闇と影   作:春の雪舞い散る

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自分の歌唱力に自身の持てない人魚姫は何を思うのか?


風が吹く⑤

「何も、少なくとも今現在はそのような報告は一切有りませんが一度執務室に戻り何もなければ楽士寮に行きます」

そのユイの答えを聞いた王妃も

「任せますが楽士に会いに行けると良いですね」

そう告げると

「ユイさんのお仕事の方が大事だから…」

そう心配そうに言う命に笑いながら

「失礼します」

そう言って出て行くユイを見送り命は習い覚えた曲のお復習を始め王妃はそれを聞きながらユイが置いていった書類に目を通した

戻って来たユイの報告は

「礼拝堂でお祈りしてますから宜しければ竪琴を持ってお越しください、午前中はそこで過ごしますから…」

だった

 

「お姉さんおはよー」

祈りを捧げているのを無視して抱き付いた命

「あれから竪琴の調子はどうですか?」

と笑顔で問い掛けると

「良く解らない…だけどみこの気持ちが解るみたいなの」

「そうよ、その子は弾き手の気持ちが音色に表れるのですからね

そういえば私はまだみこちゃんの唄を聞いた事なかったわね…良かったら何曲か聞かせて貰えますか?」

首を横に振り

「みこの方が聞いて欲しいの…みこの唄そんなにお下手じゃないって思う…でも、誰に感想聞いてもただお上手としか言ってくれなくて…

だからみこの唄って本当はお下手で皆は本当の事言えないんじゃって…」

弱々しく言う命に

「まずは聞いてみないと…ね、さぁ唄って下さい」

 

一通り歌い終えた命に

「みこちゃんは随分古い唄を知っているのね…大丈夫お上手ですよ、素人レベルなら」

そう言われ感じていた疑問を口にした

「何処がダメなの?」

と素直に聞かれ

「私は唄の専門では無いけれどその私の耳でも解るほど声が出し切れていないし唄ってて声を出すのが辛くなる時が有るでしょ?

上手になりたいのなら基礎的な発声練習から始めるのが一番ですから私の知り合いに唄の女神の祭典で審査員になってる人が居るから教えて貰えるように頼んでみましょうか?」

そう笑顔で言ってくれてるけど…

「観月ちゃまに相談してみる」

としか答えられない命

「何故自分の事なのに自分で決めないの?」

「だって…そう言うのってお金要るんでしょ?

みこお金持ってないから…」

哀しそうに言う命に

「そう、じゃあ私も一緒にお願いしてあげるけど出来れば唄の勉強したいんでしょ?」

そう確認すると

「うん、お勉強したい」

力強く答えた命の手を握り

「じゃあ早速観月様にお願いに行きましょう」

礼拝堂を出ると控え室に居たミナが声を掛けてきた

「ご用なら私に申し付け下さい」

と声を掛けてきたので

「観月様の所在とみこちゃんが話したい事があると伝えて下さい

私達は礼拝堂に居ますから…お願いしますね」

と聞いた彼女は頭を下げると立ち去り暫くしてミナが観月と王妃を案内してきた

「どうしたのみこ?そんなに改まってお話しって…?」

「お姉さんがお唄が上手になりたいのならちゃんと先生に習った方が良いって」

「私が先生紹介しましょうかと言ったらみこお金無いからって…」

溜め息をつき

「だから私に相談したい…って訳ね

解るんだけど、相談して貰えなくて寂しがってる人が居るって知ってる?」

「?、?、?…」

「王妃様がみこの力になりたいのよ、解る?」

何で?と言う表情の命にどう説明したら良いのか悩んで居ると

命の小さな身体を包み込むように抱き締め

「それは私がみこちゃんを好きだから」

驚きのあまり目を見開いて

「みこは…生まれて直ぐなのにお母様が棄て無きゃいけない悪い子なのに?」

虚ろな顔の瞳は全ての感情が消え失せていた

「もう良いのよそんなに自分を責めなくても」

そう言われてさえなお

「でも、みこのせいでまこちゃんまで棄てられた…

みこを取り上げた人逹は穢らわしい黒い血の子、触れることさえ厭わしい闇の子、こんな醜い子は災いをこの里にもたらす前に相応しい闇に葬ってしまえば良いって言ったのを聞いた…

