そしてその他の魚も他の船の漁師が溜め息を吐くような高級魚が次々に競りに出されていき本日の漁獲高一位を獲得
漁港組合からの金一封が与えられる事になり予定外の臨時収入にホクホク顔の漁師達と共に網元と市場から金一封を与えられその金を握り漁港に隣接する市場に向かうことにした
勿論予定外の臨時ボーナスなのだから漁師達は妻子や恋人に贈る珊瑚や真珠の装飾品を市場で買い求めたので鬼百合と柳水もそれに倣い命や観月達への贈り物にしようと装飾品を見ていると
「姐さん方、人魚姫様達への贈り物なら俺達も一口のせてくださいよ?」
「俺達小遣い欲しくて手伝った訳じゃ無いですからねっ♪」
二人が苦笑いを浮かべてそう言うと
「だからと言って返すのもそれはそれで変な話しになるからそれならってとこか?」
鬼百合も笑ってそう返すと
「人魚姫様やチサちゃんと共に過ごした船旅は幸せでしたからね、美月のお嬢様方の料理も旨かったし…だから遠慮なく使ってやってくださいよっ♪」
そう二人に言われて
「あぁ、了解したぜっ♪良いもの見付けて買い物をさっさと済ませて共に酒を酌み交わそうじゃねえかっ!」
そう言って買い物を続けた四人だった
ただでさえ大豊漁なのにクラーケンの代わりには余つかり値の付かない魚ではどれ程渡せば良いのか検討もつかず悩んでいる網元に鬼百合の希望で引き取り干物や塩漬けにしてもらう事になった
勿論、それでも尚明らかにその対価の釣り合わなさは漁師達も気になって仕方無いが網元の一言が漁師達の気持ちを切り替えた
「リンが命様のお側近くでお仕えしているならば自ずとあの方との縁も切れる事は無いんだから焦る必要はない」
そう言われてやっと皆も納得し
「じゃあ酒を仕入れて岬に行くか、漁の後の一杯を楽しみにしとったからな
あれこれうだうだ言っとらんで姐さんと共に酒を楽しめば良いと思うがな?」
そう言って漁港に隣接する市場に買い物に行く事となり酒が強そうな鬼百合のためにもう少し買い足すことにした
「みこ、貴女もそろそろ水から上がって食事にしなさい」
瑞穂がバスタオルを手にそう声を掛けると頷いて両手を挙げるのを見たミナが瑞穂から受け取ると命の身体に巻き付け
「瑞穂様、宜しくお願いします」
そう言われて抱上げる命の身体は相変わらず軽く
「命様、今日くらいはしっかりお食事をしっかり摂りなさい」
と、思わず言ってしまうほどなのだがその瑞穂の心遣いがわからない命は
「そだね、今日は思いきり泳いだからいつもよりは食べられるかもねっ♪」
と、無責任に答えるのでそれを聞いた者達に溜め息を吐かせた
命が水から上がるのを見たチサは阿に
「これみこちゃんから鬼百合さん達に渡して欲しいって…」
そう言われ受け取ったのは命がりんの母から預かった魚籠で形の歪んだ牡蠣が入っており
「わかった、鬼百合に渡しておく…チサ達もそろそろ上がりなさい」
そう言って預かった魚籠をユウに預けに向かった
濡れた身体を拭いてもらい来るときとは異なる…命お気に入りの海兵隊の制服命バージョン着て現れたので見ていた人々を驚かせた
猫舌の命に渡された鍋は命用の椀にあらかじめユカの指示で冷ましておいた物で事情を知らぬ者達は驚いたが従者達が皆揃って
「命様は猫舌なので…」
