剣姫と白兎の物語   作:兎魂

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住み慣れた村を出て数日

ついにベルは迷宮都市オラリオに到着する


オラリオ到着
8 豊穣の女主人


迷宮都市オラリオ。そこには多くの冒険者が集まりダンジョン攻略やその冒険者相手の商売が盛んな町である。

多くの人間が集まるということは善人ばかりではなくもちろん悪人も多く存在する。 ましては自分に不釣り合いな装備を持っている田舎から来たであろう少年をほっておく悪人はいない...

 

(ここがオラリオかぁーー大きい門だなーー)

 

ベルが入り口である門を見上げて感想をもらす。警備の兵士にオラリオにきた目的を聞かれ大きな声で元気いっぱいに答えるベル。

 

「冒険者になる為です!」

 

兵士はベルの元気のよさに若干めんくらいながらも敬礼をし門を通してくれる。

 

もの珍しそうにきょろきょろまわりを見渡しながらメインストリートを歩くベル。

 

(すごいなーー僕がいた村より何倍もおおきいや!)

 

そんな事を考えながら歩いていると冒険者風の男2人が声をかけてくる。見るからにあやしい雰囲気だがベルは純粋すぎて人を疑うことを知らない。

 

「君オラリオは初めてかい?よかったら俺たちが町を案内してあげるけどどうする?」

 

(このガキ見るからに田舎者のくせにヘファイストスのロゴ入りの武器もってやがる...様子をみて奪ってやるか)

 

「本当ですか!?ありがとうございます!今日きたばかりで何もわからなくて困っていたんです。あの、冒険者になるにはどうしたらいいでしょうか?」

 

「ああ、それならまずはあの一番高い建物バベルっていうんだけどあそこにいけばいいよ」

 

「ありがとうございま...ぐっっ」

 

ベルがお礼を言おうとした瞬間男のけりが腹に炸裂しもう一人の男に双剣を奪われてしまう。笑いながら逃げる男たちを必死で追いかけようとするベル。

 

「ごほっ 返せそれはおじいちゃんにもらった大切なものなんだ...」

 

「ばーーか おまえなんかがこんな武器もっててもしょうがねえだろ。俺たちが有効活用してやるよ」

 

男たちが下種な笑いを浮かべながら走り去ろうとするが...

 

「ぐぁ」 「いてぇ」

 

どこからともなくコインが飛んできて男達二人に当たり双剣を落としてしまう。

 

「痛えな、なにしやがる。どこのどいつだ」

 

コインをぶつけてきたであろう人物に詰め寄ろうとする男達

 

「吠えるな」

 

そこに立っていたのは峰麗しいエルフの女性とヒューマンの女性だ。ヒューマンの女性がベルに近づいてきて介抱してくれる。

 

「大丈夫ですか?」

 

「だっっっ大丈夫です。あああありがとうございます」

 

ベルは内心なさけないと思いつつも目の前の美少女に話しかけられて顔を真っ赤にしてドギマギしてしまう。

 

「ぐああ」

 

男たちが悲鳴をあげる

 

「失せなさい。これ以上私を怒らせない方がいい。私はいつもやりすぎてしまう」

 

エルフの女性からすさまじい殺気が放たれる。

 

「ちっおぼえてろおおおー」

 

男たちはボロボロになりながら逃げて行った。エルフの女性は双剣を拾い上げるとベルの元にやってくる。

 

(この双剣は...かなりの業物...なんでこんな少年が...)

 

「これはあなたのものですよね?」

 

「ああああありがとうございます!おじいちゃんにもらった大事な剣なんです」

 

そういうとベルはエルフの女性の手を取った。

 

「いえ、お気になさらず」

 

瞬間ヒューマンの女性は驚愕した。

 

(リューが手を握られたのに...普通に接している...)

 

(なぜだろう...この少年に手を握られたはずなのに怒りが湧いてこない。私の手を握ったのはこの少年以外に2人だけ...シルと私の親友のみなのに...)

 

「あのそろそろ手を放していただけると...」

 

エルフの女性がかすかに頬を染める

 

「ああすすすみません」

 

ベルはあわてて手をはなした。

 

「えと、自己紹介がまだでした。僕ベル クラネルと申します。冒険者になるためにオラリオに来ました。助けていただいて本当にありがとうございました」

 

「私はシル フローヴァです ベルさんとお呼びしても?」

 

こくこくベルがうなずく

 

「リュー リオンです。この町はああいった物騒な輩も多い気を付けた方がいいでしょう。クラネルさんはこれからどうするおつもりですか?」

 

「ええと...それがどうすればいいか全然わからなくて」

 

シルがそれを聞いて提案を出す。

 

「それじゃあとりあえずお店にきませんか?おいしい料理が自慢な店なんです。...ちょっとお高いですが」

 

ぺろっと舌をだしながらそういうシルがかわいすぎてベルはただうなずくだけで返事ができなかった。

 

「それでは行きましょうか。クラネルさん」

 

そういうと買い物袋を持ち直して歩き出す。

 

「あ...助けてもらったお礼ではないですが僕がもちますよ!」

 

「いえ私は大丈夫ですのでシルの荷物を持ってあげてください」

 

ベルはリューのいうとおりにシルの荷物を持って豊穣の女主人まで歩き出す。

 

「ここが私たちのお店です」

 

ベルが大きな店を見上げて若干ひきつった顔をする

 

(お金たりるかな...)