その言葉の意味はまだ良くわからなかったけど余り知りたくなかった

みこは多分生まれてきてはいけない子なのだから…私には人に優しくして貰う資格なんかない…」

全く感情のこもらぬ声で話す命に

「もう良いのよ、貴女は王妃様や観月様やその他の沢山の人に愛されているのよ勿論私も…まだ会ったことはないけど真琴さんや翼さんもね」

そう言われてもやはり

「本当に良いの?みこ…皆に甘えても…みこは…みこは」

マイはこの時泣いて問い掛ける命を見て決意した…この幼子の魂を持つ命の力になりたいと

自分に大した事は出来ないのは知っているけど出来るだけの事を精一杯御勤めしようと決めた

その後今夜のダンスパーティーの打ち合わせが始まり命も立ち会うことになり湊の提案でパーティーの開幕を告げるオープニング曲を命の歌で飾ってはと言うことなり指揮者の操が

「差し支えなければ命様の持ち歌をお教え願え願えないでしょうか?」

そう声を掛けたけど返事をしないばかりか振り向きすらしない命を見ながら苦笑いを浮かべ

(次に命様と呼んだら返事しないと言ってのは本気だったんですね…)

そう思いながら

「操さん、みこちゃんと呼ばなければ返事してくれませんよ?」

そう言われて複雑な表情で

「遠からず王女様になるかもしれない方をですか?」

そう呟くと

「その事は私も気になり観月様にお尋ねしたらみこを説得する等無駄なことは止めなさい

直に言い訳が出来なくなりますからそれ迄は本人が望むように呼べば良いだけの事なのですから…と仰いましたから」

そう説明され

「観月様…何て男前な方なんでしょうね…わかりました、その時が訪れる迄はみこちゃんと呼ばせていただきましょう…」

そう呟くと

「何かみこちゃんお薦めの曲はありますか?」

「あのね、未だ不安だけどね…ダンスの前にピッタリな歌があるんだけど…」

そう言って歌い出した曲は確かにダンスパーティーのオープニングを飾るにに相応しい曲(イメージ曲はシャルウィーダンス、大貫妙子)

命の歌に湊が即興で合わせ暫く練習し本番もこの曲で行く事に決まり

手入れも終えてそれも含めたリハーサルを繰り返した

勿論その事はパーティーの主催者である観月にも報告したら

「その曲なら私も知ってますが…いきなりみこの歌声でパーティーの開幕を知らされたら皆驚く事でしょうね

私も事前に知ってしまったのが惜しい位の企画、やはり柔軟な思考のみこは面白い発想をしますね

 

その方面については然程専門的な知識は持ち合わせてませんので貴女達に任せますからみこへのサポート頼みますね」

そう言われどう説得しようかと悩んでいた自分がバカみたい感じる操だった

命が午睡から目覚め本番前の最後のお茶休憩(茶菓はミナからの差し入れ)を終え本番前の総ざらえ

それを終えて一同は軽い食事と着替えを済ませに控え室に戻り命も自室に連れ戻されて着替え等の仕度をさせられたその命が阿に控え室に運ばれていくと今度はミナとマイの番でユウとユカの手により美しく変身していく二人も最初は私達なんかがと尻込みしているのを

「この先水の精霊の巫女として人々を導かねばならないみこの側近く仕えると言うことは貴女達もいずれユイやユウ、ユカ達美月のメインスタッフの様に社交の場にも付き添ってもらわねばなりませんがそれは理解できますね?」