と、苦笑いで答えたのでそうなのかと半信半疑ではあるけど納得したのだがまぁ嘘でないのですぐにその事実を目の当たりにするのだけど…
やがて出荷を終えたりんの母親達が戻ってきて浜の状態を見て驚いたが
「みこちゃん、今日はお手伝い有難う…これは私達からのお礼です」
そう言って渡されたのは真新しい魚籠と専用の桶にかきばりで受け取った命が大喜びして
「みこもおばさん達と一緒だね?」
と、嬉しそうに聞くとりんの母親も
「みこちゃんの参加をいつでも歓迎しますからね」
そう言うと他の海女達も笑顔で頷いた
そうこうする内に漁を終えた漁師達が売れない魚を持って来ると歓喜の声を上げて子供達が出迎え従者達が微笑ましく見守る中命だけはその光景を呆然と見ていた
命には理解できない…馴染みのないその光景を不思議そうにぼんやりと眺めていた
「鬼百合、お前に渡してくれとみこから預かった物だ…」
そう言ってむき身になった牡蠣が入ったボールと酒の入ったコップを渡すと
「おう済まねえな」
そう言って牡蠣をひとつ摘まんで酒をあおるとチサやりんから酒を受け取った柳水と鬼百合に同行した海兵隊の男達に
「せっかくのみこの気持ちだ…旨いからお前達も有り難く頂いときな…で、みこはこれをどうしたんだ?」
と、阿に聞くと
「りんの母親達の漁を手伝ったご褒美だそうだ」
そう説明された鬼百合は三人を見ると三人も頷いたので
「ユカ、済まんがちょっと来てくれ…」
そう言ってユウを呼び寄せると
「これはみこ、チサ、りんのでこっちは観月、ユイ、ユカとお前ので残りのこのふたつは翼と真琴のだ」
そう言って真珠のブローチを渡すと
「ご心配なく、ユウさん…それは今日手伝った漁が好調でその特別ボーナスを皆で出しあって買っただけですから気にしないでください」
そう言われてはい等と言えるわけもなくそんな躾を受けていないユウは
「観月様のお許しなくその様な物を受け取り訳には参りませんっ!…と、言いたいところですが承知しました…
観月様の方には事後承諾として報告しておきますのでその…有難うございます、命様達にお渡ししてまいりますね」
そう言ってブローチを受け取り配りに行った
それを見送りながら摘まんだ牡蠣に固い歯応えと言うか違和感にその原因らしきものを口から出すと
「ほおっ…大した大きさじゃねえが結構質は良さそうだな?」
鬼百合のその呟きに気付いたユカが
「そうですね、サイズ的には特筆事はありませんが美しいピンクパールですね?」
と、感想を述べると
「済まねえがみこを呼んでくれ…」
と頼むと
「承知しました」
とだけ言って命の元に向かい鬼百合が呼んでると用件を伝えたらしく頷いた命が近付いてきた
「みこよ、お前から貰った牡蠣の中からこんな物が出てきたんだがな…」
そう話し掛けると
「ナニ、鬼百合?」
話し半分で聞いている命は鬼百合に呼ばれた理由がわからずそう聞くと
「あぁお前から貰った牡蠣の中からこれが出てきたからお前に渡そうと思ってな」
と、答えると
「鬼百合が引き当てたんだから鬼百合のだよ」
「アタイにゃ不要だ」
「みこも要らない」
そう言い合ってる命と鬼百合の二人に割って入ったのはユウで
お二人が要らないと仰るのなら命様から王妃様に贈られてみてはいかがでしょうか?きっと喜ばれると思いますよ?
