしまうはずだ。さて、どうやって寝ようか。
―――――――――三十分が経過した。
頑張って考えたすえに、
一、ただひたすら無心になる。
二、お風呂に入る。
三、寝ることを諦める。
この選択肢にしぼられた。
☆―☆―☆
三、寝ることを諦める。
『あきらめたら、そこで
いや、どこのス■ムダンクの■西先生だよ。
なんか天井から聞こえてきたんですが気のせいですかね、気のせいでなかったら軽くホラーなんですけどね。
まあ、この選択肢は無しだな、うん。
一、ただひたすら無心になる。
二、お風呂に入る。
☆―☆―☆
二、お風呂に入る。
さて、今の時間は一時五十分。これからお風呂に入るためには、お風呂掃除をしなければならない。終わった後も、お風呂にお湯をいれて、そして自分が入る時間とかも考えなくてはならない。そしてその結果、たぶん寝つける時間は三時後半になるだろう。
これなら、
一、ただひたすら無心になる。
この選択肢の方が、より早く寝れる気がする。
よって今から心を無にしようとおもふ。
☆―☆―☆
侵入者が入ることによって、鳴る警告音で目を覚ました。どうやら自分はちゃんと眠れたらしい。
じゃなくて、
「うそだろ、まさかこっちのルートがdeadend行きなのか!? 勘弁してくれよ!」
とりあえず近くに置いておいた愛刀正宗を持ち、直感的に土蔵の方に向かう。そこには一人の人影がいた。
(っ……待ち伏せされていたか!)
刀を鞘から抜き、霞みに構える。得物を強化し、相手がいつ来てもいいように足も強化する。
「誰だ! いつまでも隠れていないで、出てこい!」
相手がサーヴァントだったら最悪だな、ただの泥棒だったらいいんだけど。
いや、こそ泥ならとっくに逃げられてるか。
「へぇ、いい心がけね、ちょっと見直しちゃった」
この声は、遠坂か? なんで、ここに。まさか。
「戦いにきたのか、遠坂?」
「今日は知らせに来ただけよ、わたしもサーヴァントを召喚したっていうことをね」
「そのサーヴァントを見せてくれちゃったりする?」
「ええ、私はあなたのサーヴァントを知っているのに、あんたが私のサーヴァントを知らないのはフェアじゃないからね。アーチャー、出て来て!」
えっ? マジで見せてくれるの!? なんで!
そして、何もないところからその男は出てきた。
まったく困ったマスターだ、というような顔で出て来たやつはおそらくアーチャーだろう。遠坂が自分で言ってたし。
「私が召喚したのはアーチャーよ。そういえば、アサシンはどこにいるの? アーチャーによればここら辺にはいないらしいんだけど」
「凛、アサシンは気配遮断というクラススキルがある。そのスキルを使えばサーヴァントの索敵から逃れることも可能だ。もしかしたらアサシンは近くにいて、凛を殺害する機会を狙っているのかも知れん」
「アサシンなら見回りに行かせてる。なんならここに呼ぼうか?」
「いえ、別にいいわ」
と言った後、振り向いて。
「じゃあ今度こそ次会ったときは敵同士だからね」
そう、俺を睨みながら言った。
「ああ。またな、遠坂」
そして、遠坂達は去っていった。
……………ふう。いやー、死ななくてよかったー。
どうやらこっちのルートが(恐らく)生存ルートだったらしい。もし商店街に行っていたらどうなっていたのか気になるが、俺はそのことを確認する手段を持っていない。今日死ななかったことで良しとしよう。
☆―☆―☆
夕食が終わり、自分の部屋に戻る。まだ10時ぐらいだが、もう寝てしまおう。士郎は毎日午前1時ぐらいに寝て、5時半から6時の間くらいに起きているが、俺はそんなことを続けることはできない。そんな生活を続けたら、今日のように寝坊してしまうからだ。今日のようなことが起きないように、アサシンを呼ぶか。
「はい。承知しました、魔術師殿」
「えっ!アサシンいつの間にここに」
「冬木市中を回ってきたのですが、特に不審なことはありませんでしたので、魔術師殿の部屋をちょちょいと片付けておきましたぞ」
