白いく美しい光...
光に包まれたベルは真っ白な世界にいた。目の前にあるのはただ一面の白、方向感覚がない世界の中、ベルは先ほどまで体を走っていた痛みを感じないことに気が付いた。
(ここはいったい...早く皆のところに戻らないと)
突然のことなのに不思議と落ち着いている自分がいた。
ベルが振り返ると遠くに何かあるのが見える、距離感がいまいちつかめない空間だがその何かに向かってベルは駆け出した。
近づくにつれその何かの輪郭がはっきりとわかりだした。
(あれは...門?)
ベルの眼前に現れたのは見上げるほど大きな門、そしてその前に立つ一人の青年だった。門には
一方青年は白い髪に真紅の瞳をしており白銀の鎧を身にまとっていた。長いマフラーがとても印象的だ。
「え...あなたは...僕?」
怖い感じはしない、むしろ青年を見た瞬間に心拍数があがり全身に謎の高揚感が駆け巡っていた。
ベルが動けずにいると青年はベルの事を愛おしそうに見つめると優しくほほ笑んだ。
「私の名はダグラス、ダグラス・クラネルだ」
「へ?え?ええ!?あ、あの英雄ダグラス・クラネル、さんですか?」
(この声...僕には聞き覚えが...)
あまりの衝撃にドモリながら名前を繰り返した。
「英雄...か...俺にはもうそう呼ばれる資格などないがな...」
寂しそうに、そして辛そうに呟いた言葉は酷く重く感じた...
「あの...そうだ!僕仲間のところに帰らないといけないんです。早く帰らないと仲間が!」
ダグラスはベルの肩にポンッと手を乗せると真剣な眼差しで言葉をかけた。
「ベル、今の君が戻ったとして彼女達を救うことはできるのか?」
「!...それでも、僕は...」
「君だけなら逃げれるかもしれない、彼女たちを見捨てさえすれば。君には誓ったことがあるのだろう?」
「...アイズさんの英雄になる...」
...ベルにもわかっている、このまま帰ったとしてもあのミノタウロスを倒せないことを。
「...僕の家族なんです、ロキファミリアの皆さんは。僕の事を家族と呼んでくれたんです。家族を見捨てて逃げるようなことがあれば、僕は皆さんに合わす顔がありません。ましてやそんな男が!アイズさんの英雄になりたいだなんて口にできません!」
「死ぬぞ?」
「それでも僕は行きます」
ベルの決意にダグラスはうなずいた。
「ベル、おまえに魔法の言葉を教えよう。スキルを発動させるのに必要な言葉だ」
「スキル?僕のスキルは...」
「
そう、ベルのスキルは【誓】そしてベルの中のもう一つの魂、ダグラスクラネルのスキルが家族の絆だったのだ。故に今までそれらしい効果が表れていなかった。
「英雄...護りし者などと言われた俺が、最後の最後に家族同然だった仲間も、自分の愛した女さえも守れなかった。その時思ったんだ、今のベルのように自分の命一つでみんなを救えるのなら...と。死ぬ瞬間まで自分の力のなさを呪った。その後悔の念、絶望がこのスキルを目覚めさせた」
「あの...何をいって?」
「もう時間がない、お前は...後悔するな」
ダグラスはベルに近づくと優しくそして力強く抱きしめた。
「
「生命力?」
「そうだ、体力がなくなれば体は動けなくなる、精神力がなくなればマインドダウンを起こすだろう。そして、生命力が枯渇すれば必ず死ぬことになる...すまない、ベル。お前にもアイズにも俺は何もしてやれなかった、せめて、この体に残された魂の欠片に蓄積されている
経験値とは、人が神に近づく為の物。肉体は器に過ぎない、経験値は神の血によって背を通して魂に刻まれる...
(やっぱり僕ダグラスさんの声を知ってる気がする...あの...穏やかな暗闇の中で...)
