剣姫と白兎の物語   作:兎魂

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ベルの意識が戻り治療院に歓声があがった


52 白兎のお礼

自分は死んだとばかり思っていたベルは目の前の状況に混乱していた。

ぐりぐりとベルの胸に頭を押し当て泣くアイズの頭を優しく撫でてはいるものの自分の置かれている状況がわからなかった。

 

「ベルよく頑張ったな。お前は闇派閥から仲間を護り抜いた。そして死の淵から我々の元に返ってきた......本当に......本当によくやったな」

 

リヴェリアは目を赤くしたままベルに向けてほほ笑んだ。ベルは闇派閥という言葉にはっとした。

 

「僕......そうだ!他の皆さんは無事ですか!?あの後どうなったんですか!?」

 

「他の連中なら全員無事で別の部屋だ。お前たちを襲っていた闇派閥は全員ぶっとばした。一人逃がしちまったがまあ確保したやつらから情報は聞く。お前が仲間を護ったんだ、その.....なんだ......よくやったな」

 

部屋の中の声を聞き、いてもたってもいられなくなったのか、ベートが扉をあけ部屋の中へと入る。尻尾をぱたぱたと動かし、頭をかきながら少し視線をそらした。

 

「ベートさん!そうですか、よかった......。でもアイズさんや皆さんがこなかったら今頃僕は.....]

 

もし予定通り遠征が行われていたら、もし異変に気が付かなかったら、もしベルがほんの少しでも諦めていたら、今この場で皆が笑い合うことはなかっただろう。

 

「馬鹿野郎!ベル!おまえが折れずに戦ったからこそ俺たちは間に合ったんだ、おまえの心が負けてたら全員死んでたんだ。お前はよくやった!」

 

そういうとベートはベルの前に拳を突き出し彼にしては珍しくわずかに笑った。

 

「俺も約束通りお前の代わりに家族を護ってきてやったぜ」

 

「......はい!」

 

コツンッ

 

拳を合わせ笑いあう。

 

「ベルー!!」

 

だだだだだだっっ

 

扉を壊さんばかりにやってくるのはもちろんティオナだ。ベートを吹き飛ばしアイズが半分独占しているベルの胸へと飛び込む。

 

「よかったぁ、もう体痛いところない?」

 

自分もといわんばかりにぐりぐりと頭をおしつける。そんなティオナの頭も優しくなでながらベルはもう大丈夫ですとほほ笑んだ。

 

「痛ってえなこのバカゾネスが!でけえ声出してんじゃねえよ!」

 

油断していたところにティオナの突進をくらったベートは頭を壁に強打して本気で痛そうだ。頭をさすりながら文句を言う......

 

「なによ、あたし知ってるんだから。ベルが死にそうになってるとき泣いてたくせにーー!」

 

ほぅ......とその場にいたリヴェリアがありえないという顔でベートを凝視する......その視線を感じてか顔を赤くしながらプルプルと震えた。

 

「てってめえ。なに言ってやがる」

 

ベルの胸から頭をはなし振り向いてベートに向かって文句をいったティオナの頬を片手で鷲掴みにする。

 

「いったぁ、このぉ!」

 

頬を鷲掴みにされながらベートのピンとたった耳を握りしめぎゃぎゃー騒ぐ二人の頭上に拳がふりおとされる。

 

ぐぉぉぉぉ......

 

「うるさい!テンションがあがる気持ちはわかるけど少し静かにしなさい!」

 

狭い室内にさらにティオネ、フィン、ガレスが入室し暑苦しいことこの上ない。

 

「ベル、よく頑張ったね。ロキから状況の報告は受けている。推定レベル3のミノタウロスの撃破。闇派閥から仲間を守り抜いた事は神々も認める偉業だ。詳しいことは後日君の方からまた報告してほしい。今はゆっくり休んでくれ」

 

差し出されたフィンの手を照れくさそうに握る。

 

「儂も聞いた時は耳を疑ったわい、4人いたとしてもレベル3のミノタウロスに勝つのは至難。リリーの報告では最終的にはほぼ単身で向かい合ったことになる......アイズといいベルといい無茶をするわい」

 