 

そんな様子をみたシルが大丈夫ですからと目でうったえてベルの手をとり店に入る。

 

「ただいま戻りました。ミア母さんはいますか?」

 

「やっと帰ってきたにゃ。二人ともおそいにゃ...にゃ!シルとリューが男連れてきたにゃ!」

 

「今日オラリオに来たばかりのようで何もわからないようなのでとりあえず連れてきちゃいました。白くて兎みたいでかわいいでしょ!」

 

シルは満面の笑みでそう答える

 

「すみませんクラネルさん。騒がしくて...」

 

「いえいえいえお気になさらず。それにしても大きなお店ですねーー」

 

そんな話をしていると奥からミア母さんと呼ばれた大柄な女性がでてきた。

 

「うるさいねぇ。何を騒いでいr..団長!」

 

ベルの姿をみた瞬間ミアはベルにかけよりその肩をつかむ

 

「イタッ」

 

ミアの体は小柄なベルよりはるかに大きく力も強かった。何かに興奮しているようで周りがみえていない

そんないつもとは違う姿に周りの店員は動揺している。

 

「ミア母さん。クラネルさんが痛がっています。放してあげてください」

 

ミアの腕に手をおいて諭すように話しかける。ミアは落ち着いたようでベルの肩から手をはなした。

 

「ベルさんミア母さんとお知り合いなんですか?」

 

「いえ...僕の住んでいた村はここから大分離れていますし村から離れたのは今回が初めてなので...」

 

ベルは首を横にふって答えた。

 

(このぼうず一瞬団長と見間違えちまったけどよくよくみたら全然違うね。髪の色と目の色がそっくりなだけでひ弱そうだしねぇ...しかし今クラネルといっていたようだけど...詳しく話を聞いた方がよさそうだね)

 

「すまないねぼうす。ちょっと知り合いににていたもんでつい興奮しちまったよ。で?このぼうずはどうしたんだい?」

 

ミアはシルとリューに問いかけた。

二人は先ほどあった出来事を簡潔に説明した。

 

「なるほどねぇ。その剣ってのは?」

 

これです。とベルがミアに差し出した。ミアはその剣を見た瞬間目を見開いた。

 

(これは団長が愛用していた剣...神聖文字(ヒエログリフ)も刻まれているし間違いない。なぜこの剣をこんなぼうずが...)

 

「たしかに業物だね。あんたには不釣り合いに見える。これはどこで手に入れたんだい?というかそろそろ自己紹介ぐらいしな!」

 

ベルはミアの態度に圧倒されていて自己紹介を忘れていた。

 

「ししし失礼しました。ベル クラネルといいます。ここから北に100キロほどいったところの小さな村から来ました。この剣は冒険者になる為に村を出るときにおじいちゃんにお守りにといただきました」

 

ミアは一瞬神妙な顔をした。

 

(北に100キロ...あそこは団長たちが...。仲間たちが散った場所だ。そしてクラネルという家名...そしてこの双剣...なるほどね。そしておじいちゃんか)

 

「ぼうずのおじいいちゃんってのはどんな人物だったんだい?」

 

「おじいちゃんはええっと...すごく簡単にいうと豪快でちょっと女の人が好きというか...」

 

(やはりゼウスだ...まあなんとなく理解したよ)

 

「そうかい。とりあえずこれからどうするか決まるまでこの店で働く気はないかい?」

 

「「「ミア母さん(ちゃん!?)」」」

 

「ちょうど1週間後くらいにロキファミリアがうちの店を予約しているからその日までまてば私からロキ様にベルのこと頼んでみるよ。どうせ冒険者になるならどこかのファミリアに入らないといけないんだし。まあぼうずがロキ様の目に留まれらなかったらそのままこの店にいてまた他の主神を探せばいいさ」

 

(たしかゼウスとロキ様は旧知の間柄だったはず。あたしが気が付いたんだからロキ様ならすぐにこの子がどういう人物かわかるだろう)

 

 

「ロキファミリアってあのロキファミリアですか!?オラリオの最強派閥のひとつじゃないですか!僕なんて無理ですよ...全然弱いですし...」

 

ベルは一瞬テンションが上がったものの自分に自信のないベルはすぐに落ち込んでしまう。

 

「ぼうず。あたしからみるとおまえは才能がある、それに弱いことは悪いことじゃない。悪いのは弱いままでいることさ」

 

ミアはベルの背中をバシッとたたいて笑う。周りにいた店員たちもミアの気持ちを理解したのか口をはさむことはしなかった。

 

「ベルさん!もしダメでも私が懇意にしている神様がいらっしゃるのでその方に話してみますよ!」

 

ベルは皆の気遣いがうれしくて涙ぐみながらありがとうございますと一礼した。

 

「ミアさん!よろしくお願いします!」

 

「それじゃあまずは掃除の仕方からだ。あんたの部屋は今倉庫になっている部屋があるからそこからだ。リュー手伝ってやりな」

 

「ではクラネルさん。私についてきてください。ご案内します」

 

ベルさん私もっっっとシルがついていこうとしたがミアに遮られた。

 

「シルはこっちの掃除だ。あんまりあの子にちょっかいかけるんじゃないよ!」

 

シルはぺろっと舌をだしてパタパタ走って掃除に向かった。

 

 

こうしてベルがオラリオに来て一日目が終了する

 

 




読んでくださっている皆様ありがとうございます。

話が長くなりそうだったんで一度ここできりました。

次回はロキファミリアのみなさんとご対面します。

そしてちょっと前々から書きたかった内容があるので楽しみにしていてください。

ベートさんがきっとかわいそうなことになります。

萌える展開は次回に持ち越しです<m(__)m>

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