ダンジョン37階層からアイズ達は地上へ向かう。
ちなみに報酬の交渉は決着がついていない......
一日レンタル!と交渉を進めるルノアとクロエに対し頬を膨らませ拒否するアイズ......アイズがある程度回復するまでの間交渉は続いたがリヴェリアから今回の件で豊穣の女主人の面々、ミアを筆頭にシル、アーニャ、クロエ、ルノア、リュー、そして他の従業員に大きな借りがあると諭され前向きに検討、地上へ帰ってベルが完治してから本人を交えての再交渉ということで落ち着いた。
ベルを交えての交渉ということを勝ち取った時点でルノアとクロエは勝利を確信していた。いくらアイズが拒否しようと交渉対象はあくまでもベルだ。あのベルが恩を受けた相手に何もしないという選択肢はないだろう......
「さあそろそろいいだろう、あんたたちはこれを飲みな」
交渉をしている間ミアは簡易の鍋を取り出し何かをぐつぐつと煮込んでいた。皆そのことに触れてはいなかったが酷い匂いがしている。
「本当にそれ飲むのにゃ?」
「いや......絶対に無理......」
「ルノア、クロエ、我慢しなさい。我々のレベルでは他の3人に迷惑をかけてしまいます」
高レベルであるリヴェリア達の進軍ペースに合わせる為3人はミア特性の薬を飲むことになった。帰りに飲む理由は一つ、行きで飲んだ場合後後いろいろと問題が発生するからだ。
器に入れられた薬はぶくぶくと泡立ち異臭を発している......
「早く飲みな!あたしがせっかく調合してやった激走薬を無駄にするつもりかい?安心しな、飲んでも後で...なだけで死にはしないよ」
器を差し出しながらにやりとミアは笑う。
「今なんていったにゃ!?肝心なとこが聞こえなかったにゃ!余計怖いにゃ゛ー!!」
「リューあんた顔色悪いけど大丈夫?」
「いえ......先ほどはああいいましたが。実は私もこの匂いの物を体内に取り込むことを体が拒否しているので......」
額にふつふつと嫌な汗をかきながらリューは何かを耐えるように口に手を当てる。
はぁーと深くため息をつきルノアが手を挙げた。
「じゃああたしが一番槍を務めさせてもらうよ!」
ルノア逝きます!ぐいっと器の中の液体を喉に流し込んだ。
「ぐあぁぁぁぁ@;、・@★★★」
よくわからない声をあげながらゴロゴロと地面を転げまわるルノア。それを見て他の二人はがたがたと震えている......
しばらく悶えた後ゆらりと立ち上がるとクロエの背後に回りがしっと両腕をロックした。
「ぜはぁーぜはぁ......ふふ、クロエ。次はあんただよ......」
「だ、大丈夫にゃ。みゃーには耐異常のアビリティがあるにゃ!」
「ああ、クロエ。あたしの薬は毒じゃないからね。そんなものは関係ないよ!」
びしっと親指をたてるミア.....
「......いやに゛ゃーーーーーーぁぁぁ助けてにゃーーーーぁぁぁごふぉ」
両腕をロックされミアに強引に薬を口に流しこまれるクロエは泣いている.....
ビクンビクンとしばらく痙攣した後ゆらりと立ち上がった。
「ふふ......」
「くくく......」
「「さあ、次はリューの番だよ、にゃ」」
リュー・リオン、レベル4の上位の実力者。長い冒険者歴の中でこれほどの恐怖を覚えたことはない......無理やり飲ませられるか、自分で飲むかの選択を迫られたが涙目になりながら自分で飲む方を選択した。必死になって目に涙を溜めながら薬を飲む......こんな姿は2度と拝めないだろう。
ミアの作った薬の効果はすさまじくある程度加減しているとはいえ他の3人に後れをとることなく必死についていく。追い付いてこれないようならもう一杯という言葉を聞き死に物狂いで走っているともいう.....
(((絶対に報酬の上乗せをベルに希望しよう)))
3人は目を合わせうなずいた。
一方アイズは血液を失い過ぎたこともありまだリヴェリアの背におぶられたままだ。
「こうしていると昔を思い出すな......ずいぶん重くなったものだ」
アイズはロキファミリアに入った当初、両親を失ったトラウマから夜中に声をころして泣いていることが多かった。そんな時は必ずリヴェリアがアイズを背に乗せ落ち着いて眠りにつくまで一緒にいた。その頃を思い出し走りながらも軽く笑みを浮かべる......
