悲しみなのか、不安なのか、それとも怒りなのか......二人の中に渦巻く感情はどういったものなのか。それは二人にもわからずただ混乱していた......暗がりで無言で手を繋いでいるとそこに一筋の光が手を差し伸べる。
「おいで、僕のホームに」
一瞬本当に光がさしたかのような錯覚を二人は起こす。涙が頬を伝うのをためらわず手をとった。
神ヘスティアに手を引かれ人目をさけるようにして教会へ。以前ベルや刹那ヴェルフ、神ヘファイストスがメンテナンスしたため以前の状態よりは大分きれいになっている。しかし、ヘスティアのいる廃教会にはどうやら魔石で作ったライトというものはないらしい。ランプに火を灯しぼうっと周囲を照らした。
「ちょっと待ってておくれ」
二人を教会の奥にあるヘスティアの私室へと案内し用意した椅子に座らせる。ふわりとあたたかい毛布を二人に手渡すのも忘れていない。他の部屋から椅子を持ってきたようで今椅子は全部で4つだ。丸いテーブルを囲うよう二人は座った。 もう一つは後である人が座る予定とのことだ。
奥からトレイの上に東方で使われている湯呑というものを4つ乗せて魔石ポットに何やら香ばしい香りのするお茶を入れたヘスティアがやってくる。
「まあ二人とも、まずはこれでも飲んで心と体を温めておくれ」
二人の前に置かれた湯呑に魔石ポットの中身が注がれる。香る匂い......じゃが丸君の香りだ。僕の作ったじゃが丸茶さ!と親指をたてるヘスティアに二人は少し笑顔になった。
「うんうん、二人はその笑顔の方がいい僕は天界でもこの地上でも子供たちの味方でいたいからね」
二人の顔を見て満足そうに腕組みをするとうんうんとうなずいた。
「それで君たちはなんであんなところにいたんだい?」
もちろん僕は無理に聞こうとは思わない、でも君たちの魂が揺らいでいるのが僕には見えるんだ。ヘスティアはそういうと慈愛に満ちた目で二人を見た。
二人は口を開こうとするが今の自分たちの感情をどう表せばいいかわからない......
「ふむふむ、君たちの魂の揺らぎが今の君たちの感情を僕に教えてくれているようだよ」
ベルは唯一の肉親だと思っていた祖父が神ゼウスで、自分の命は思い人であるアイズの弟になるはずだった魂を神の力でアイズの父親の肉体を器にして再構築された存在。
祖父は僕を愛してくれていたのだろうか......それとも......そしてアイズに対する気持ちは本当に自分だけのものであるのか。度々内から溢れる感情は自身のものなのか。考えれば考えるほどズブズブと沼に沈んでいくようだ。
アイズも最初に感じた懐かしい感じは......私の英雄となるといってくれたベルの気持ちは.....一緒にここまで歩いてきたのに気持ちの整理もつかず、ベルになんて声をかけたらいいかもわからず心には渦がまいていた。
深く暗い水の底に沈んでいってしまいそうな二人にヘスティアは声をかける。
「それじゃあ僕が少しだけ君たちにお話をしてあげよう。昔々の話さ!」
にっと笑いこのことは内緒だぜっと釘をさす。
「ベル君、アイズ君、君たちにとって、いや今の時代を生きる君たちにとって英雄とは一言でなんだい?」
少しだけ悩んだ後「希望の光」と二人は言った。
「うん、僕達神がこの世界に降りてきてからの英雄とは皆の希望の光になるような存在だと僕も思う」
うんうんヘスティアは頷いた。
「ただ、古代の時代の英雄とは今の時代の英雄とは大きくかけ離れているといえるんだ。僕達神がくる前の時代での英雄とは【犠牲】または【人柱】のようなものだったんだ」
もちろん希望の光という側面もあったけどね、と静かに付け足した。
神達がくる前の時代、大穴から溢れる怪物たち、その怪物たちに対抗して多くの血が流れた。その中で少しでも力のある者、戦いで成果をあげたものは英雄扱いされた。最初はよかったかもしれない、でも、英雄といえど人間だ。ケガもするし病気にもなる。
今の時代のように満足に効く薬もない、腕のいい鍛冶師はいたかもしれないけどそれでも神の恩恵を受けて作った武器、それに素材の差は埋めることはできない。
戦う理由はそれぞれあったはずだ。
戦いで己の力の証明をしたい者
愛する家族や恋人を護るために戦う者
生きるために戦う者
英雄と呼ばれた子供達は戦った、戦って戦って戦った......そして散っていった。
戦わない者、戦えない者は英雄にすがった。英雄ならできると、そして負ければ英雄なのにと責められ死ぬまで戦わされた。負けた英雄の家族は後ろ指をさされ都市や村から消えて行った、いつか平和な時がくると信じて戦い続けていたんだと思う。憎しみの心は自分の中に深く深く閉じ込めて。
もう戦いたくない、でも戦わなければ家族が......あの始まりの英雄といわれた男でさえ最後には無残な死をとげ黒い霧に飲まれたんだ。
「僕達神はその時何をしてたのかって?そう、僕達も下界の子供たちの為にすぐにでもその状況をなんとかしようとしていたのさ。でも僕達もその時いろいろと厄介なことになっていてね」
ずずっと湯呑の中身を飲み干すとヘスティアは言った。
「下界へ降り子供達を救うというゼウス派の神々と下界に手を出し子供たちの負の感情を煽りその様子をながめるクロノス派の神々による大きな戦争があったのさ」
神々の世界の話を詳しくするのは禁忌にふれる行為だからあまり多くは語れないけどね......
ヘスティアの話は続く......
お久しぶりです、皆さんこんばんは、こんにちは。
いつも読んでくださりありがとうございます。メッセージなどもいただきうれしい限りです。ちゃんと生存していますのでご安心ください。
今回はすこし短いですがお話を進めました。
ちなみにこの物語は当然フィクションで出てくる神々の実際の神話などと異なる部分があるのはご了承ください。
私、もともと読むのが好きな人間なので神話とか詳しく読み始めたらおそらく更新が年単位で遅れるきがするので<m(__)m>
次回はヘスティア様のお話の続きです。別件で挿絵の方も進める予定ですのでご期待ください。
ps表紙とかつくりたいなとか思ってます