そう言われた命は
「で、でもおーひ様ならもっと「えぇ、確かにみこちゃんが思うように王妃様はもっと高い宝石をいくらでも持っています…」」
命の悲観的な言葉を遮って話し掛けるユウは命を見て
「ですがこの真珠は命様が見付け鬼百合様が引き当てた…私達にとっては特別な物なんです
金額では表せない、お金には変えられないものなんですから王妃様に贈ってあげてください」
「う、うん…わかった…おーひ様、喜んでくれたらいーな…」
心配そうにそう呟く命だった
岬に集まった人々が陸に居る命に期待することはただひとつで噂に名高い妖精の歌声を聞いてみたいだった
人々が見守る中その期待に一切気付くこととなく気儘に振る舞う命だけど
思うままに食べ気の向くままに振る舞い楽しい一時を過ごすとミナに向かって右手を伸ばすとその意味を理解したミナは竪琴を差し出すと受け取った命は天女さながらに宙を舞い気に入った木の枝に腰を下ろし
竪琴を掻き鳴らすと歌い始め宴は最高潮に上り詰めた
それまでは海兵隊の隊員達と酒を酌み交わしながら釣りを楽しんでいた鬼百合もいつの間にかその傍らに寄り添う様にして控えているユウに酌をしてもらいながら酒を飲んでいた
竪琴を奏で歌う命の歌声は小鳥のさえずりのようでその姿は妖精のように人々の目に映った
楽しい時間の流れるのは早く頭を揺らし居眠りを始めた命と欠伸が止まらないチサに頭が下がったままのりんの三人の様子を見た鬼百合は
「みこ達も居眠り始めちまってるからそろそろ神輿上げるから帰り支度をはじめてくれ、頼むぞ…ユウ」
そう言われたユウが帰り支度を始めるのをみながら
「見ての通りだからアタイ等はみこを供して帰るがお前らはどうするよ?」
そう鬼百合に問い掛けられた帆風を筆頭に非番の隊員達は
「俺達はりんの親父殿達ともう少し飲んで帰りますよ」
と、笑って返す帆風に鬼百合も
「あぁ、ほどほどにするんだぜ」
そう言って馬車に乗り込むと馭者に声を掛けて王宮に戻ることになった
王宮に帰り着いたとき熟睡していた命は瑞穂がチサとりんと一緒に風呂に入れミナとマイは阿の助けを借りてその手伝いをして寝間着を着せ寝室に案内してそのまま寝かせ
チサとりんは服を着た後ダイニングに案内され遅い夕食を取ることとなった
「明日の夜美月主催のパーティを開き命のの側付きであるミナとマイの二人を社交界デビューをさせたいと思います
いずれ私の元から巣立ち精霊の巫女として務めを果たさねばならぬみこの側で支える者達には必須のスキルになりましょうからね…
その際大公領海兵隊の高級士官達は王宮に招待し下級士官及び一般兵は兵舎前広場にて彼等を労う宴を執り行いますがその席で公表するおつもりですか?伯母様…」
その観月の言葉に
「何を公表すると言うのかね?」
そう問い掛ける国王に王妃の答えは
「命、真琴の姉妹とチサに翼の四人を養女として迎えたいのです、勿論本人達の同意を得てからの話ですが…貴方はお嫌なのですか?」
逆にそう聞き返された国王は
「未だ見ぬ翼と真琴の二人も会える日が楽しみな娘達なのだろう?」
そうチサや命と同様に二人の後見人でもある観月と二人とも面識のある十六夜に問い掛ける国王に
「勿論みことチサ同様に翼と真琴にも兄さんと呼んでもらっているし可愛い妹達
だから父上と兄上も気に入りますよ、二人とも良い娘なんだからね」
そう言ってもらい
「そう言う訳だから明日のパーティーでは準備を始めたと発表し…観月、手続きを手伝ってくれるのだろう?」
伯父に聞かれた観月は
さんと呼んでもらっているし可愛い妹達
だから父上と兄上も気に入りますよ、二人とも良い娘なんだからね」
そう言ってもらい
「そう言う訳だから明日のパーティーでは準備を始めたと発表し…観月、手続きを手伝ってくれるのだろう?」
伯父に聞かれた観月は
「ユイ、伯母様の元で書類作成などの手伝いなさい
ユイを任せて宜しいですね?伯母様」
そう言って小さく頷くと
「ユイを借りても美月の方は大丈夫ですか?」
と、王妃に聞かれた観月は
「勿論美月の大番頭とも言うべきユイの不在は痛いですがいずれ十六夜が嫁に迎えてくれるのなら避けられない事
ただそれが少し早まるだけですから問題有りませんよ?」
そう笑って答えたので
「成る程、そこまでお前に言わしめる頼もしい娘が嫁に来てくれるのだな?