そう言われた二人が頷くと

「ユイ達が私の側に居るようにみこの側で仕える存在になりなさい、その為にも私達が側に居る今の内に色々な事に慣れておきなさい」

そう言われて果たして慣れることが出来るか?という本人達の疑問はさておき国王夫妻がゲストを迎えその他の王室関係者の入場も終わったにも関わらず人魚姫の姿が見えない事を疑問に思い訝しげに辺りを見回す訪問者達

薄暗がりのパーティー会場内は参加者のざわめきの中、何の前触れもなく指揮者の操にスポットが当たり注目が集まり両手を振り上げると命の歌声と伴奏が同時に始まって…

事前に知らされていた観月は国王を…ユイは十四夜にチサは十六夜を誘いミナは歩風でマイは艇督をパートナーに指名すると他の淑女達も命の歌声に誘われ…各々が思うままにパートナーを選び指名して行きその歌を歌い終える間近に命も海兵隊の提督に右手を差し出し歌い終えると一言だけ

「みこと踊って」

と言うと提督も海の男に相応しくただ一言だけ

「勿論喜んで」

答え命の手を受け取るとその甲に口付けを落としダンスの曲に切り替わるとパーティーが始まった

最初は何も知らされいなかった参加者が戸惑ったものの粋な演出が喜ばれ以降は美月主催のダンスパーティー定番化となった

今夜のパーティーでユウとユカが不在の穴を埋めたのはミナが男達を喜ばせた

「社交界で遠慮はタブー」

は、やはり建前でミナが命に寄り添い仕えている姿を見て

「彼女の様な娘にあの様に側で世話してもらえたら…」

等と妄想する男は少なくなくそんな男の親達も

「うちのだらしない息子の嫁に来てくれたら…」

等と思っては溜め息を吐く者も少なくなく無くなかった

兎に角今までの美月に居なかったタイプのミナは人々の視線を集めていた

勿論容姿の方も派手なタイプでは無いけどその代わりに清純で可憐なミナは男達の保護欲をそそる存在

そしてマイ…以前何度か給仕として働いてはいたが全く存在感の無い地味な印象…

それが良くも悪くも覚えている者の記憶だ

ったのだから殆どの人間の記憶にはなく大抵初対面の挨拶をされた

だがそれも良い方に考えればマイが変わり人の目を引く存在になれたのだと言う事だからそんなマイを踊りに誘う者も少なくなくそれを見ている同僚達に羨ましがらせていた

マイの成長は確かに他の侍女達を驚かせたけどただたんに驚いただけの事に過ぎなかった

「やはり侍女達の教育をやりなおさなければ変わらないのですね…」

そう密かに呟く王妃だった

今回王は命とチサとは踊らなかったけどその代わりに十四夜は命に十六夜はチサに付き添い三人分のダンスの時間を使い二人の食事時間に当てさせた

ただえさえ退場時間の早い二人はそうでもしなければ食事するのもままならないからだ

そんな二人の退場時間も近付き今回も終盤はダンスから開放された命は楽士達に混じり演奏に加わった皆本音を言えば最後までダンスに加わって欲しいがあれだけ幸せそうな顔をする命に演奏を止めてとは言えない