「とお...さん...?」
ベルの呟きが聞こえたかはわからない、しかしダグラスは涙を流した。
「...また会おう...その時は...」
スゥっとダグラスの体が薄くなりベルの中に消えていった。
(体が軽い...)
ベルは門の前まで行くと手を門に押し当て先ほど教えてもらった言葉を唱えた。
「
ガコォォンという音と振動と共にベルの身長より少し高いところから亀裂が入り門が開いた。
「行ってきます,どんなことがあっても必ず護って見せます」
そういうとベルは光が放たれた扉の中へと進んでいった。
ヴモォーーーー!!
リリーに目を抉られた
瞬間、ドクンッッ!ベルの体が白い光に包まれダンジョンに衝撃が走った。ビリビリとまるでダンジョン自体が泣いているかのような振動が起こる。
先ほどまで死にかけていたベルの豹変ぶりに
白い光に包まれているベルが静かに、それでいて力強い声で魔法の詠唱を行った。
通常薄暗い地下にいる
ドゴォッッ
左側の牙を拳で叩き折りそのまま壁際まで吹き飛ばした。口からボタボタと血を流しながらも足に力を込め、地面を踏みしめて恨みがましそうな顔を向ける。
「ベ...ル...?」
リリーがうっすらと目をあけてベルを見つめた。ベルが優しくほほ笑むとリリーはそのまま気を失った。一瞬りリーの体が白い光に包まれたのは見間違いだったかもしれない...
自分の事を無視された
「ライトニングボルト!」
振り向きざまに放ったベルの雷は先ほどまでとは威力が段違いで片手で受け止めようとしていた
ヴモォォ...
自分の腕を確認し電流が流れたことによる痺れ具合を確認すると一歩退いた。先ほどまで突撃すれさえすればどうにかなると思っていた
大剣で先端の鋭い岩を大量に切り裂くとベル目がけて全力で投げつけた。岩が雨のようにベル目がけて放たれる、ベルは仲間に当たらないように自分に注意をひきつけつつ紙一重で岩を避けていた。お互い距離をとっての戦いでは相手に大きなダメージを与えることはできない、ベルの魔法も耐久の非常に優れた相手では近距離からでないと致命傷を与えることができずにいた。更にベルには時間がない、仲間の様子から血が足りていないのは明らかですぐにでも地上へ連れて行く必要がある...
(時間がない...狙いはひとつ。なんとかあの場所に攻撃を当てられれば...)
力と耐久は
距離をとってにらみ合うベルと
ふぅーと大きな息を吐いたベルが覚悟を決めた。
足に魔力を集中させ突撃を仕掛けた、
だぁぁぁぁああーーーー!!
白狼を両手で握りしめ先ほどからダメージを与えていた左腕に突き刺した。
ヴモォォォォー!!
突き刺した部分を思い切り引き裂き大きなダメージを与えることに成功する。
痛みで体を大きく仰け反らせ咆哮をあげる
ビキッ
おそらくどこかの骨が折れたようだ。体に鈍い痛みが走る...手負いの
「僕はお前を...倒す!!」
ベルの口からは血がこぼれた、生命力の限界は近い...
ヴモォーーーーー!!
「ッッだぁぁぁぁ!!」
突撃し巨大で鋭い角でベルを一突きにするつもりの
全身全霊の攻撃をかわせれ、空中で身動きのできない
「皆の戦いは無駄にはしない!!」
胸にに食い込んだ刹那の刃の上に拳を突き当てた。体を覆う雷の魔力が拳へと集まっていく...
「最大...最大...ッッ最大出力!!」
ベルの拳から放たれた極大な雷は刃を伝い
「はぁ..はぁ...はぁ...ぐぅッッ」
灰になった
「~~~~~~~~ッッッ!!」
ベルの全身を激痛が走り声にならない悲鳴を上げベルはその場に崩れ落ちた...