ならば西の大公家の再興を本格的に進めよう」
と完全に寝惚けている命と事態についていけないチサは置いてきぼりの状態だったけど一人りんだけが
「ミナ様、そうなったらみこちゃんの事を人魚姫様って呼んで良いんですよね?
みこちゃんとチサちゃんは王女様になるんでしょ?」
そう嬉しそうに聞いてくるりんに聞かれたミナも嬉しそうに
「ええ、勿論ですとも…そうなったらもうみこお姫様じゃないもんとは言えなくなりますからね」
そう言って唯一人命を命様と呼ぶのを止めさせられなかったミナが微笑んだ
そのミナの頑固さと言うか芯の強さを観月が気に入ったのもミナの同行者選抜に選んだ理由のひとつ
しかしそうなると今の王宮の状況はかなり心許ないと王妃の懸念を観月が笑い掛けながら
「勿論お手伝いします」
とだけ言って微笑む観月だった
③真琴
僕の名は真、治癒の魔法を操り魔剣黒炎竜を媒体に黒魔法を使う魔導剣士まぁ治癒呪文を得意とする僕を皆はパラディンと呼んでるけど今はゆえ有って歌の女神の祭典に出場するため歌の特訓中
で、今隣に居るのは血の繋がらない姉の翼で朝早い港に居るのは僕達の妹のみことチサが観月様達と歌の国の本国に行くのを見送るため来てたけど…
もうみこ達の乗った船もすっかり見えなくなっていた
「ユマさん、僕は大公様のお屋敷に戻り歌のレッスンを始めます」
その真琴の言葉に
「今日のお勉強とレッスンはお休みで翼に付き合いなさいとの観月様からのお言付けですが取り敢えずこの側に有ります礼拝堂で自習できるよう様に手配してありますからこれからそちらに行きましょう」
そう言われた真琴は焦って
「ぼ、僕の歌のレッスンの間皆はどうするんですか?」
と言うと翼は笑いながら
「礼拝堂に隣接する教会が運営する孤児院でお手伝いしますからご心配なく
それに沙霧さんと白浪さんにもお手伝いしてもらいますし…」
そう言ってクスッと笑い沙霧を見ながら
「沙霧さんは英雄扱いで男の子達が喜んで冒険譚を聞きに集まるんですよ?」
そう言われた真琴は
(そうか…全て観月様が仕組んだのか…なら僕が幾ら足掻いても無駄だろうから…)
そう考えて
「わかったよ…ってどうすれば良いかはわからないんだから後は僕がすべき事をちゃんと教えてよ?
でないとどうしたら良いのかさっぱりわからないんだからさっ♪」
とおどけて答える真琴に
「取り敢えず自習の後孤児院で子供達と朝食を摂りその後暫く子供達と触れ合って頂いてから今日の予定の紡さんのお宅に向かいます」
そう言われて溜め息を吐く真琴に
「真琴、未だ社交界デビュー前のお嬢様のお誕生会ですからあまり堅苦しいパーティーじゃないのよ?」
そう言われてもう一度…更に深い溜め息を吐いて
「そうだと良いんだけどね…」
そう力無く呟く真琴だった
自習を終えた真琴が孤児院を訪れると子供達の歓声が出迎えを受けその歓声に一瞬たじろいだをものの
「真琴様と翼様はこちらの席にお掛けください」
そう示された席は普段は子供達の世話をしているシスターの席らしい場所で
「僕達がこの…上座に座っても良いんですか?」
そうシスター達に聞くと
「その席ならお二人のお顔が皆によく見えるからですよ?」
最年長者らしき少女にそう言われ席の後ろに立つと確かに食卓に着く子供達の顔が見渡せた…
「真琴、皆に挨拶してあげて」
翼にそう促されて
「僕と妹の命も親の顔はおろか名前すら知らない…何処の生まれかもね
でも、翼とチサと知り合い鬼百合さん達や観月様と出会いこうして歓迎してくれる皆と会えてとても嬉しいし僕とも友達になって欲しい…
そしていつか妹の命も連れてきて命とも友達になって欲しいなってお願いして良いかな?」
真琴がそう言うと真琴に座席を示した少女は
