ぼくのなまえはしゅらいばー   作:ハロルド

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慟哭と懐疑

あのね、あのね、ぼくね、しゅらいばーっていうの。よかったらともだちになろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あぁ、夢か。ちっちゃい頃のアイツって、あんなに可愛かったかしら」

 

 

起床と同時に、今見た夢についてふと自問するも答えは出ない。小さい頃からずっと一緒にいるアイツ……昔は純粋で可愛かった、少々ばかし純粋過ぎるきらいはあったけど。その辺りは妹と似た感覚で接すればたいしたことなかったな。でも今やどちらも大分、いやかなりイッちゃってるが。

 

 

「お姉様お姉様お姉様おーねーえーさーまーぁーっ!!」

「……フラン。慎みが足りない、自制なさい」

 

 

いきなり床を突き破って現れた我が妹に呆れてしまう。常日頃から「常に優雅たれ」が家訓と言い聞かせようとも右から左、穴の空いたカップに紅茶を注ぐがごとき無駄な所業。ついには自分の能力で脳を破壊してしまったのではないかとすら疑いを持ってしまう。しかしそうと知りつつやめない時点で、私もなんだかんだ甘いという事だろうか。一応、血をわけた2人きりの家族なのだから。

 

 

「そんな事はどうでもいいのっ! またシュライバーが私のこと馬鹿にするから助けてよお姉様! 具体的にはぶちのめして!」

「言葉遣いが汚い。……ハァ。寝起きの運動にしては少しばかりキツイな、咲夜」

 

 

枕元に置いてある鈴を鳴らし、我が忠実なる従者を呼ぶ。耳に良いベルが鳴り終わるまでに、目の前に傅く女性が唐突に現れる。十六夜咲夜、私の所有物(メイド)だ。何時ものことながらベルの音を聞き逃さない耳聡さには舌を巻く。私は吸血鬼だから難無く行えるが、咲夜は人間でありながらそれを為す。おそらく人間の中でも最上位に位置する極上物なのだろう、と今まで幾度考えたことか。

 

 

そんな咲夜に朝食と着替えを要求する、とは言っても今は夜だが。告げると同時にその姿がブレ、次の瞬間にはカートに乗った出来立ての食事が現れる。時間を要しないこのスタイルは流石の一言だ、「時間を操る程度の能力」……良い拾い物だったな。

 

 

「おーいフラン~。出ておいでよ、もう虐めないからさ」

「来たっ! さ、お姉様どうぞ!」

 

 

部屋の外から聞こえてくるアイツの声に、部屋の外へ促すフラン。呆れを感じつつため息を漏らし扉へと向かい、すれ違い様にフランを横面から思い切り殴り付ける。これは罰だ。私の妹らしからぬ、私の妹にあるまじき態度を取った事による制裁。どうせ死にはしないのだからいくら傷付けようと問題はない。そこで気絶していなさい。大切だからといって甘やかした両親のような愚は冒さない。

 

 

「やぁ、シュライバー。良い夜ね」

「やぁやぁレミリア、良い夜だね。絶好の吸血鬼日和ってやつかい? それはそうとフランを知らないかな、さっきから探しているんだけど見つからなくてさ」

「知ってるように見えるなら、きっとそれは見当がついてるって事だろうな」

「あはははっ、それもそうだね。じゃ、僕はその先に用があるから通らせてもらうよ」

「寝起きの運動がてらに相手をしてやる。せいぜい全力で押し通れ」

「ーーあはっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こきこきと肩の骨を鳴らしながら部屋へと舞い戻る。ちらりと背後に目をやれば倒れ伏し、伸びたシュライバー。この館の最強である私に抗おうだなんて愚を冒すからこうなる、いい加減その身に染みてほしいものだ。動物ですら躾が効くというのに、何故シュライバーにはこうも学習能力がないのだろうか。やはり下手に知能を持った猿でしかないコイツにそんな進化を期待するのが間違い……か。

 

 

足元にあった二丁の拳銃。たしかルガーP08とモーゼルC96だったか、ここ幻想郷では見ることがないために珍しく覚えている。それを蹴り、シュライバーの腹に乗せる。まだ気力があるのならばそれで撃ってみせろ、と言外に意志を込めて。しかしやはり既に限界なのか、呻くばかりで身体は動かなさそうだ。

 

 

「ごふっ……はぁっ……ねぇ、レミリア……」

「あまり口を開くな、傷に障る。いくら治癒力が異常に高いとはいえ所詮は脆弱な人間に過ぎない、死んだらどうする?」

「はは……そう、だね……僕は、君たちみたいな化け物を、殺さなきゃ……げほっ!」

「昔から、その点だけは変わらないな。既に口が酸性を帯びつつあるが聞こう、何故そうも私たちを毛嫌いする?」

 

 

私が投げつけた問いに、口角を吊り上げ嗤うシュライバー。息も絶え絶えなその有様で誇らしげに口を開く。

 

 

 

 

 

ーーー黄金の獣こそ至高天。他は有象無象の畜生に過ぎないのさ

 

 

 

 

 

記憶がない筈のシュライバーの本能に刻み込まれているらしい「黄金の獣」。興味は沸くが、すぐにどうでもいいと思い直し朝食に手を付ける。無駄に時間を取られたせいか、すっかりと冷え切った朝食を一口。

 

 

「ーー冷めたブレッドは不味い」

 

 

扉の外から聞こえるムッター、ファッターと呼ぶ囁きは、すぐに消えた。

 




我が輩はハロルドである、続きはまだない
フランぶん殴るシーンが書きたかっただけ
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