【ダンジョン18階層】
50階層からの強行軍での疲労も回復し2班に分かれて地上まで帰還することにしたフィン達、17階層への入り口で隊列を組んでいるとダンジョンの揺れを数人が感じ取った。
「アイズ、今何か揺れなかっ...!?どうしたのアイズ!?顔真っ青だよ!?」
両腕を抱え込み無言で何かを考えているアイズ...
「フィン!」
フィンも同じく顎に手を当て何事か考えていた。
(親指が...)
「ガレス、ラウル、アキ、全員を率いて正規ルートで地上へ」
「「団長!?」」
「親指の疼きが止まらない...何かある」
ざわざわと動揺がはしるが幹部たちの表情を見て姿勢を正した。
「地上に着いたらバベルの前で待機、皆疲れているところすまない、もう少し頑張ってくれ」
「フィン...先に行く」
アイズが先陣をきって17階層へ向けて走り出した。
「おい!待てよアイズ!!俺も行く」
アイズ、ベート、リヴェリア、ティオネ、ティオナ、レフィーヤそして殿にフィンという隊列で上層へと進む一向。
上層に上がるにつれ違和感が強くなる...
「おいおいなんだぁこりゃ...」
上層に向かう途中冒険者と思われる死体が点々と散らばっていた。いったいいくつのパーティが...
「おかしいな...いくら中層だからといってここまでひどい状況はあまりない...異常事態か」
「フィン、早く上層へ」
「ああ、急ごう」
ダンジョン12階層
「血の跡がここまで...」
「ああ、ひでぇ匂いだ」
ベートは顔をしかめた。
中層から何者かが冒険者を殺しながら上層に向かっている、上層には下級冒険者たちが、ロキファミリアの地上に残してきたメンバーも多くが探索をしているはずだ。
「血がまだ乾いていない、近いぞ」
リヴェリアの表情も険しい...
ダンジョン10階層
!!
何かに気が付いたアイズが魔法を発動させ全速力で上層に向けて走り出した。
!!
「全員急げぇぇ!!ベル達の匂いだ!!」
ベートが叫びながらアイズの跡を全速力で追いかける...
中層に行ける冒険者を倒すことのできる魔物、そんな奴に出くわせば勝ち目はない。
全員血の気が引いた顔をして先を急いだ。
【ダンジョン9階層ルーム】
「っぐ...はぁ...はぁ...はぁ...」
(体中がバラバラになりそうだ...)
器の限界を超えた力を使用したベルの体は酷い激痛と倦怠感に襲われていた。
「ああ゛あ゛ぁーーー!!」
ベルは渾身の力を込め立ち上がると一歩、また一歩と仲間と元へと近づいて行った。
手持ちの回復薬はもうない...更に限界突破の反動で着実に体が死へと向かっているのが感じられる。
気絶している仲間の元へと近づき呼吸の確認をした。
「よかった...まだ皆息がある。待っててください、絶対地上に...!」
ドゴォォォン!!
パチパチパチパチ
フードを深く被った十数人が拍手をしながらルームの中へと入ってくる。
「あなたたちは...」
頬をつぅーと汗が流れた。ベルの感覚が警告を発している...
謎の集団の中で仮面をつけ片手に瓶のような物をもっている男がベルに声をかけた。
「地上の奴らの中で俺が育てた牛達を倒せる奴がいるとはな。さっきまでのやつらとは一味違うようだ」
瀕死のベル達を半円状に囲むようにしてフードを被った者達がゆっくりと近づいていく。
「いい素材になりそうだ」
「後ろに女もいるじゃねえか、こいつはラッキーだな」
下品な笑い声をあげながら数人の男たちがベルの後ろにいる3人に近づこうとする。
「僕の仲間に...触るなぁ!」
ベルが痛みで満足に動けない体を無理やり立たせ3人の前で手を広げた。
「こいつまだ動けるのかよ」
おもむろに近づいた仮面の男がベルを蹴り飛ばした。
ぐうっ
地面を転がり他のフードの男の前まで転がるベル。フードの男がベルの顔をよく見た瞬間...
