剣姫と白兎の物語   作:兎魂

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ロキファミリアの団員達は未到達領域59階層を目指す前にカドモスの泉でクエストを行う


38 異常事態

「リヴェリア、僕達がクエストに行っている間皆を頼むよ?」

 

「任せておけ」

 

今回クエストに向かうメンバーは2組に分かれており片方はフィンを筆頭にガレス、ベート、レベル4のラウルを含めた4人。もう一方はアイズを筆頭にティオネ、ティオナ、レフィーヤの4人だ。

 

「皆、この階層は迷路のように入り組んでいるのは知っているな?地図をよく確認しておくんだ。僕たちは西側、アイズ達は東側の泉に向かってくれ。ティオネ、君が指揮をとるんだ!」

 

「はい!団長!おまかせください!」

 

ティオネは鼻息荒くフィンと共に地図を眺めながらルートを頭に叩き込んでいる。冷静なら......冷静ならティオネは指揮に向いているのだ。一度切れると血の海になるまで興奮が収まることはない場合が多いのがたまに傷だが......

 

「それじゃあカドモスの泉水を手に入れたらここに戻って来よう。皆気を付けて」

 

2組に分かれて迷路に突入した面々、50階層以降には強力なモンスターも多いがこのメンバーなら問題なくこのクエストを達成できるだろう。

 

「アイズ!ティオナ!前衛をお願い。レフィーヤは魔法詠唱」

 

「「はい、了解」」

 

壁から次々と生まれるモンスターをなぎ倒しながら前へと進む4人、連携も問題なくスムーズに進んで行く。

 

「レフィーヤ、随分動きがいいじゃない!」

 

気負いもなく自分の役割を理解して動くレフィーヤをティオネが褒めた。

 

「負けてられませんから!」

 

ふんっと鼻息荒くレフィーヤが杖を構える。ベートに叱咤されたことも影響してかやる気に満ち溢れていた。リヴェリアのような並行詠唱はできずとも仲間を信頼することで詠唱を完成させていた。

 

「あたし達だって負けてないからね!ね、アイズ!」

 

「うん、私ももっと強くなる」

 

4人とも顔を見合わせ笑いあう。そこには冒険者としての顔だけではない女の子らしい笑顔があった。

 

「さあ、もうすぐカドモスの住みかよ。集中して!」

 

カドモスが根城にしているルームの前までやってきた4人。中の気配を探りつつ戦闘態勢をとる、が、そんな中スっとアイズが立ち上がった。

 

「おかしい、中からカドモスの気配がしない......」

 

「そうね......なんの音もしないなんて......それにひどい匂い」

 

4人が中に入るとそこにはカドモスの死骸と共に溶けた木々が散乱していた。

 

「なんなのこれー?臭いしカドモス死んでるし......誰がこいつ倒したの?」

 

鼻を摘み心底嫌そうに顔をしかめるティオナ、カドモスと戦いたかったのか機嫌が悪そうだ。

 

「この階層にこれるパーティーなんてほとんどいないわよ、それに見てみなさい。ドロップアイテムがそのままよ?」

 

ティオネが摘みあげたのは売れば数百万ヴァリスにもなるカドモスの被膜であった。魔石はないようだがこの高価なドロップアイテムを置いていく馬鹿な冒険者はいない。

 

「.....じゃあ誰が?」

 

「ティオネ!」

 

アイズの声にティオネが頷いた。

 

「泉水を回収、すぐにこの場を脱出。可能な限り急いで!嫌な予感がするわ。すぐに団長達と合流しましょう」

 

泉水を回収後急いで元の場所まで戻る4人。

 

「うあ゛あ゛あ゛ーーーー」

 

遠くからすさまじい絶叫が聞こえる。決してモンスターの声ではない、この声はラウルのものだ。

 

「!この先!」

 

通路を曲がるとフィン、ベート、ラウルを担いだガレスが巨大な芋虫型のモンスターに追われて全速力で入り口へと向かっていた。妙な色の斑点といい巨大な体を蠢かしている姿は見ていて気分のいいものではない。

 

「はぁぁぁぁぁー!」

 

「よせ!ティオナ!」

 

静止するフィンの声を聴かず、追いかけてくる芋虫に対してティオナが突っ込み自慢のウルガを叩きつけた。ブシュッッという音と共に体液が周囲に飛び散り周囲から煙が上がる、更にアダマンタイト製のウルガからも白い煙が上がり武器が溶け始めていた。

 

「ああーーー!あたしのウルガが......」

 

 

専用武器(オーダーメイド)のウルガ、数千万ヴェリスが一瞬にして溶けて消えた......芋虫の攻撃は強力な酸による攻撃、更にはその酸による武器破壊を備えた厄介な相手だ......