「確かに朝のときより部屋がキレイになっているような。これからもよろしくな、アサシン」
「ふはははは……戦いと部屋の掃除はこのアサシンに任されよ」
「ああ、俺はもう寝るから見張りよろしく」
「あいわかった、魔術師殿」
☆―☆―☆
――2月2日 朝
嫌な気分のまま目が覚めた。
胸の中に鉛が詰まっているような感覚。
額に触れると冬だというのにひどく汗をかいていた。
「……ああ、もうこんな時間か」
時計は6時を過ぎていた。
耳を澄ませば、台所からトントンと包丁の音が聞こえてくる。
「桜、今朝もはやいな」
感心している場合じゃない。
こっちもさっさと支度をして、朝食の手伝いをしなければ。
「士郎、今日どうするのよ。土曜日だから午後アルバイト?」
「いや、バイトは入ってないよ。一成のところでなんかやってると思うけど、それがどうかしたか?」
「んー、べつに。暇だったら道場のほうに遊びにきてくれないかなーって。わたし今月ピンチなのだ」
「? ピンチって、なにがさ」
「お財布事情がピンチなの。だから誰か弁当をつくってくれる人がいないかなー」
「断る。自業自得だ。たまには一食ぐらい抜いたほうがいい」
「ふーんだ、士郎は頼りにしていないもん。わたしが頼りにしているのは桜ちゃんだけなんだから。ねー、桜ちゃん?」
「はい、私と同じものでよろしければ用意しておきますね、藤村先生」
「うん、おっけーおっけー。じゃあ今日は一緒にお昼を食べましょう」
いつも通りに朝食は進んでいく。
今朝のメニューは定番の他、レンコンとこんにゃくのいり鳥が用意されていた。朝っぱらからこんな手の込んだものを作らなくても、と思うのだが、きっと大量につくって昼の弁当に使うのだろう。
桜は弓道部員だし、藤ねえは弓道部顧問だ。
二人が弁当で結ばれるのは至極当然の流れといえる。
「そう言えば士郎。生嗣はいつも通りとして、今朝は遅かったけどなんかあった?」
味噌汁を飲みながらこっちをみる藤ねえ。
……ったく普段は抜けているクセにこういう時にだけ鋭いんだからな、藤ねえは。
「昔の夢を見た。寝覚めがすっげー悪かっただけで、あとはなんともない」
「なんだ、いつものことか。なら安心かな」
とりわけ興味が無さそうに会話を切る藤ねえ。
こっちもホントに気にしてないので、ムキになる話でもない。
☆―☆―☆
……昔の夢か。ときどき見るが、でも最近は見る頻度が少なくなっているような気がする。やっぱり、『今』が忙しいからだろうか。
でももしかしたら俺は元の世界に帰りたくないのかもしれない。
……いや、何を考えているんだ、俺は。
そんなのもちろん帰りたいに決まっているじゃないか。
確かに今の生活は楽しいが、向こうには俺の家族や親友や友達がいる。気に入らないヤツもいるが、やっぱり、俺は元の世界に帰りたい。
「生嗣は今日どうするのよ、やっぱりずっと家にいるの?」
「ん、ごめん。聞いてなかった」
「なんかさっきから顔色悪そうだけど大丈夫?」
「ああ、べつに問題ないよ」
「そう、なら安心かな」
なんというか、藤ねえはこういうことに鋭い。
普段は抜けているクセに。
……そう言えば、言わなければならないことがあった。
「最近は夜、危ないからな。早く帰ってきたほうがいいぞ」
「そうよ、士郎。また誰かの手伝いをして、遅くなっちゃダメなんだからね」
「……わかった。出来るだけ早く帰ってくる」
「絶対、早く帰ってこいよ」
「ああ、わかってるって。だから人の心配より、生嗣は自分の心配をしろよ。なんかさっきの朝食中、怖い顔してたぞ」
……おまえが言うな。
と、言いたいところだが、確かに言っていることは正しいかもなので、黙っておく。
念押しをしたから、必ずや早く帰ってくるだろうし、もし遅くなってもまさか死ぬことはないだろう、たぶん。
☆―☆―☆
……士郎が帰ってくるのが遅い。
時刻はもう次の日になった。念のためアサシンには家の前で待機させて、『正宗』も近くに置いといている。なぜなら士郎がなんの前置きもなく、こんな時間まで帰って来ないのはおかしいと思ったからだ。