「私達の先輩のユマ様達は血は繋がらなくても家族って言ってますから友達じゃなく家族じゃダメなんですか?」
そう言われて驚いた真琴だったけど
「そうだね、僕とみこも血は繋がらなくても翼とチサを家族って思ってる
いきなりこれだけたくさんの妹や弟が出来てちょっと驚いたけど歌のレッスンや勉強の合間を見て又皆に会いに来るよ」
そう答えるとシスターが
「話しは綺麗に纏まりましたから皆で朝の食事を頂きましょう」
真琴にとっては子供達の笑い声が響く食卓は初めての経験だけどとても楽しかった
片時も離れる事の無かった"みこは僕が守る"の思いは身近に居ないことも手伝って忘れる程で
「年相応の笑顔ですね?」
真琴の笑顔を見ながら隣に座る沙霧に話し掛けるユマの顔も嬉しそうに綻んでいた
食事が終わりデザートにユマが焼き翼や年長の少女達がデコレーションを手伝ったケーキが出され一人の少女が名前を呼ばれると翼と真琴の間に立たせ
「今日真琴に来て貰ったのはこの子かなって言いますけどそのかなの六才の誕生日に唄ってあげて欲しいの
「まだここに来て日が浅いこの子……
で、もうすぐ誕生日だと聞いてそのパーティーでなんとか元気付けたいと思って話を聞いてみたら真琴様に会いたいって…」
そう言って少女を心配そうに見る翼に真琴は
「成る程、そーゆー訳だったんだ…了解、僕の歌でよければ喜んで歌わせてもらうよ」
そう言ってシスターの伴奏で歌い始めた真琴の優しい歌声は孤児達の心に染み込んでいった
歌のプレゼントが終わり改めて
「知ってるかもしれないけど観月様の公女宮でお世話になってる真琴です、職業は魔導剣士兼見習い歌人」
そう笑って名乗ると
「いらっしゃいませ真琴様、来ていただいて…お会いできてとても嬉しいです」
一同が声を揃えて歓迎の言葉を述べると
「真琴様…今日は来てくれて有難うございます…翼、我が儘を聞いてくれて有難うございます…」
声をつまらせお礼を言うカナの頭を撫でながら
「おんなじなんだよ…僕に戦士の力がなかったら…巫女に魔導の力がなかったら…僕達はチサや翼、観月様達と出会わなかったと思うし何処かの孤児院預けられていたと思う…だから僕にはカナや皆が他人の様には感じられないよ
だって…僕とみこは両親の顔を知らないのだからね」
そう言われて驚いたカナが真琴に抱きつくと
「じゃ、じゃあ真琴様の事をお姉さんって思って良いですか?院の人達は皆家族だって…私は未だそう言うのに慣れませんけど…」
そう言って真琴を上目使いで見るカナに
「真琴様って呼ばれるよりずっと良いんだけどお姉さん、か…」
そう呟くと
「ダメ、なんですか?」
と、泣きそうな顔で言われて
「ダメじゃなくて慣れないんだよ、みこは僕をお姉ちゃんとは呼ばずまこちゃんって呼んでるからね…」
そう言って苦笑いを浮かべると他の子達も真琴の周りに集まり
と、答えると孤児院に不釣り合いなグランドピアノの前にシスターが腰掛けると伴奏を始めると真琴が讃美歌を歌い始めた
皆が静かに聞き入り歌い終えた真琴はユマから手渡された包みを手渡しながら
「かな、お誕生日おめでとう」
と告げると翼も大きな包みを渡しながら
「かな、お誕生日おめでとう」
そう言うと友達に開けて見せてと言われまず真琴からもらった包みを開けると…
天然石の数珠ブレスで真琴の二色の勾玉と命の霊玉も含まれているレア物だ
その高そうな物だけに心配したシスターが
「あの様な高そうな物を頂いても宜しいのですか?」
そうユマに聞くと
「石は騎士の方が山で見付けた綺麗な石だからと持ち帰った天然石を分けて頂いた物ですし…
それをアクセサリー造りが趣味の友達に作ってもらいましたからお金は然程掛かってませんよ?」
と言うと翼が渡したぬいぐるみはそれなりの値が着きそうな物で