 

「全員撤退!奥のルームまで走れ、奴の身体に武器による攻撃は駄目だ。レフィーヤ!君の魔法で奴らを仕留めるんだ!」

 

「はい!」

 

レフィーヤの瞳には怯えはない。この遠征で彼女も随分と成長したようだ。       

 

通路をルームまでひた走る......ダンジョンは狡猾だ。異常事態に巻き込まれた冒険者たちを簡単に逃がすほど甘くはない。

 

ビキリッッビキビキビキビキビキッ

 

「いかん、怪物の宴(モンスターパーティー)じゃ」

 

ガレスは殿を走りながら大声で叫んだ。後方から芋虫が迫る中、左右の壁から怪物の群が出現する。

 

「敵は進軍の邪魔にならないものは気にするな。攻撃も弾くだけでいい、ルームまで走れ!」

 

「チッめんどくせえな......」

 

攻撃をしつつレフィーヤを護りながら走るベート。なんだかんだいって一番レベルの低いレフィーヤを気遣っている。

 

「着いたぞ、全員戦闘態勢!アイズ!」

 

アイズはフィンに自身の剣を渡しナイフを構えた。アイズの魔法【エアリエル】なら通常の武器でもこのモンスターに対して攻撃ができる。風を纏ったアイズには腐食液は届かない、ただのナイフもアイズの風を纏えば切れ味は通常の武器とは比較にならないほど上がる。

 

アイズのデスペレートは不壊属性、決して壊れることのない特殊武器......この武器なら腐食液による武器破壊も回避できるだろう。

 

 

ルームへと足を踏み入れたフィン達、レフィーヤを後方に下がらせ詠唱の準備をさせた。

 

「ティオネ。君はラウルと下がり治療、その後はレフィーヤの護衛に着いてくれ」

 

「はい!」

 

「僕とアイズ以外は他のモンスターを相手にしてくれ。足止めするだけでいい、時間を稼げ」

 

目覚めよ(テンペスト)(エアリエル)

 

アイズは全身に風をまとい芋虫に突撃していく、腐食液を口から放出しアイズに攻撃を仕掛ける芋虫だがアイズの風の前には無力だ。腐食液を弾きながら芋虫を粉砕していく。ベート達も芋虫の相手はせず他の魔物を倒していった。51階層の魔物が大群でいるとはいえアイズ達レベル5、レベル6が相手では数がいくら多くても簡単には倒せない。こうして時間を稼いでいる間にレフィーヤが魔法を発動するのが作戦だ。

 

レフィーヤが杖を構え詠唱を始めると魔方陣が浮かび魔力が込められた旋律が紡がれていく。

 

【誇り高き戦士よ 森の射手隊よ 押し寄せる略奪者を前に弓を取れ 同胞の声に応え 矢を番(つが)えよ 帯びよ炎 森の灯火(ともしび) 撃ち放て 妖精の火矢 雨の如く降りそそぎ 蛮族どもを焼き払え】

 

「皆さん行きます!」

 

「皆下がれ!」

 

魔物の相手をしていた皆がレフィーヤの元へと集まった。それを確認したレフィーヤが魔法を発動させた。

 

【ヒュゼレイド・フェラーリカ】

 

レフィーヤの魔法は大量の火矢を広範囲に降り注がせるものだ。その火力は詠唱の時間はかかるものの深層域の魔物でも一撃で粉砕する威力を持つ。

 

「相変わらずすげえ威力だな、これで並行詠唱さえできりゃあいいんだがよ」

 

魔石ごと消し炭になった魔物の群を眺めながらベートが呟いた。現在オラリオで今のような高出力な広範囲殲滅魔法を並行詠唱できるのは【九魔姫】の二つ名を神から与えられたリヴェリア・リヨス・アールヴを含めごくわずかだ。

 

(......ベートさんの言うことはもっともだ。今のままじゃ全然足りない......)

 

「やったね!レフィーヤ!やっぱりレフィーヤの魔法はすごいよ!」

 

「ティオナさん......」

 

「並行詠唱のことは今はまだ気にしなくていいわ、私達は今あなたに救われたのよ?」

 

「助けてくれてありがとう、レフィーヤ!」

 

複雑な表情のレフィーヤをアイズ達が慰めた。

 

「皆さん.....ありがとうございます。でも、もっともっと私強くなります!」

 

(負けたくない、皆さんに。必ず追いつきますから......)