レベル1がレベル3を単身で撃破できる可能性はおそらく3%未満だろう。その場の状況、スキル、魔法、弱点である魔石の部位によって前後するだろうがおそらくそのぐらいだろう。勝てたのは奇跡といっても過言ではない。どうやってベルがミノタウロスを倒したのかは気になるところだったがが後日改めて確認することとした。

 

遅れてやってきたアミッドにベルの体を検査してもらいとりあえず今日一日様子を見て入院し、問題がなければ明日退院ということになった。おそらくリリー達も同じく明日退院になるだろう。フィン、ガレス、リヴェリアはベルの無事も確認したからとリリー達のいる部屋によってから外で騒いでいる他の団員達を連れて黄昏の館へと帰るといい部屋を出て行った。

 

「そういうことだ。今日は俺がここに泊まるからお前らは帰れ」

 

腕組みをしながらさも当然だとばかりにいうベートのその言葉にアイズとティオナの動きがぴたりと止まった。

 

「んと、べーとさん。ここは私にまかせてください。ベートさんはエルフの里まで行って疲れてると思うので」

 

ベル、もう少し横に......そういいながら毛布をめくりごそごそとその中へと入っていこうとする。

 

「ちょっっアイズさん!!同じベットで寝るんですか!?さすがにそれはまずいかと......くっっくすぐったいですよ」

 

「んと、ベル分を補給しなきゃいけないから?それに私さっきベルに......」

 

頬を染めまたぐりぐりとベルの胸に頭をあてる。

 

「いやいやいや、なんですかベル分って......」

 

ベル分とは癒し成分、ベルの近くにいないと補給できないのが難点だが補給することによる効果は絶大である......ちなみに中毒性があるので適度の補給が望ましい......過剰に摂取すると魅了状態になるという報告も......

 

「あたしもここに泊まるけどベート一緒に寝るつもりなの?ベートのすけべー!」

 

真顔でやれやれといった感じでふぅーと大きなため息を吐くベート。

 

「安心しろ、お前に欲情するなんてことは天地がひっくりかえってもねえよ」

 

あたしだってまだ成長期だもんと胸をおさえベーっと舌を出し挑発する。

 

「ベートさん、女性にそういうことをいうのは......その......」

 

ベートはベルの方を向きまた大きなため息をついた。

 

「わかった、ベルにめんじて言い直してやる。俺は絶壁趣味じゃねえ!」

 

その言葉を引き金につかみかかりバタバタと暴れる二人の頭上にまたもや鉄拳が......先ほどより鈍い音から察するに相当痛いだろう。

ぐぁぁぁぁと頭を押さえうずくまる二人はボキボキと骨を鳴らすティオネを見上げるがその般若のような顔を見て視線をそらした。

 

「うるせえぇ次騒いだら外に投げ飛ばす......私はアミッドのところに行ってくるからそれまで待ってなさい。リリー達にも一応今日も護衛をつける予定なんだから、大部屋半分に仕切ってそこでみんなで寝ればいいでしょ。交代で外の見張りするからそのつもりで」

 

扉をあけ外に出て行こうとするティオネにベートが声をかけた。

 

「わあったよ、俺が外を見張る。まあこれだけ第一級冒険者がいるところに来る馬鹿なやつはいねえだろうがな」

 

ベルに治ったら飯を作れと言い残し窓から外に出て治療院の屋根の上にのぼった。

夜目のきく狼人であるベートが外を見張るのが適任との判断で寝ずの番をするつもりのようだ。

 

「あの,僕もう体大丈夫なんで別の部屋にぃいひゃい、いひゃいですティオネさん!」

 

ぐにっとベルの頬を引っ張り顔を近づける。

 

「さんざん心配かけたんだから今日はおとなしく私たちのいうことを聞きなさい!」

 

世話のかかる弟ねと笑い、引っ張った頬を優しくなでるとティオネは部屋を出て行った。しばらくすると部屋の用意ができたとティオネとアミッドが戻ってきて別の部屋へと通された。

 

ティオネは他の3人を迎えに行くといい部屋の前で別れ足早にリリー達の元へ。

 

大勢の患者が一度に来たとき用にこの治療院にも大部屋がある。ベッドを繋げて人数分用意してひとまず腰かけた。

 

「ベル、動いて大丈夫?」

 

「はい!大丈夫です。むしろ前より体が軽いような気がするんですが」

 

ベルの体の変化は見た目でわかることといえば白い髪の中にわずかに金色の髪が混じっていることぐらいだろうか......