最後の曲は本来ダンス曲ではないものの命の歌声に合わせ皆思い思いのパートナーとチークダンスを踊り始めた

国王は妻の王妃と、十六夜は勿論ユイで夫婦での参加者は当然配偶者と踊り

未だ結婚してなくても思い合う者達はその想い人と…

それぞれの想いを胸に共に踊ったのだった

そして命、チサの退場時間になり

「皆さん、今日も楽しい夜をありがとおございますっ♪みことチサちゃんはおねむの時間になったからお部屋に帰るけど…

今日はユウさんとユカさんがお仕事で居ないから観月ちゃま、今日は二人を最後まで宜しくお願いします」

そう言って会場を見回し宙を滑ると一人の侍女の身体にしがみつき

「今日はこのお姉さんがみこのお守りしてくれるから大丈夫だよっ、この後はもうお着替えして寝るだけだしねっ♪」

笑顔で告げる命の嬉しい提案に

「わかりました、確かマキと言いましたね?今聞いた通りパーティー半ばの退場は心残りでしょうけど命とチサを任せますよ」

観月にそう言われたマキは慌てて

「いいえ、滅相も有りません…なぜ私が選ばれたのかは分かりませんが巫女様に選らんで頂いて何の不満が有りましょうか?」

そうマキが答えるとしがみつくのを止めた命に手を差し出されたマキがその手を握ると命とチサに付き従うりんが二人と守護役の瑞穂と共に退場した

「みこちゃん、みこちゃんに相談があるけど良いかな?」

二人が部屋に戻りチサが命にそう話し掛けると「今夜は満月なんだね…」

そう言われ命以外が見上げた窓の外には蒼白く輝く月が浮かんでいた

「チサ、貴女の身体に在る私の勾玉が呼応し貴女の身体に有る魔力が私に教えてくれました

精霊の巫女として目覚めたいのですね…」

そう言われ頷くチサに

「分かりました…その切っ掛けを私が作りましょう…ですが私に出来るのはあくまで切っ掛けに過ぎませんからその先は貴女自身が選び取るもの…覚悟はいいですね?」

そう命に聞かれて頷くチサに

「わかりました、それでは今から火の精霊フレアに祈りなさい」

そう言われ祈り始めたチサの身体をアクエリアスの結界が包み込んだ

祈り続けるチサに時の概念がなくなり足下が不安定に感じ目を開けると周りには何もなかった…

室内に居た筈なのに床は勿論壁、ベッドなどの調度品も一切見当たらない

側に居た命やりん、瑞穂やマキと言ったか?彼女の姿も見えないし気配も感じられない

いや、上下の違いすらも失われて漠然とした不安を感じていると

「力を求めし者よ、汝の覚悟を我に示せ」

そう言ってチサの手を取る人物の顔が命に似ている事に気付き

「貴女は…みこちゃん?」

そう言われたその者は

「そうだ…だが我はお前の知るみこ…命ではない」

そう言って自らの胸にチサの左手を添えると

「我に続きフレアの目覚めを促す呪文を詠唱せよ」

そう言って

ー我は願う、闇夜を照らし魔を焼き払う火の精霊フレアよ

我命、我魂を糧に貴女の聖なる炎を我が身に宿したまえー

そう言い終えるとチサの左手を添えた胸に火が点りその身体を燃やし始めた

「このフレアの聖なる炎がお前の身体に巣くう我を燃やし尽くした時お前は火の精霊の巫女として目覚めの時を迎える」

無表情に話す相手に

「私が力を求めるのはみこちゃんの力になりたいから

なのにみこちゃんを犠牲にしなきゃ力が得られないなんて…」

そう言い涙するチサに

「我は覚悟を問うたはずだ?だが案ずるが良い、我は勾玉に残りし過去の記憶…残存思念に過ぎぬのだから…だからその優しさはお前達のみこに向けてくれればそれで良い…」

そう言われても目の前で燃えていく命の姿を見ている事実は辛く

「でも何故なんですか?何故貴女を燃やし尽くさなきゃいけないんですか?」

そのチサの問い掛けに

「我が闇に親い黒き血と魂を持つ魔女、フレアの忌み嫌う魔の者だから…

それ故に我が魔力をその身に宿せしお前は火の精霊の巫女として目覚める事が出来ぬのだ

さぁフレアの聖なる炎で穢れ(我)を焼き払うが良い」

その言葉が最後になり今まさに燃え尽きようとした瞬間チサが叫んだ

「いやぁーっ!みこちゃんが死んじゃうっ!消えないでっ!