 

「......皆、すぐ50階層まで戻るぞ」

 

顎に手を当てて険しい顔で何かを考えていたフィンが皆に命令した。

 

「団長!どうしたんですか!?」

 

「さっきの芋虫たちの進行方向は?」

 

「たしか......!」

 

「リヴェリア達が危ない!急ぐぞ!」

 

フィン達は全速力で50階層に向かっていった。

 

 

 

一方そのころリヴェリア達

 

「なんなのだ、奴らは......」

 

安全地帯の50階層で新種の魔物が大量発生という異常事態にリヴェリア達の対応は後手後手になっていた。見張りがサボっていたわけではない。唐突に地面から湧きだし51階層へ繋がる洞窟からも大軍が押し寄せてきたのだ。陣地から団員達が出てきたときにはすでに目の前まで敵が接近していた。真っ先に芋虫と対峙した団員が自身の武器を芋虫へと叩きつけるとブシュっという音と共に体液がまき散らされた。無論、武器は溶け体中に液体を浴びてしまった。

 

「ああ゛あ゛っっーーー!」

 

絶叫と共に白い煙をあげながら倒れこむ団員。かけつけたリヴェリアが治療しつつその様子から指示を出した。

 

「近距離からの攻撃は駄目だ。こいつらの体は強力な酸の詰まった袋だと思え。前衛は何でもいい、盾になりそうな物を全てもってこい!後衛は遠距離から攻撃をしろ!」

 

後衛は魔法の詠唱を行いつつ弓や魔剣による攻撃で芋虫を攻撃していた。本来ならばリヴェリアの広範囲殲滅魔法を使用したいところだがこの緊迫した状態では長文詠唱をしている間がない。

 

(数が多すぎる......)

 

地面を埋め尽くす芋虫の大群はロキファミリアの団員達に甚大な被害を与えていた。盾は酸で溶かされ前衛は崩壊寸前。弓の矢も残り少なくなってきた。魔剣に関しては使用限度を超えすでに破壊してしまっていた。仮にこの場にヴェルフの造ったクロッゾの魔剣があれば戦況を変えられていたかもしれないが通常の魔剣にこの数の敵を殲滅させるだけの力はない.....

 

「皆耐えろ!もうすぐフィンやアイズ達が戻ってくるはずだ!」

 

圧倒的な敵の数、大半の武器を失った団員達の戦意は大幅に落ちていた。皆の脳裏に死という単語が浮かび始めたとき......

 

 

目覚めよ(テンペスト)(エアリエル)

 

暴風に身を包んだアイズとアイズの風で強化したベートが敵をなぎ倒しながらリヴェリア達の前へと現れた。

 

 

 

少し時間は遡り......

 

芋虫の追撃を受けながらも50階層の入り口に到着したフィン達は絶句した。大量の芋虫の大軍がキャンプへと押し寄せ所々から煙が上がり悲鳴が聞こえていた。

 

「先に行く、アイズ寄越せ!」

 

「風よ」

 

アイズから風の魔力をもらい自身のフロスヴィルトに吸収し速度を上昇させたベートとアイズが先行してキャンプ地へと急いだ。他のメンバーはケガを負ったラウルとレベル3のレフィーヤがいる為無理はできない。また、相手はあの芋虫の為まともに攻撃できる手段が限られている。

 

リヴェリア達キャンプ防衛組からはアイズ達が帰還したことにより歓声が上がった。落ち込んでいた指揮も一気に上がり気合の入った声があがる。

 

「来てくれたか、アイズ、ベート」

 

「大丈夫?リヴェリア、今助けるから」

 

「ふん、てめえらがくたばったら寝覚めが悪いからな。あの芋虫どもの足止めはしてやる。さっさと体制立て直しやがれ!」

 

アイズ達が前衛を助けることで負傷した者達にも十分な回復アイテムを使うことができた。しかし......

 

地下から噴水のように酸をまき散らしながら芋虫の大軍が襲い掛かり、前衛の上空に大量の酸が巻き散らかされた。この量が前衛の団員達に降り注げば盾もろとも頭から酸をかぶることになる......

 

「!」

 

アイズがそのことに気が付き応援に駆け付けるがアイズの現在いる位置からでは遠すぎた。ここで......