「だ、旦那方!。こいつロキファミリアの新人でさぁ。こいつらに手を出しちゃいけねえ」
「おまえカヌゥとか言ったな。どういうことだ?」
ソーマファミリアの二人も今回また酒を渡しにきておりこの場につて来ていた。どこともしらないファミリアならともかく、都市最大派閥であるロキファミリアに手を出したとあらば自分たちがどんな目に合うか目に見えていた。
「神ロキは自分の眷属を傷つける者を決してゆるさないんでさ、あの化け物どもを本気で怒らせちゃいけねえ」
がたがたと震えるカヌゥに対して男は笑いながら魔剣を渡した。
「地上のやつらにこの俺が負けるわけがねえ、ここで俺に殺されるか今あいつを痛めつけるか選べ」
瓶の中身をがぶがぶ飲みながら笑った。
「このまま俺たちが地上を攻め落としてやる、そうすれば彼女も喜ぶだろう。レヴィス達が驚く顔が目に浮かぶぜ」
(こいつ壊れてやがる...この人数でオラリオを滅ぼせるわけねえのに...)
「ロキファミリアは遠征中だ。少なくとも後一週間は帰ってこないはず。ここでこいつを殺すなり素材にするなりすればばれない、やれカヌゥ」
団長からの指示もありカヌゥが魔剣を振り下ろした。ベルはなんとか直撃を避けるものの足を焼かれた。その様子を見て他のフードの連中は笑っている...
ゴホッ
ベルは血を吐きながらも地面に手をつき立ち上がった。
(この気配...下から上がってくる...)
はぁはぁはぁ...
(きっともう一度あれを使ったら僕は...死ぬ。でも、僕に今できることはアイズさん達がくるまで時間を稼ぐこと)
満身創痍の中決断する時がきた。
(僕が...皆の盾になる!!アイズさん...ごめんなさい。約束を守れそうにありません...)
ふぅーと大きく息を吐き前を向いた。
先ほどよりよわよわしいが白い光がベルを包んむ。
「ライトニングボルト!」
3人を担いでいこうとするフードの男たちに向けて雷を放った。
「僕の仲間に触るなって言ってるだろぉお!!」
ぐあっ
雷の直撃を受けて怯んだ隙に体当たりをし3人の前から弾き飛ばした。
「電光石火!」
白狼を握りしめ仲間を護りながら速度を生かした攻撃を行い相手をけん制する。
「このガキ...いきなり能力が上がりやがった。速い!」
急激な変化に動揺するフードの男たち、その中で仮面の男が指示を出した。
「てめえら馬鹿か?そいつが速いなら動かねえ奴らを狙えばいいだろうが。撃て!」
複数人が同時にリリー達を狙い攻撃を仕掛ける。矢をつがえ放つもの、短文詠唱からの魔法による攻撃、それを防ぐためにベルは足を止めて防御に専念しなくてはいけなくなる。こちらから攻撃を仕掛けようにも多勢に無勢、次から次えとくる攻撃になすすべはない。
「いい酒のつまみになる、俺が飲み終わるまで遊んでやれ」
包囲から一歩退き瓶の中の液体を喉に流し込む。
(しかし、あのガキ嫌な目をしやがる...まあそんなことはどうでもいいか)
短文詠唱からベルの足に向けて炎の弾丸が放たれる。
複数の弾丸がベルの足に着弾する。限界突破の力も弱まり、攻撃を受け続けた。もうベルに自らが避ける力はない、ただひたすら自身の後ろに攻撃がいかないように自らの体を盾としていた。
「このガキ,これだけの攻撃を攻撃を受けてなんで倒れねえんだ」
ポタポタと血を滴らせるベルは幽鬼のように立ち続けた。もう目もほとんど見えていないだろう...それでも決して倒れない、決して折れない、そして諦めない...ベルの命は誓いのスキルでかろうじで繋がっていた...