「私......太った?」
「いや......立派になったということだ。私に心配をかけるところは相変わらずだがな」
「リヴェリア、あんたも随分ととしよりくさいことを言うようになったねぇ。あんたがレベル1の頃が懐かしいよ。あの頃は今よりも気難しいお堅いエルフって感じだったけどね」
そもそもミア母ちゃんは歳いくつにゃ!とクロエがいいかけたがミアのひとにらみで口をつぐんだ。
(余計なことは考えないようにするにゃ......ぶっ飛ばされるにゃ)
そもそもレベルの高い者ほど魂が肉体(器)に影響を及ぼし若さを保てるようになる。なので見た目と実際の年齢に違いがある場合が多い。種族によっても寿命がちがうのでそのあたりも考えると年齢とは何かわからなくなる。
そのまま10階層ほど上がったところでアイズもまともに動けるようになりさらに先を急いだ。6人で18階層まで走り抜けさすがにリュー、クロエ、ルノアの三人が限界を迎えミアが3人の面倒を見る為残りリヴェリアとアイズは素材を届ける為に地上を目指した。
ぜぇぜぇと荒い息をつく3人に対してミアは涼しい顔をしている。
「ミア母さん、ひとつ質問をしてもいいでしょうか?」
「ん?なんだい?」
「ミア母さんのレベルは......いえ。今のオラリオ最強である猛者と戦ったらどちらが勝ちますか?」
ミアは大笑いしてこう答えた。あたしがあのひよっこに負けると思うのかい、と......
これが英雄と呼ばれた鬼神のレベルだ.
18階層でミア達と別れたアイズとリヴェリアは全速力で地上を目指した。
「アイズ、体はもういいのか?」
中層に出現するミノタウルスやヘルハウンドをなぎ倒しながら走るアイズに向かって声をかけた。
「大丈夫、ありがとう。リヴェリア」
「いやお前を助けるのは当たり前だ。気にするな」
アイズは首を振った。
「違うよ、私の心の炎の事を心配してくれてたよね?」
これまでの道中、万が一にもベルを心配するあまり心の炎が黒く燃え盛らないように努めて明るい話題を振っていたことはアイズにもわかっていた。ミアも同様だ。
「私少しだけどわかった気がするの。負の感情に反発するだけじゃいけないんだって。黒い炎も白い炎も私の気持ち。どちらも私なんだって」
「そうか......では更に速度をあげよう。私たちの大事な家族が待っている」
うん!笑顔で答えたアイズはリヴェリアと共に先を急いだ。
中層、上層とまたたくまに駆け抜けギルドを風のように走り抜けベルの待つ治療院へと到着した。
治療院に集まる団員達が声をあげる!
「「「「二人が帰ってきたぞ!」」」」
「リヴェリア!アイズたん!おかえりぃ。とりあえず話は後や。急いで調合をすすめな」
ロキの顔に焦りの色が見て取れる。
「ロキ!ベルは!?」
「二人ともすぐに来てや、調合してる皆、これで最後や。大至急調合を頼むわ!」
「後は世界樹の滴と生命の泉の花を調合して今まで作成した物に合わせるだけです。調合の比率はかなりシビアな物ですが必ず成功させます」
アイズとリヴェリアは他の団員達やフィン、ガレス、ティオネと軽く挨拶をかわしベルのいる部屋へと進んだ。
部屋の前にはベートが壁に背を預けて立っている。アイズ達が来たことを確認するとくいっと指で扉を指した。
「「ベル!!」」
無事.....ではない。生命力の枯渇により艶とハリのあるきれいな肌は老人のように皺が刻まれている。
「ッッ大丈夫。大丈夫だから。もうすぐ薬もできる」
「ああ。ティオナ。お前も少し休んで来い」
「うん......」
ティオナも元気がない。どんどん生気がなくなっていくのを目の当たりにしていた彼女は一番つらい思いをしていた。手を握っている相手がどんどん萎れていく、自分は何もできない。いくらいつも天真爛漫なティオナであっても精神的にかなりきているはずだ。
ドゴンッッ
ティオナが部屋を出てからしばらくして遠くで大きな破壊音が聞こえた。
(ベルをあんな姿にしたやつ......絶対殺す)
拳を握りしめ体から蒸気を立ち上らせている。
「ティオナ!」
「......何?ティオネ?」
「ここにいる皆、あんたと同じ気持ちよ」
ティオネの後ろ、治療院の前には旗を掲げ一糸乱れることなく整列するロキファミリアの面々。各々が素材を集め終わった後、黄昏の館で待機という命令に従っていたが、一人、また一人と治療院へと来て今では全員が並んでいる。誰一人としてその場を離れようとはしない。
「......うん!私も並ぶ!」
そういってティオネは最前列の姉の隣に並んだ。
アスフィーは治療院の中で薬の精製を急いでいた。
生命の泉の花一枚一枚からエキスを抽出しスポイトでほんのわずかづつ世界樹の滴に垂らす。調合書に書いてある通りなら僅かに色が変わるようだ。世界樹の滴は薄い緑色をしている、その緑色がほんのわずかに濃くなる瞬間がある。そのタイミングを逃すと調合は失敗する......
