「ベル。訓練すごく頑張ったね!」
全身ボロボロで精根尽き果てそうなベルにアイズが声をかけた。
「だ、大丈夫です。このぐらいなんてことないです...」
ベルはアイズに手を引かれながらよろよろと後をついて行っている。今にも寝てしまいたいところだが永遠の眠りにつきそうで怖い...
「朝食までまだもう少しだけ時間あるから体の汚れ落としていかないと...」
そういって連れてこられたのはロキファミリア自慢の大浴場だ。
当然のことながら男女別である。はず...
大浴場の前まで来たところでティオネ、ティオナ姉妹に遭遇したベルとアイズ。
「あれぇー二人もこれからお風呂?」
ティオナが元気よく声をかけてきた。
「ん、今までベルと訓練してたから」
「ベル、ボロボロじゃない...アイズどんな訓練したのよ...]
ティオネがかわいそうなものを見るような目でベルを見ている。
「アイズさんとずっと戦ってました...]
「いいなー!アイズと組手なんてあたしだってあんまりやったことないのに!私とも今度やろうよ」
「ん、いいけど今はベルの訓練に集中したいからまた今度」
「じゃあベル!私とも組手しよ!」
そういって満面の笑みでベルに話かけるティオナだったがアイズがベルを後ろから抱きしめ首を横に振る
「ベルは私と訓練するからダメ」
ぷぅーと頬を膨らませるティオナを横目にティオネは優しい笑みを浮かべている。
(あのアイズがここまで誰かに執着するなんて...それにいい笑顔するようになったわね)
ベルは抱き着かれているが疲れすぎてされるがままである。
「ま、ベルとの訓練の話は置いといてお風呂入っちゃおうよ!ご飯に間に合わないよ!」
アイズはベルを解放してそのまま手を引いて大浴場に入ろうとしている。
「ちょっっアイズさん!?僕は向こうの男湯に入りますから!」
入る寸前でベルが覚醒しそのまま連行されていくのを防いだ。
「今日の朝は男湯お湯沸かしてないんだぁー!シャワーだけじゃ疲れとれないよ?」
ティオナもアイズと一緒にベルの手を引っ張り連行しようとしている。
「いえいえいえいえ...僕シャワーだけで大丈夫ですから!」
ベルもさすがにそのまま一緒に入るなどといえる度胸はない。
「ベルも一緒に入ろうよ!」
「そうね、私たちは気にしないわ!」
アマゾネスという種族は肌をみられることに関してあまり気にしないようだ。かわいいベルなら問題ないという謎の理論である。
「じゃあいこっか」
アイズもベルなら問題ないと言わんばかりの態度である。
アイズやティオナの力で手を握られてはベルに逃げるすべはない。
「ちょっっだれかぁーー」
このままでは男としての尊厳が散ってしまう...
「おい!ぎゃあぎゃあ何やってやがる」
救世主ベートが降臨した。
「べートさん!」
「そっちは男湯じゃねえだろ、ベル、男湯はこっちだ」
そういってベル達に近づきベルの襟首を掴んで引っ張っていこうとした。
「ちょっとベート!ベルは私たちと入るんだから邪魔しないでよ!」
ティオナが更にベルを捕獲する。
「バカゾネスが、普通に考えりゃわかんだろ。それにどうみたって嫌がってんだろ」
「ベル、私たちと入るの嫌...?」
アイズが悲しそうな顔でベルを見る。
「ええと...嫌なわけないんですが...さすがにまずいかと...」
おろおろしながら辺りを見渡している。
「ベルもこういってんだから手放しやがれ」
「だめだよー!ベート、ベルと一緒に入って何かするつもりなんでしょ?」
にやにやしながらティオナがベートに詰め寄る。
「私覚えてるんだから、豊穣の女主人でベートがベルにしたこと!」
「はぁ?何言ってやがる。そもそも俺は途中から記憶ねえんだよ」
しばらくぎゃあぎゃあ騒いでいるとやっかいな人物が現れる。
「なんやなんや朝っぱらから元気やなー」
大きなあくびをしながらロキが通路の向こうから歩いてきた。
「あ!ロキ!」
「誰かこの状況説明してんかー?」
ティオネが今までの流れをロキに伝えた。内容を理解したロキがにやぁと悪い笑顔をつくる。
つかつかとベルの方に向かうと一度ベートの方を見てからベルの後ろの壁に手をつきベートの声マネをしながらこう言った。
「ベル。俺の女にならないか?」
自分でいいながらロキはボフっと吹き出した。
ベルは何かを思い出したようでプルプルと震えだし、ティオネ、ティオナ姉妹はベートを指差し大爆笑している。
アイズはかわいそうなものを見る目でベートを眺めた。
「....、....」
ベートは何かを思い出したようで青い顔をしてぶつぶつ言い始めた。いつもの強気な姿勢は見る影もない。
「こらこら、ベートとベルをいじめるのもそれぐらいにしてあげてくれ」
騒ぎを聞きつけたフィンが仲裁にはいる。
「団長ーー!これから皆でお風呂入るんですが是非団長もご一緒に!」
ティオネが団長の手をガシッと掴み口説きにかかる。
「残念だけど遠慮しておくよ」
そういうと無防備なベートの首筋に超高速の手刀を叩きこんだ。
完全に油断しているところにレベル6であるフィンの手刀を喰らいベートはその場に崩れ落ちた。
「じゃあベルはゆっくり男湯で汗を流すといい。他のみんなも朝食に遅れないようにね。これは団長命令だから」
にっこり笑うとベートを担いで食堂に向かった。願わくばベートの記憶がまた消えていることを祈ろう...
しぶしぶであるが団長命令にしたがい皆それぞれ汗を流し朝食に向かった...
いつも読んでいただいている皆様ありがとうございます。
今回はプチおまけです。
お気に入り登録者も増えてきましたし、評価していくれている方々もいます、本当にありがとうございます<m(__)m>
これからもがんばりますのでよろしくお願いいたします!