パリンッッ
仮面の男が瓶を地面に叩きつけた。
「さあ、ガキをいたぶるのもそろそろ終いだ。そいつは俺がこの手で殺す、そこまで損傷したら素材としても使えねえだろ」
長剣を抜くとベルの首筋にぴたりと当てた。
「言い残すことはねえか?」
ベルは血まみれの中かすかに笑みを浮かべた。
「...まに...あった...」
「あ?」
ギンッ ドゴォッッッ
ベルの首に充てられていた長剣が叩き折られ仮面の男は壁に吹き飛ばされた。
「てめえら...俺の弟になにしてやがる!!」
ブワっと毛を逆立たせ指をボキボキと鳴らしながら怒りの表情を浮かべる狼人の青年
男の剣を叩き折り崩れ落ちるベルの体を支えるのは金髪の美しい少女だった...
ダンジョン9階層
(近い...戦闘音が聞こえるのはこの先のルーム...ベル、無事でいて)
「アイズ、ひでえ血の匂いだ...急げ!」
ロキファミリアの中でも抜群の速力を持つ二人がまず最初にベル達のいるルームへと足を踏み入れた。
((!!))
中には血まみれで複数人から攻撃を受けているベルの姿があった。一瞬で間合いを詰めると仮面の男の長剣をアイズが叩き折りベートが全力で蹴り飛ばした...
「リヴェリアーー!!」
ベルを抱えたアイズが悲鳴のような声を挙げた。
「わかっている、レフィーヤついてこい!」
リヴェリアとレフィーヤはベル達の治療へと向かう。混乱しているフードの男たちはベートが蹴り飛ばし道を作った。
「....全員潰す」 スキル【狂人化】怒りの限界を超えると発動、大幅に力のステイタスを向上させるが耐久が減少する。目の前の敵と認識した者を消すまで止まらない。
状況をみたティオナがゆらりと体を揺らすと一気に敵に詰め寄り素手で頭を鷲掴みにした。グシャっという音とともに潰れた相手を踏みつける...バキン、何かが割れたような音がして人間だった者が灰になり消えた。
「....全員ぶっ殺...」
「ティオネ!奴らを捕えろ!」
「!!はい」
同じくキレそうになるティオネをフィンが止めた。アイズ達の姿を確認した瞬間逃げだした者が2人いた。彼らはフィン達が何者かしっている可能性が高いということだ。ロキファミリアの幹部が来た時点で逃げないということはよっぽど腕に覚えがあるか知らないかの2択になる。
ティオネはナイフを取り出すと走っていく二人に投げつけた。ギャッという悲鳴があがり二人共地面に倒れ込む。
「動くな、おとなしくしろ」
殺気を含んだ冷たい声は男二人をちじみ上がらせた。悲鳴を上げる二人を無視しフィンから渡されたミスリルを織り込んだ縄でで両手足を縛り落ちていた槍に結び付け地中深く突き刺した。これで簡単に逃げることはできない。
「ひぃぃぃ勘弁してくだせえ、脅されてt...」
「黙れ!」
ティオネの怒気を含んだ声をきき更に命乞いをする二人。
「助けてくれ、知っている情報なら全て...」
「黙れっていってんだろぉぉぉ!その耳は飾りか、じゃあいらねえよなぁ?」
ブチィ
二人の片耳を引きちぎったティオネ。
「ひぎぃぃぃぃ」
悲鳴が洞窟内に木霊する...
「次しゃべったらもう片方の耳を引きちぎる。それが嫌なら黙ってろ」
二人の心を完全に折った後ティオネはリヴェリア達の護衛へと向かった。
「ひどい...」
ベルの容体を見たレフィーヤは口に手を当て涙を流した。
「レフィーヤ、泣くのは全てが終わってからにしろ。おまえは後ろの3人を頼む。おそらくその3人はポーションで治療はされているはずだ」
周囲に落ちているポーションの数を見るからに、かなりの重傷を負ったとみられるが丁寧に治療されていることがわかった。
「ベル、すぐリヴェリアが治療してくれるから。絶対大丈夫だからね」
「アイ...さん。リヴェリ...さん。僕より皆を...」
「大丈夫だ。後ろの3人はレフィーヤが診てくれている」
アイズとリヴェリアはベルの壊れかけた鎧を脱がし治療を行おうとしていた。
(この傷は...なぜこの状況で立っていられたんだ...いや...死んでもおかしくないほど傷が深い...間に合え)
ベルの様子をみたリヴェリアの美しい顔に青筋が浮かんだ。
「ベル、よく頑張ったね。絶対、絶対治るから...リヴェリア!早く!」
「わかっている」
リヴェリアが回復魔法をベルにかけた...