アスフィーは精神を集中させそのほんのわずかな違いを見定め調合を行う。
「.....今!」
色が変わった瞬間を見極め調合の完了した液体と今まで皆で調合していた粉末を混ぜ合わせる。二つが混ぜ合わさった瞬間に目を瞑るほど青く光り輝き液体はスライム状に固まった。
「できました!すぐにこれを飲ませてください!......えーと、っっ!」
アスフィーがぱらぱらと調合書をめくりばさっと本を取り落した。
「この薬は精霊の血を引く者が飲ませなくてはならない......前回はアリア・ヴァレンシュタインがダグラス・クラネルに飲ませたと......」
「それなら大丈夫や!アスフィおおきにな!」
困惑するアスフィーからスライム状になった薬を受け取ると走ってベルの治療室へと走る。
「アイズたん!これをベルに飲ませるんや!アイズたんが飲ませんと効果がでないらしいんや!」
ベルの元でリヴェリアと共に手を握っていたアイズはロキから薬を受け取るとベルに飲ませようとした。しかし、すでにベルは自身の力で飲み込むことができないほど衰弱していた。更に液体状ではなくスライム状の為口を開けて流し込もうにも流れ込まない......
「ベル!飲んで!お願い!、お願いだよぉ......」
「ベル!おまえはまだ死ぬわけにはいかないだろう!おまえは英雄になるんだろう!くっっなんとかして体内に取り込ませなければ」
こうなったら無理やりにでも口の中にねじ入れる.....リヴェリアがアイズにそう言おうとした瞬間、アイズははっとなり口にスライム状の薬を含んでもぐもぐと口を動かした。
「アイズたん!?」
「お、おいアイズ!?おまえ何を!?」
ロキとリヴェリアは唐突なアイズの行動をスローモーションのように眺めていた......
アイズはベルの頬に手を添え少し顎をあげるとそのまま唇を合わせた。アイズの口でスライムを砕きそれをベルの口の中へと流し込む。少しもこぼさないように舌を使いベルの口内にに薬が残ってしまわないように喉の奥まで流し込んだ。
ゴクッッ
ベルの体内に薬が取り込まれた瞬間に部屋の中全てを照らすほどの光と共に魔法陣が現れその文様がベルの体に巻きついていく。必死に唇を合わせ続けるアイズの体も同様に魔法陣の文様が巻き付いていた。
時間にしておそらく1分ほどだろうか......次第に光が体に吸収されていきベルの体に生気が満ちていくのが感じられる。皺が刻まれた肌は前以上につやつやと張りを持ち青白かった頬に朱がさす......
ふぅふぅという息遣いだけが聞こえるその様子をロキとリヴェリアはしばらく呆然と眺めていたが、はっと我に返りアイズの肩をたたいた。
「お、おいアイズ?」
「アイズたん、そろそろ離してやらんとベルが別の意味で死んでまうで!いやー衝撃映像やったわ。大丈夫やうちら3人の秘密にしといたるから」
ロキの神の目には見えていた。体内から溢れでそうになるほどの生命力の増大。体のすみずみまでそれが行き渡り魂が更に光り輝くのを......
アイズが唇をはなすとほぼ同時にベルがうっすらと目をあける。
「ア、アイズ、さん?僕、生きて......?」
「ベルーーーーーーーー!!よかったぁ......」
アイズがベルに抱きつき声をあげて泣いている、リヴェリアはふぅーっっと大きく息を吐きだし椅子に腰かけた。
ベルは状況が理解できずきょろきょろと周囲を見渡して首をかしげている......ほのかに唇に残る感触に更に混乱する。
「うおっしゃーー!!ベルよう耐えたなぁ!さすがウチの子やわ。おっしゃ、ウチ外にいる皆に報告してくるわ!」
ロキも涙をぬぐいながらベルの頭をわしゃわしゃとなで勢いよく治療院の外へ走り出した!扉の外にいたベートも中の声を聞くとともにずるずると壁に背をつけたまま座り込み天井を見上げた......
バタバタバタバタ、
治療院があわただしくなり団員達にも緊張がはしる。中に入ろうかと思っていたところで治療院の扉が開かれた。ロキが神妙な顔つきのまま整列する団員達の目の前まで歩いていきニパっと笑い大きく手で丸を作った。
瞬間
「「「「うぉーーーーーーーーー!!!」」」」
旗を掲げ雄叫びをあげ手を叩きあい涙する......何人かはロキの静止もきかず治療院の中へと突入していった
【ベル・クラネル復活!!】
いつも読んでくださっている皆さんありがとうございます<m(__)m>
なんとか更新できました。よかったです。
今のこの世界的な問題のなか私にできることなんてほぼありません。こうして読んでくださっている皆さんの為に続きを書くことくらいしかできませんが楽しんでいただけたらと思います。
私自身経済的にはダメージを受けていますが頑張ります!
今回のお話の中で・・・のシーンをもっと詳しくという感想が来そうなきがしますが、生々しい書き方をしますとこのお話を読んでいる皆さんの年齢層・・・・・・はわかりませんがまずいきがするのでこのぐらいの表現に留めておきます。兎魂が暴走する危険性もありますのでご了承ください。
次回もぼちぼち書いていきますのでまた読んでいただいたらと思います。
PS 私の目標は何年かかるかわかりませんがこの剣姫と白兎の物語を漫画版に書き直して自分で読むことです!笑