少しすると、玄関の鍵があく音がした。士郎がようやく帰ってきたらしい。
「お帰り、遅かったな、しろ………ってなんだその血がついた服は!どこかケガをしたのか?」
「いや……別に何でもない」
いや、何でもないわけないだろう。
けっこう胸を押さえて痛そうにしてるし。
吐きそうな顔してるし。
そしてもう一度何があったのか聞こうとした瞬間、アサシンから念話が飛んできた。
『魔術師殿!私がみたところランサーとみられるサーヴァントがこっちに来ますぞ!迎撃しますか!?』
『いや、アサシンはそのままでいい。とりあえず俺と士郎は中庭にいく。俺が指示したタイミングでこっちにこい』
『しかし……。いえ、わかりました。魔術師殿』
屋敷の天井に付けられていた鐘がなる。
2日連続で襲撃とは、この家はよく狙われるようだ。
もしかしたら今回の襲撃は士郎が関係しているのかもしれない。だって、制服におびただしい量の血がついてるし。つーか、こんなこと考えている場合じゃない。
「全身強化 開始」
とりあえず全身の身体機能を一瞬で強化する。
一部分の強化に比べるとけっこう魔力を使うが、別に問題はない。魔力を使いきったらアサシンに助けを求めれば良いのだ。
「強化 完了」
居間の中でサーヴァントと戦うのは俺とアサシンにとって不利なので、広いとこに陣取る必要がある。よって、
「士郎、中庭に逃げるぞ!」
動こうとしないので、強化した右手で士郎の手首をもち、無理やりにでも連れていく。
……よし、とりあえず中庭の中心についた。
「士郎、土蔵の中に隠れてろ」
「いや、ちょっと待てよ」
「待たん」
強化した右足で士郎を蹴る。
……ふむ、どうやら目的地である土蔵の中に着いたらしい。少し悪いことをしたが、こうでもしないと、
「……チッ」
殺されるからな。
☆―☆―☆
確実に死角からの投擲だった。
普通の一般人だったら、何が起きたか解らずに死んでいただろう。だが、あの黒髪の男はこともあろうに、当たるはずだった、学校での戦闘の目撃者を蹴って避けさせ、彼の得物であろう刀を抜いて槍の投擲を完全に防いだのだ。
……何者だ、アイツは。
「てめえ何者だ、少なくとも一般人じゃないな」
「なんで投擲した槍が持ち主のところに飛んで戻っていくんだ?」
……無視かよ。
「俺の質問に答えろ。てめえ何者だ」
「魔術師だ(キリッ」
実に簡潔な答えが帰ってきた。
「あと、見ず知らずの人に槍を投げるのはどうかと思うよ? それと、さっさと家に帰ってくれないか?」
「断る。おまえがさっき蹴ったヤツを殺すまで俺はかえれねえ」
「そうか、それじゃあ交渉決裂だな」
「みたいだな」
そして、刀使いに向かってランサーは疾走する。
☆―☆―☆
さっきまでは二人で何か話していたようだが、それが終わると学校の校庭で感じた殺気を感じ、そして。
ガキン、キンと彼らは人間には到底不可能な速度で斬り合っていた。
よく見ると、いやチラッと見ただけで槍を持っているヤツの方が優勢だと解る。
……そりゃあそうだろう。そいつは人間を超えたよくわからないヤツで、もう片方は正真正銘人間の生嗣だ。あいつが人間だっていうことは俺が一番知っている。でもあいつがあんな人外の動きができるとは、知らなかった。
しかし、その均衡は長く続かない。
その証拠に、少しずつ生嗣のスピードや動きのキレが落ちていっている。
それに、あの刀だっていつまで持つかわからない。
どうやら強化したらしいが、いつまでもあの禍々しい槍と打ち合うことはできないだろう。生嗣は俺より魔力をたくさん持っているが、それがいつ尽きるかは、もう時間の問題だ。
そして、魔力が尽きたとき、生嗣は殺され、そのあと俺も殺されるだろう。
そして、またもう一度、
体に埋まる鉄の感触を、
喉からせりあがる血の味を、
世界が遠ざかっていく感覚を、
味わうのだろう。
それをもう一度、本当に?