 

「ガルルァァァー!!」

 

ベートが雄叫びと共に酸に飛び込み風を纏ったフロスヴィルトで酸を弾き飛ばした。しかし、あまりに多い酸に全てを吹き飛ばすことができず前衛を務めていたアキと呼ばれる猫人の団員の上へと降りかかる。

 

「チッ」

 

酸を吹き飛ばし着地した瞬間に舌打ちと共にベートが酸と猫人との間に体を滑り込ませた。

 

「ぐぅっっ」

 

ベートの背中に燃えるような痛みが走った。防具は溶けベートの背中を酸が焼いていく......

 

「ベートさん!?しっかりしてください!」

 

アキの絶叫が周囲に響いた、片膝をついたベートの背中の皮膚は焼け爛れている......

 

「ベートさん!大丈夫ですか!?どうして私なんかを......」

 

傷ついた背中のままベートは立ち上がり、足のホルスターにストックしてあるポーションで回復を行う。

 

「てめえら助けるのに理由なんかいらねえだろ、それより前を向け」

 

幹部であるベートにケガをさせたことで俯く猫人を叱り前を向かせた。

 

「は、はい!」

 

アキに背を向けたまま戦闘に戻るベートの背中はいつもより大きく見えた......

 

 

幹部達の活躍もありどうにか体制を整えたリヴェリア達は魔術師部隊の一斉攻撃によって芋虫の軍勢を全て撃破することに成功した。ベートが背中に火傷を負ったりティオネがキレて素手で芋虫を引きちぎり火傷するなどトラブルがあったものの死傷者もなく全員が生き残ることができた。今回の異常事態の規模を考えれば死傷者がでてもおかしくない状態であったが損害は武具とアイテムのみという最低限の被害で済むことができたのは上出来だ。

 

「大いに不本意だがこれより地上への帰還行動に移る、各自準備をしてくれ」

 

本来なら59階層を目指す遠征であったがほとんどの武器が壊れ、多くの回復系のアイテムを失った今59階層を目指すことは自殺に等しい。よって、全員が無事に地上へと帰還することを優先した。

 

 

 

ダンジョン18階層安全地帯

 

いつまた異常事態が起こるかわからない深層域からかなりの強行軍で18階層まで上がってきたロキファミリアの団員達。今日はこの階層でキャンプを行う予定だ。中層といえど見張りに余念はない。

 

夕食後ベル特製のお茶を焚火の周りに座り飲みながら休憩をとった。

 

「あの!ベートさん!50階ではありがとうございました。地上へ戻ったらご指導をしていただけないでしょうか?」

 

猫人のアキはラウルの同期でレベルは4だが50階層でベートに助けられて以来よくベートに話しかけている様子を見かける。

 

「ああ?ベルの訓練がないときにな」

 

「ありがとうございます!失礼します!」

 

頬を染めながらぺこりとお辞儀をするとその場を去って行った。

 

「ベート、アキに聞いたわよ?身を挺して助けたそうじゃない?」

 

「ほう?やるではないか」

 

遠慮をしてかこの焚火の周囲には幹部達しかいない、その幹部達から視線を向けられるとベートは嫌そうな顔をした。

 

「ベルとの約束だからな」

 

「約束ってベルとなに約束したの?」

 

ティオナがベルのお茶をがぶ飲みしながらベートに尋ねた。

 

「......」

 

「無視すんなぁぁぁーー!」

 

ずずっとベートがお茶を口に含みゆっくりとそれを飲み込む。胃に染み渡るうまさだ。

 

「でもベートさんベルのことすごく気にかけてますよね?」

 

アイズも今までのベートの事はよく知っている。異常ともいえるほどの実力主義者であり皆とこうして話をするなんてことはめったになかった。

 

「やっぱりあの噂本当なんじゃ......」

 

「ティオネ、どんな噂なんだい?」

 

ティオネとティオナは顔を見合わせブフッと吹き出しじゃれ合いながらなんとか声を絞り出した。

 

「実はですね団長、今一部の女子の団員達の中でベートはホモなんじゃ?って噂がですね......」

 

フィンは、ぁぁっとかわいそうな子をみるような顔でベートの顔をみた。

 

グフ、ゴホゴホゴホ、ゲハァ......グフッ......ッッ

 

飲んでいたお茶が入ってはいけないところに入ったようで悶えている。

 

「ふざけんな!んなわけねえだろ!ゴホッゴホッッ、とりあえずその噂広めた奴ぶっ殺す」

 

がるるるっと威嚇するベートだったが...諦めたのかベートは溜息をしてベルとのやり取りを話した。

 

 

「リヴェリア、お前ベルと遠征の話しただろ?」

 

「ああ、したな。それがどうかしたのか?」

 

「あいつ遠征に着いて行きたい、そんな雰囲気じゃなかったか?」

 

(そういえば、あの時のベルは少しおかしかったな......)