「あれはそれなりの値が着く物ですが似たようなのをいくつも贈られてますからお気になさらないで下さい」
そう微笑みながら言われて驚いたシスターの様子を見ていた
そうしている内に真琴達の帰る時間になり別れを惜しみつつ次の目的地に向かった
馬車が屋敷の玄関に着くと当主自らが出迎えに出ており
その孫娘とその友人らしき子供達がテラスからこちらの様子を伺っているのが見えた
ユマと当主が挨拶を交わした後にパーティー会場に案内されると本日の主役である当主の孫娘、紬(つむぎ)に手を引かれ中央に案内された真琴
そして真琴の熱唱でパーティーの幕が開き
一旦控え室に案内された真琴が手渡された服は鬼百合達がパーティーの際に着ているものと同じ大公家の客分騎士の正装
「僕は嫌じゃないけど観月様に叱られませんか?」
そう気にして言うと
「公式の場以外なら構わないし真琴は男装も似合いそうです…
それに戦いに赴く時はやはり戦士の服装が相応しいから既に製作に取り掛からせてますと仰ってましたからね」
そう聞いて受け取った騎士の正装に身を包む真琴は美少年の騎士にしか見えず勿論その姿を見た少女達が真琴に群がり互いに気を引き会うのも当然の事
似合うだろうとは思っていたがさすがにここまでとは思っていなかったユマを苦笑いさせた
この世界のしきたりで十歳を前に社交界デビューを果たせるの貴族籍でも公爵や伯爵、大公等一握りの階層の者
そして公女観月に認められ公女宮で働く事を許された者だけで貴族でも男爵クラスや軍の将校で十二歳
街の有力者は十五才迄待たなくてはいけない
その為翼と真琴と歳が変わらない位の彼女達のその時は未だ遠くせめてもの真似事をと内輪の誕生日会でやっているのだ
依り代のお披露目のパレードで観月に付き従う真琴に心惹かれた少女は少なくない
その内の一部が紬であり今日集まった少女達である
そんな真琴が騎士の姿で現れたのだから少女達が興奮するのも無理は無い
そんな少女達の笑顔の花が咲き誇るパーティーの雰囲気をぶち壊す闖入者が現れた
「私の商談を断っておいて孫の誕生日とはいいご身分だな?」
そう言ってご馳走の並ぶテーブルに土足を乗せる男に
「商談?僕の目にはゆすりたかりのチンピラにしかみえないんだけど?
まぁ貴方達の国の流儀かどうかは知らないけどこの地でそんな振る舞いが許されると思ってるの?」
そう詰問する真琴に
「観月様に言い付けてやるってか?女みたいに生っ白い小僧は黙ってなっ!?」
そう言われて立ち上がろうとした沙霧と白浪を手で制し
「もう一度だけ言う、脚が大事なら即刻退けろ!これが最終通告だ」
そう言われて薄ら笑いを浮かべる男の頭頂部を真琴の手刀が掠めたしかしそのあまりにもの素早い真琴の動作は男達の目には全く見えるはずも無く男の髪がハラハラと落ちるのを見た仲間が
「お、お前髪の毛…」
そう言われて頭に触れると頭頂部の髪の毛が綺麗サッパリ無くなっていた
その事態にようやく気付いた男が慌ててテーブルから脚を下ろすと胸から出したハンカチで綺麗にしてから部屋から飛び出して行くのを見送りそれまで互いに抱き合い怯えていた少女達に笑顔で
「もう大丈夫だから安心して」
そう伝えると皆真琴に抱き付いて涙を流していた
その様子を見ながら当主は尚も不安そうに
「真琴様は大丈夫なのでしょうか?このままで済ませるような輩ではないはず…」
そうユマに訪ねると
「真琴の顔も知らぬ程度の連中など問題ない」
白浪が忌々しそうに答えると
「あの愚か者の不用意な発言に沙霧様と白浪様は相当おかんむりの様ですし…
弱い癖に男の面子がどうのと言う類いのあの程度の者達にはこれ以上騒ぎは起こせません
自分達が尻尾巻いて逃げ出した相手が実は女の子でしたなんて誰に言えますか?