理解できない。なぜそんな目にもう一度あわなければならないのか。
……ふざけている。
そんなものは認められない。こんな所で意味もなく、死んでいくわけにはいかない。
助けてもらったのだ。助けてもらったからには簡単に死ねない。
俺は生きて義務を果たさなければならないのに、死んでは義務が果たせない。
頭にきた。
そんなに簡単に人が死ぬとかふざけている。
そんなに簡単に人を殺すとかふざけている。
1日に二度死ぬとかふざけている。
俺の家族が目の前で死ぬとかふざけている。
ああもう、何もかもがふざけていて大人しく怯えて観戦することなんてできず、
「ふざけるな、俺は」
☆―☆―☆
ランサーとみられるサーヴァントは、およそ全ての攻撃を心臓・頭・喉などの急所に音速と勘違いするほどの速さで斬りこんでいく。
目ではなく直感を。
防御一辺倒ではなく攻撃を。
危険だと感じたら回避を。
それらを実行し、何とか持ちこたえているが、これも長くは続かない。恐らく今の魔力量からいって、今のペースが続けば、あと三分ぐらいだろう。
上から降り下ろされる槍は、後ろに避けてから前に跳んで打ち込み。
横から来る槍は、刀で防御し。
突いてくる槍は、後ろに飛んで体勢を整える。
これを続けて、はや五分。
「(もうそろそろ限界が来そうだな……)」
『アサシン、ランサーに後ろから奇襲しろ』
『了解した、魔術師殿』
さてと、あとはアサシンが来るのを、打ち合いながら待つか。
そこで、それに初めて気付いた。
………なんだ、あの土蔵から漏れている光は?
☆―☆―☆
「問おう、貴方が私のマスターか」
その少女は凛とした声でそう言った。
「え……マス……ター………?」
問われた言葉を口にするだけ。
彼女が何を言っているのかわからない。
何者かもわからない。
「サーヴァント・セイバー、召喚に従い参上した。マスター、指示を」
そのマスターとサーヴァントいう言葉を聞いた瞬間、
「……っ!」
左手に痛みが走った。
熱い、焼きごてを押されたような、そんな痛み。
思わず左手の甲をおさえた。
それが合図だったのか、彼女は中庭にいる二人に向かっていった。
「なぁ、ここで一旦、休戦しないか?」
サーヴァントらしきものが召喚されてからのランサーの提案だ。
「そうだな、そうしよう」
勿論この提案には乗る。俺の魔力と体力ともに尽きかけていたし、なによりこれ以上あの槍と打ち合ったら、いくら強化したとはいえこっちの刀が折れてしまうかもしれない。
『アサシン、俺が合図するまで手を出すな』
アサシンには割りと強い言葉使いで言っておく。
土間から出てきたサーヴァントらしき女性は、俺とランサーどちらに斬りかかるか迷っているようだ。
その隙にランサーは彼女に斬りかかった。
そして、謎のサーヴァントとランサーの戦いが始まる。
この作品はフィクションです。
実在の刀剣とは一切関係ありません。