 

コンコン、控えめのノックの後ティオネと共に回復したリリー、刹那、ルナの3人が大部屋へと入る。

 

「「「ベル!」」」

 

3人が部屋に入るなり元気な様子のベルを発見し駆け寄ろうとするが隣のアイズをみて青ざめた。アイズに遠征前言われたベルの事をお願いね、という言葉を思いだしているのだろう。

 

「「「あ、あのアイズさん、すみませんでした、アイズさんにベルの事を頼まれていたのにこんなことになってしまって......」」」

 

頭をさげ謝罪する3人に向かいアイズはゆっくりと近づいていった。

 

なんていわれるんだろう......3人は体を硬直させ僅かに震える。

 

「3人のことは聞いてるよ......リリー、刹那、ルナ。よく頑張ったね」

 

アイズは3人の頭を一人づつゆっくりと撫でた。

 

「で、でもウチらの力が足りなくて......ベルが......」

 

今回は異常事態だ。上層でミノタウロスと遭遇するなどということは普通ならありえない。そんな中皆が生き残る為全力で行動したから生きられたのだ。もし4人のうち誰かが死んでしまったとしても誰もせめることはできない、それくらい厳しい戦いだった......

 

「私にも経験がある。自分の力不足で家族が傷つくのはすごくつらいこと。だから強くなればいい。うまくいえなけど、私はそうやって生きてきたから」

 

アイズはぽろぽろと涙を流す3人を抱きしめた。

 

「皆さん無事でよかったです。皆さんだってキラーアントやミノタウロスを倒すために命がけで戦ってくれたじゃないですか。僕も僕にできることをしただけです......それに僕は家族を守る為なら......」

 

「だめよ、死んでもいいなんて考えは。残された家族がどれほど辛いかわかるでしょう。強くなって敵を倒して仲間も護ってみせなさい!あなたは英雄になるんんでしょ!」

 

「そうだよベル!3人ももっと強くなろ!フィンがいってたけどこれからあたしたちももっと皆とダンジョンに潜ったり訓練したりするからこれからも誰も死なないように家族皆で強くなろ!」

 

ロキファミリア、第一級冒険者が多く在籍するオラリオ最強派閥の一つ。

年齢、性別、レベルも関係なく皆が志高く家族をもっとも大事にするファミリア。

これからもこのファミリアは未到達領域を目指して冒険していくだろう......

 

「アイズさん!僕明日からまた訓練したいんですがまた相手をしていただけますか?」

 

にぱっと笑うベルに対してアイズ困った顔をしながら答えた。

 

「ダメ、リヴェリアの許可が出るまでベルは訓練禁止っていわれてる。リヴェリアからベルの予定渡されてるから読むね?」

 

リヴェリアママの予定表

 

・4人は2週間は訓練禁止、以後随時体調確認を行い問題なしと判断してから訓練再開

 

・その間今回世話になった人たちに報酬の支払い、お礼

 

・一か月後にあるオラリオでのお祭りに参加

 

「他にもいろいろと書いてあるけどとりあえずはこんなところ、かな」

 

今回の件で多方面に借りを作ったためそれの清算をしなければならない。特に厄介なことを要求してきそうなのはフレイヤだろう。カジノでの件、それにロキファミリア混乱の仲他のファミリアへの牽制、ソーマファミリアの工場の件など多くの借りができてしまった。その辺はロキ含め幹部達と共に対応することになるだろう......

 

 




読んでくださってる皆様ありがとうございます。

次回から今回の件でお世話になった皆にお礼をしに行く予定です。

そして一か月後に控えているお祭り、そこで必ず一回はイラスト入ります。
なぜならすでに用意してあるので。いままでのイラストの中で一番気に入っているイラストです!まだ先ですが楽しみにしていてください。もえーと叫ぶこと間違いなしです(ー_ー)!!

さあ、フレイヤ様はベル君にどんな要求をするのでしょうか......次回もお楽しみに

ダンメモですが今は豊穣の主人というファミリアにお世話になっています<m(__)m>
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