下手に同業の者に知られでもしたらもうおしまいでしょうからね…まぁ同情する気は微塵も有りませんけど」
とはっきり言い切り
「彼らを雇っている者にもそれ相応の報いを受けてもらいますから紡様…
これからも美月の命、大公領の宝の紡績を宜しくお願いしますね」
そう言われ
「私の方こそ亡き大公妃様が立ち上げられそのお嬢様であられる公女観月様が守り育てられた美月及びスタッフの皆様のお陰で絹糸及び絹織物の生産地として名を馳せる迄になれたのです」
前大公妃を懐かしみながら話すと
「亡き大公妃様、そして今の美月を守り支える観月様のご恩に報いる道は唯ひとつ…
私達も美月を支える者になる事なのだと考えますから共に頑張ってゆきましょう」
ユマの言葉に頷く元締めだった
翌日大公邸を訪れた愚者共は更に盛大に恥を上塗りする事となった
使用人に大怪我を負わせた少年騎士の身柄引き渡しを要求に来たのだが前日と事なりドレスを身に纏い現れた真琴には全く気付けず少年騎士の身柄引き渡しを繰り返す男に
「お前達が馬鹿なのは承知していたがその雇い主も底抜けの愚者だったとはな…美月がまともに相手にしてやらぬ訳だ
お前達が要求している者ならば最前から目の前に居るのに全く気付けずいるのだからな…救いようがないとはこの事だ」
千浪と白浪の蔑みきった眼差しに晒された男達にはもう逃れる先はなかった
墓穴を掘り恥の上塗りし更には雇い主も巻き込み更なる恥の上塗りを重ねたヤクザ者とその程度の者を重用していた事に気付いた愚者の一族が慌てて放逐したため彼等にはもう何も残されてはいなかった
その事に気付いた時には全てを失っていたのだから
この一件で少年騎士の真琴の知名度はうなぎ登りとなり真琴に恋い焦がれる乙女達に事欠く事は無い状態になったのは喜ぶべきか悲しむべきか微妙なところではある
④唄うなら
遅めの夕食が終わる頃自室に戻った王妃の元に訪問者が現れた
ミナを伴った命で散々迷ったあげくの訪問だが王妃の自室前に着いて尚迷う命を他所に
「この様な夜分の訪問が失礼に当たるのを重々承知の上の厚かましいお願いを申し上げますが我が主人、命様のお目通りお願いできませんでしょうか?」
そのミナの声に反応した王妃は
「遠慮は要りません、入りなさい」
そう言って二人の入室を許可するとミナに案内された命はおずおずと口を開き
「今日みこね…りんちゃんのお母さん達のお手伝いしたんだ…海の中はとっても楽しかったんだよ…」
そう楽しそうに昼間の海での体験を話す命を見守っていると頭を下げたミナがどうやらお茶を酌みに行ったらしくその場を離れていくのが見えたので命を腰掛けるように促し辿々しく話す命の様子を暖かい目で見守っていた
命の話も後半に入り預けてあったそれをミナから受けとると
「形が歪だから市場に出しても大した値が付きませんから…ってゆわれて貰った生の貝を鬼百合達に食べて貰ったんだけど鬼百合が食べた貝からこんなんが出てきたんだ…」
そう言って命に見せられたのは淡いピンクパールで色、質的にはかなり上等な部類に入る天然真珠ではあってもサイズ的には一国の王妃が身に付けるにはかなり物足りないものと言わざるをえず
正直なところ命自身も恥ずかしくてその後に続く言葉を言いあぐねているのだった
「鬼百合がね、ゆったんだ…こいつは今日頑張って漁のお手伝いしたみこへのご褒美だから有り難く貰っときなっ♪って…