どこにも逝かないでぇーっ!…」チサの絶叫が木霊し涙を流しながら伸ばす手を優しく握る者が

「チサちゃん、みこはここに居るから…どこにも行かないから安心して?」

そう微笑みながら話し掛け

「りんちゃん、みこのリュック取って…」

そう言われてクローゼットから取り出されたリュックを受け取ると中から無地の玉石の数珠を取り出し

「はい、チサちゃん…」

そう言ってチサの首にネックレスを掛け手首にはブレスレット、足首にアンクレットを着け

「さぁチサちゃん…フレア様に祈って…」

命の声を遠くに聞きながらチサがフレアに祈ると一気に高まったチサの霊気が身体から溢れ出し勾玉を朱く染め…

十個の朱い霊玉にその姿を変えた

「みこちゃん?あのみこちゃんはどうなっちゃったの?燃え尽きちゃってもう会えないの?」

そう言われて

「みこにはわからない…でもチサちゃんが願ったからほら…」

そう言って自分の右手を見せられ

「わかるでしょ?勾玉から感じたのと同じ魔力を感じるでしょ?

姿形は変わったけどこれからもチサちゃんが力を必要とする時は力を貸してくれるからね…だから今はもう少し休んでね」

そう言って阿に目配せして寝かせ直し

「鬼百合(陰)、霊玉は明日チサちゃんが起きたらチサちゃん本人から貰って」

そう言われて

「全く心配させやがって…みこの悪いところは見習わなくても良いのによ…」

そう呟くと

「鬼百合、みこは無茶なんかしたこと無いよ?」

と頬を膨らませて言う命に

「今度真琴とレムに会ったらそう言っておいてやる」

と言われて

「二人は鬼百合みたく意地悪くないもんねっ!」

と言うのを聞いてどうにも頭の痛い観月だった

 

一夜明けチサと命の見送りを受け一路大公領に戻る旗艦

そして王宮に戻るとチサはりんと午前の勉強会

やる気の無い命は無理に勉強させず楽士達と過ごさせ命にはマイが、チサとりんにはマキが付き添い

ミナは本格的にユカの助手になりドレス以外の新作の手伝いを始めていた

その様子を見に来た観月にユカがそっと

「危ないところでしたデザインを任せるほどかは未だわかりませんが…

私の意思を汲み取り漠然としたアイデアを上手く形にしてくれるあのセンスの良さ…危うく優秀なパターナーを見過ごすとこでした」

と言うとユウも

「時々で良いから私の方の仕事も手伝わせてよねっ!」

と言うのを聞いて

「そんなに優秀なのですか?」

そう二人に聞くと

「性格のままに真面目で丁寧な仕事をしてくれますから安心して任せられます」

ユカが言うと「ファッションに関しては説明不足で打ち合わせにいつも苦労するユカの相手をしてもユカが切れたこと有りませんから…

多分ミナのファッションに関するセンスかなりなものだと思います」

チサとミナがそれぞれの運命をさらに進みマイに続きマキも人生の岐路を迎えていた

 

そして夜明け前…命、チサの見送りを受け一路大公領に戻る旗艦の後ろ姿は寂しげだった…

しかし帆風がチサから預かったビスケットを皆に配りほぼとんぼ返りで本国に戻る事を伝えると一同に笑顔が戻りその様子を見た提督が

「現金な奴等だ…」と苦笑いした

その翌日の午前中には無事大公領の港に入港し預かった手紙を大公と美月のスタッフに渡すと久し振りに大公領での半暇を楽しむ帆風だった

 