先ほどベートに吹き飛ばされた仮面の男が崩れた岩をどかしながら出てくる。
「おいてめえら何やってやがる!さっさとそんなやつら殺せぇ!チッ...しょうがねえ、使うか。
仮面の男が手を挙げると地面から植物のような物が噴き出す。一本一本がうねうねと動き先端の蕾のような部分がバカァっと開いた。
ブシャーーーー!!
涎をだらだらと垂らし鋭い歯が生えた口を大きく開けた。
「!ティオネ、こいつらは魔力に惹かれている。リヴェリア達を護れ」
「はい!」
フィンとティオネはいきなり出現した花のような化け物に対応していた。50階層で自分たちの武器をほとんどなくした一行はスペアの武器、または素手で戦闘を行なっている。
「うざってえぇんだよー!」
大きな口で食いついてくる化け物をティオネは両手で口を掴むと腕力のみで左右に引きちぎる。おそらくこの花の化け物のレベルは3ほどだ...ただ数が多い。
ルームが混戦になるなかリヴェリアの声が響いた。
「そんなバカなことがあるか!!なぜ回復しないっっ、レフィーヤ!」
「エルフ・リング」
レフィーヤはエルフ・リングを使用しベルに治癒の魔法を唱えた。...しかし、ベルの傷口は塞がることはなく血も止まる気配はない。ポーションをかけても同様だ。
回復魔法とは、魔力で対象者の生命力に働きかけ体を治療するというもの、再生魔法ではない、仮に再生魔法なら血液も再生するはずだ。少なくともリヴェリアの魔法は前者である。ポーションやエリクサーも回復アイテムであり再生アイテムではない。ベルの生命力はほぼ枯渇しておりもはや打つ手はなかった...
「っっく...」
「リヴェリア様!」
「まずは止血をしなければ。このままでは地上に着く前にベルは...」
リヴェリアは自身のローブを切り裂くとベルの傷口に当て止血を始める。噛みしめる口からは血が流れていた。
「うそ...うそ...うそ!ベル!しっかりして!」
ベルはアイズの方へと手を伸ばした。
「アイズ...さん」
アイズはベルの手を両手でしっかり握った。
「私はここだよ!」
「ごめ...なさい。もう、目が...」
「僕...」
「ベルしゃべっちゃダメ!傷口が!」
「アイズ!ベルの言葉を一言一句聞き漏らすな!」
手当をしているリヴェリアの目から涙が溢れつぅーと頬を伝って流れた。
「!ベルは死なない!だってベルは私の!...えい...ゆう...」
「僕は、オラリオに来てよかった...たくさんの出会いがあって...僕の事を家族と呼んでくれる人たちがいて...僕は幸せでした...今度は仲間を護ることができました。僕はロキファミリアの皆さんが大好きです...アイズさんが...大好き...でした......」
「いや...いやだぁーーーーー!!」
アイズの悲痛な叫び声がダンジョン内に木霊した...
読んでくださっている皆様、ありがとうございます。
いろいろ考えていたら大分時間がたってしましいました<m(__)m>
今回は剣姫と白兎の物語独自の設定や状況が多くあります。回復魔法のところとか、器の限界を超えるとか... ご了承ください<m(__)m><m(__)m>
次回タイトルのみお伝えします、 次回タイトルは逆鱗です。
更新予定は...お待ちください<m(__)m>