 

リヴェリアは無言で頷いた。

 

「ベルはおかしな野郎だ。いきなりアイズの英雄になりてえだのぬかしたりな。ただあいつは仲間を失う事を異常に恐れているように見える。あいつはレベル1だぞ?それなのにあいつの守りたい奴の中にはアイズや俺たち皆が入ってんだ。だから俺が遠征にいけないあいつの代わりにお前の守りたい奴らを護るから、お前は地上に残った仲間を護れって約束をしたんだよ」

 

パチパチと音を立てる焚火を枝で突きながらぶっきらぼうにベートが語る。

 

「ベート、お前はなぜそこまで肩入れする?私達にとってお前の態度が軟化するのはいいことだが、どうにも理由がわからないな」

 

「俺は......以前あいつと同じ目をした人間(ヒューマン)に助けられたことがある。そいつとベルが似てるのに気が付いたのは少したった後だったがな」

 

「「「!!!」」」

 

何人かがベートの発言に反応を見せた。

 

「いつだったか、ベルの野郎が話してくれて事があるんだがよ。夢を見るんだと」

 

「それはどんな、夢ですか?」

 

ドクンドクンとアイズの心臓が激しく鼓動する。

 

「自分の愛する家族、仲間が空から舞い降りた黒い何かに蹂躙される絶望の夢......ベルの夢に関係しているわわからねえが俺にはその光景に見覚えがある。俺の故郷はあの村だ」

 

ベートのいうあの村とは十数年前、ゼウスファミリアが死闘を繰り広げ黒龍によって一度滅ぼされた村のことだ。アイズの運命が変わった村でもある。

 

「俺もそこでてめえの弱さと絶望を味わった、俺は黒龍の姿は見なかったが黒龍の眷属共はいやってほど見たからな。その光景がベルが見た夢と似てる気がしてな、だがベルの年齢的にそれはありえねえ。あいつはその時生まれてねえんだからよ、だから別のただの悪夢なだけかもしれねえがな」

 

「......ッ」

 

アイズが何か言おうとしているようだがアイズの過去は複雑だ。仲間といえど口外することはロキに止められている為、この場で口にすることはできない。

 

「後で調べたが俺の命を救ったのはその容姿から英雄ダグラス・クラネルだということがわかった。黒龍の目を潰して息絶えたということも知った。ベルと同じクラネルという家名、そしてあの目、柄じゃねえが何か感じるものがあってよ、フィンとの気合の入った戦いもみたし少し見てやろうかと最初は思っただけだった」

 

沈黙する最高幹部の3人とアイズ、最高幹部の3人だけがベートのロキファミリアに入団した経緯を知っている為、感慨深いものがある。アイズは初めてベルを目にした時の事を思いだしていた。

 

「......あいつは間違いなく、早死にする」

 

「な!?」

 

「何言ってんのベート!?」

 

「てめえらもわかってんだろ?今のままじゃあいつは早死にするってよ。あいつはレベルにしては強い、それにありえないほどの強い精神力をもってやがる。ただ、あいつにその時が来たらあいつは自分を犠牲にしてでも仲間を護ろうとするだろう......リヴェリアもそれがわかってるからあいつに上層では必要にねえぐらい回復薬渡したんだろうが。仲間を何よりも思いやるあいつが気に入った、死なせたくねえと思った。だからあいつを鍛えてやってんだ」

 

「そうか、それがおまえがベルを気に入る理由なのだな?成長したではないか」

 

リヴェリアが優しい笑みを浮かべた。ガレスも最初に自分に挑んできた若者がここまで成長したかと腕組みをして目を瞑った。

 

「......ベート、それに皆。帰ったら話がある」

 

フィンはリヴェリアとガレスに目配せを行いきりだした。ベルの生い立ち、アイズの生い立ちを話す時が来たのかもしれない......

 

 

 

 

 

「アイズさん、ごめんなさい......僕は......」

 




いつも読んでくださっている皆様、ありがとうございます。

今回最初の方はソードオラトリアの原作とほぼ一緒で話を広げることができず申し訳ない<m(__)m>割愛<m(__)m>

今回のメインはベートさんでした、フィンは遠征から帰ったら全て話すのでしょうか、話してしまったらアイズとベルの関係は!?......

次回はベル君サイドです。彼の身に起ころうとしていることとは......

活動報告更新しましたm(_ _)m

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