美月の事務所では観月からの手紙を読んだユマがユキとユミ、ユズとユナにユリを集め話し合っていた

「ユイ、ユウ、ユカが不在の原状でユキとユミが呼び出しを受けたけどこの好景気で正直かつかつの状態だよね?」

ユマが言うと

「私は今こそ次の世代の成長を促す時だと思うよ?」

と、ユリが言い

「ユイも寿退社だからユマもそろそろ後進を育てないといつまでも留守番になるよ?」

そう言われて

「サエ、サキは私が見るからサコ、サチはゆりが…

サナ、サホをユズがサナ、サラはユナが見てあげて

その八人でも抜けた五人の穴は埋まらないだろうけどそれ以上増やしたら逆に私達まで身動き取れなくなるから当面この体制で頑張りましょう」

ユマが言うと

「今日中に公女宮侍女八人の抜けた穴を…せめて半分だけでも埋めないと…」

ユリがそう言うと

「大公邸の侍女達の様子を見に行きその結果次第で大公様にご相談しましょう」

とユズが纏め

「まぁ不安は口にしても仕方無いですからユキ、観月様にはその様に報告しておいてください」

「困りましたね…」

そう呟くのを聞いたユウが

「如何なさいましたか?」

そう聞くと

「ユキとユミを私が出迎える予定が例の案件がこちらの思惑通りにならず私が応対せねばならなくなってしまって…」

そう難しい表情をする観月に

「マイ、お前ならそのユキとユミっての識別出来るな?

ユウとユカにチサはしなきゃならんお勤めがあるがみこなら融通が利くからアタイが身辺警護に立ちゃ問題ないと思うが?」

そう言って観月の反応を伺うと溜め息を吐いた観月が

「マイ、頼みますよ」

そう言われて港で入港を待つ三人は騒ぎにならぬよう馬車で待つ事になり

船の到着を確かめ命を肩に乗せ三人を出迎え代わりにチサから預かったアップルパイを帆風に渡し上陸準備に勤しむ彼等の茶菓となり一同を喜ばせた

ユキとユミに千波が国王に入国の挨拶を済ませる間に鬼百合が二人の手荷物を部屋に運び入れておき

二人は引き続きマイが観月の臨時の執務室に案内し二人が座る頃あいを計った様にマナと言う侍女がお茶を持ってきた

それを見たユキとユミが腰を浮かして仕度を変わろうとするのを観月が目でせいし様子を見守る事に

マナがお茶の仕度を終えて出て行くのを見送り見送り暫くすると執務室のとを叩く音がしミナとマキを従えた王妃が部屋に入ってきて

「二人に来てもらった理由…きづきましたね?