でも…みここーゆーのよくわからないから要らないってゆったら…」
そう言って一旦言葉を区切り
「なら大好きな人やお世話になってる人に贈ったらどうだ?って…」
そう言って再び口をつぐむ命を見ながら考え込む王妃は
「そう、それで私がその人に選ばれたのですね?」
そう問われた命が小さく頷くとその命の頭を抱き締め
「有難う…みこちゃん」
そう言われて真っ赤になった命に
「みこちゃんさえ良ければ今夜は私の部屋に泊まりませんか?」
そう声を掛けると何と答えれば良いのかわからない命がミナを見ると頷いて
「お寝間着お持ちしますから暫くお待ちください」
そう答え王妃にも待ってもらうことにして支度を急ぐミナ
着替えを終えた命を王妃の寝室に残してミナとマイは従者の控え室に待機する事にした
「今夜は私達も隣に控えますからご用が有りましたらお呼びください」
そう王妃に伝えて…
深夜に喉の乾きで目を覚ますと隣で眠る王妃の寝顔に驚いたけど王妃の胸にすがり付き再び眠りに落ちた命の寝顔は幸せそうだった
未だ臼ぐらい早朝に目覚めた王妃は声を出さずに涙している命に気付いた自分も喉の乾きを覚えていたため泣いている亊には敢えて触れずに当番の侍女をベルで呼んだ
現れたのはミナでも無ければマイでも無く本来の王妃付の今夜の当番の一人であるマキと言う侍女だった
王妃は知らない話ではあるけど歌の稽古の為早起きな命の為に着替えの支度を既に始めている
ミナは命の稽古の間は命の側で出来るユカの仕事をこなすのでそれの準備もあり命の側を離れていたのでマイに無理を言って王妃の呼び出しに応えたのだ
マキは残念ながら俯いてる命が涙を流している亊には全く気付く様子は無く
「私にはお茶と命にはほんのり甘いジュースを」
そう指示したのたけど侍女が持って来たのは命には大きすぎるグラスに冷たかっただろうジュースと熱すぎるお茶だった
(このグラスでは命には大きすぎる位解りそうなのに…)
「有難う、貴女はもう暫く休んでなさい…未だ夜明けには時間がありますからね」
そう言われて頭を下げて退出した
溜め息を吐いてそれを見送り振り替えると命は竪琴を抱え鼻唄を唄っていた
「さあ、ジュースが来ましたよ」
グラスを差し出すと竪琴を横に置き両手でグラスを受け取るとグラスの半分位を飲んでテーブルに置いて
「美味しい」
と、そう言って小さく笑う笑顔が可愛かったのだが…
夜が明けて暫く刻が経ちドアを叩く音がしてユイですと言う声が聞こえ許可を得て入って来たユイが難しい顔をして考え込む命に気付いて心配顔で何を悩んで居るか聞こうとしたら王妃に笑って止められ
「大丈夫、今日はお外に行けないから昼間どうして過ごそうかって考えているだけですから」
王妃からそう聞いたユイは
「ねぇみこちゃん、竪琴貰った人とお話ししてきたらどうかな?
それなら外出しないで済むから私が彼女の都合聞いてきましょうか?」
そう言われて
「でも…ユイさんだってお仕事忙しいんでしょ?」
そう聞き返すと
「大丈夫ですよ、忙しくなるのは朝食が済んでからですから」
そう答えると
「じゃ、じゃあユイさんに行って貰ってきて良い?」
駄目と言われたら泣き出すんじゃないかと言う表情で言われたら駄目とは言えなかった…勿論そんなつもりもなかったのだけど
まぁ、今日は大公領から使者が来るのだからあまり予定は入れてないから暇と言えば暇なのだから
「では朝の報告…何か変わった事は?」
取り敢えず加筆修正予定です