貴女達の正直な感想を聞かせてください」

そう言われても正直に言って良いものか迷っていると

「公女宮からお呼びの掛からなかった私の目から見ても…」

そう遠慮がちに言うと

「私達も彼女と変わりませんが命様やチサちゃんのお側に居る事を許され皆様から沢山の事を学ばせてもらって居る事を他の皆もその機会が頂けたら…そう思います」

マイが答えマキが頷くと

「先程の娘も変われますか?」

そう王妃が聞くと

「切っ掛けがあれば…さっきミナが言いましたがミナを変えたのは命様との出会いで貴女達もそうじゃないですか?」

三人が頷くのを見て

「私達にとってのその方は観月様

幼くしてお母様である大公妃様に先立たれても人前では涙を流さず…

自室で一人声を殺して泣いてる観月様を見て私達がこの方の側でお守りしたい

お力になれるようになりたいそう思いましたからね」

そう言われて珍しく顔を赤らめ

「その様な事を人前で言うものではありません」

と動揺は隠せなかったけど咳払いをして

「私達が侍女が変えるのではなく学びの機会を与え切っ掛けを模索する時を与えるだけです

最終的に変わる変わらぬは本人達次第ですが貴女達三人が特別な訳ではありませんね?」

そう言われて再び頷く三人を見たユウが

「私からの提案ですが今夜の晩餐はユキとユミの歓迎の席ですから二人は明日の朝からで…

今夜はマイとマキは私達の席に着き食事をしなさい

それにより給仕を受ける側の視点とテーブルマナーを学びなさい

その経験から自分に足りないものが気付けるはず…」

と言うとミナが

「私にもお手伝いせてはもらえませんか?」

と言うと

「貴女は未だ大公邸所属の侍女ですから私の判断で決めるのは…」

と答えると王妃が

「それならば私が代わりに…ミナも手伝ってくれますね?」

と微笑みながら言うと

「勿論喜んでお手伝い致します」

と答え更に

「私達には未だ早いでしょうか?」

いつの間に来ていたのかりんを連れたチサが観月に聞くと

「そうですね…貴女達の席には見習いの侍女が座りミナ、貴女はりんの指導と見習いの子達に気を配ってください

りんは命の専属に付きミナはりんの指導も任せますがそれで宜しいでしょうか?」

観月にそう言われて

「そう言う事ならりんには申し訳無いですが王宮の見習いの子達にもその機会を与えてもらえませんか?」

そう王妃に言われた観月は

「わかりました、ならばいっそのこと見習い侍女の教育その物を任せてもらえませんか?」

観月がそう聞くと

「観月に任せます」

そう返事をもらい

「承知しました、お任せください」

そう答えて

「ユカは引き続きチサとりんの午前の勉強を見なさい

ユウは王宮の侍女逹の礼儀作法

ユキは見習い侍女逹の勉強を、ユミは礼儀作法とダンスを見なさい」

そう指示を与えると頷く一同に微笑み返し

「マイ、マキ…先ずは貴女逹が変わりなさい

貴女逹の成長が他の者逹の成長を促します

貴女逹が好きなみこの為、何より貴女逹自身の為にも…」

そう言って一人椅子に腰掛け微睡む命を見詰める一同だった

夕刻の入浴で初めて人魚姫との対面を果たしたユキとユミが弾ける一時を過ごした

そして時を同じくして鬼百合は仲間の戦士と嵐以外の女神の騎士団を誘い海兵隊との宴を繰り広げた

そして…事情を全く聞かされていないマナ、見習い侍女のスー、スエ、スズに

「水の精霊の巫女を迎えた我が国はこれから未曾有の状況を迎えますですがそれを乗り切る為には貴女逹の成長が不可欠です

今夜より貴女逹の教育を引き受けてもらう美月のスタッフユキとユミの歓迎の宴からそれは始まります

この晩餐で気持ち良く給仕を受ける事を体験し受ける側の視点から見て学びテーブルマナーも学びなさい」

そう言われ驚く四人

事前に知らされていたけど緊張しまくりのマイとマキ

二人には選択権は一切無かった…

それでも観月に言われた命の為に…その言葉を噛み締めた二人に諦めると言う選択肢はあり得ず背後のユウとユカの指導を真摯に受け止める二人だった

晩餐を終えた五人と席に着いて居た侍女と見習いの侍女逹が今度は侍女逹相手に給仕の稽古勿論晩餐で出されたご馳走には程遠いけど食事する侍女逹もマナーの勉強の時間でもある

緊張の面持ちの侍女逹を他所に初めて食事を共にする美月のスタッフの四人

食事の時ミナの助言でマイ、マキ、マナの三人より注意される事の少なかった二人の目にはミナもまた憧れの存在

それはりんと共に給仕に回った見習いの少女にとっても同じでしきりに話しかけていた

勿論マイ、マキ、マナも負けず劣らず食事のマナー、今の給仕についての採点を聞き悪かった点についてのアドバイスを求めていた

その様子を見て呆気にとられる侍女逹にユウが

「何を他人事の様な顔をしているのですか?

明日朝の食事からは私達五人に代わり順番で食卓に着き今夜席に着いた三人同様に学んで貰うのですよ?」

その言葉を継ぎ

「国王様と王妃様が命様逹を養女に迎えたがっているのはご存知ですね?

その四人を王女に迎え入れた時人手不足になるのはわかりますね?

今のままでは後から来た者にバカにされますよ

勿論りんはそんな失礼な子ではありませんが貴女逹がその気ならば私達も手間は惜しみません、その為に呼ばれたのですからね

王妃様は貴女逹自身が成長を望み四人に仕えてくれる事をお望みです」

ユウがそう言い「私は見習いの子逹に学問を教える様に言われてますが…」

そう言って侍女逹を見て

「貴女逹からの質問にも応じますから気になる事はなんでも聞いてください」

とユキも言った

 




取り敢えず混乱は収まりました
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